やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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今回はシノン編です。

では本編をどうぞ。


朝田詩乃①

土曜日。

それは大抵の者にとって休日になる。しかし俺の通う総武高校は違う。

進学校ゆえに土曜日にも授業がある。ただし午前中だけだがそれが終われば部活なりそのまま帰宅する者も大勢いるだろう。俺もその一人だ。

 

夜架の弟の鏡夜を太刀川さんに紹介して弟子入りを果たしてから数日がたった土曜日の昼。

俺は、学校で購買で買ったパンと自販機で買ったマッカンで昼飯を済ました。そして、家に帰る前に俺は一人でデパートにある本屋に寄って新作のラノベをいくつか購入してからしばらくふらついていると私服姿のシノンに出会った。

 

「あ、八幡」

 

「よお、シノン」

 

本部以外でシノンに会うのは任務前に隊のメンバーで食事をする以外では珍しい。とりあえずここで何をしているか聞いてみるかな。

 

「シノンは買い物か?」

 

「うん。新作のゲームをいくつか買った」

 

「さすがはゲーマーシノンだな。ちなみに何を買ったか見ていいか?」

 

「うん。いいよ」

 

シノンは買ったばかりのゲームのパッケージを俺に見せてきた。そして俺はそのゲームのパッケージを見て驚いていた。

何故ならそれには学校の制服を着た少女達が描かれたいたからだ。

 

「……シノンさん?これは俗に言うギャルゲーっていうものでは?」

 

「うん。そうだけど?何か問題あった?」

 

シノンは『え?お前何を言っているの?』って顔をして首を傾げている。そんな顔しないでくれ……俺が何か間違っているような気がしてくるから……。

 

「い、いや。何でもない……」

 

「そう。それで八幡ってこれから暇?」

 

「まあ今日は任務はないし、暇だけど……何かあるのか?」

 

「うん。これからゲーセンにでも行かない?」

 

シノンから誘いとは意外だな。しかしゲーセンか……いいかもな。

 

「いいぞ。ゲーセンなんて久し振りだしな」

 

「分かった。それじゃあ銃ゲーでの協力プレイしたいんだけど……いい?」

 

「ああそれで構わないぞ」

 

俺はシノンと共にゲーセンのある場所まで移動しながら最近のことなどをシノンと話し合った。

その途中で思わぬ人物達に会うとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

「やあヒキタニ君……」

 

「葉山か……」

 

シノンとゲーセンに行く途中で葉山とその連れ達に出会ってしまった。メンバーは戸部に海老名、由比ヶ浜。そして謹慎が解けた三浦の4人が葉山のそばに居た。やはり大和と大岡の二人は居なかった。

由比ヶ浜は俺とは目線すら合わそうとはしなったし、三浦は俺のことを親の仇を見るかのような目つきをしていた。

 

三浦はボーダー本部でのことをまだ根に持っているらしい。元々の原因は自分にあるのにそれを他人の所為にしないと気が収まらないとか……。

何か合っても助ける気すら起こらないな。

 

「こんなところでなんて奇遇だね。ヒキタニ君……」

 

「そうだな葉山。出来れば俺は学校以外でお前らとは会いたくはなかったがな」

 

俺は隠すことなく本音を葉山達に聞かせてやった。葉山は苦虫を潰したような顔をしているし三浦はさらに睨みを強くしてきた。

由比ヶ浜は露骨に視線を下に向けて会話に加わろうとしてこない。

 

「そ、それで君の隣の女性はもしかして彼女なのかな?」

 

周りの空気を強引に変えようとしてシノンの話をする葉山。その言葉を聞いた由比ヶ浜がついに俺と目を合わせた。しかもかなり驚いた顔をしている。

葉山の話の変え方は結構無理があるな。

 

「ヒキタニ君って彼女居たん?知らなかったわー」

 

戸部は相変わらずの喋りだな。イライラする……。

横目でシノンを見てみると何だか嬉しそうにしている。何故に?

 

「あいにくと違う。彼女は俺の隊のメンバーで名前を朝田詩乃って言うんだ。俺達はつき合ってない」

 

俺がはっきりと戸部の言葉を否定するとシノンは不満に満ちた顔でこちらを見ている。そして由比ヶ浜は何故か、ほっとした顔をしていた。何故由比ヶ浜はほっとしているんだ?解せぬ……。

 

「そ、そうなのか?それはすまない」

 

「それじゃあ俺達はもう行くな。じゃあな」

 

俺はすぐさま葉山達から離れたかった。こいつらといると碌なことにならないからだ。

 

「待ってくれ。少しだけ君と話がしたいんだけど……」

 

「俺はしたくはない。じゃあな」

 

「待ってくれ!!ほんの少しでいいから話をさせてくれ!!」

 

葉山は腰を曲げて頭を下げてきた。さすがにこれには答えないといけないよな。

 

「……チッ、わかったよ。少しだけだぞ」

 

「ああ!ありがとう。ヒキタニ君!」

 

未だに俺の苗字を間違えてくる葉山。人の苗字くらい読めるようになれよな。

 

「……八幡。この男殴っていい?」

 

「やめておけ。ボーダー隊員が暴行事件を起こしたとなれば、ただではすまないぞシノン。それに俺は気にしていないからお前も気にするな。いいな?一応隊長命令だ」

 

