やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷八幡⑨

昼間、川遊びをしている時に鶴見が現れたので、俺はボーダーに入らないかと鶴見に提案して鶴見はそれを受け入れて、ボーダーに入隊する事になった。

その際に親の説得が必要だが、それは鶴見次第だろうが問題は無いと思う。

 

川遊びを終えて、夕食を食べ終わってからはついに肝試しだ。それぞれが衣装に着替えてから、山道に隠れて小学生を脅かしまくった。

小学生の悲鳴は言っては何だが最高だったのは秘密していた方がいいな。

肝試しも無事に終わり、今はキャンプファイヤーをしている所だ。小学生に混ざってフォークダンスをやっている出水達を少し離れた場所で見ていた。

 

今は小学生達は出し物をやっていた。完成度は余り高くはないが、それでも場を盛り上げるにはいい感じになっている。

ふと、小町や浅葱達と話している鶴見の姿が目に映った。笑いながら楽しそうに会話をしているのを見る限り、母親である鶴見先生と話してボーダー入隊の許可でも貰ったのかもしれない。

そんな時、三輪がジュースを俺に投げ渡してきた。

 

「お前は混ざらないのか?」

 

「俺はああいうのは苦手なんだよ。それに肝試しで散々怖がらせた俺があの中に入れば、小学生が泣く」

 

俺はジュースのフタを開けながら三輪に答えた。

肝試しではメガネを取って、ゾンビのマネをしたのだが、誰よりも怖がれてしまった。今はメガネを掛けているので泣きはしないだろうが、それでも入る気にはなれなかった。

 

「お疲れ様だな」

 

「ん?何がだ?」

 

三輪はどの事を言っているんだ?分からん。

 

「鶴見留美のことだ。正直な所、俺はお前が何もしないのではないかと思ってな」

 

三輪は俺の性格をある程度知っているからこそ、こんな事を言っているのだろうが、さすがにシノンや陽太郎に頼まれたからにはどうにかしてやりたいと思うからな。

 

「別に俺はあいつに提案をしただけだ。それに他の事は何もしていない。ボーダーに入るのは鶴見の決めたことだ」

 

俺は提案してだけで何もしてはいない。鶴見が考え、選び、決めたことだ。自分を助けるために選んだのがこれだ。

他の第三者が決めてはいない。鶴見の意志によって選ばれた未来だ。

 

「それでも、その道を見出したのは他ならぬお前だ」

 

「そうだな。でも、鶴見はこれからだろ?」

 

三輪と話しているとある人物が俺達の会話に入って来た。

 

「楽しんでいるかね?君達」

 

それは平塚先生だ。左手にはビールの缶を持っており、少しだが顔が赤くなっていた。

俺はそれとなく、話す事にした。

 

「それなりには楽しんでいますよ」

 

「そうか。それはなりよりだ。青春は一度しかないから、楽しまないのは損だからな。それではまたな」

 

「その前にいいですか?平塚先生」

 

去ろうとしている平塚先生を俺は呼びとめた。平塚先生は首だけを俺の方に向けた。

 

「何だ?比企谷。できれば手短にしてくれよ?」

 

「明日、帰る前に話しがあります。由比ヶ浜達を送る前に言っておかないといけない事があるんで駐車所に居てください」

 

「それだけかね?ならば、もう行くぞ」

 

平塚先生はそのまま行ってしまった。しかも小学生を引率していた男性教師の所に一直線に向かっていた。恐らく、結婚相手でも見定めているのだろう。

ご愁傷様です。男性教師の方。

 

「ヒキタニ君」

 

平塚先生が去ったと思ったら、今度は葉山が近付いてきた。相変わらず、俺の苗字を間違えてはいるがな。

 

「何の用だ?葉山」

 

「いや、君にお礼が言いたかったんだ。あの子を助けてくれて、ありがとう」

 

葉山はそう言って、頭を下げてきたが、こいつが俺にお礼を言うのは違う気がする。

それにしても由比ヶ浜はちゃんと葉山に伝えたようで安心した。

 

「生憎とお前にお礼を言われる筋合いはない」

 

「はは、そうだよね。でも、一応感謝しているんだ。……やっぱりヒキタニ君は凄いな……」

 

一応って何だよ。喧嘩でも売ってるのか?だったら買うぞ!このヤロー!!と心の中だけにして置おこう。

 

