やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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川崎沙希①

総武高校もテスト期間に入り、テストに向けて追い込みを始めている生徒が何人もいた。

俺は普段からしっかりと勉強をしているので追い込む必要はない。

俺が強制的に入部させられた奉仕部も、テスト期間はやはり空き教室のカギを貸してもらえるはずも無く、結局のところ休みになった。

 

まぁ俺としては、そのその方がいい。毒舌で性格最悪の雪ノ下と会わずに済むし、

アホの子で罵倒しかしてこない由比ヶ浜とも会わずに済む。

なので、俺は浅葱と夜架と共に本屋に足を伸ばし久し振りにラノベを買いあさった。

A級に昇格して固定給料を貰うようになって、今まで以上にお金が入るようになった。

 

 

今日は深夜からの防衛任務があるので外で食べようと思い、小町に連絡したところ相談があるとのことで、サイゼで待ち合わせをすることになった。

その途中でシノンと雪菜と合流してサイゼに向かった。夜の防衛任務の時はほとんど隊のメンバーと小町で外食してから向かうことにしている。

 

店内に入り席を探してしると、ある席にいる三人組が目に入って来た。

戸塚、雪ノ下、由比ヶ浜の三人だった。

雪ノ下が問題を出していた。

 

「では次の問題。普段からよくあることを何と言う?」

 

「あ、わかった。答えは日常根性だね」

 

由比ヶ浜は答えたが、日頃から何を頑張っているんだ?

 

「答えは、日常茶飯事だ。これくらい、間違えるなよ」

 

「え?!あ、ヒッキー!何でここにいるの?」

 

由比ヶ浜の質問の後に向かい側に座っていた戸塚が挨拶してきた。

 

「あ、八幡。こんばんは。八幡も勉強会に呼ばれたの?」

 

「比企谷君を呼んだ覚えはないわ。どうしてここにいるのかしら?」

 

雪ノ下は俺をきつく睨みつけた。

 

「たとえ、呼ばれていてもお前や由比ヶ浜とは、一緒に勉強しねぇよ。どうせ、由比ヶ浜に教えて時間が経過するのがオチだしな」

 

「それじゃ。早くここから消えてくれないかしら?貴方の知り合いだと勘違いされたくないから」

 

雪ノ下は相変わらずだった。戸塚ですら苦笑していた。

 

「言われずとも、そうするさ。人と待ち合わせているからな」

 

「あら、孤独体質の貴方が人と待ち合わせている事なんて有り得ないわ。そのつまらない嘘を早くやめなさい」

 

一体、雪ノ下は俺の何を知っているんだ?

 

「……いいかげんにしてください。貴女は比企谷先輩の何を知って、そのような事が言えるのですか?」

 

「そうよね。そこまで言うのだから、貴女は八幡のことを色々と知っているのね?知らずにそんなことを言うのだったら人として最低ね」

 

今まで黙っていた雪菜とシノンが、雪ノ下に食いかかった。

できれば、最後まで静かなままが良かったんだが仕方がない。

 

「比企谷君。そちらの女性達は一体、誰なのかしら?」

 

完全に上から目線だな、雪ノ下は……。面倒になりそうだったので説明した。

 

「こっちにいるのはバイトで同じ班にいる、朝田詩乃と姫柊雪菜。……シノン、雪菜。そっちにいる可愛いのが戸塚彩加で、団子髪のが由比ヶ浜。それで、黒髪が雪ノ下。以上」

 

俺が説明すると雪ノ下が疑惑の目を向け、由比ヶ浜が叫んできた。

 

「ちょっと、ヒッキー!!何でさいちゃんは名前まで言うのにあたしやゆきのんは苗字だけなの!!」

 

「何でって、俺が知っている下の名前は戸塚だけだし」

 

「目が腐ってきたと思ったら、次は脳までも腐ってきたようね。どう見ても、姫柊さんは中学生。バイトが出来る年齢ではないわ」

 

「お前知らないのか?最近はそんなこともないんだよ。もっと世間のことを知ったらどうだ?箱入りお嬢様?」

 

俺の皮肉を込めたセリフを雪ノ下に送ったら、さらにきつく睨んできた。

睨むしかしてこないなら、最初から相手にしてくるなよな。

その時、後ろから妹の小町の声が聞こえてきた。

 

「あ、お兄ちゃん。やっと見つけたよ。あ、雪菜ちゃん。こんばんは」

 

「お、小町。やっと来たか。……後ろの男子は一体誰なんだ?」

 

小町の後ろにいる男子について聞いてみた。

 

「こっちにいるのは川崎大志君。同じ塾に通っている子でね。今日はお姉さんのことで相談されて、お兄ちゃんにも協力してほいんだ」

 

「もう、頼れるのはお兄さんしかいないんです。どうか、姉ちゃんのこと、お願いします」

 

頭を下げてお願いしてきたが、俺が気になったのは別のことだった。

 

「お前に、お兄さんと呼ばれる筋合いはない。次に俺のことをお兄さんと呼んで見ろ。死ぬほど後悔させてやる」

 

「……何を頑固親父みたいなことを言っているの」

 

俺の言葉に雪ノ下が呆れていた。俺の義弟のことは死活問題だろ。

 

「ところで、お兄ちゃん。この人達、誰?」

 

小町がテーブルに座っている三人に視線を向けた。

 

「そうね……。自己紹介がまだだったわね。初めまして、私は雪ノ下雪乃。奉仕部部長をしているわ。どうぞ、よろしく」

 

「は、初めまして。わ、私は由比ヶ浜結衣って言います。よろしくね……」

 

「僕は、戸塚彩加です。八幡とはクラスメートです」

 

三人が自己紹介していった。由比ヶ浜だけなぜか、いつもの元気がなかったのは気のせいか?

