やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
その少女は読書をしていただけで、それが何故か絵になっていた。
窓から入ってくるそよ風が髪をなびかせ、そんな光景ですら人を惹き付ける何かがあった。
だが俺には世界一かわいい妹の小町がいるので、特別それ以上に何か感じる事はない。
俺がその光景をただ見ていると、彼女は本を閉じこちら……というか平塚先生を見て溜め息を吐きながら文句を言い出した。
「はぁ……、平塚先生。入るときはノックをしてくださいと、何度言えばわかるのですか?」
「すまない。……だが、ノックをしても君が返事をしたためしがないじゃないか」
まるで悪びれる様子のない平塚先生。
「それは返事をする前に平塚先生が勝手に入ってくるからじゃないですか。……それで、そちらのぬぼーっとした人は誰なんですか?」
「今日から、ここの新入部員だ。ほれ、自己紹介をしろ」
「……2年F組、比企谷八幡です。――って新入部員って何ですか? 俺は部活には入りませんよ。忙しいんですから」
「異論、反論は認めないと言ったはずだ。それに君は腐った目だけでなく、その曲がった根性も直さないと、社会に出て苦労するぞ」
「大きなお世話です。人の性格を言う前に先生の性格を直したらどうなんですか? だから結婚できないんですよ」
俺の返しにキレたのか、平塚先生は固めた拳を俺に向けて放ってきた。
「……衝撃のファーストブリットーーーーー!!!!」
それは、さっき見た攻撃だったので余裕で回避した。そのことに驚いた顔をする平塚先生に向かって、言ってやる。
「教師が生徒に暴力ですか? 教師の風上にも置けない最低の教師ですね。
もし今のが当たって、俺が教頭か校長に訴えれば、先生は懲戒免職になっていましたね」
俺はそこまで言って拳を構えた。
「……平塚先生、そこまでにしてください。ここで暴力事件を起こさないでください。部活停止になったらどうするつもりですか?」
俺の心配ではなく、部室の心配かよ。いい性格しているぜ。もちろん悪い意味で。
「それで、彼の性格を社会に出ても大丈夫なようにすればいいわけですか?」
「ああ、そうだ。頼めるか?」
「お断りします。彼からは、何か卑猥なものを感じます。私の貞操が危険になります」
平塚先生の問いに対して、雪ノ下はキッパリと言い放った。
「誰がテメーみたいな性格の悪い女に欲情するか。お前こそ、自分の性格を見直したらどうだ?」
「あら、何を言っているの? 私ほど完璧な人間はいないわ」
うわぁ……。ナルシストかよ、人間として欠陥だらけだな。
「そーですかー。まあ、がんばれ」
「何を言っているの。貴方の性格をこれから直していくのよ。私に感謝しなさい」
「……ありがとう。では俺はこれで」
適当に返して部室を出ようとすると、平塚先生に肩を掴まれた。
「どこに行こうとしている? 君は、これからここで部活動にいそしむのに」
「そんなことに時間を割いている暇は俺にないんですよ。バイトがあるので」
「だから、嘘を吐くなといっているだろ。それに君の捻くれた性格は直しておかないと社会に出てから苦労するぞ」
「大きなお世話です。それに教師が生徒の自由を奪っていいわけないでしょ」
「だから「こちらに、居られましたか。主様」」
なおも諦めようとしない平塚先生の言葉に割って入ってきたのは、夜架だった。
「夜架? どうしてお前がここに?」
「はい、主様。職員室から出てこられるのが見えたものですから、後をつけたら何やらもめている様子でしたので割って入らせてもらいました」
「そうか。でも、助かったわ。サンキューな」
「いえ、礼には及びません。私の存在意義は主様にあるのですから」
「……夜架。その中二設定、ここではやめてくれないか?せめて、先輩呼びにしてくれ」
「わかりました。それをお望みとあらば」
突然の横槍に呆然と俺と夜架のやり取りを見ていた二人。そんな中、我に返った平塚先生が口を開く。
「比企谷……彼女は一体、何者だ?」
「えっと、彼女はバイトで同じ班の娘で名前が……」
「羽々斬夜架、一年生です。お見知りおきを」
「比企谷君? と言ったかしら。一体、どんな弱味を握って彼女にそんなことをやらせているのかしら? 今すぐに止めないと、警察に通報するわよ」
「いや、別に弱味なんか握ってないから。これは彼女のキャラなんだよ」
「何を訳の分からないことを言っているの? これは警察の出番ね。大丈夫よ、羽々斬さん。その卑猥な目つきをした男からすぐに助けて上げるから」
と、雪ノ下は一方的に決め付けてきた。それに対して夜架はすぐさま、否定してきた。
「我が主がそのようなことを今まで私にしてきたことは一度たりともありません。主様のことを何も知らないのに好き勝手に言うのは止して下さい。それに一年生が二年生の先輩を悪く言うのは、どうかと思いますよ?」
「……夜架。雪ノ下は俺と同じで二年なんだよ」
「そうでしたか。てっきり、一年なんだと思いました。あのむ「皆まで言わなくていいから!」――そうですか?」
思わず俺は夜架の言葉に割り込んでその言葉を阻止した。
夜架が何故、雪ノ下を一年だと思ったのかは大体分かっている。
言えば、確実に社会から消されるから言わないがおそらく胸を見てそう判断したのだろうと思う。一年の夜架より無いんだからしょうがない。
「それより、主様。そろそろ、時間が無くなってきています」
「夜架、主呼びに戻ってるぞ。それで時間ってなんのことだ?」
「防衛任務の時間ですよ。そろそろ、学校を出た方がよろしいかと。でないと遅刻してしまいます」
「マジか!? もう、そんな時間なのか? 不味いな。平塚先生、俺達はこれからバイトがあるのでこれで失礼します。行くぞ、夜架」
「はい、主様」
慌てて俺は、夜架を伴って学校を後にした。教室を出る前に二人の顔を見てみたが、唖然として俺達を見ていたように見えた。
急いだお陰で、なんとか防衛任務には十分間に合った。
その時に、何故遅れそうになったのかをメンバーに問い詰められて、平塚先生の事や雪ノ下の事を全部話した。
その時のメンバーの顔は相当に不機嫌そうだった。
雪菜の設定を少しいじりました。