やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
由比ヶ浜の木炭クッキー作りから数日たった日のこと。俺が、いつも通り購買でパンを買って誰もいないベストプレイスに行こうとした時、由比ヶ浜が教室を出ようとしていた。その時だった。
「結衣~。教室出るんだったら、ついでにジュース買ってきてくんない?」
「ごめん……昼休憩終わるまで帰ってこないかも…………」
と、三浦の頼みに由比ヶ浜は、歯切れの悪い言い方で言葉を返す。それが気に入らなかったのか、三浦は少し怒鳴り口調でさらに言葉を続ける。
「結衣さ~、このところ付き合い悪いよね。どう言うことなの?」
と、由比ヶ浜に高圧的に言っていた。
俺は、巻き込まれる前に急いで教室を出ることにした。扉を開けた所に雪ノ下がいた。どうしてこいつが教室の前にいるんだ?と思っていると雪ノ下が教室にいる由比ヶ浜に向かって
「由比ヶ浜さん。遅れるなら、連絡を入れてくれないかしら?」
「ご、ごめん、ゆきのん。ちょっと優美子と話してて……」
「ちょっと雪ノ下さん。今、あーしが結衣と話してんだけど。邪魔しないでくんない?」
「話し合いをしているようには見えなかったわよ。一方的に怒鳴りつけているようだったわ」
「……何?あーしにケンカでも売ってんの?」
「生憎と猿と喧嘩をする気はないわ」
と最早、これは言葉の喧嘩だ。巻き込まれる前に教室を出たのは正解のようだ。
未だ教室では、雪ノ下と三浦の大声が聞こえてくる。三浦のいる葉山グループは、カートス1位グループだ。あの連中に目を付けられたら、今後学校生活は最悪なものになること間違いない。
俺はパンを買って、静かに過ごせる場所に移動した。やはり一人がいい。と思う時が少なからずある。隊のメンバーと過ごすのもいいが、一人で過ごしたい時もある。
「あれ……ヒッキー?」
と、パンを食べていると後ろから由比ヶ浜の声が聞こえてきたので、振り返るとジュースを二つ持った由比ヶ浜がそこにはいた。
「お前……結局、ジュースを買いにパシらされたのか?」
「えっ……違うよ。こっちの一本はゆきのんのだよ。ジャンケンで負けたら買いに行くを勝負したんだ。最初は、ゆきのん乗り気じゃなかったんだけど。『負けるのが怖いの?』って言ったら乗ってきて、ジャンケンに勝ったとき、小さくガッツポーズして喜んでたんだ」
「……へぇ~あいつ由比ヶ浜の挑発に簡単に乗るほどプライド高いのか」と由比ヶ浜と話していると「あれ?由比ヶ浜さん……?」と見覚えのある女子生徒が話しかけてきた。
「あ、さいちゃん。やっはろー」
と由比ヶ浜……。その挨拶はかなりバカっぽい。いや、こいつがバカなのは知ってるけど…………。
「あ、比企谷君もこんにちわ。」
と俺に話しかけてきたが、女子の知り合いにはいなかった気がする。
「えっと……どちら様ですか?」
「はぁー!!ヒッキー、さいちゃんのこと知らないなんて、キモい」
と俺の言葉に由比ヶ浜がいきなり罵倒して来た。
「知らないだけで、キモいとはこいつは碌な教育をうけなかったな」
「やっぱり、ヒッキーキモい。さいちゃんは、クラスメートだよ。知らないの?」
「いや。知らんな、この女子とは面識はないしな」
「「…………」」
と二人の沈黙が返ってきた。
「ヒッキー、さいちゃんは、男子だよ……」と由比ヶ浜がとんでもない事を言ってきた。
(何?!この容姿で男子だと?この見た目なら男子より女子と言った方が納得出来る)と思う。
「うん。僕、男子生徒なんだ……」
「……すまん。ジャージで判別つかなかったといえ、間違ってすまん」
と俺は戸塚に対して謝罪した。
「ううん。でも次は間違えないでね」
となんて心が広いんだ。どこかの毒舌部長とは、ちがうな。
昼休みが終わり、午後の授業が始まり教室に戻ると三浦がかなり不機嫌だった。
どうやら、雪ノ下に言い負かされたらしい。その間、教室はある意味地獄だったに違いない。そうして、授業も終わり。俺と浅葱が奉仕部の部室でラノベを読んでいる時だった。部屋の扉が勢いよく開いて、由比ヶ浜が入ってきた。
「やっはろー。依頼人を連れてきたよ」
と言うが由比ヶ浜、拉致してきたんじゃないよな?などと考えていると雪ノ下が、由比ヶ浜に呆れながらも由比ヶ浜の立場を言った。
「由比ヶ浜さん……「あ、お礼とかいいから。私も奉仕部の一員だしね」……残念だけど、あなたは奉仕部の部員ではないわ。入部届けを貰ってないもの」
「え?そうなの。だったら書くよ、何枚でも」
と由比ヶ浜はカバンからルーズリーフを取り出し書き始めた。てか由比ヶ浜、入部届くらい漢字で書けよ。それでよく総武に入学できたな。まさかの裏口入学か?と考えていると由比ヶ浜が部屋の外にいる人物に中へ入るように促していた。
「あ、そうだ。さいちゃん、さあ、入って入って」
と入ってきたのは、戸塚だった。戸塚は入るなり周りを見渡し俺と目が合ってほっとしていた。
「あ、比企谷君って、奉仕部の部員だったんだね。知らなかったよ」
「まぁ、強制入部だけどな。で、戸塚の依頼って何なんだ?」
「うん。実は僕がいるテニス部、他の人があまり練習に来ないんだ。だから、部長の僕が強くなれば、もっと他の人も積極的に参加してくれると思うんだ。それで、僕を強くしてほしいんだ」
と戸塚が言うと雪ノ下が由比ヶ浜に少し怒った口調で言った。
「由比ヶ浜さん。奉仕部の理念は、釣った魚を与えるのではなく釣り方を教えて自立を促すというものなのよ。貴女がしっかりと説明しないから、戸塚さんをがっかりさせるのよ」
「うっ……で、でもゆきのんなら出来ると思って、やっぱり出来ないよね……」
とテンションを下げてまるで雪ノ下を挑発しているかのようだった。
「あなたもそんなことを言うのね。……いいわ。その依頼を受けましょう」
とそれに対して雪ノ下は依頼を受けた。完全に由比ヶ浜に乗せられたな。……由比ヶ浜は実は策士なのか?……いや、ないな。
「で、トレーニングメニューとか、どうすんだ?やっぱり初めは身体強化だよな?」
「とにかく、死ぬまで走って、死ぬまで素振りね。これに限るわ」
と俺の質問に雪ノ下は、とんでもないことを言ってきた。さすがに由比ヶ浜と戸塚も唖然としていた。
「……メニューは俺が考えておくわ。雪ノ下のでやったら戸塚や他の部員が練習できなくなる。もう少し、堅実的なメニューを考えろよ」
と言うと戸塚は頷き、雪ノ下は納得してない顔を俺に向けていた。
そんな顔を向けるくらいなら、もっとマトモな練習メニュー考えろよ。
こうして、奉仕部は戸塚のテニス強化依頼をやっていくことになった。