 

「お兄ちゃん!三人ともすごく綺麗で可愛いね!」

 

「……小町。戸塚は、女じゃなくて男だぞ」

 

「……お兄ちゃん。何、言っているの?そんなことある訳ないじゃん。こんなにも可愛いんだしさ。これで男はないよね、雪菜ちゃん、シノンさん」

 

「そうですね。男ではないと思います。すごく綺麗でちょっと嫉妬してしまいます」

 

「そうよね。結構、肌とか白くて綺麗だし……」

 

小町と雪菜、シノンが揃って戸塚を女だと勘違いしている。

 

「えっと……僕、男です。よく、間違えられるけど……」

 

戸塚の言葉を聞いた三人は心底驚いていた。確かに、初見だと戸塚は女に見えてしまうよな。

 

「それで、相談と言うのは小町でじゃなくて、そっちの川崎大志でいいんだな?なら早く話して小町の前から失せろ」

 

「もう、お兄ちゃん。大志君とは『ただのお友達』だよ。塾が同じだけだってば」

 

小町は、お友達の部分だけを敢えて強調して言っている。それ、決まり文句だな。貴方とは恋人関係にはなりません。と、言っているようなものだな。少しだけ哀れに思えてくる。ドンマイ川崎大志。

 

「とりあえず、どこか席に座るか……。話はそれからだ」

 

「……待ちなさい、比企谷君」

 

「何だよ雪ノ下……。お前らは勉強を頑張れよ」

 

「彼のお姉さんは総武の生徒。だから、私にも話を聞かせなさい」

 

俺はこの時、面倒臭いと思っていた。総武の生徒だから自分にも話を聞かせろだと?相変わらず上からだな……。しかしここでヘタに断るとさらに面倒なことになりそうだったので、俺は雪ノ下達の同席を許してしまった。

そこから川崎大志が説明しだした。

 

「俺の姉の名前が川崎沙希っていいます。実は最近、やたら帰りが遅いんです」

 

「川崎さんってあたしと同じクラスだよ。少し、目つきが怖いけど……」

 

由比ヶ浜が説明してきた。たしか、バーで働いていたな……。

 

「遅いって、何時頃に帰ってくるんだよ。お前の姉は」

 

俺は川崎の姉の帰りが何時か聞いた。

 

「朝の五時ごろです」

 

「朝かよ。お前の姉、何かヤバイ仕事でもしているのか?朝帰りは不味いだろ。両親は何か言わないのか?」

 

俺の質問に大志は顔を下に向けて答えてきた。

 

「ウチは両親が共働きで、姉弟も多いので強く言えないんです。姉に言っても、関係ないの一点張りで、もうお手上げなんです」

 

(こいつは、本気で姉のことを心配しているんだな)

 

俺が考えていると雪ノ下が大志に質問しだした。

 

「お姉さんの帰りが遅くなったのはいつ頃からしか?」

 

「えっと、二年になってから帰りが遅くなりだしたと思います。それで俺、心配なんです!」

 

「……二年になってから、つまり比企谷君と同じクラスになってからね」

 

「なるほど。つまりは、俺が学校をやめたら川崎は元通りになる。と、そう言うことだな?それで直らなかったら、とんだ恥だな」

 

俺がそこまで言うと雪ノ下は俺を睨んできた。

 

「大志は真剣に相談しているんだ。つまらない事を言うならもっとマシな案をだしたらどうなんだ?これで成績優秀な雪ノ下雪乃とは呆れて、笑えるな」

 

俺の皮肉が効いたのか、雪ノ下は下唇を強く噛んでいた。

 

(よほど、悔しいと見えるな。バカな奴。)

 

俺は内心笑っていた。

 

「話は大体は理解した。だが、何でそんなに焦っているんだ?」

 

「それは昨日、姉のバイト先だというところから電話がありまして。エンジェル・何とかって言う店からで。エンジェルですよ、聞くからにやばそうな感じですよね!」

 

「それは、お前の思い過ごしだ。そもそもエンジェルだけで判断するには、情報が少ないだろ。……まぁ、わかった。お前の姉がどうして朝帰りをしているか原因を突き止めればいいわけだ」

 

「何とかしてくれるんですか?お兄さん!!」

 

「……だから、お兄さんと呼ぶなと言ったよなと俺は。ただし無事に解決できたら二度と小町に近付くな、いいな」

 

「もう、お兄ちゃん。大志君は『ただのお友達』だってば。でも、小町の事を心配してくれる、お兄ちゃんは小町的にポイント高いよ」

 

「はいはい、高いな。……すまないお前ら、俺は少し遅れるかもしれないから」

 

「わかったわよ。でも、無理はしないでよ」

 

「主様、あまり無理をしないように」

 

「まぁ八幡なら、なんとかしてくれると思うけど、無理せずに」

 

「はい。でも、比企谷先輩もお節介ですね。直接関係がない人のことを気に掛けるなんて。でも、頑張ってください」

 

俺は、浅葱、夜架、シノン、雪菜の応援を受けて、川崎をどう説得するか考えた。

こうして、俺は川崎大志のお願いを小町経由で聞く羽目になった。でも、川崎沙希のバイト先は分かっているので今晩にでも行って見るか。

 


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