やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷八幡③

戸塚のテニス強化依頼から数週間。俺のクラスは前のような騒がしさがあった。

三浦の復活と職場見学のことが話題になっている所為でもある。しかし三浦は以前の元気はなかった。よほど応えたらしい。

 

そして俺は今現在、(独神暴力教師)の平塚先生に呼ばれて職員室に来ている。

平塚先生は俺の職場見学の希望用紙を見て溜め息を漏らしていた。

 

「はぁ~比企谷。これはどういうことだ?なぜ、職場見学の用紙を白紙で出した?」

 

「いまいち、どこかに行こうと思いませんし。それに大学卒業後はバイト先に就職しようと思うので。だったら、行く必要ないと思っただけです」

 

「はぁ~まったく比企谷。君は奉仕部に入って何か影響はなかったのか?」

 

「あるんだとしたら、悪い方向にだと思いますよ」

 

「それは、どういうことだ?」

 

「そのままの意味ですよ。雪ノ下は俺の性格を直すといいながら、罵倒暴言でこちらを傷付けているだけ、それで性格が直ると思っているんですか?生憎と俺はMではないんで、ここ最近ストレスが溜まっているんですよ」

 

「そうか……。君から見た雪ノ下はどんな感じだ」

 

「自分の意見が正論だと思い込んでいる、世間知らずの箱入り娘ですかね?しかも自分の考えを意地でも変えない辺り、たちが悪いです」

 

「そうか。しかし彼女は優秀な人間なんだが。それに世間知らずでは無いと思うし、現実主義者なだけだと思うのだが?」

 

「現実主義者?そんな事はないですよ。あいつほど現実が見えてない奴を初めて見ました。何で、平塚先生はそこまで雪ノ下を気に掛けるんですか?」

 

「彼女は優秀な人間だ。それは周りから浮いてしまう。だから他人との繋がりの大切さを知って欲しいのだ」

 

平塚先生はそう言うが俺は絶対に無理だと思う。

 

「とにかく、用紙の書き直しだ。それと職場見学は三人一組だ。決めておくように」

 

 

 

 

 

平塚先生の説教から解放された俺は、奉仕部に向かっていた。部屋に入ると、由比ヶ浜はおらず雪ノ下がいつも通りに読書をしていた。

読書をしていた雪ノ下が俺に気が付いた。

 

「会わなかったの?」

 

「誰に?」

 

「……そう。なら、いいわ」

 

雪ノ下は勝手に納得した。俺に何の説明もしないのかよ。気になるだろ。

 

俺は前から気になっていた事を雪ノ下に質問してみた。

 

「なぁ、雪ノ下は奉仕部で何がしたいんだ?」

 

「そうね。まだ説明してなかったわね。私は昔から可愛かったら、よく周りからチョッカイをされてね。私が持っていた物がよく盗まれたわ。そんな陰湿な事しか出来ない人達に失望してね。だから決めたのよ。世界ごと人の価値観を変えて理不尽なんて起こらない世界にする。奉仕部はそのための第一歩と言ったところかしら。まぁ、ヒキガエル君には難しすぎて理解できないでしょうけど」

 

雪ノ下は長ったらしい説明と共に最後に罵倒してきた。平塚先生、こいつはやはり世間なんて知らない箱入り娘ですよ。と考えていると部室の扉が勢いよく開き、由比ヶ浜が入って来た。

 

「あー!やっと見つけた!どこにいたの?捜し回ったんだからね。それに聞いて回ったら『比企谷って、誰?』ってみんな言うから大変だったんだからね」

 

元気が有り余っているのか?五月蝿い奴。

 

「探しに行っていたのよ、由比ヶ浜さんが」

 

「その倒置法はいらないだろ。俺は平塚先生に呼び出されてたんだよ。それに二人で探せばもっと早かったのにな?」

 

俺が言った途端、睨み付けてくる雪ノ下。睨むくらいなら、手伝ってやればいいのに。

 

「何で俺を探す必要があるんだよ。俺がどこにいようと俺の勝手だろうに」

 

俺の言葉に由比ヶ浜は黙って涙目になるし、雪ノ下は睨んでくるのでとりあえず謝罪しておいた。

 

「すまん。いいすぎた」

 

「だ、だったらケータイの番号、教えて。また探しに行くの大変だしさ」

 

「赤外線で送るぞ。受け取れ」

 

「うん。ヒッキーのメアドゲット!……やった」

 

小さい声で言っているが俺のメアドでどんだけ喜んでいるんだ?このバカは。

 

「次は私から送るね」

 

由比ヶ浜のメアドを受け取って、それからはいつも通り雪ノ下と俺は読書を由比ヶ浜はスマホいじりをしていた。浅葱は他の女子隊員と女子会をしているし、夜架は本部でソロランク戦をしている。

スマホをいじっていた由比ヶ浜が顔を顰めた。

 

「どうしたの?由比ヶ浜さん」

 

「なんでもないよ。ただ、嫌なメールが来て……」

 

