やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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藍羽浅葱③

「……え?」

 

浅葱は俺が何を言っているのか分からないで驚いてた。恐らく俺が『いない』か、適当にはぐらかすと思っていたらしい。

浅葱は俺の返答が、完全に予想外だったらしい。自分が思っていた答えとは違っていたらしくかなり動揺していた。

 

「……ご、ごめん……それって、どういう事?」

 

浅葱は本当に動揺していた。そんなに意外だろうか?まあ、確かに普段の俺の事を知っている浅葱からしたら、それは驚くよな。

 

「だ、だから……俺はお前が好きだって言っている……」

 

俺は自分の心を偽らず、正直な気持ちを言った。恐らく、トイレに行く前に出水に言われた事や、さっき浅葱が自分は好きな人がいると言った事に関係している。

浅葱の好きな人が誰だかは知らないが、それでも言葉にして伝えておきたかった。

 

「それで、お前の答えは……って浅葱、お前……大丈夫か?」

 

「……え?何が?」

 

「いや、何がって……お前、泣いているぞ」

 

俺の指摘で浅葱は自分の頬に触れて、ようやく自分が涙を流してしることに気が付いた。俺としても浅葱が何で涙を流しているのかが分からないでいた。

 

「どこか、痛いのか?浅葱」

 

「ち、違う……ただ、嬉しくて、ごめん……」

 

「そうか。……あれ?嬉しいって事はもしかして、お前の好きな人って……」

 

「うん……私の好きな人は八幡。あんたのことよ」

 

俺は浅葱の言葉を理解するのに20秒近くフリーズしてしまった。

浅葱の好きな人は俺で、俺は浅葱が好きで、おれ?訳が分からなくなって来ているな俺。

これはつまり、あれだ……相思相愛という事だろう。

嬉しい反面、これが現実なのか?と疑ってしまいそうになる。

 

「それじゃあ……俺達は今日から、彼氏彼女でいいのか?」

 

「うん……こちらこそ、よろしくね」

 

俺達は正面に向き合っていたが、なんだか告白した所為か顔を合わせらずにいた。

告白する前より、した後の方が緊張するとか情けない。

先ほどまで泣いていた浅葱の顔は笑っていた。

 

「あ!後、八幡にお願いあるんだけど」

 

「何だよ?改まって、お願いって?」

 

浅葱のお願いとは何だろうと思っていると、とんでもない事を言ってきた。

 

「私だけじゃなくて、他の娘の気持ちにも応えてあげてほしいの」

 

「……は?」

 

俺は浅葱が何を言っているのかが分からないでいた。他の娘の気持ちにも応えろってどういう事なんだ?

 

「えっと、浅葱。それはどういう意味なんだ?」

 

「だから、あんたを好きな娘の気持ちにも応えてほしいってことよ」

 

「それはつまり……浅葱以外の女子が俺に好意を持っている、という事か?」

 

「そういう事よ。だから、私だけじゃなくて、他の娘の気持ちに応えて欲しいのよ。私としては、少し複雑だけど。……それでも対等な条件でいたいから」

 

浅葱は一体、何の話をしているんだ?分からん。

 

「応えろとは、つまり……俺はどうすれば?」

 

「……はぁ~つまり告白されたら、あんたの気持ちをぶつければいいの。分かった?」

 

「……了解。できるだけ善処します」

 

「うん!よろしい!」

 

まさか、浅葱の他の女子も俺に好意を寄せているとは、自分でも驚きだ。中学ではそれほど、モテた事がなかったからな。

しかし、気になるな。他に誰がいるんだ?まあ、その内分かるだろう。

 

「そろそろ、戻った方がいいな。送ろうか?」

 

「大丈夫よ。そんなに遠くはないし、すぐに着くから」

 

「そうか、わかった。また明日な」

 

俺は浅葱と別れて、部屋に戻るために歩き始めた。その足取りは心なしか軽いものだった。

浅葱に告白しただけだと言うのに、気持ちとは言葉にしておくものだなと思った。

 

「あ……戻ったら、あいつらに聞かれるな絶対に」

 

トイレに出ただけなのに時間を掛けすぎたと思う。ここは諦めて話すしかないだろうな。

 

 

 

 

 

俺が部屋に戻ってみると、出水、米屋、三輪、烏丸に寝ていたはずの陽太郎がトランプをしていた。陽太郎は煩すぎて起きたのか。

 

「お!やっと戻ってきたか比企谷。漏らしたんじゃないかと話していたんだが、その様子だと、それはなかったようだな」

 

「高2になって漏らすわけないだろ。そんなの社会的に死んだも同然だ」

 

「それもそうだな」

 

