やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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今回は雪ノ下とあの人物が出てきます。

では本編をどうぞ。


雪ノ下雪乃③

由比ヶ浜との話し合いからしばらくの間、教室の空気もとい葉山グループの活気は以前のものとは比べられないくらい低いものだった。

さらに葉山グループ所属だった、大和と大岡の二人は三浦の謹慎から葉山とは距離を置くようになっていた。

現在の葉山グループのメンバーは葉山、戸部、三浦、海老名、由比ヶ浜の五人になっている。崩壊はしていながこのままだといずれ壊れて無くなるな。

まぁ俺の知ったことではないが。

 

 

 

 

日曜日の深夜から朝方の防衛任務を終えて、自宅へと帰ってきた。

今日は毎年恒例のイベントがある。三門市の大型デパートである、ワンニャンーショーだ。

これには毎年、俺と小町と浅葱の三人で参加している。家で飼っているネコのカマクラをこのイベントで買って以来、毎年行っている。

 

 

 

「ただいま~。今、帰ったぞ~」

 

「……八幡。あんた、何親父風に帰ったぞって言ってんのよ……」

 

「仕方ないだろ……。今朝方トリオン兵が大量に出て来て、疲れたんだからさ……」

 

防衛任務が終わる三十分ほど前に大量のトリオン兵が現れた。俺達なら問題なく処理することが出来るけど、あまりにも数が多かった。

数で押せば勝てると思っているのか?相手は……。

 

浅葱と一緒に比企谷家に帰ると、出迎えてくれたのは妹の小町だった。

 

「お帰り~浅葱お義姉ちゃん~!」

 

小町は浅葱の胸へとダイブした。浅葱は何とかそれを受け止めることに成功した。

 

「おっと……久し振りだね小町。元気にしてた?」

 

「それはモチロン!小町は元気ですよ。浅葱お義姉ちゃん!!」

 

「……いつから、浅葱はお前の姉になった?」

 

「もう、お兄ちゃん。浅葱お義姉ちゃんは家族も同然だよ。これだからごみいちゃんは……」

 

「小町、ごみと兄を一緒にするな。マジで心が折れるから……」

 

「それにこの胸を好き放題揉むことだってできるんだよ?最高じゃん!!」

 

小町は言葉通りに浅葱の胸を揉んでいた。浅葱はいきなりのことで抵抗することを忘れているようだった。

 

「ちょっと、小町。どこ、さわ、って……こら、手つきが、ん、やら、しい、わよ……だから、やめて……」

 

小町は浅葱の胸をこれでもかと揉んでいた。そろそろやばいな……。止めておくか。

 

「小町。そろそろ浅葱の顔を見たほうがいいぞ……」

 

「……へっ?!……あ!」

 

小町が見た浅葱の顔は文字通り鬼の顔をしていた。

 

「…小町!いい加減に……しろ!!」

 

そう言って浅葱は小町の頭を殴って引き離した。殴られた小町は頭を抑えて玄関前をのたうち回った。

 

「痛った~……酷いよ浅葱お義姉ちゃん!殴ることないじゃないですか!おかげでたんこぶが出来ちゃったよ~」

 

「自業自得よ!!いきなり人の胸を触ってくるな。ビックリするでしょ!!」

 

「う~……ごめんなさい……。それよりお兄ちゃん!準備して早く行こうよ?」

 

「しれっと話題を逸らすな……。後、復活早いな……まぁ早く行くか?」

 

 

 

 

 

会場があるデパートまではバスで移動するがその間、俺と浅葱はバスで熟睡していた。さすがに作戦室で仮眠を取っただけでは駄目だった……。

 

「おっ~!この子、毛並みが綺麗だね~。お兄ちゃんもそう思うでしょ?」

 

「そうだな。でも俺的にはこっちがいいかもな。浅葱はどれがいいと思う?」

 

「私はあっちの子かな?」

 

ワンニャンショーの会場に来て、まずは犬のコーナーから見ている。ここでは犬や猫の販売はモチロンのことながらふれあいコーナーも充実している。

 

そんな中、会場で一人だけで犬に話し掛けている人物を見つけてしまった。

その人物とは平塚先生だ。

 

「聞いてくれよ~。最近な、ある生徒の所為で私の仕事量が一気に増えた上に減給になったんだよ……。お前だけだよ……話を聞いてくれて私を励ましてくれるのは……」

 

なんだか、見てはいけいないものを見た気がした。記憶から消しておこう……。

 

「ねぇ八幡。あそこに居るのって、平塚先生だよね?」

 

「浅葱、この世には見てはいけないものがあるんだ……。それに平塚先生は仕事の疲れできっと病んでいるから犬に話し掛けているんだ。そっとして置こう……」

 

「……そうね。そっとして置くに限るね……」

 

平塚先生。早くいい人見つけて結婚した方がいいですよ?でないと行き遅れになってしまいますよ?