「……何の事だよ?」

 

「……俺には出来ないことをやってしまう所だよ」

 

「別にそんなの凄いことじゃ無いだろ。お前に出来ない事があるように、俺にだって出来ないことはある。誰にだって向き不向きってもんがあんだよ」

 

誰だって完璧ではないし、完全でもいない。人は不完全で未完成の欠陥だらけの人形なのだから。

しかし、俺はそれでいいと思う。完璧じゃないからこそ、完璧に近付こうとするし、未完成だからこそ、完成させたい。

それは人の進化、もしくは成長だと俺は思うからだ。

 

「確かにその通りだよ。自分は自分で他人は他人でしかない。同じに見えるようでもみんな違う。だからこそなんだよ。俺は皆が仲良く出来る方法をとって……いや、探していきたいんだ」

 

「それは一生無理だぜ?中身がスカスカの平和主義者さん」

 

葉山隼人は平和主義者だと言えるだろう。戦う事を考えず、平和の事しか考えない。最善の未来は見えても、最悪の未来を考えることすらしない。

全力を尽くせば、いい結果になると信じて疑わない。ある意味、雪ノ下と並んでタチが悪い。

 

「……自分で言ってなんだけど、こんな理想を持っていても、俺は比企谷……君とは仲良くは出来なさそうだ……」

 

「だろうな。俺だってお前と仲良くなんて、ごめんだ」

 

葉山は言い終わると、すぐさま俺から離れて行き、戸部達の下に向かった。

そのすぐ後に三輪が俺に質問してきた。

 

「比企谷。お前はあれでよかったのか?」

 

「いいも悪いも俺とアイツの関係はこんなもんさ」

 

俺がそっけなく答えると三輪はそれ以上何も聞いてはこなかった。

キャンプファイヤーの近くでは花火をやっていた。三輪は米屋に呼ばれて、花火をやるために米屋達の方に向かって歩いて行った。

しばらくすると花火を一通り楽しんだ浅葱が近付いて隣に座った。

 

「八幡はやらなくていいの?」

 

「俺は見ている方がいい。お前は満足したのか?」

 

「うん。小学生の出し物も中々よかったよ」

 

「そうか。それはよかった」

 

しばらくの沈黙の後で浅葱から話を振ってきた。

 

「八幡ってさ、お盆辺りの夜って何か予定入れている?」

 

「いや、特には無いけど?何かあるのか?」

 

「花火大会」

 

浅葱が短くそう言った。確かに地元である花火大会がお盆辺りにあるんだっけ?

浅葱はその事を言っているんだろう。屋台が色々と出て大いに賑わう三門市の一大イベントだ。

 

「その花火大会がどうしたんだ?」

 

「実はお父さんが久々に八幡に会いたいんだってさ。それで花火大会の日に連れて着てくれって、頼まれたの」

 

俺の親父と浅葱の親父さんは古い知り合いで昔はよく家族で食事に行った事がある。

 

「了解」

 

「うん。お父さんに伝えておくから。会う前に屋台とか、見て回らない?」

 

「だな。そうするか」

 

俺は花火大会に屋台巡りの提案をしてきた浅葱としばらく話していた。俺は鶴見について、浅葱に聞いて見る事にした。

 

「浅葱。鶴見は大丈夫そうだったか?」

 

「留美ちゃん?うん。初めて見た時より全然元気になったよ。それとボーダーではスナイパー志望らしいよ。それを聞いた、シノンが師匠になって色々と教えるんだって、張りきってた」

 

「へぇ~スナイパー志望でシノンが師匠か。楽しみだな」

 

シノンが師匠だと言う事は腕に関してはそれなりになる事は十分予測出来る。トリオン量などは分からないが、それでもB級になって経験を積めば、ランキング上位も狙える。

 

キャンプファイヤーを終えてから風呂に入り、そのまま寝る事になった。前日のように出水と米屋のバカ騒ぎは今夜は起こらなかった。

さすがの二人も川遊びで疲れたらしく、布団に入った途端に寝てしまった。

 

さすがの俺も眠たくなったので、寝ることにした。明日はこのキャンプも終わり、三門市に帰る事になる。

その前に俺はあの人物との決着を着けないといけない。

俺を本気で怒らせた事を後悔させてやる。




次回で千葉村編も終わりです。お楽しみに!

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