「比企谷君、由比ヶ浜さんに迷惑メール送るのを今すぐ止めなさい。裁判沙汰にしたくなかったら」

 

「なら訴えてみろよ。絶対にお前の負けだけどな」

 

「犯人は皆、そんな事を言うのよ。その発言こそ証拠だわ。そして犯人は『証拠はどこにある?』『大した推理力だ。まるで小説家のようだ』『どうして、俺だけが疑われる』など。最後に『殺人犯と一緒の部屋にいられるか!!』」

 

「……最後のは被害者のセリフだろ。つまりお前は証拠がないだけで裁判に負けるとそう言いたいんだな?さすがは成績優秀の雪ノ下雪乃だけの事はあるな。役に立たない頭脳をお持ちで」

 

ここまで皮肉を言うと雪ノ下は睨み付けるだけで何も言わなかった。だったら、最初から言わなければいいのに。こいつは由比ヶ浜とは違うベクトルでバカだな。

 

「ゆきのん……これはヒッキーとは関係ないと思うよ。クラスの事だしさ」

 

「そうなの?だったら比企谷君は関係ないわね」

と俺を由比ヶ浜とは違うクラス扱いにしやがった。やはりこいつの性格を先に直した方がいいんじゃないか?

 

「そういえばヒッキー。あいあいときりきりは今日は来てないの?」

 

「お前のネーミングセンスは本当にないな。二人はバイトの仲間と女子会をしてる」

 

「へぇー!?可愛いと思うけどな?女子会か、そうなんだ。だったら、喋る人がいないから暇だな~」

 

「勉強でもしたらどうかしら由比ヶ浜さん。中間試験まで日が無いことだしね」

 

「……勉強なんて社会に出て使うことないし、やる意味ないよ」

 

由比ヶ浜の発言に愕然とした。こいつは米屋より駄目かもしれない。よく総武に入れたな?やっぱり裏口か?そもそもなんで総武に入学したの?分けがわからないんですけど。

 

「由比ヶ浜さん。勉強とは自分で意味を見つけ出すものよ。それが意味無いなんて、勉強をして来た人達に失礼よ」

 

「ゆ、ゆきのんは勉強できる人だけど私はそんなに出来ないしさ。……ヒッキーはどうなの?」

 

「俺は学年主席だから、勉強は出来るほうだぞ」

 

「学年出席?ねぇ、ゆきのん学年出席ってなに?」

 

マジか。こいつのバカさ加減は筋金入りだな。由比ヶ浜はアホの子。

 

「由比ヶ浜さん。学年出席ではなくて、学年主席よ。言うならばその学年で一番勉強が出来る人のことよ」

 

「えっ!?ヒッキーって頭がいい人なの?意外かも」

 

「そう言うお前は見たまんまのビッチだな」

 

「はぁ!?ヒッキー何言ってんの私は処女ってなんでもない!てかヒッキーキモい!!」

 

ホント、こいつはすぐ人を罵倒してくるな・・・やはり女子高生の間では、罵倒が流行ってるな。間違いない!

 

「由比ヶ浜さん。別にこの歳で処女であることは恥ではないのよ」

 

誇らしげに言っているが雪ノ下。その発言はどうかと思うぞ。女子的には。

 

「ゆきのんは、少し女子力が低いんじゃない?……うん!ゆきのん、あたしと一緒に勉強会しない?中間に向けて」

 

「勉強会……」

 

その声は嬉しさが混じっていた。まぁ、あいつの性格からして今まで勉強会をしたことが無いのも無理はない。相手を罵倒しまくるのが目に見える。

 

その時に俺のスマホが鳴って、画面を見た時に一瞬、硬直してしまった。電話の相手は二宮さんだった。俺は部屋から出て電話に出た。

 

『出るのが遅いぞ比企谷。話がある。今夜、時間開けておけ』

 

「今夜はシフトがあるので無理ですよ、二宮さん。明日なら時間がありますけど?」

 

『……明日は俺達が無理だ。それなら、明後日ならどうだ?』

 

「明後日なら、大丈夫のはずです」

 

『それなら、場所はエンジェル・ラダー 天使の階段だ。スーツを用意しておけ。それと藍羽も連れてこい。いいな』

 

そこで電話が切れた。二宮さん……俺、スーツ持っていません。

仕方が無い。浅葱にでも相談してみるか?あいつならなんとかしてくれるかもしれない。

しかし、二宮さんからこのタイミングでの相談となるとやはり『鳩原』さんのことか。俺、あんまり喋れないんだけどな。

 

部屋に戻って見ると、雪ノ下と由比ヶ浜が消えていた。どうやら、勉強会には俺は呼ばれなかったらしい。まぁ、いいけど。

由比ヶ浜とやっていたら、教えるだけで時間を消費してしまいそうだ。

 

とりあえず、二宮さんの相談のことを考えないと。最近、イベントがありすぎで精神的に参っているな。はぁ~溜め息が出る。

 


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