やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷小町②

俺の誕生日から3日ほど経った8月11日はボーダー入隊試験日だ。

 

「着いたぞ。小町」

 

「ほぇ~ここがそうなんだ」

 

俺は妹の小町と共に入隊試験会場に来ていた。9月が今年最後の入隊日でこれを逃がすと来年の1月になってしまう。

俺としては入隊は早めの方がいい。それに小町のC級の服を見てみたいしな。

 

「それじゃ俺は近くのカフェで待ってるから、頑張ってこい」

 

「うん!分かった。小町、行ってまいります!」

 

小町のトリオン量が俺並なら、まず落ちることはないだろう。基本的に合格のラインはトリオン量が関わってくる。少なかったら、戦うことすら出来ないからな。

そんな事を考えていると、後ろから声を掛けられた。

 

「……比企谷?」

 

聞き覚えのある声だったので振り返って見るとそこに居たのはクラスメイトの川崎沙希だった。夏らしい涼しそうな服装だった。

 

「よお、川崎。お前も試験を受けに来たのか?」

 

「そうだけど。……『お前も』って、あんたが受けに来た訳じゃないよね?」

 

「当たり前だ。俺はすでにA級だぜ。受けに来たのは妹の小町の方だ」

 

「そう。それじゃあたしは行くから」

 

「ああ、またな」

 

川崎も小町同様に試験会場に入って行ったのを確認してから俺は近場のカフェに向かった。

カフェで2時間くらい経った頃に店の扉が開いて、小町が店内を見渡して俺を見つけて手を振って近付いて来た。

 

「お兄ちゃんお待たせ~、試験合格したよ!」

 

「おう、そうか。トリオンを前もって測っていたからな。それにしても川崎も一緒とはな。会場で会ったのか?」

 

「うん会ったよ。後、お兄ちゃんも知っている人が来るから」

 

川崎の他に俺が知っている人間か……誰だろうな。……まあ、来れば分かるか。

そして五分もしない内に店の扉が開いて、入って来た人間を見て驚いた。

 

「戸塚に鶴見先生、それに鶴見か……」

 

入って来たのはクラスメイトの戸塚彩加と鶴見親子だった。小町が言っていた俺の知っている人間はこの三人だったのか。

それにしても鶴見は受ける事を知っていたが、まさか戸塚まで受けるとはな。

俺が忍田本部長の手伝いをした時は見た覚えが無かったから、恐らく8月に志願書を出したのだろう。本来は1ヶ月前くらいに出しておくのだが、親の説得などで時間が掛かり、ギリギリに出す人もいるからな。

 

「あ、八幡久し振りだね、会えて嬉しいよ!」

 

「おう。俺も会えて嬉しいぜ!」

 

相変わらず、戸塚の笑顔は俺を癒してくれるぜ。とりあえず、戸塚は合格したんだろうか?聞いてみないとな。合格してたら、俺が色々と教えてやろう。

 

「それで戸塚は合格したのか?」

 

「それがね……僕、不合格だったんだ……」

 

戸塚の不合格を聞いた瞬間、俺の中で怒りが沸いてきた。何故、戸塚のような可愛い子を合格にしないんだ!上層部は!!

怒りに燃えてもトリオンが少なければ、戦闘員にはなれない。

トリオンが少ない者を戦闘員にした所で何の役に立つのか分かったものではない。

そこで俺は戸塚にある提案をすることにした。

 

「そうなのか。トリオンが少なかったんだろうな。……だったら戸塚、オペレーターになるのはどうだ?」

 

「オペレーター?それって、僕でも出来るのかな?」

 

「ああ。オペレーターは特にトリオンが少なくても出来るからな。それにオペレーターは隊を作るにあたって、必須だからな」

 

「……う~ん……そうだね。僕、オペレーターになるよ」

 

戸塚は少し悩んで、オペレーターになる事を決めた。防衛任務にしろ、ランク戦にしろ、オペレーターが必要だからな。

そんな時、鶴見がある事を俺に聞いてきた。

 

「ねえ、八幡。この女の人は八幡の彼女なの?」

 

「……鶴見。お前に2つ言っておくことがある。1つ、ボーダーに入るにしろ、入らないにしろ、年上には敬語を使え。2つ、戸塚は女ではなく、男だ」

 

「……え?……男の人……?」

 

鶴見は人生の中で一番驚いている様子だった。初見で戸塚を男だと分かるの人はそうそういないだろう。

だからと言ってその驚きようは失礼だ。

 

「うん……よく間違われるけど、僕は男なんだ」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「い、いいよ。そんなに気にしていないから……」

 

戸塚。気にしていないように振舞っているが、これは気にしているな。ドンマイ戸塚。

 

「お兄ちゃん。実は小町から重大発表があります!」

 

いきなりの小町から重大発表と聞いて、俺は内心穏やかではなかった。

まさか、彼氏でも作ったとかではないだろうか?だとしたら、その男を小町と付き合った事を後悔させてやる。

 

「小町は沙希さんと留美ちゃんと部隊を作る事にしました!」

 

「……そうなのか?それは、まあ、頑張れ……」

 

「うん!いつかA級に上がって、お兄ちゃんの隊と戦うから待っててね」

 

「ああ、楽しみにしてる」

 

小町の重大発表は川崎と鶴見で部隊を作る事だった。彼氏ではなくて、ホッとした。

しかし、それだと女子だけになってしまい、小町が心配だ。男が後、1人か2人は欲しいが、居るだろうか?

