やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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今回は浅葱との買い物回です。

これから一話ずつ比企谷隊のメンバーの話をしていくつもりです。

では本編をどうぞ。


藍羽浅葱①

日曜日。

それは俺が一週間の間でもっとも好きな曜日だ。

学校がなく、クラスメイトと会わずに済む。俺は朝からのアニメを見るのが大好きだ。

最近はプリキュアを見るのが防衛任務が無い日曜の朝の過ごし方だ。

 

だがそんな日曜の時間を奪われた。ある人物の所為で……。

 

「あっ!これ前に欲しかったヤツだ。こんな所にあるなんて、さすがは掘り出しものがわんさかあるわね。……これも欲しかったヤツだ」

 

俺の日曜という至福の時間を奪った人物は今現在、買い物をしている。欲しいものを選んでいる。

そして俺は荷物持ちをさせられるのだろうと予想している。

 

「ん?どうしたの八幡?」

 

「……なんでもない」

 

そう俺を買い物の荷物持ちとしてここまで連れて来たのは幼馴染兼比企谷隊のオペレーター、藍羽浅葱だ。

ボーダーでも屈指の実力を持っており、学校の成績は学年次席になるほど優秀な女子だ。

 

「やっぱりアキバは品揃いが違うわね。来て正解だったわ」

 

浅葱の言う通りここは千葉三門市ではなく、東京秋葉原……アキバだ。

何故、俺がアキバに浅葱と来ているのかというと前に頼んだ川崎の件が関わっている。

あの時、浅葱にはカメラなどの記録を消してもらい、親父さんには履歴書などをもみ消すのに力を借りて、そのお礼として俺の出来る範囲でいう事を聞くと言ったら買い物に付き合えとのことだった。

 

しかしと思う……。

 

(今時のJKがアキバでPCパーツを買い漁っているこの光景は……なんか違うよな……?)

 

「何よ、なんか文句であるの?」

 

「まさか。慎んで荷物持ちをやらせていただきますよ……」

 

「なら良し。じゃあ次行くわよ!」

 

(まだ行くのかよ……まぁ俺が頼んだことのお礼だからな。文句なんて言える立場じゃないけど……)

 

その後も浅葱が欲しがっていたPCのパーツを買う為、店を巡り、次々と買っていった。そこでふと疑問に思ったので浅葱に聞いてみた。

 

「そう言えば何でアキバまで来てPCパーツを買ってるんだ?」

 

「実はオペレーターで使っているPCの処理速度が遅いのよ。だから処理速度上げよと思ってね。そのための買い物って訳」

 

「なるほどな。それでアキバか……」

 

「まぁ後で八幡が喜びそうな場所に行ってあげるから楽しみにしててよ」

 

浅葱はそう言うがアキバで俺が楽しめる場所ってどこだ?……本屋か?しかしと思う。

 

(本屋だったら別にアキバじゃなくてもいいはずだし……マジでどこだ?)

 

浅葱のPCパーツを粗方買った後、近くのラーメン店に入りそこで昼食をたべた。腹ごなしに散歩をしてから本屋に立ち寄った。

だが、本屋が浅葱が言う楽しい場所ではなかった。

 

(本屋が違うなら浅葱が言っているのはどこなんだ?)

 

浅葱の案内で来た場所に俺は驚きを隠せ無かった。

 

「着いたよ八幡」

 

「……なるほど、メイドカフェね」

 

浅葱が俺を連れて来たかった場所はなんとメイドカフェだった。訳が分からなくなった。

浅葱と共に店に入ってメイド服の店員の元気な声が俺達を向かえた。

 

「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様。どうぞ、此方の席に」

 

店員に案内されて席に着いてメニュー表を確認してから注文をして店を見渡してみた。始めて入ったが中々いいデザインだと思っていると浅葱が話しかけてきた。

 

「それで、どう?」

 

「何が……?」

 

「だからメイドカフェに来た感想とか……無いの?」

 

「……感想と言われても特にないな」

 

「そうなの?でも男の人ってメイドが好きでしょ?」

 

「全ての男が好きとは限らないだろ……」

 

「そう言うものなの?…………参考にしようと思ったのに……」

 

浅葱は少しだけガッカリした様子だった。最後の方の言葉が聞こえずらかったが……。何て言ったんだ?

