やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
「はぁ……はぁ……はぁ……」
千葉村でやっている小学生のキャンプを手伝うバイト二日目の朝に、俺は山を走り回っていた。
トリオン体は身体を鍛えていた方が動くのが有利になるので、ボーダーに入ってからの日課のようなものだ。
防衛任務がない時は早起きをして、走っているのが日課となっている。
一通り汗を出して、朝食の前にシャーワーを浴びて汗を流すことにした。
汗を流している時に昨日のことを思い出した。
夜に浅葱に告白して俺達が恋人になったのはいいのだが、浅葱からのお願いを聞いた時は驚いた。
まさか、俺に好意を持っている人が浅葱以外にもいるとは思いもしなかった。
とりあえず、浅葱の言う通りに好意を寄せてくるなら、しっかりと応えていくつもりだ。あまり、自信はないが……。
「比企谷、朝練は終わったのか?」
シャワーで浴びて部屋に戻ろうとしていると三輪に出会った。三輪は朝から少しだけ疲れているようだった。
「よお、三輪。朝から疲れてるみたいだけど、なんかあったか?」
「ああ……陽介の寝相があそこまで酷いとは思っていなくてな……」
どうやら、三輪は米屋の寝相に悩まされて疲れているようだった。ドンマイ三輪。
三輪は朝食のために食堂に向かっていたのでそこで別れて、俺は部屋へと向かった。
そして、部屋の中を見て驚いてしまった。出水と米屋、陽太郎の三人が寝ているのはいいが、その寝相が余りにも酷かった。
その三人の酷い寝相の中で烏丸が平然と寝ているのは感服してしまった。
朝食を食べるためにもこの四人を起こすとするか。
「お~い。お前ら、朝食の時間だぞ!早くしないと食べる分がなくなるぞ!」
俺の言葉に反応して四人が起き始めた。最初に起きたのは烏丸だった。
「……おはようございます。比企谷先輩」
「よお、烏丸。それにしてもお前、よくこの状態で眠れるな?」
「……これくらいなら普段から慣れているんで……」
烏丸は5人兄弟の長男だったな、それを聞いて関心してしまった。
烏丸は起きたので、他の3人を起こすことにした。
「出水、米屋、陽太郎。そろそろ起きないと朝食がなくなるぞ」
「……お~……おはよう、比企谷」
「……おはようさん、ハッチ……」
「……うむ……おはよう。はちまん……」
3人は寝起きでまだ寝ぼけているようだった。これで朝食には間に合うな。
「早く着替えろよ?でないと朝食がマジでなくなるぞ」
4人が着替えるのを待って、食堂に移動した。そこには女子ボーダー組がすでに集まっていた。
総武高組もすでに全員が集まっていたが、ボーダー組と総武組で席が完全に分かれていた。
それはきっと昨日の話し合いで、互いに相性が悪いことを確認したからだろう。まあ、雪ノ下と三浦の喧嘩に巻き込まれたくないのも影響しているけど。
「あ、おはよう八幡」
「お、おう。おはよう浅葱」
食堂に着くと一番に浅葱が挨拶をしてくれた。昨日の告白で恋人になったのが原因なのか、顔を見た瞬間に熱くなってしまった。
浅葱はそんなに緊張していないように見えたが、若干顔は赤くなっていた。
「お兄ちゃん。はい、朝食」
「お、サンキュー小町」
俺が浅葱と挨拶していると、いつの間にか現れた小町が朝食を持ってきてくれた。お盆にはご飯、味噌汁、鮭のムニエルが乗っており、とても美味しそうだった。
椅子に座って朝食を食べようとした時、葉山グループの様子を見たが、昨日となんら変わってはいなさそうだ。
雪ノ下は平然と朝食を食べていたが、三浦が雪ノ下の事を睨みつけていた。由比ヶ浜はそれを見て、オロオロしている。恐らく昨日の話し合いの後に何かがあったんだろう。俺には関係ないが……。
