やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
「……え?」
浅葱は俺が何を言っているのか分からないで驚いてた。恐らく俺が『いない』か、適当にはぐらかすと思っていたらしい。
浅葱は俺の返答が、完全に予想外だったらしい。自分が思っていた答えとは違っていたらしくかなり動揺していた。
「……ご、ごめん……それって、どういう事?」
浅葱は本当に動揺していた。そんなに意外だろうか?まあ、確かに普段の俺の事を知っている浅葱からしたら、それは驚くよな。
「だ、だから……俺はお前が好きだって言っている……」
俺は自分の心を偽らず、正直な気持ちを言った。恐らく、トイレに行く前に出水に言われた事や、さっき浅葱が自分は好きな人がいると言った事に関係している。
浅葱の好きな人が誰だかは知らないが、それでも言葉にして伝えておきたかった。
「それで、お前の答えは……って浅葱、お前……大丈夫か?」
「……え?何が?」
「いや、何がって……お前、泣いているぞ」
俺の指摘で浅葱は自分の頬に触れて、ようやく自分が涙を流してしることに気が付いた。俺としても浅葱が何で涙を流しているのかが分からないでいた。
「どこか、痛いのか?浅葱」
「ち、違う……ただ、嬉しくて、ごめん……」
「そうか。……あれ?嬉しいって事はもしかして、お前の好きな人って……」
「うん……私の好きな人は八幡。あんたのことよ」
俺は浅葱の言葉を理解するのに20秒近くフリーズしてしまった。
浅葱の好きな人は俺で、俺は浅葱が好きで、おれ?訳が分からなくなって来ているな俺。
これはつまり、あれだ……相思相愛という事だろう。
嬉しい反面、これが現実なのか?と疑ってしまいそうになる。
「それじゃあ……俺達は今日から、彼氏彼女でいいのか?」
「うん……こちらこそ、よろしくね」
俺達は正面に向き合っていたが、なんだか告白した所為か顔を合わせらずにいた。
告白する前より、した後の方が緊張するとか情けない。
先ほどまで泣いていた浅葱の顔は笑っていた。
「あ!後、八幡にお願いあるんだけど」
「何だよ?改まって、お願いって?」
浅葱のお願いとは何だろうと思っていると、とんでもない事を言ってきた。
「私だけじゃなくて、他の娘の気持ちにも応えてあげてほしいの」
「……は?」
俺は浅葱が何を言っているのかが分からないでいた。他の娘の気持ちにも応えろってどういう事なんだ?
「えっと、浅葱。それはどういう意味なんだ?」
「だから、あんたを好きな娘の気持ちにも応えてほしいってことよ」
「それはつまり……浅葱以外の女子が俺に好意を持っている、という事か?」
「そういう事よ。だから、私だけじゃなくて、他の娘の気持ちに応えて欲しいのよ。私としては、少し複雑だけど。……それでも対等な条件でいたいから」
浅葱は一体、何の話をしているんだ?分からん。
「応えろとは、つまり……俺はどうすれば?」
「……はぁ~つまり告白されたら、あんたの気持ちをぶつければいいの。分かった?」
「……了解。できるだけ善処します」
「うん!よろしい!」
まさか、浅葱の他の女子も俺に好意を寄せているとは、自分でも驚きだ。中学ではそれほど、モテた事がなかったからな。
しかし、気になるな。他に誰がいるんだ?まあ、その内分かるだろう。
「そろそろ、戻った方がいいな。送ろうか?」
「大丈夫よ。そんなに遠くはないし、すぐに着くから」
「そうか、わかった。また明日な」
俺は浅葱と別れて、部屋に戻るために歩き始めた。その足取りは心なしか軽いものだった。
浅葱に告白しただけだと言うのに、気持ちとは言葉にしておくものだなと思った。
「あ……戻ったら、あいつらに聞かれるな絶対に」
トイレに出ただけなのに時間を掛けすぎたと思う。ここは諦めて話すしかないだろうな。
俺が部屋に戻ってみると、出水、米屋、三輪、烏丸に寝ていたはずの陽太郎がトランプをしていた。陽太郎は煩すぎて起きたのか。
「お!やっと戻ってきたか比企谷。漏らしたんじゃないかと話していたんだが、その様子だと、それはなかったようだな」
「高2になって漏らすわけないだろ。そんなの社会的に死んだも同然だ」
