やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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葉山隼人①

今日も学校に登校する時間になってしまった。はぁ~だるい。最近、学校で嫌な視線を感じる時がある。恐らく、葉山グループの誰かだと思う。テニスの一件で相当堪えたはずなのに。しつこいにも程がある。

おそらく、由比ヶ浜か、三浦のどちらかだろうな……。

 

まぁ、それは置いておくとして自転通の後ろに乗っているマイ天使の小町が話を振ってきた。

 

「お兄ちゃん!小町が乗っている時に事故に遭わないでよ。小町まだ病院のお世話になりたくないから」

 

「それなら、後ろに乗らなきゃいいだけだろ。それに俺一人の時は事故に遭ってもいいってことか?今なら『お兄ちゃん。大好き』と言って後ろから抱き付けば、許してもいいぞ」

 

「はぁ~ホント。お兄ちゃんはシスコンだね。皆さんは好きになる人、間違えたんじゃないかな?でも今のは小町的にお兄ちゃんの愛を感じるからポイント高いよ」

 

何そのポイント。今どのくらい貯まっているの?

 

(それにしてもあの事故からもう一年以上経つのか。時間の流れは早いものだな)

って何を爺臭いことを考えているんだ俺は……。

 

去年の入学式当日の朝。俺は新生活に少しだけわくわくして、いつもより早く家を出てしまった。その途中で散歩中の犬が道路に飛び出してしまい、車に轢かれそうになったので、とっさに犬を抱えて車の上をジャンプして、それこそハリウッド映画のような避け方をしたのだが、避けた車の後ろから来ていた車を避けられず轢かれてしまった。

そしてそのまま病院に入院してしまい、約1ヶ月近くも学校を休んでしまった。虚しいボッチライフを送る事になると思っていた。

 

入院中に来たのは小町や浅葱、夜架、シノン、雪菜など比企谷隊のメンバーの他に米屋と三輪を始め、色んな人がお見舞いに来てくれた。

お見舞いに来てくれた人物の中には知らない人もいた。俺を轢いた車の持ち主の顧問弁護士だった。

 

後から知ったが、俺を轢いた車の持ち主はあの雪ノ下建設だった。乗っていたのは娘だったが、事が公になると面倒なことになるので黙っていてくれと弁護士の人に言われた。

 

その代わりに入院費や車の修理費は全額、向こうが持ってくれると言ってきた。

まぁ俺としては入院費や車の修繕費などを持ってもらっては文句も言えない。そもそも事故のことを誰かに言ったりもしない。

 

 

 

「そういえば。お菓子の人とは会った?」

 

「お菓子って何だよ。俺、知らないんだけど?」

 

「お兄ちゃんが助けた犬の飼い主だよ。いいお菓子を持って来てくれたんだよ?」

 

「おい、それ俺食べて無いんだけど?どういうことかな、小町ちゃん?」

 

「えーっと……ごめんね!お兄ちゃん。大好き」

 

俺の怒りを含んだ言葉に小町は俺の背中に笑顔で抱き付いて来た。

 

「くっ……可愛いから許す。だからもっと抱き付いてくるんだ小町!」

 

「はぁ~これだからお兄ちゃんは……。でもお菓子の人も総武って言ってたし学校でお礼を言ってたからさ。……あ、もう学校だ。じゃあね、お兄ちゃん」

 

小町は自転車から降りて学校の中に消えていった。

 

しかし助けた犬の飼い主も同じ学校とはな。でも、誰だ?今までお礼を言われてはいない。もしかして忘れているのか?まぁいいか。今更、事故を蒸し返すことをしようとは思わないしな。

 

 

 

放課後、奉仕部で由比ヶ浜が職場見学のことを聞いてきた。

 

「ヒッキーとあいあいは職場見学、どこに決めたの?」

 

「まぁ俺は無難に出版社とかだな。……もしくは組んでいる人に合わせるかだな」

 

「私は組んでいる人がボーダーに行きたいからボーダーよ」

 

