やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷八幡⑧

鶴見の孤立問題を解決するための会議は雪ノ下と三浦の口喧嘩を始めたせいで、浅葱がキレ、それをチャンスに強引にお開きにした。

ボーダー組と総武高組の部屋は別々になっていたので、とりあえず部屋に戻って、浅葱があの二人と喧嘩をすることは無いだろう。

 

そもそも高校生同士で仲良く出来ないのに、小学生同士を仲良くできる訳無いだろうに。葉山はこの問題の本質をまったく理解してない。

しかし、シノンと陽太郎に頼まれたからには、鶴見の事は何とかするつもりだ。そのための案も俺の中で纏まっていた。

考え込んでいると、三輪と烏丸が帰ってきた。しかしバカ二人の姿がどこにもなかった。

 

「三輪。バカ共はどうした?」

 

「風呂で遊んでいる。はぁ……」

 

俺は気になったので三輪に聞いてみると、三輪はそう言いながら溜め息を吐いた。幸せが逃げるぞ。

しかし、風呂で遊ぶとかあのバカ共の頭の中は小学生か?少しは大人になれよ。

 

「静かだな、山って……」

 

「そうですね」

 

俺の言葉に烏丸は短く、そう答えた。バカがいないだけで、こんなにも静かなんだな。

俺達が住んでいる三門市は華やか大都会と言えないが、それでも都会と言っていいだろう。

あそこはネイバーが攻めてくるので、日本一物騒な場所だと言える。

それにしても、山がこれほどまでに静かだとは、思わなかった。普段から山には来る事が無いからな。

静かすぎて、怖くなってきたな……。

 

「まあ、静かなのもいいものだ。落ち着く」

 

「バカ共がいないと余計に、な」

 

三輪の言葉に俺はすぐさまに返した。

しばらくの間、俺は三輪と烏丸と雑談していた。三輪は玉狛嫌いだが、実際には迅さんだけが嫌いなだけであって、他のメンバーは特に嫌いという訳ではない。

その時、ドアが勢いよく開きバカ二人が入って来た。

 

「静かに入れ。陽太郎が寝ているんだぞ!」

 

しかし、俺の言葉が二人に届いてはいなかった。しかも二人の手には水鉄砲が握られていた。互いにそれで撃ちあっていた。

 

「これでも食らっていろ!槍バカ」

 

「させるか!」

 

米屋が撃つ前に出水が撃ち、米屋の髪をかなりビショビショに濡らした。それにしても水鉄砲で遊ぶとか小学生か?頼むからもう少しだけ大人になってくれ。

 

「ざまーみやがれ!」

 

「よくもやりやがったな!」

 

「油断しているからそうなるんだよ!」

 

「んだと、こら!」

 

「だから、静かにしろ!!」

 

俺は二人の頭にゲンコツをお見舞いしたやった。二人は頭を押さえて悶え苦しんでいた。

こいつらは、静かにしていられないのか?陽太郎は寝てるのに。

 

「比企谷。布団の準備でもするか?」

 

「そうだな」

 

俺と三輪、烏丸はバカ二人を放置して布団の準備を始めた。布団の準備が終わった頃に出水が話しかけてきた。

 

「そういえば、比企谷」

 

「ん?何だ、出水」

 

「お前って藍羽のこと、どう思っているんだ?」

 

浅葱?何故、急に浅葱の話になるんだ?

 

「いや、どうっていわれてもな……」

 

「いいから教えろよー」

 

「さっさと吐いた方がいいぞ。比企谷」

 

「それは俺も興味がありますね」

 

米屋はともかく、何故か三輪と烏丸までノリノリで聞いてくる。

いや、米屋は分かる。しかし、三輪や烏丸まで乗ってくるとはな……。お前らってそんなキャラだったけ?

それにしても、浅葱、か……。

どう思ってるかって言われてもな。

とりあえず、思い浮かぶのは幼馴染で美人で自隊のオペレーターって事位か?

それにしても、ボーダーのオペレーターって結構レベルが高いよな。スタイルだっていいしな。

思い浮かぶことは色々とあるが……。

 

「……別にただの幼馴染だ」

 

「ホントにそうか~」

 

出水は俺の事を見て、ニヤニヤしていた。その顔は俺をかなりイライラさせていた。

出水の他に米屋の顔もニヤニヤしていた。三輪と烏丸は笑ってはいないが、内心ではニヤニヤしているに違いない。

そんな事を考えていると、トイレに行きたくなったので、部屋から出ることにした。

 

「すまん。ちょっと、トイレに行ってくるわ」

 

「途中で、漏らすなよ?」

 

「誰が漏らすか!!」

 

出水がからかって来るので俺は靴に履き変えて外に出た。

 

 

 

 

 

トイレを済まして、しばらく空を見上げて外を歩いていると、座るのにちょうどいい丸太があったので、そこに座って夜空を眺める。

 

「やっぱり、すげえな……これは」

 

木の間から見えるのは満点の星空だ。都会ならば、街明かりで絶対に見る事はできない美しさがそこにはあった。これを見れただけでも、いい思い出になるだろう。

俺は星空を見上げながら、浅葱のことを考えていた。

 

物心ついた頃から一緒にいて、父親同士が古い知り合いで、家が近いからよく小町も入れた三人で遊んでいたな。

俺と浅葱の関係とは?幼馴染?自隊のオペレーター?どちらも何故か、しっくりこなかった。

俺にとっての藍羽浅葱とは、一体何だろうか?

