やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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職場見学
材木座義輝


戸塚のテニス強化依頼が終わり、定期的に練習を見る事になった。そして俺は今、ボーダー本部の開発室に向かっていた。

開発室サブチーフの材木座に呼ばれたからだ。ここで材木座の詳しい説明をした方がいいな。前回は、そんなにしていないことだしな。……えっ?誰に言っているかって?それは、あれだよ。……うん、これを読んでいる人にだよ。

 

材木座義輝。

ボーダー本部開発室のサブチーフで俺や三輪と同期だった男。前に軽く説明したが、こいつは戦闘がまったくと言っていいほどだめでエンジニアに転職した経歴を持っている。

開発室のエンジニアに転職したのは良かったと思う。

 

材木座はトリガーの、それもオプショントリガーの開発が得意で今までに様々なオプショントリガーを作ってきた。

今日もその試作品を試してほしいとの事だ。今度は一体どんなトリガーを作ったのやら、ちょっと楽しみだ。

 

開発室に入ってみると、小太りで指抜き手袋に眼鏡、極めつけは総武の制服の上から白衣を着込んだ男が意味不明のポーズを取り、俺を見るなり大声で訳のわからい事を言ってきた。

 

「ふっふふ……よく来たな比企谷八幡よ!今日はこの剣豪将軍材木座義輝が新たなるトリガーを貴様にくれてやろうではないか!なっははははっははは!」

 

「…………いいから、さっさと説明しろ。でないと弧月でズタズタにするぞ材木座」

と言った途端、キャラ崩壊しながらも説明しだした。

 

「はい、すいません!!では、このトリガーを起動してください」

と言うので、とりあえず受けとって黒いトリガーホルダーを起動してみる事にした。俺の体はホルダーに仕舞われ、トリオン体を形成した。

 

だが、その姿は俺の思い浮かべていた姿ではなく、まったく別物だった。てっきり、比企谷隊のユニホームと思っていたが、その姿は黒い衣装で白い羽織を纏ってしかも足には草履だった。

俺は、その姿に材木座に文句を言ってやった。

 

「材木座、何だこのトリオン体は?お前はふざけているのか!!これじゃあ、ジャ〇プのブ〇ーチの死覇〇じゃねぇか!」

そう、まるでその通りなのだ。戦闘服に和服って無いだろうと思っていると材木座が自信ありげな感じで説明しだした。

 

「何を言うのだ八幡よ!これこそ、真の戦闘服ではないか!それにユニフォームを考えるこちらの身にもなってみよ。……考えるの大変なんだぞ」

と最後の方を小さく言ってきた。

 

「……最後のが本音だな。つうか、パクんなよ。これ、本当に戦えるのか?」

 

「無論!この剣豪将軍材木座義輝に抜かりはないぞ、八幡よ!」

と俺の質問に対して材木座は、ウザイほどに勝ち誇った顔をしていた。それと妙に決め顔で返してきたのが俺をイラつかせた。

と思っていると新しいトリガーについて説明されてないので材木座に説明を求めた。

 

「それで、材木座。新しく試してほしいトリガーは何なんだ?」

 

「ふむ。よくぞ、聞いてくれた!新しいトリガーの名前は『ディード』というのだ」

と無駄にデカイ声で言ってきた。

 

「『ディード』ってのは、ディスクソードの略で合っているか?」

 

「!!!……ふっ。さすがは八幡だな。その通りだ!!」

と、俺の指摘に材木座は驚いた様子だった。なんかその顔を見てるとマジでムカつくんだけど。

 

「まず『ディード』を起動してトリオンキューブを出した後、それを五つに分割して、それが円盤状に変化してバイパーを使うように弾道を決めて放つのだ!」

と材木座から説明を聞いて、それらしくしてみた。

 

「なるほどね」

 

「ふむ。『ディード』はサブの方に入れているので左側になる。他にも弧月、天月専用オプションの高速斬撃の『韋駄天』や瞬間移動の『テレポーター』などが入っている。まず『韋駄天』の説明からしよう。『韋駄天』はバイパーのように弾道と軌道を決めてから行うものだ。普通のトリオン体では考えられない速度を出せるのだ。次に『テレポーター』の説明をするぞ。『テレポーター』は聞いての通り瞬間移動ができる。ただ、移動先は視線の約十数メートル先までだ。視線で移動先がわかってしまうから気をつけるのだぞ。これで説明は以上だ」

 

「大体わかった。ブースにでも行って試してくるわ」

と言って開発室から個人ブースに向かった。いい相手がいるといいんだけどな。

 

ブースに到着してみると、やっぱり目立っていた。それもそのはず、ナンバー1オールラウンダーの俺がこんな奇妙な格好をしていれば、そうなるよな。

壁に手を付いて、俯いていると後ろから聞きなれた声がしてくる。

 

「あら、比企谷君じゃないの。……どうしたのその格好?」

 

「どうも、加古さん。……この格好は気にしないでください」

と声を掛けてきたのは加古さんだった。

 

加古望。A級加古隊隊長でシューターだ。普通の家庭、普通の両親から生まれたセレブ感を出している感覚派レディの美人さんだ。この人の作る世にも奇妙な炒飯をよく色んな人と一緒に食べる事がある。奇抜すぎて驚くほどだ。

この人の拘りで加古隊はイニシャル『K』で揃えている。オペレーターですらそうなのだ。

前に俺を隊に勧誘したが、俺には『K』は使われていないので残念がっていた。

次に加古さんの隣にいる、ツインテールの女の子が挨拶して来た。

 

 

「こんにちは、八幡先輩」

 

「よお、双葉。久し振りだな」

と若干無表情に見えてしまう顔で挨拶して来たのは双葉だった。

 

黒江双葉。加古隊アタッカーで小学生からボーダーにいる女の子で俺の弟子の一人だ。

主に弧月の使い方や足捌きなどを教えている。最年少でA級部隊に所属している天才隊員だ。

入隊時の対ネイバー戦闘訓練では11秒を叩き出し、その卓越した戦闘センスで他の隊員を驚愕させたのは記憶に新しい。

 

 

「八幡先輩。久し振りに特訓を付けてくれませんか?」

 

「そうだな。俺も久々に付けてもいいと思うし、それに試作品の性能なんかを確認しておきたいしな。丁度良いからやるか」

と双葉と話していると加古さんも会話に加わってきた。

 

「なら、私も混ぜてもらってもいいかしら、比企谷君?」

 

「構いませんよ。相手は多い方がいいので」

と俺と双葉と加古さんのソロ戦が始まった。

一人十本勝負で合わせて二十本して、その日は家に帰った。

結果は、双葉とは7勝3敗で勝ち。加古さんは5勝5敗で引き分けた。まだまだ慣れていかないとな。

その後、『韋駄天』のことが気に入ったのか双葉がトリガーに入れたのは、別の話になる。

 


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