「それもそうだな」
出水は笑っているが、さすがに高校生で漏らす奴はいないだろう。
出水との会話に一段落つくと、次に陽太郎が話し掛けてくる。
「はちまん」
「どうした?」
「はちまんはあの子を助けるのか?」
陽太郎がいうあの子とは鶴見のことだろう。そのことはすでに考えてあるから問題ない。むしろ、問題なのは雪ノ下や葉山がどう動くかの方だ。余計なことをしないでほしいけどな。
「それは大丈夫だぞ、陽太郎。ちゃんと助けるから任せておけ」
「うむ。では、たのむぞ」
俺が陽太郎との話しを終わらすと、米屋が話しかけてきた。
「ハッチもこっちに来て、トランプしようぜ」
「お前らな、陽太郎を起こしたな?寝かせてやれよ。まったく」
「それは悪かって。起きちゃったんだししかたないだろ?とりあえずババ抜きやろうぜ」
「分かったから、もう少し声を抑えろ」
トランプをしていたが一番に陽太郎が寝オチして抜けた。その後もトランプをやり続けていると、不意に出水が話しかけてきた。
「そういえば、比企谷。お前、さっきのトイレ異様に長かったな?何かあったのか?」
「……何でそう思う?」
余計なことに気付きやがってと思ってしまった。ボーダーにいる奴は変に勘が鋭い。
「まあ、何となくかな?それに今、間が空いたし、何があったか洗いざらい話したほうがいいぞ」
「……仕方ねぇ、分かったよ。……実は浅葱に告白した」
俺がそう言ったら、四人は驚愕していた。そんなに驚くことだろうか?確かに俺の性格を知っていれば、まさか俺が告白するとは思わないだろうけど。
「……比企谷。それはマジか?」
「マジだよ。ここで嘘言ってどうすんだよ」
「そうか……それでどうなったんだよ?」
「まあ……その、付き合うことになった……」
俺が告白のことを話すと四人は驚いていた。
「マジなんだな!?まさか比企谷が女子に告白するとはな」
「すげーじゃんハッチ!」
「比企谷、おめでとうと言っておこう」
「比企谷先輩、やりますね」
上から出水、米屋、三輪、烏丸の順番だ。しかし、こいつらは驚きすぎだ。俺だって思春期の男子だし、彼女くらいほしいと思うことだってある。
「そう言うお前らはどうなんだよ?」
俺は気になったので四人に聞き返した。正直、こいつらの恋愛事情に興味が沸いてきた。こいつらだって、三輪や烏丸は結構、モテるんじゃないかと思うし、出水や米屋は戦闘バカの部分を除けば、それなりにいい奴らだと思う。
「俺はいないかな。今はボーダーでバトっている方が楽しいからな」
「国近先輩はどうなんだよ?同じ隊だしよ」
「由宇さんはいい人だけど、付き合おうとは思わないな」
出水はとりあえず誰かと付き合う気はないらしい。
「俺も似た感じだな。女友達は多いけど、その誰かと付き合うことにはならないな」
「確かに米屋は戦っているイメージしかない」
米屋も出水同様に付き合う気はないらしい。てか、戦いが好きな二人が誰かと付き合うのはイメージが浮かばないな。それは俺もか。
「俺もいないな。今はやることがある」
「三輪。お前もか?」
「ああ。だから、誰かと付き合うことはないな」
三輪はネイバーとの戦いに固執しているからな。姉が大規模侵攻の時に亡くなっているから、ネイバーに対しての怨みは誰にも負けていないと思う。
それにこいつは俺と同じでシスコンだからな。姉だけど。それで付き合う気がないのかもしれない。
「俺もです。よく女子から物は貰いますけど」
「烏丸までもか……お前らはいない訳だな」
烏丸までもがいないとは意外だった。もさもさしたイケメンのこいつまでもが彼女がいないなんて、驚きだ。
イケメンだからと言って必ずしも彼女がいるとは、偏見だな。実際に葉山はイケメンだと思うが彼女がいると聞いた事がない。
にしても出水、米屋、三輪、烏丸はそれぞれ、自分の恋愛事情を話したのはいいが、こいつらには誰かと付き合う気があるんだろうか?謎だ。
烏丸はバレンタインデーとかでチョコをよく貰いそうだな。そう言えば、俺は小町と浅葱から毎年貰っていたな。
その後、寝るまでトランプ大会は終わる事はなかった。陽太郎に気を使い静かに始めた。
明日辺りに鶴見と話した方がいいな。早くにしないとアホどもが動く可能性があるからな。