やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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玉狛第一

職場見学が無事に終わった……と言っていいのかわからないが、とりあえずは終わったと思う。

職場見学があった週の日曜日の午後三時すぎ、俺はスーパーに買い物に来ていた。

この後、向かう場所にいる人物との約束を果たすために。

 

「雪菜、他に買うものってあったけ?」

 

「後はお肉だけだと思いますよ?」

 

「夜架って、福神漬けを入れたりするの?」

 

「いえ。私は入れないですね」

 

浅葱と雪菜が買うものを確認し、シノンと夜架は福神漬けの話をしている。

 

今、比企谷隊のメンバー全員でスーパーに居る。

何故、このメンバーで買い物をしているかというと、ある人物との約束を果たすためにカレーの材料を買っている。

 

 

「買うものは後、肉だな。それを買って向かうとするか」

 

「何肉を買うの?八幡」

 

「鶏肉だな。チキンカレーにでもしようかなと思ってるし」

 

「比企谷先輩のチキンカレーですか。隠し味にリンゴを入れるんですよね?」

 

「そうだ。そうすると味が良くなる」

 

メンバーで会話をしつつ、お目当ての品を買い、目的の場所に向かって歩き出した。

 

目的の場所は玉狛支部。

ボーダー最強の部隊がいて、なおかつS級の迅さんも所属している支部だ。

陽太郎との約束で近い内に玉狛に行き、カレーを作ると約束した。

 

玉狛支部の建物は川の上にある。

昔は水の水質を調べる施設だったのをボーダーが買い取り支部に改造したそうだ。

チャイムを鳴らして人が出て来るのを待った。

 

「おっ!いらっしゃ~い、ハチ君。それに皆も」

 

「おう。邪魔するぞ、宇佐美」

 

宇佐美栞。玉狛第一のオペレーター、メガネ女子。

知的にメガネを光らせる名オペレーターと言えるが、『メガネ人口』と言う、謎の人口を増大させることに熱意を燃やしている。

そして玉狛に転属前は風間隊のオペレーターをやっていた。

 

「おっ?おおっ!おおおっ!?ついにハチ君がメガネを掛けているだと!?」

 

そう、宇佐美の言う通り俺は今、メガネを掛けている。

その理由は俺の濁った目を隠すため掛けているのだが……。

 

「やっぱり、変か?俺がメガネを掛けているの……」

 

「うんん。よく似合っているよ、それ。浅葱と選んだかいがあるってもんだね!」

 

「お前と選んだのね……だから、このデザインなんだな……」

 

宇佐美と同じデザインのメガネなのはそう言う理由か。

 

「他の人達は?」

 

「ボスとレイジさん、それに小南は外出中で烏丸君はバイトでもう少ししたら来るかな?迅さんと陽太郎はお昼寝中だよ」

 

(迅さん、お子様とお昼寝とかいいご身分な事で、まぁでも起きていたら碌な事をしないからなあの人)

 

少し考えていると、後ろから声を掛けられた。

 

「いらしてたんですか、比企谷先輩」

 

「おう。邪魔しているぞ烏丸」

 

烏丸京介。玉狛第一オールラウンダー。

宇佐美からはもさもさしたイケメンと言われてる。

どんな状況にも臨機応変に対応できるクールガイで家が貧乏で大家族なのでバイトをいくつか掛け持ちしている家族想いの出来る兄だ。ちなみに五人兄弟だそうだ。

 

「バイトはもう終わったのか?烏丸」

 

「はい。今日はそんなに忙しくなかったので、今日は比企谷先輩のカレーなんですよね?楽しみです」

 

「そうか。ちなみにチキンカレーを作るつもりだ。期待しておけ」

 

烏丸と話し終わってからキッチンに立ち、食材の下ごしらえを始めた。浅葱は宇佐美と共に訓練用のトリオン兵の動きの設定を作っている。シノンは起きてきた迅さんと陽太郎と一緒にゲームをしていて、夜架と雪菜は俺のカレー作りの手伝いをしてくれてる。カレーが出来上がりそうな頃に残りのメンバーが帰ってきた。

 

「おっ!今夜はカレーか?」

 

「そうですよ。林藤さん」

 

林藤匠。玉狛支部支部長。

ボーダー派閥の一つ『ネイバーにもいい奴がいるから仲良くしていこう』の筆頭に居る人で旧ボーダー創設時から居る古株だ。

エンジニアとしての顔を持ち、開発室長と共にランク戦のシステムを構築した。

 

「何か手伝った方がいいか?」

 

「レイジさん。もう少しで出来ますので大丈夫ですよ」

 