 

「それにしても浅葱はメイドにでも興味があるのか?」

 

「……まぁそんなところかな?」

 

俺の質問に浅葱は言葉を濁していた。どうしたんだ、こいつ?

 

「それよりさ八幡。私ってメイド服、似合うと思う?」

 

「俺はどっちかと言うとファミレスとかのウェイトレスの方が似合うと思うぞ」

 

「どうしてウェイトレスなのよ」

 

「まぁなんとなくだな」

 

「ふ~ん……ウェイトレスね……そう、分かった」

 

浅葱は自分一人で納得している様子なので口を挟まないようにした。

 

「八幡はクラスで今はどうなの?」

 

浅葱とはクラスが違うので興味があるようなのでそれに俺は答えた。

 

「別にボッチなのは変わりない。あ、でも二人ほど話し掛けてくれる奴はいるな」

 

「それって誰?」

 

「一人目は戸塚で二人目は川崎だよ。戸塚はテニスの練習をよく手伝っているし、川崎は例の件以降よく俺に話し掛けてくれるな」

 

「その二人がね……二人だけでもよかったじゃない。少なくともボッチとは言えないでしょ。今の八幡を」

 

「言われて見れば、そうだな」

 

言われて気がつくとはボッチ失格だ……。

そうしていると注文したものが来たので一旦話を終えて食べる事にした。俺が注文したのはチョコパフェで浅葱がパンケーキだ。

俺がパフェを食べていると浅葱から視線を感じたので浅葱を見てみるとすごい目をこちらに向けて来ていた。

 

「えっと……浅葱?何か言いたいなら言っていいぞ……」

 

「じゃあそれ一口ちょうだい」

 

浅葱もパフェが食べたいのか……そこでパフェの器を浅葱に近付けたが食べる気配がまったく無かった。

 

「食べないのか?」

 

「八幡が食べさせてよ」

 

「……えっ、マジで?」

 

浅葱は首を縦に振り、口を開けて待っていた。

 

(これはあ~んをするってことだよな?しかも間接キスをすることになるんだぞ。その辺り分かっているのか浅葱は?)

 

「……川崎さんの件」

 

「うっ……どうぞ……」

 

俺はスプーンで一口掬い浅葱の口にパフェを運んだ。

 

「うん……おいしい。それじゃあ八幡も。はい、あ~ん」

 

浅葱はそう言ってパンケーキをフォークできれいにカットして俺に差し出してくる。ここは食べないと後が怖いな……。

俺は諦めて食べる事にした。

 

「それじゃあ、いただきます。………パンケーキってあんまり食べたこと無かったが中々いけるな」

 

「そうでしょ。食べ終わったら帰るわよ」

 

「買い物はもう済んだのか?」

 

「えぇ欲しい物は全部買えたから問題なし」

 

食事を終えメイドカフェを出た俺達はそのまま駅に向かい、千葉まで帰ることにした。

しばらく電車に揺られているとぽすんと俺の肩に浅葱が頭を乗せてきた。

 

「浅葱?」

 

「……すぅ……すぅ」

 

浅葱は完全に寝ていた。そう言えばと思う。

 

(このところ忙しかったっけ……家の用事にボーダーでの任務も頑張っているし、少しくらい寝かせておくか……)

 

『三門市~三門市~』

電車のアナウンスが聞こえてきたので浅葱を起こそうとした。

 

「浅葱……着いたぞ。お~い浅葱?まだ寝ているのか?仕方ないおんぶして行くか……」

 

寝ている浅葱を背中に背負い駅を出てとりあえず近くのベンチに座らしてからある人に電話をした。

 

『もしもし。久し振りね八幡君』

 

「どうも。ご無沙汰しています。菫さん」

 

藍羽菫(あいばすみれ)。

浅葱の母親で比企谷家とも昔から親しくしてくれている人だ。

第一次大規模侵攻の時、俺の親父が死んだ時に色々とお世話になった。

 

『本当に久し振りね。最後に話したのはいつだったかしら?』

 

「正月にお邪魔した時だったはずです」

 