葉山はただ苦笑を浮かべているだけで何もしていない。戸部は何とか空気を和ませようとしていたが空回りしていた。海老名は妄想にしているようで「ぐふふふ……」と笑っていた。何を考えているのかは聞かない方がいいな。
その時、不意に雪ノ下と目が合った。その瞬間に雪ノ下から睨みをつけられた。
恐らくあいつが俺を睨んできたのは、昨日の話し合いでのことが余程気に食わなかったようだ。否定してばかりで、案の一つ出していないに奴がよくあんな態度ができるものだな。
さすがは毒舌お嬢様だな。
「朝食を食べているところ悪いが、今日の予定について話す」
俺達が朝食を食べていると、平塚先生がプリントを持って説明し始めた。
「最初に夜に行う、キャンプファイヤーと肝試しの準備をしてもらう。まずキャンプファイヤーは木の積み上げをしてもらう。肝試しは君達にはお化け役をしてもらって、小学生を脅かしてもらう。それとキャンプファイヤーの準備が終わったら、後は自由にしてくれて構わない。以上だ」
キャンプファイヤーと肝試しとは定番のことをやるんだな。
「お兄ちゃん!キャンプファイヤーの準備が終わったら、川で遊ぼうよ!」
小町がそう言ってきた。俺としても暑いから涼みたいと思っていたし、何より小町の水着が見られるのは、テンションが上がる。
それにしても肝試しで脅かす役か……。俺がやっても大丈夫だろうか?
そう思っていると、出水が俺をからかい始めた。
「比企谷。お前はメガネを取れば、それだけで十分脅かすことができるだろ?」
「それだったら、三輪も適任だろ?目つき悪いしな。小学生が泣くぞ、絶対に」
「喧嘩を売っているのか?比企谷」
三輪のドスの効いた声を聞いて少しだけビビってしまった。少しだけだからな。
朝食の後でお化けの衣装を確認した後で、キャンプファイヤーの準備を始めた。
男総出でやったので、そんなに時間は掛からなかった。その時に視線を感じたので、その方向を見てみると、海老名が居て此方を見ていた。
その時の顔は赤く、鼻息が荒かったので、恐らく妄想でもしていたのだろう。……気にしない気にしない。
キャンプファイヤーの準備が終わったので水着に着替えて、川に向かって歩いていると出水が話しかけてきた。
「にしても比企谷って、結構身体鍛えているんだな?」
「まあな、レイジさんと一緒に鍛えてた時期があってな。それからも続けている」
「へぇ~そうなのか」
川に着くと、すでに三輪、米屋、小南、烏丸、陽太郎が水鉄砲で遊んでいた。昨日の水鉄砲はこの時のためか。
来て居ないのは小町と比企谷隊のメンバーと国近先輩だけだった。
「おまたせ~」
後ろの方から国近先輩の声が聞こえてきたので振り返ってみると、水着姿の国近先輩がそこにはいた。
オレンジ色のビキニに腰にパレオを巻いた姿はその辺にいる男を悩殺してしまいそうな大きなお山を持っていた。てか、やっぱりスタイルいいな。
横にいた出水が黙っていたので、そっちを見てみると、とんでもない事になっていた。
「出水、お前大丈夫か?」
「はぁ?何が?」
「……鼻血、出ているぞ」
「……え?……」
出水は俺の指摘で自分の鼻を触ってみると、血が出ている事にやっと気付いた。夏の暑さにやられたか?と思ったが違った。
出水が鼻血を出した原因は夏の暑さでない事はすぐに分かった。出水が鼻血を出した原因は国近先輩だ。
出水は国近先輩の胸を見て、鼻血を出したのだ。お前の気持ちは分かるぞ出水。あんな大きな胸を水着姿で見られただけで幸せな気持ちになる。
「出水君、大丈夫?」
国近先輩は出水が鼻血を出していたので、心配になって近付いて、出水の顔を覗きこんできたが、それが更なる問題を起こしてしまった。
国近先輩は両手を両肘に付いて、覗き込んでいるので、両腕で自身の腕で胸を横から圧迫するように形になっていて、胸をより強調してしまったのだ。
結果、出水の鼻血は更に酷くなった。
「い、出水君!!ホントに大丈夫?!さっきより鼻血が出ているよ?」