木崎レイジ。玉狛第一隊長でパーフェクトオールラウンダー。

アタッカー、ガンナー、スナイパーの三つ全てでマスター級の腕前でボーダーで唯一無二の隊員。荒船先輩の目標にしている人だ。

全般的な戦闘から料理までこなす出来る男で、宇佐美からは落ち着いた筋肉と言われている。

烏丸の師匠で、レイガストとスラスターを使った拳撃で戦うという変わったスタイルをしている。

 

「何で比企谷がここにいるのよ?」

 

「陽太郎との約束でな。カレーを作りにここにいるんだよ、小南」

 

小南桐絵。玉狛第一アタッカー。

双月と呼ばれる斧を使いどんな敵でも一撃粉砕する玉狛第一のエースだ。

素直すぎる性格でよく烏丸に嘘を吐かれ騙されている。

すぐにバレる嘘にすら、騙されてしまう。マジでドンマイ。

アタッカーランキングは上位に入るほどの実力の持ち主で旧ボーダー時代から居る古株と言っていい人物だ。

 

「そうなの?じゃあ何であんただけじゃなく、浅葱達まで居るのよ?」

 

「小南先輩は知らないんですか?比企谷先輩の部隊、比企谷隊は今日から玉狛に転属するからここにいるんですよ」

 

「えっ!?そうなの?迅は知っていたの?」

 

「そんなの当たり前だろ」

 

「じゃあ、宇佐美は?」

 

「もちろん知っているよ」

 

「じゃあ、レイジさんも?」

 

「あぁ、知っているぞ。比企谷隊は玉狛に転属しない事をな」

 

「えっ?!……それって、どういうこと?……とりまる!!」

 

「小南先輩、さっきのは嘘です」

 

「嘘?どこからが……」

 

「もちろん。全部です」

 

「………よくも騙したわねぇぇぇ!!比企谷ぁぁぁ!!!」

 

小南は烏丸ではなく俺の方に飛びかかってきた。何故、俺なんだ?

 

「小南。肉なしカレーになってもいいのか?それでもいいなら飛びかかって来い」

 

「うっ!!……食べた後、覚えておきなさいよ!!」

 

俺の脅しが効いて小南は大人しく椅子に座ってカレーができるのを待っていた。

 

「はぁ~烏丸。お前な、飯を作っている時は嘘を言うなよ。危険だろ、小南が」

 

「すいません、いつも癖で。それに反応が面白いんですよね。小南先輩は」

 

「それに関しては同感だ。でも、ある意味あいつの将来が心配だな……」

 

などと、話しているとカレーは出来上がった。うん。いい出来だ。

 

「男のくせになんでこんなにも料理が上手いのよ」と浅葱が

 

「さすがは主様ですね。とても美味しいです」と夜架が

 

「美味しいですね!比企谷先輩のカレー」と雪菜が

 

「うん。確かに美味しいわね八幡のカレー」とシノンが

 

「うむ。やはり、はちまんのカレーはうまいな」と陽太郎が

 

「確かに美味しいよね~ハチ君のカレー」と宇佐美が

 

「美味しいですよ、比企谷先輩」と烏丸が

 

「腕を上げたな、比企谷」とレイジさんが

 

「ホント、美味しくなったな。比企谷」と林藤さんが

 

「やはり、比企谷のカレーはうまいな」と迅さんが

 

「……なんでここまで美味しいのよ。比企谷のカレーは」と小南が

 

それぞれ、絶賛してくれた。小南はカレーくらいしかできないからな。よほど悔しいらしい。

 

「そうですか、それはよかった。烏丸、余ったら少し持って帰っていいぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「そうだ。比企谷達はこれから少し時間いいか?」

 

烏丸と話していると林藤さんが俺達に尋ねてきた。

 

「まぁ今日は防衛任務も終わりましたので、時間はありますけど」

 

「だったら、ここに居る人間でスーパー銭湯でも行かないか?」

 

「俺は別に構いませんけど……。お前らはどうだ?」

 

俺が隊のメンバーに聞いてみた。

 

「私は特に問題ないよ」

 

「私の方も構いません」

 

「私も別に構わない」

 

「私も今日は遅くなると言ってあるので大丈夫です」

 

上から浅葱と夜架とシノンと雪菜は言ってきた。

 

「よし、少し腹を落ち着かせたらみんなで行くか」

 

林藤さんの提案でスーパー銭湯に行く事が決定した。

まぁ男同士での銭湯の光景なんて、誰得だよって思うな。風呂から上がってみると雪菜が妙に落ち込んでいたので理由を聞いてみた。

 

「どうした、雪菜。なんだか元気がないようだけど?」

 

「……実はちょっと自信がなくなって……」

 

「なんの自信が?」

 

「……胸です……」

 

「胸?」

 

「はい……。浅葱先輩は大きいのは分かっていたんですけど。夜架先輩やシノン先輩も大きかったんです。お二人は着痩せしていたんですね……。勝てないと思いました」

 