「……了解」

 

シノンは葉山が俺の苗字を間違えているのに腹を立てて今にも葉山に殴りそうだったが何とか説得して止めることに成功した。が、それでもかなり不機嫌になっている。

とりあえず頭を軽く撫でると顔を少し赤くして機嫌もすこしだけ良くなった。

とりあえず今は葉山との話だな。俺と葉山は少し離れた場所に移動しようとした。

 

「葉山×ヒキタニ。キタァーーーー」

 

急に海老名は叫びながら鼻血を出して三浦に介抱されていた。彼女は腐女子ってヤツなんだな……。できるだけ彼女の近くで男二人になるようなことはしないでおこう。

 

妄想のネタにされかねない。……いや、これ、もうされてるよな。

 

 

 

 

 

「それで話って何だ?できるだけ手短に頼むぞ」

 

「ああ聞きたいのは結衣と何があったかだ」

 

葉山の質問は由比ヶ浜のことだった。そんなことか……。

 

「葉山……由比ヶ浜のことで聞きたいなら直接、本人に聞けばいいだろ。今居るんだし」

 

「それが聞いても『何でもない』の一点張りで駄目なんだ……前に君とどこかに行ったきり、結衣は元気が無いから俺は……」

 

「友達として元気づけたいってことか?葉山」

 

俺の質問に葉山は黙って頷いてきた。俺は喫茶店での由比ヶ浜との話を葉山にするかどうか迷っていた。

 

(あの時の話をこいつに喋れば、葉山は由比ヶ浜を元気付けるために動くかもしれない。だけど、それは面倒事が増えそうな予感がするな……)

 

迷っていたが結局、俺は葉山には話さないことにした。

 

「俺は由比ヶ浜と少し過去話をしただけだ。それ以外は話していない」

 

「……本当にそうなのかい?だったら何で結衣はあんなに……」

 

「それこそ本人に聞けばいいだろ?それともこれ以上グループが壊れるのが嫌か?」

 

「あぁ……俺はあのグループの関係が好きなんだ」

 

葉山としては今の関係維持が最優先らしいが……俺にとってはどうでもいいがな。

 

「そうか。だったら俺に頼るのは間違っているな。仲間内の問題を他人に委ねると碌なことにならないぞ。チェーンメールの時は俺のアドバイスでなんとかなったが、雪ノ下の案をしていたら間違いなくグループは崩壊していたな」

 

「……君の言う通りだよ。俺は彼らとの関係を壊したく……無くしたくはないんだ」

 

葉山の言い方はなんだか過去にも人間関係を壊したことがあるように聞こえてしまう。どちらにしても俺には関係がない。

 

「それでお前はどうする?由比ヶ浜から無理に聞き出すか?俺は何も喋るつもりはない。で、どうする?葉山」

 

葉山は少し考えてから俺を正面から見てから答えをだした。

 

「……俺は、もう二度と壊すわけにはいかないんだ……」

 

葉山は現状維持にするようだ。これで少なくとも俺が面倒事を解決する必要はないようだ。

 

「そうか……まあそうなるよな。だったら俺はこれで行かせてもらう。じゃあな葉山」

 

「ま、待ってくれ。最後に一つだけ答えてくれ」

 

「……いい加減にしてほしんだけどな」

 

「君は奉仕部に行ってないようだけど。それはどうしてなんだ?もしかして、それが結衣の元気の無いことに関係しているんじゃないのか?」

 

葉山の考えは検討外れもいいところだと思う。

 

「それは違うな葉山。そもそも俺は奉仕部部員ではない。そうだな、言うなれば俺は仮入部していたってところか?それに入部届を出してないしな。それにあそこには俺のことを罵倒してくる『人物達』がいるからな」

 

俺の答えが意外だったのか葉山はあ然としていた。それもそうだよな、『人物達』と俺が言ったんだからな。

奉仕部は俺を除けば雪ノ下、由比ヶ浜の二人だけだ。人物達と言う事は二人して俺のことを罵倒していたことになるのだから。

誰が好き好んで自分を罵倒してくる人間達がいる場所に行かなくてはならない。

ボーダーで誰かとランク戦していた方が全然いい。

 

俺は葉山と別れた後、シノンとすぐに合流してからゲーセンに向かった。

 

 

 

 

 

 

「大丈夫なの?八幡」

 

シノンは俺のことを気にしてくれているようだ。やはり俺の隊の仲間はいいヤツだ。

 

「そんなに心配するなシノン。今後、俺はあいつらとはあまり関わるつもりはない。……でも心配してくれて、サンキューなシノン」

 

俺はシノンの頭を先ほどと同じように撫でる。シノンは少しだけ嬉しそうに笑っていた。なんだか猫のような感じだな……。

その後、シノンとゲーセンに行って銃ゲーを二人で協力してやったり、シノンの勧めで初めてプリクラをしてみた。二人でラクガキなどして笑った。

葉山達と会って気分は最悪だったが、シノンのおかげでなかなか楽しむことができた。シノンは、また来たいと言っていたので夏休みでも行こうと約束をした。

 

 

 

 

 

俺はこの時、思いもしなった。今後も葉山達と関わっていくことになるとは……。

俺は知る由もなかった。

 




次回は雪菜編です。

できるだけ早めに更新して千葉村編に入りたいです。

では次回をお楽しみに。

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