考えてみるが、これといった答えは見えてこなかった。これ以上はここに居てもしょうがないから、歩き出そうとした時、近くの茂みが音を立てた。

野性の猪でも出たのだろうか?覚悟を決めて、音のした方を見ようとした時、知った声が聞こえてきた。

 

「……八幡。こんな所で何しているの?」

 

「……あ、浅葱、か。……猪かと思ったぞ」

 

「誰が猪よ!!」

 

「す、すまん……」

 

声がしたので振り返ってみると、そこにいたのは先ほどまで考えていた浅葱だった。

猪が居るのではないかと恐怖してたが、浅葱の姿を見てホッとした。

 

「それで、こんな所で何しているの?」

 

「あ、ああ。少し散歩をしてたんだよ。そう言う浅葱はどうしてこんなところに?」

 

「私も散歩していたのよ。少し寝苦しかったから」

 

確かに夏は寝付きづらいからな。散歩して気分を変えるのはいいことだと思う。

 

「それでさ、隣に座ってもいい?」

 

「……ああ。別に構わないぞ」

 

俺は少し横にズレて、浅葱が座れる場所を空けた。そこに浅葱は座ってくる。肩が触れ合っているが、そんなに緊張はしなかった。幼馴染だからな。

これが余り関わりあわない人だったら、緊張していただろうな。

 

「ホント、星が綺麗ね」

 

「……ホントにな。ここでしか、見れないからな」

 

浅葱は夜空を見ながら、そう呟いたので俺もそれに答えた。

葉山みたいなリア充ならば「君の方が比べるまでもなく、綺麗だよ」とか、口が甘くなるセリフをいいそうだな。だが、俺がそんなセリフを言えば、気持ち悪がられるな。きっと。

 

「そういえば八幡って、好きな人とか、いないわけ?」

 

浅葱からいきなりの問いかけだった。

ここで『いない』と答えようとしたが、何故だか脳裏に浅葱の姿が思い浮んだ。

口を開こうとしたが、脳裏に浮かんだ浅葱の姿が消えず、そのまま思考が停止してしまった。

たった『いない』と答えるだけでいいはずなのに、俺の意志とは反対に、口がまったくといって動かなかった。

 

「私にはいるんだ」

 

俺はその言葉を聞いた瞬間、ドクンと心臓が跳ねて、ズシンと身体が重くなった。

 

「そうなのか……?」

 

「うん。そいつは優しくて、すごく頼りになる奴なのよ」

 

俺も好きな人がいれば、いいなと何度か思ったことがある。もしかして、浅葱が好きなのは俺では?と考えたが、それは無いなと結論付けた。

浅葱は美人で気の利いた奴だ。俺なんかより相応しい奴がいるはずだ。

 

「カッコイイだけど、性格が少しだけ難アリなんだよね。そこも含めて、私は好きなんだけど……」

 

俺は浅葱が好きになった奴が誰か聞きたい衝動に駆られたが、口を閉じてしまった。

ここで聞いたところで、どうにかなる訳でも無いだろうに。

それに聞いて、心の傷を作るよりかは聞かずに、今の関係を維持した方がいいに決まっている。

 

ふと、以前葉山に言ったことを思い出した。

今の関係の維持。それは確かに安心出来るだろうが、それ以上に、ちょっとしたことで簡単に壊れてしまう。

だからこそ、俺は聞かない事にした。

恋なんてくだらない。心に傷を作るだけで、いいことなんて無いとさえ思っていたのに。どうして、こんなにも心がざわつくんだ。

 

「八幡。どうしたの?」

 

浅葱に名前を呼ばれて、一度考えるのを止めることにした。

俺の顔を心配そうに覗きこんでいる浅葱の顔を少し見ただけで、俺の顔は熱くなっていく。

傷付いたっていい、決して叶わない恋だとしてもいい。だけどこの気持ちだけは偽りたくない。

認めるしかなかった。俺、比企谷八幡は…………藍羽浅葱と言う少女に恋しているんだということを。

 

「……浅葱。話があるんだがいいか?」

 

「うん。いいけど、何?」

 

ここで言わないときっと後悔することになるかもしれない。だからこそ、この場でハッキリとさせておかないといけない気がした。

 

「浅葱……俺はお前の事が好きだ」

 

 


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