「そうか……。まぁ元気だせ……」

 

俺は雪菜をフォローしながら頭を撫でた。そうしていると雪菜の顔が風呂に入ってしばらく経つのに赤くなり出してきた。

 

「雪菜。大丈夫か?顔が赤くなっているけど?」

 

「へっ?!だ、大丈夫、です。だから、その……もう少しだけ撫でてもらっても、いいですか?」

 

「まぁ……それくらいなら」

 

俺は雪菜の頭を撫でた。小町にも昔よくこうして撫でたっけ……。それにしてもサラサラした髪だな。手入れをしっかりとしている証拠だな。

しかし、雪菜の頭を撫でていると後ろの方から殺気を感じた。おそらく、振り返れば鬼の形相をしていると思う。浅葱とシノンが……。

 

そんなこんなで風呂から上がった俺達は林藤さんの奢りでジュースを飲む事になった。

俺と浅葱とシノンと小南と宇佐美がコーヒー牛乳で夜架と雪菜とレイジさんが普通の牛乳で林藤さんと迅さんと烏丸と陽太郎がフルーツ牛乳を飲む事になった。

そこで俺は小南にちょっとした嘘を吐いてみた。

 

「小南、知っているか?銭湯などで飲む、正しい牛乳の飲み方を」

 

「何よ、急に。そんなの知っているに決まっているじゃない。左手を腰に添えて斜め45度の角度で一気に飲むことでしょ?もちろん、知っているわ」

 

「さすがだな、小南。だが、知っていたか?その正しい飲み方をしなかった場合に牛乳が炭酸飲料に変わってしまうことを!!」

 

「えっ?!そうなの?初めて知ったわ、それ。とりまる、あんたは知ってたの?」

 

「もちろんですよ。知らなかったんですか?小南先輩」

 

「じゃあ、宇佐美は?」

 

「ちゃんと知ってたよ」

 

「迅。あんたはどうなの?」

 

「そんなの当たり前だろ」

 

「じゃあ、ボスは知っていたの?」

 

「おう。もちろんだぜ」

 

「ボスも知ってたなんて……。レイジさんも?」

 

「あぁもちろん知っているぞ。牛乳がどんなに頑張っても炭酸飲料には成れないことをな」

 

「………えっ?!どういう事?」

 

俺の嘘に小南が首を傾げているので、バラしますか。

 

「小南。さっきのは全部、嘘だ」

 

「嘘?全部?……また!!騙したなぁぁぁー!!!比企谷ぁぁぁー」

 

「まぁ待て、小南。実は俺も騙された側なんだわ」

 

「……どういう事よ?それは……」

 

「だから、お前が騙されないように教えておいたんだよ。この事を」

 

「そうなの?あんたも騙されたなんて……騙した奴は誰よ!!探し出して、もう二度と嘘が言えない身体にしてやるわ!!」

 

小南は完全にやる気だな……いや、殺る気だな。……黙っていたほうがいいな。

 

俺はスーパー銭湯の帰りにボーダーの職場見学で戦った雪ノ下との一戦について迅さんに聞いてみた。

 

「迅さん。どうして、俺と雪ノ下を戦わせる必要が有ったんですか?」

 

「あぁそれな。彼女がそう遠くない内にボーダーに入るかも知れないからだ」

 

「雪ノ下がボーダー?なんでそんなことに?」

 

「まだ、モヤが掛かっていてハッキリとは視えないけど。近い将来に何かがこっちの世界に来るんだよ。それでボーダー隊員は多い方がいいだろ?それに彼女はあの雪ノ下建設のお嬢さんだ。だから彼女の親がボーダーのスポンサーになってくれた方が後々、都合がいいんだよ」

 

「入ってくると思うんですか?あいつが入るとは思えないんですけど」

 

「まぁ今年は入れないけど。来年に入ってくるから、その時になってみないとな」

 

「うげぇー!ホントですか?まぁ入ってきたとしても、返り討ちにしてやりますけど」

 

仮に雪ノ下がボーダーに入隊して俺に挑んできたとしても、入りたての奴じゃ俺に勝てないけどな。でも、必要以上に俺への対抗心を持っているからな。

へし折って、身の程を分からせてやる。

玉狛で作ったカレーを家に持ち帰り、お袋に食べさせてあげた。

高評価だったのは、嬉しかった。




ようやく、改訂版もここまで来ました!!

これからは新章編に入ります。サブタイトルは奉仕部崩壊編(仮)を投稿していきます。

一話目は由比ヶ浜、二話目に雪ノ下、三話以降に比企谷隊のメンバーの話をしていくつもりです。

更新頑張っていくのでよろしくお願いします。

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