「だ、大丈夫ですよ、由宇さん。だけど、少し日陰で休んできますね……」
出水はそう言って日陰の方に歩いて行った。国近先輩は心底心配していた。しかし、出水が鼻血を出した原因がまさか、自分の胸だと思いもしないだろうな。
出水は日陰の方に向かって移動して、鼻を押さえて血を止め始めた。
「出水君、大丈夫かな……?」
「しばらくすれば止まるでしょうし、大丈夫ですよ」
「そうだね。……出水君!!何かあったら言ってね!!」
国近先輩の声が届いたらしく、出水は頷き手を振ってきた。
国近先輩は川で遊んでいる小南達と一緒に水鉄砲で遊び始めた。
しかし、小町と俺の隊のメンバーは何をやっているんだ?いくらなんでも遅すぎる。
「お兄ちゃん!!お待たせ!!」
「やっと来たか」
小町の声がしたので振り返ると、フリルの付いた可愛らしい水着を着ている小町がそこにはいた。隣には雪菜が水色のフリルの付いた水着を着ていた。小町とは色違いでこちらも可愛かった。
「八幡先輩、ど、どうですか?」
「似合っているな。可愛いぞ」
「あ、ありがとうございます。嬉しいです」
雪菜はそう言って、そっぽを向いているが顔は赤くなっていた。しかし、国近先輩を見た瞬間に落ち込んでしまった。
「……やっぱり、国近さんは大きいですね……どうすれば、あんな大きさに……」
「大丈夫だよ雪菜ちゃん。小町達には夢はないけど、希望があるから!!」
「希望、ですか?それって、一体?」
小町の言葉に雪菜だけでなく、俺までもが疑問に思った。
「いい雪菜ちゃん!小町達はまだ中3で、由宇さんは高3だよ。つまり、三年の時間があるんだよ。だから、希望を糧に夢(胸)を膨らませれば、いいんだよ!」
「小町ちゃん……うん。そうだよね。私達にはまだ可能性があるんだよね!私、頑張る!!」
「その意気だよ。雪菜ちゃん」
小町から中々、面白い話が聞けた。まあ、確かに小町の言う通りだ。3年の時間は大きいからな。
「しかし、それを言ったら雪ノ下には夢どころか希望すらないな……」
俺がそう言った瞬間にどこからか視線を感じたと思ったら、背筋が凍った。すぐに周りを見渡したが俺達以外は誰もいなかった。
「今のは一体?……夜架にシノンもやっと来たか」
夜架とシノンも水着に着替えて、こちらに歩いてきてた。
夜架は黒色のビキニでボディラインがすらっとして、スタイルは抜群によかった。てか、エロかった。
シノンはライトブルーのビキニだった。シノンもすらっとしていて、スタイルはよかった。
「どうですか?主様」
「……似合っているかな?八幡」
「ああ、二人ともよく似合ってるぞ」
二人に聞かれたので素直に褒めたら、夜架とシノンは嬉しそうに顔を少し朱に染めた。俺に褒められたのが、そんなに良かったのだろうか?
「おまたせ、八幡」
「やっと、お前も来たか。浅、葱……」
俺は水着を着た浅葱に驚いてしまった。浅葱が着ていたのは白色のビキニで腰にはパレオを巻いていた。
浅葱の水着姿は俺の想像を遥かに超えていた。俺の幼馴染って、こんなに綺麗だったんだと改めて感じた。
「ど、どうかな……?」
「あ、その……とても綺麗で、似合っているぞ。うん……」
「ありがとう……」
俺の言葉を聞いて、浅葱は顔をかなり赤く染めていた。恐らく、俺の顔も赤くなってるだろう。
その時、後ろから刺さるような視線を感じたので振り返ってみると、先程のメンバーが俺を睨んでいたが、気にしない事にした。
米屋達と一緒になって、水鉄砲での撃ち合いに参加して思いっきり遊んでやった。
一時間経った頃、一度川から上がって体を温めた。冷えすぎると風邪をひいてしまう恐れがあるからだ。
休んでいると、不意に後ろから視線を感じた。しかし俺の後ろは森なので、人がいるとは思えなかった。
だが振り向いてみると、そこには一人の少女。鶴見留美がいた。