 

そして俺はまたしても見つけたくはない人物を見つけてしまった。その人物は雪ノ下だ。

なにやら、案内板を見て迷わず非常階段の方に行ってしまった。このまま、行ってくれと、俺の願いも虚しく打ち砕かれた……。小町によって。

 

「あれ?ねぇお兄ちゃん。あの人って雪乃さんじゃないかな?雪乃さ~ん!!」

 

小町の大声に反応して雪ノ下が俺達の方を見た。その瞬間に雪ノ下の表情は酷く歪んでいった。

俺をまるで親の仇だと思わんばかりに睨んでいる。これには小町でさえも動揺していた。

 

「お、お兄ちゃん……なんだか、雪乃さんの顔。とても怖い……お兄ちゃん、何か雪乃さんにしたの?」

 

「速攻で兄を疑うな。……まぁたしかに雪ノ下があんな顔を向けてくるのはある意味、俺の所為かもしれんけど」

 

「何やったの?お兄ちゃん……」

 

「少し前に総武でボーダーの職場見学があったんだけど。その時に雪ノ下が戦いを挑んできたから、ボコボコにしてやった」

 

「もう!何やってんのさ、お兄ちゃん」

 

「でもね小町。職場見学の際に八幡を罵倒してきたのよ、雪ノ下は」

 

浅葱が小町に軽く説明をした。先に仕掛けてきたのは向こうだし俺は悪くない。

 

「お~い、雪乃ちゃ~ん。どこいるの~」

 

その時雪ノ下を探している人物の声が聞こえてきた。

 

「あっ!やっと見つけたよ雪乃ちゃん。もう、どこ行っていたの?あんまり勝手なことをしないでよ」

 

「姉さん……」

 

驚いた。雪ノ下には姉が居たのか?結構美人だと思うな……。

その時、新たに別の人物の声をかけながら雪ノ下姉に近付いてきた。

 

「陽乃。妹さん見つかった?」

 

「うん。ごめんね~望。探すの手伝ってもらって」

 

「気にしないで。……あら、比企谷君じゃないの」

 

「どうも、加古さん……」

 

現れた人物はなんと加古さんだった。なんでここに居るんだ?この人。

 

「望の知り合いの子?」

 

「えぇ私と同じボーダー隊員よ。それに浅葱ちゃん、久し振りね」

 

「お久し振りです、加古さん」

 

「……でもそっちの子は知らないわ。名前を聞いてもいいかしら?」

 

「初めまして!いつも愚兄がお世話になっています。妹の比企谷小町っていいます」

 

浅葱の挨拶に続いて小町が自己紹介をした。それとな小町。俺のことを愚兄と言うな!

 

「そう、妹さんなのね。少し似ているわね、流石は兄妹」

 

「お兄ちゃん!この人、すごくセレブな感じが伝わってくるよ。こんな人と知り合いなんて、すごいね!!」

 

「小町。加古さんは一般人だからな……」

 

「えっ?!どういう事?それ……」

 

「加古さんは普通の家庭、普通の両親から生まれた人なんだよ。だから俺達と同じ一般人だと言うこと。だからセレブではない」

 

「そうなんだ……。じゃあ隣の人は?」

 

「そっちは雪ノ下建設のお嬢様だよ。だからそっちは本物のセレブだな」

 

「ほへぇ~これが本物のセレブか……。なんか凄いね」

 

小町よ……一体何が凄いのかあやふやだな……。

 

「望。立ち話もなんだし、どこか飲食店にでも入ってお昼でも食べながらでも話さない?」

 

「そうね……。比企谷君達はこの後、大丈夫?」

 

「俺は構いませんけど。……小町と浅葱はどうだ?」

 

「小町は全然いいよ」

 