「へぇーヒッキーはそうなんだ。なんか意外だね。あいあいはボーダーか……。ボーダー人気あるからね。ゆきのんはどうなの?」

 

「そうね。私も似た感じかしら。他の人に合わせるかもしれないわ」

 

雪ノ下はそう言うが自分の気に入らない場所だったら絶対に他の人を罵倒してそうだな。

職場見学の話をしていると部屋にノックの音が響いた。

 

 

コンコン

 

 

「どうぞ」

 

「すまない。ここが奉仕部でいいのかな?」

 

雪ノ下が短く入室を促すと入って来た人物……葉山に顔を歪めた。

 

「いやー、テスト前は部活をなかなか抜け出せないんだ。試験中の部活は休みだから、こなしておきたいメニューがあって……それで悪いんだがお願いがあるんだけど……」

 

「能書きはいいわ。早く用件を言ってもらえないかしら葉山隼人君?」

 

入って来た葉山に雪ノ下は完全に貴方を嫌っていますオーラ全開だな。そんなんで依頼をこなせると思っているのか?こいつは……。

 

「あぁ実はこれのことなんだけど……」

葉山は自分のスマホをを見せてきた。その途端、由比ヶ浜は顔を顰める。俺も浅葱も携帯を見るとある人物達に対する悪口が書かれていた。

 

『戸部はカラーギャングの仲間とゲーセンで西校狩り』

『大和は三股している最低の屑野郎』

『大岡はラフプレーで相手校のエース潰し』

 

ようは、チェーンメールか。由比ヶ浜がこの間言っていたのはこれだな。

 

「最近送られるようになって、それからクラスの雰囲気が悪くなっているんだ。それに俺の友人の悪いことを言われるのは腹が立つからな」

 

葉山は分かっていない。姿無き悪意は恐ろしい。嫉妬や憎悪を向ける相手がいないんじゃ曖昧の感情だ。

 

「だから止めたいんだ。あ、でも犯人を捜したいんじゃないんだ。丸く……誰も傷付かない方法を知りたいんだ。頼めるかな?」

 

はぁ~葉山は馬鹿だな。誰も傷付かない方法が本当にあると思っているのか?

 

「つまり事態の収拾を図ればいいのよね?」

 

「ああ、そうだね。出来るかな?」

 

「では、犯人を捜しましょう」

 

「うん。それで……え?なんでそうなるんだい?」

 

「チェーンメール。あれは人の尊厳を踏みにじる最低の行為よ。自分は顔も名前も出さすに誹謗中傷の限りを尽くす。悪意が拡散するのが悪意とは限らないのがまたタチが悪いのよ。だから、大元を根絶やしにしない限り効果はないわ。ソースは私ね」

 

「実体験かよ……」

 

俺は呆れて言葉が出ない。

 

「とにかく、そんな最低な事をする人間は確実に滅ぼすべきよ。私が犯人を捜して、一言言うわ。その後の事は貴方の裁量に任せるわ。それで構わないかしら?」

 

「……ああ、それでかまわないよ」

 

雪ノ下の勢いに押されて葉山は渋々了承した。

 

「それでそのメールが来るようになったのはいつ頃かしら?」

 

「確か、先週だったかな?そうだよな結衣」

 

「うん。先週から始まったと思う」

 

「先週から……その時にクラスで何かなかったかしら?」

 

「いや、特にそれと言って無かったと思うよ。そうだよな、結衣?」

 

「うん、無いかな?……あ、職場見学のグループ分けがあったよ」

 

「あ!私分かったかも。こういうイベントのグループ分けは後の関係がナイーブになる人がいるから……」

 

由比ヶ浜はそう言うが、正直、俺には分からない世界だ。俺は誰と組んでも後でボッチなるしな。浅葱は別クラスだし。

 

この依頼、また面倒なことになりそうで心配だ。

そもそも、この依頼は奉仕部に頼み来ることか?俺は葉山が何かを隠しているような気がしてならない。それに嫌な予感しかしない。

 


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