とりあえず、川崎に小町とでいいか聞くか。

 

「川崎は小町と組むのでいいのか?」

 

「うん。B級に上がって、すぐに防衛任務にでられるし、どこかに入れてもらうのも気が引けるから、こっちとしては助かるから」

 

「そうか。鶴見もそうなのか?」

 

「うん。いきなり知らない人達となるより知っている人が居る方がいいから」

 

鶴見も川崎と同じで、どこかに入れてもらうよりは新しく自分達で作るのも有りだろう。

 

「小町。部隊を作るなら戸塚をオペレーターにしたらどうだ?」

 

「彩加さんを?う~ん……そうだね!お願いできますか?彩加さん」

 

部隊を作るならオペレーターは必要だし、出来るだけ知っている人間がいた方がいいしな。

 

「小町ちゃんや川崎さん、それに鶴見ちゃんさえよければ、オペレーターやらしてくれないかな?」

 

「もちろん!小町は大歓迎ですよ!ですよね沙希さん、留美ちゃん」

 

「あたしは全然構わないよ」

 

「私も2人がいいなら、いいですよ」

 

戸塚が小町達と部隊を組む事はこれで決まったな。でも、俺としては後1人くらい入れてもいいと思う。

そこであいつを小町達に紹介してもいいかな。

 

「小町や川崎さえよければ入れてやって欲しい奴が居るんだけど。いいか?」

 

「入れて欲しい奴?って、誰?」

 

「羽々斬鏡夜。夜架の弟で、まだどの部隊にも入っていないんだ。本人は特にどこかの部隊に入る気はないから新しく出来る部隊になら入りやすんじゃないかなと思ってな」

 

「夜架さんの弟さんを?小町は全然いいけど。沙希さんや留美ちゃん、彩加さんはどうですか?」

 

「あたしはいいよ。比企谷が入れて欲しいって言ってることだし、その人ってもうB級なんでしょ?」

 

「ああ、それにそいつは部隊のエースを担える奴だよ」

 

「強い人が居るに越した事はないからね。戸塚はどう思う?」

 

「僕もいいと思うよ。鶴見ちゃんはどう?」

 

「私も皆さんがいいなら、全然構いません」

 

小町や川崎、戸塚、鶴見は鏡夜の事を入れてくれるようだ。早めに鏡夜に聞いておいたほうがいいな。

ここで俺はある事が気になったので小町に聞く事にした。

 

「そういえば、部隊の隊長は誰がやるんだ?小町」

 

「それは、沙希さんにやってもらうつもり」

 

「……え!?あたし?」

 

川崎は小町にいきなり言われて驚いていた。事前に言ってないとそれは驚くよな。

 

「そうですよ。だって、沙希さんは小町達の中で一番年上ですし、小町達を引っ張ってくれそうですし!」

 

「それだったら、比企谷が紹介してくれる人はどうなの?」

 

「鏡夜は高1だ。それにあいつに隊長が務まるとは思えない。あと、隊長とエースは出来れば兼任しない方がいいぞ」

 

川崎としてはいきなり隊長は嫌な様子だった。しかし、隊長とエースは別の方がいい。隊長とエースを兼任している所はある。

俺の隊は夜架と雪菜をエースとして、作戦を考えている。俺はあくまでエースの足止めや3人の援護を中心にしている。

 

「……分かった。隊長を引き受けたよ。……でも戸塚達ははあたしが隊長で良い訳?」

 

川崎は少し考えて、隊長を引き受けた。それでも不安があるようで戸塚に聞いてきた。

 

「僕は全然いいよ。鶴見ちゃんはどうかな?川崎さんが隊長でいい?」

 

「私は構いません。それに私が出来るとは思えないなんで……」

 

戸塚はあっさりと承諾し、鶴見は自分には出来ないと分かっているようだった。小学生には荷が重すぎるからな。

鶴見は生意気なものだから自分がやると言っても可笑しくなかったのに、それは俺の偏見か。

とりあえず、これで新しい部隊『川崎隊』の結成だな。と、言ってもまだ入隊も済んでいないので出来てはいないが。

それでも川崎隊が将来どのようなチームになるか、今から楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

小町達のB級ランク戦の事を考えていると急に小町がある事を俺に伝えてきた。

 

「そう言えば、お兄ちゃん。試験会場で結衣さん達を見かけたよ」

 

「はぁ?由比ヶ浜達?他には誰が居たのか。覚えているか?」

 

「ほら、千葉村に来ていた人達だよ」

 

「マジか!?」

 

千葉村に来ていたのは他のは葉山、戸部、三浦、海老名、雪ノ下くらいか?

だとしたら、面倒臭い事になるな。

 

「そうか。教えてくれて、サンキューな。小町」

 

「いえいえ。これくらい」

 

とりあえず、入隊日に面倒な事にならないといいんだが。

しかし、俺の願いを神様が聞いてくれない事は昔から知っていたはずなのに、どうしてこんなことを願ったのだろうか。

 


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