『もうそんなに経つのね。それで今日はどうして電話してきたの?浅葱と買い物をするとかで秋葉原に行ったんでしょ』

 

「はい、行きましたよ。でも浅葱のヤツが電車で寝ちゃって迎えに来て欲しいんですよ」

 

『そうなの?わかった……あ、ごめんなさい。今家に車が無いの。全部整備に出していて。ごめんだけど、家まで送ってくれないかしら?』

 

車を全部整備に出したとかありえないだろ……でも仕方が無いな。送るか……。

 

「分かりました。家まで送ります」

 

『お願いね。ウチの子』

 

菫さんとの電話を終えて再び浅葱を背中に背負って歩き出す。

しばらくしてから浅葱は起きた。

 

「ん……うん?……あれ?……ここ、どこ……?」

 

浅葱は寝起きで状況が分かっていないらしい。

 

「おう、起きたか?」

 

「えっ、八幡!?どうして……それにどこよ。ここ?」

 

「今、お前の家に向かっている途中だ」

 

「でも、家に電話して車で迎えに来てもらえば……お母さんが居るはずだし……」

 

「あぁそれな……家の車、全部整備に出しているらしい。だから迎えに来るのは無理なんだとよ」

 

「……それはいくらなんでもありえないでしょ」

 

「それから余り動かないでくれ。落としかねない」

 

「えっ?それって……なんで今私、八幡におんぶされているのよ!!」

 

「だから暴れるなって言っているだろ」

 

浅葱はやっと自分がおんぶされていることに気がついた。気付くの遅すぎだ……。

少ししてから落ち着いた浅葱は俺の首を抱きしめるように腕を回してきた。

 

「その……ごめん……」

 

「何がだよ」

 

浅葱のいきなりの謝罪は何に対してなのかさっぱり分からん。

 

「それでさ八幡に聞きたい事があるんだけど、いい?」

 

「答えられることなら、どうぞ」

 

「私の胸を八幡の背中に押し付けている。この状態って結構興奮しない?」

 

「お前はいきなり何を言っているんだ!!」

 

浅葱の問いについ怒鳴って返してしまった。

 

「だって……さっきから押し付けているのに全然反応しないから。実は女に興味がないものかと思ってさ?」

 

「……俺は別にホモでもゲイでも無いんだけど……それに今胸を押し付けない出ください。精神的には結構いっぱいいっぱいなんで……余り動かないでくれると嬉しいんだけど……」

 

「へぇ~そうなんだ~」

 

「あの、浅葱さん。そのニヤニヤ顔やめてもらってもいいですか?なんか凄く怖いんだけど……」

 

俺の今の現状を浅葱に言った瞬間から顔をニヤニヤさせてきた。まるでいたずらっ子が悪巧みを考えてそうな顔をしている。

 

「冗談よ。そんなに怖がらないでよ。あ、ここで降ろしいいよ」

 

「いいのか?まだ家まで距離があるが?」

 

「うん、少し歩いて帰りたいからさ……ここでいいよ」

 

「そうか?じゃあ降ろすぞ」

 

俺は浅葱を降ろしてから持っていた荷物を浅葱に渡した。

 

「ほれ、お前が買ったもの。全部ちゃんとあるか?」

 

「……うん。全部あるよ。それじゃあ、また明日学校でね八幡」

 

「おう。また明日」

 

 

 

 

俺は今日の浅葱との買い物のことを思い出していた。休日は防衛任務やソロ戦の約束が無い限り家でゴロゴロして過ごすのが好きだがたまには少し遠出してみるのも悪くは無いな。

今年の春頃から結構ストレスに悩まされていたからな……特に雪ノ下と平塚先生の二人だが……。

まぁ奉仕部を抜けた今の俺にはあいつらがどうなろうと関係ないけど……これ以上俺を怒らすことをすれば全力で潰しに行くが。

 

そんなことを考えながら家に着いてすぐに小町に今日のことを隅々まで聞かれて精神的にかなり疲れたのはまた別の話だ。

 




次回は夜架回にするつもりです。

その際にオリキャラ(弟)を登場させるつもりです。

では次回をお楽しみに。

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