「私も構わないよ」

 

 

 

 

雪ノ下姉の提案でお昼ご飯を食べながらの自己紹介を始めることになってしまった。未だに雪ノ下は不機嫌なオーラ全開にしている。嫌なら帰ればいいのに……。

 

飲食店に入った俺達はテーブルにそれぞれ座った。

通路から小町、俺、浅葱で、反対の席に加古さん、雪ノ下姉、雪ノ下妹の順番で座っている。

 

「それじゃあ、改めて自己紹介を。私は雪ノ下陽乃。隣に座っている雪乃ちゃんのお姉ちゃんです。よろしくね」

 

「私は加古望。陽乃の友人でボーダーでA級部隊の隊長を務めているわ。よろしくね」

 

「はい!小町はお兄ちゃんの妹で比企谷小町って言います。よろしくお願いします!」

 

小町よ一体、何をお願いするのだ……。なんだか不安しかないな……。

ここは俺も言ったほうがいいのかもしれない。

 

「小町の兄の比企谷八幡です。加古さんと同じくA級部隊の隊長をしています」

 

「私は八幡の幼馴染の藍羽浅葱と言います。ボーダーで比企谷隊のオペレーターをしています」

 

俺に続き浅葱も自己紹介したのに雪ノ下(妹)は一言も喋ってはいない。黙ったまま微動だにしない。

 

「もう!雪乃ちゃん。自己紹介しなきゃだめだよ?ほら、自己紹介」

 

姉の言葉にすら沈黙で返す始末。よくこれで完璧な人間だと言えたものだ……。

そんな沈黙を破ったのは小町だった。

 

「姉妹で買い物なんて仲、良いんですね?」

 

小町の言葉に雪ノ下妹はギロリと言わんばかりの睨みを利かせてきた。気に入らないことがあればすぐに睨み付けることしかしないとか小学生かよ……。

 

「そうじゃないのよ。これが」

 

「どういう事ですか?」

 

雪ノ下姉の言葉に疑問を持った小町が聞いてみた。

 

「最近雪乃ちゃん、学校で問題を起こしてお母さんに酷く怒られたの。それで外出の際には家の者がついて行かないと外にすら出られなくなったのよ」

 

(マジか!?それはザマァ見ろ。普段から高圧的な態度をしているからこうなる)

 

「それで今日はワンニャンショーがあるけど、さすがに誰かが付きっきりだと楽しめないから私と一緒に出掛けることを提案したの。少しでも気が楽になればと思ってね。それで私が望と買い物をして居る間だけ離れてもいいよって言ったの。それで君達はどうしてここに?」

 

「小町達は毎年このイベントに来ているんです。家で飼っているネコをここで買ってから毎年来ているんです」

 

「へぇ~そうなんだ。あ、もうこんな時間だ。私達はそろそろ帰らないといけないからこれで失礼するね。行くよ雪乃ちゃん。またね望」

 

雪ノ下姉は妹を連れて店を後にした。残った俺達は加古さんと少しだけ話をして帰ることにした。

 

「それじゃあ私もこの後任務があるからそろそろ行くわね。浅葱ちゃん今度新作の炒飯を教えて上げるからいらっしゃい。小町ちゃんもまたね」

 

「はい。加古さん楽しみにしています」

 

「はい!またです。加古さん!」

 

加古さんも店を出たので俺たちも出ることにした。最後に加古さんが浅葱に言っていたのは悪い冗談だと思いたい……。

 

(新作か……今度は一体、どんなミスマッチな炒飯が出来るのか。今から不安しかないな……)

 

 

 

 

 

そして数日後に加古さん直伝の新作の炒飯を浅葱は比企谷隊のメンバーに振舞った。

結果は言わずとも分かっていた。激マズだと……。

ちなみに名前は『鮭とイチゴジャムのとろろ炒飯』だ。

一口食べた後、ぱたりと記憶が飛んで、いつの間にか医務室で寝ていた。隣では太刀川さんも寝ていて、かなりうなされていた。どうやら太刀川さんは加古さんの炒飯を食べたらしい。

 

(太刀川さん。ご愁傷様です。お互い長生きしたいですね……)

 

俺は太刀川さんにエールを送った後、再び眠った。




次回は浅葱との買い物(デート?)回にするつもりです。

では次回をお楽しみに。

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