出水は笑っているが、さすがに高校生で漏らす奴はいないだろう。

出水との会話に一段落つくと、次に陽太郎が話し掛けてくる。

 

「はちまん」

 

「どうした?」

 

「はちまんはあの子を助けるのか?」

 

陽太郎がいうあの子とは鶴見のことだろう。そのことはすでに考えてあるから問題ない。むしろ、問題なのは雪ノ下や葉山がどう動くかの方だ。余計なことをしないでほしいけどな。

 

「それは大丈夫だぞ、陽太郎。ちゃんと助けるから任せておけ」

 

「うむ。では、たのむぞ」

 

俺が陽太郎との話しを終わらすと、米屋が話しかけてきた。

 

「ハッチもこっちに来て、トランプしようぜ」

 

「お前らな、陽太郎を起こしたな?寝かせてやれよ。まったく」

 

「それは悪かって。起きちゃったんだししかたないだろ?とりあえずババ抜きやろうぜ」

 

「分かったから、もう少し声を抑えろ」

 

トランプをしていたが一番に陽太郎が寝オチして抜けた。その後もトランプをやり続けていると、不意に出水が話しかけてきた。

 

「そういえば、比企谷。お前、さっきのトイレ異様に長かったな?何かあったのか?」

 

「……何でそう思う?」

 

余計なことに気付きやがってと思ってしまった。ボーダーにいる奴は変に勘が鋭い。

 

「まあ、何となくかな?それに今、間が空いたし、何があったか洗いざらい話したほうがいいぞ」

 

「……仕方ねぇ、分かったよ。……実は浅葱に告白した」

 

俺がそう言ったら、四人は驚愕していた。そんなに驚くことだろうか?確かに俺の性格を知っていれば、まさか俺が告白するとは思わないだろうけど。

 

「……比企谷。それはマジか?」

 

「マジだよ。ここで嘘言ってどうすんだよ」

 

「そうか……それでどうなったんだよ?」

 

「まあ……その、付き合うことになった……」

 

俺が告白のことを話すと四人は驚いていた。

 

「マジなんだな!?まさか比企谷が女子に告白するとはな」

 

「すげーじゃんハッチ!」

 

「比企谷、おめでとうと言っておこう」

 

「比企谷先輩、やりますね」

 

上から出水、米屋、三輪、烏丸の順番だ。しかし、こいつらは驚きすぎだ。俺だって思春期の男子だし、彼女くらいほしいと思うことだってある。

 

「そう言うお前らはどうなんだよ?」

 

俺は気になったので四人に聞き返した。正直、こいつらの恋愛事情に興味が沸いてきた。こいつらだって、三輪や烏丸は結構、モテるんじゃないかと思うし、出水や米屋は戦闘バカの部分を除けば、それなりにいい奴らだと思う。

 

「俺はいないかな。今はボーダーでバトっている方が楽しいからな」

 

「国近先輩はどうなんだよ?同じ隊だしよ」

 

「由宇さんはいい人だけど、付き合おうとは思わないな」

 

出水はとりあえず誰かと付き合う気はないらしい。

 

「俺も似た感じだな。女友達は多いけど、その誰かと付き合うことにはならないな」

 

「確かに米屋は戦っているイメージしかない」

 

米屋も出水同様に付き合う気はないらしい。てか、戦いが好きな二人が誰かと付き合うのはイメージが浮かばないな。それは俺もか。

 

「俺もいないな。今はやることがある」

 

「三輪。お前もか?」

 

「ああ。だから、誰かと付き合うことはないな」

 

三輪はネイバーとの戦いに固執しているからな。姉が大規模侵攻の時に亡くなっているから、ネイバーに対しての怨みは誰にも負けていないと思う。

それにこいつは俺と同じでシスコンだからな。姉だけど。それで付き合う気がないのかもしれない。

 

「俺もです。よく女子から物は貰いますけど」

 

「烏丸までもか……お前らはいない訳だな」

 

烏丸までもがいないとは意外だった。もさもさしたイケメンのこいつまでもが彼女がいないなんて、驚きだ。

イケメンだからと言って必ずしも彼女がいるとは、偏見だな。実際に葉山はイケメンだと思うが彼女がいると聞いた事がない。

 

にしても出水、米屋、三輪、烏丸はそれぞれ、自分の恋愛事情を話したのはいいが、こいつらには誰かと付き合う気があるんだろうか?謎だ。

烏丸はバレンタインデーとかでチョコをよく貰いそうだな。そう言えば、俺は小町と浅葱から毎年貰っていたな。

 

その後、寝るまでトランプ大会は終わる事はなかった。陽太郎に気を使い静かに始めた。

明日辺りに鶴見と話した方がいいな。早くにしないとアホどもが動く可能性があるからな。


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