やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷隊②

5月1日 夜 警戒区域 南区域

 

明日はゴールデンウィークだ。待ちに待ったゴールデンウィークだ。

大事なことなので二回言った。

 

社畜根性で防衛任務を普段通りにこなせば、明日は学校がない。

実にいい響きだ。

家でごろごろしたり、溜め込んだ日朝アニメを消化する絶好の日、とわくわくする考えを巡らせながらふと空を見上げる。

 

「しかしこれは、明日は雨だな……」

そこには一面に雨雲が広がっていた。

 

『みんな、門が開くよ』

そんな折りに、通信が入ってきた。

 

「了解だ。浅葱、敵の数は?」

と比企谷隊オペレーターの浅葱に確認した。

 

 

『モールモッドが21体、バムスターが7体バンダーが9体だよ』

一瞬、返ってきた内容に思考が止まる。

(今日は、トリオン兵のバーゲンセールかよ!)

内心で悪態を吐きながらも指示を出す。

 

「夜架と雪菜はバムスターとバンダーを頼む。モールモッドは、俺とシノンで処理する」

 

「「「了解!!」」」三人の返事を聞いて、俺はシノンと共にモールモッドを相手にするべく、奴等が現れた場所へと目を向ける。

 

「トマホーク」

メテオラ+バイパーの合成弾を作り、それを3×3×3の27分割して一度上に向けて放ち、それを一気に下にいるモールモッドに落とす。

このトマホークの当て方は、隊員の間で『空爆トマホーク』と称されている。

 

これでモールモッドの半分は粉々になったので、シノンの狙撃と俺の弧月とバイパーで残りのモールモッドを手早く片付けた。

それとほぼ同時に夜架と雪菜もトリオン兵をすべて片付けていた。

 

「浅葱、トリオン兵の反応はどうだ?」

出てきたトリオン兵は倒したと思うが、取り残しがいるかもしれないの、そう思い浅葱に確認を頼む。

 

『問題なし、全て倒してあるわ。トリオン兵の反応はないわ』

その通信を聞いて少し気が緩んだ時だった。

 

「八幡。本部からあんたに通信が来ているわよ。繋ぐわね」

 

(本部から? 一体なんの通信だ)

疑問に思っている間に、通信が繋がる。

 

「比企谷隊長、密航者を捕縛せよ」

 

「――――はぁ!?」

 

俺は本部からの通信に困惑していた。

(密航者? 捕縛? その言葉から連想すれば、誰かが近界(ネイバーフッド)にボーダーの許可なく行こうとしてしるのか?)

が、考えても纏まるものでもない、と詳しく聞くことにした。

 

「それはどういうことですか? 詳しい説明をお願いします」

いったいどこの誰がそんな無謀なことやろうとしているんだ?

 

「余り時間がないので、簡潔に説明する。二宮隊鳩原隊員が一般人にトリガーを横流ししていることが判明した。そこで彼女の身柄を確保しようとしたところ、その付近で四つのトリガーの起動を確認し、一つが鳩原隊員のものと一致した。なので、至急彼女の身柄を抑える必要がある。これは重大な隊務違反に相当する。急いで指定座標に向かってくれ」

 

「了解! ただちに向かいます。お前ら、ここ任せてるぞ。いいか?」

 

「はい。主様、お気をつけて」

 

「無茶するんじゃないよ、隊長」

 

「油断はしないと思いますけど、気をつけてください、先輩」

と、夜架とシノンと雪菜からそれぞれ言われた。

 

「あぁ、じゃあ頼んだぞ!」

俺はそう短く返事をした後、グラスホッパーを使い指定座標に向かった跳んだ。

 

 

 

しかし、そこにはもう誰一人としていなかった。そう本部に報告しようと思った時、三人の影が見えた。

 

「……どうやら一足遅かったようだな、比企谷」

 

「はい。そのようですね、風間さん」

 

風間蒼也

 

A級3位 風間隊隊長で、ボーダー№2 アタッカーの大学生の先輩だ。ただ、この人他の大学生と比べると身長が低い。だが小型かつ高性能という言葉がよく似合う人だ。

 

「僕達より早く着いたくせに取り逃がしたんですか? だめな先輩ですね」

 

このくそ生意気な態度で毒を吐いてくるのは、風間隊アタッカーの菊地原士郎。

強化聴覚のサイドエフェクトを持つ男で、風間隊がステルス戦闘のスペシャリストと言われるのは、こいつのおかげと言えた。

 

「おい、菊地原! ……すみません、比企谷先輩」

 

歌川遼

 

風間隊 オールラウンダーでよく出来た後輩だ。過去に何度か飯を奢った事のある人物だ。

菊地原の吐いた毒の処理をよくしている。

 

「……ほぉ。言うじゃないか、菊地原。俺より遅いくせに随分とデカイことが言えるな。遅い分際で」

 

「…………チッ」

 

「聴こえているからな、今の舌打ち。後でズタズタに切り裂くぞ」

と菊地原に喧嘩を売っていると、風間さんが割り込んで来て。

 

「それで比企谷。密航者は全員ゲートの向こうに行ったのか?」

 

「おそらくは。足跡を見つけました。大きさや数から見て最低でも四人はいた事になります。一人は鳩原さんで、残りが不明ですね。靴の大きさから成人男性が少なくとも二人はいたかもしれません」

 

「……そうか。本部への報告はこっちでやっておくから、お前は防衛任務に戻っていいぞ」

 

「そうですか、ありがとうございます。後のことお願いします」

風間さんのその好意に甘えることにして、礼をして俺は防衛地点に戻った。

 

「よぉ、お前ら。ご苦労様」

 

「主様、そちらは終わったのですか?」

 

「あぁ。風間隊が来て、後のことは任せた」

 

「そう。隊長……密航者ってやっぱり、鳩原さんもいたの?」

 

「いや、わからない。俺が現地に着いた時には、もう誰もいなかったからな」

 

「先輩はどう見ますか? 鳩原さんや一緒にゲートの向こうに行った人達のこと」

 

「さぁな、情報が少ないからなんとも言えないな」

 

『八幡はさ、ゲートの向こうに行こうとは思わないの?』

 

「それは今のところはないな。親父の仇は取りたいが、親父を殺した国がどこにあるのかさえ、分かっていないからな。それに小町やお袋がいるしな」

 

『そっか……。まぁ、そうだよね。さて、防衛任務も後少しだししっかりとね、みんな』

 

「「「「了解」」」」

気になる事ではあったが、考えたところで答えが出るわけでもない。だから、意識を切り替えて俺達は任務に集中するのだった。

 

 


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