やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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一色いろは③

「あれ?いろはじゃないか」

 

「は、葉山先輩!?」

 

俺の後ろから話しかけてきた葉山に一色は驚いていた。あれ?葉山、今一色の事を名前で呼ばなかったか?二人は知り合いなのか?

 

「葉山は一色の事を知っているのか?」

 

「ああ。いろははサッカー部のマネジャーをしていたんだよ」

 

「はい!……でも今は『元』マネジャーですよ」

 

「そうなのか?頑張っていたのだから続ければ良かったのに……」

 

葉山がそう言うなら一色はマネジャーを頑張っていたのにどうしてサッカー部を辞めたんだ?

それに一色は葉山と話していると妙にテンションが高いな?もしかして一色がサッカー部のマネジャーを辞めたのもボーダーに入りたいのも葉山が目的なのか?

まさかそうは思えない……とは言えないな。一色は生徒会長になりたくないと言っていたのもボーダーに入った際に葉山との時間が減ってしまうからか?

 

「それでいろはがどうしてここに?」

 

「はい!比企谷先輩に助けてもらおうと思って来ました!!」

 

「……助けに?それは一体?」

 

俺が考えている間に一色のアホがペラペラと喋りやがった!!口や態度が軽い女は嫌いだな。さて、どうしたのもか?

待てよ。この際、葉山も巻き込むか?修学旅行の件もあるしそうするか。

 

「生徒会長の件だよ。一色が来たのは」

 

「……生徒会長?それは一体?」

 

「放課後に話さないか?ここで立ち話もなんだからよ」

 

「……分かった。そうした方がいいか。いろはもそれでいいか?」

 

「はい!もちろんです!葉山先輩!!」

 

ホント、葉山が相手だとテンション高いな一色は。

とりあえず一色の件に葉山を巻き込めた!何かあれば、葉山の所為にしておくか。葉山も知り合いの後輩が助けを求めれば嫌とは答えられないだろう。

もし俺に押し付けるようなら修学旅行の事を三浦と戸部にバラすぞとおど……じゃなくて言えばいいか。

俺はその後、浅葱と一緒に昼食を取った。うん、炒飯じゃなければ浅葱の料理は不味くは無い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後となり俺と葉山と一色は学校を出て俺のお気に入りの喫茶店に向かった。あそこならじっくりと話す事が出来る。

それに店なら誰かが入ってくればすぐに分かる。

 

「それじゃまず葉山」

 

「うん?何だい、ヒキタニ君」

 

「……雪ノ下に生徒会室に行くように言ったのはお前か?それとも由比ヶ浜か?」

 

「…………何の事だい?どうしていきなり雪ノ下さんが出て来るんだい?」

 

相変わらず、俺の事を「ヒキタニ」呼びした葉山にある質問をぶつけた。それは一色の事を綾辻から聞いた時にどうして雪ノ下が聞いていたのかだ。

たまたま生徒会室の前を通りかかった?だとしたらタイミングがバッチリだった。

あれは誰かからのタレ込みがあったに違いない。だとしたら言ったのはクラスに居た人間の誰かだが、雪ノ下と接点がある人間は葉山か由比ヶ浜のどちらかだ。

 

葉山は白を切っているが、間違いなく葉山か由比ヶ浜のどちらかと睨んでいる。それに葉山にはさっき、結構長い間があった。

あれは動揺していると言う事だ。ならもう一押しと言った所か?

 

「……今、素直に話すなら俺の弟子になる条件の勝率を二十五……いや二十勝までならおまけをやるけど?つまりお前は四十勝すればいいって事だよ」

 

「そ、それは…………」

 

葉山は渋っているが、かなりの良い条件だ。本来なら百戦中六十勝しなければならないのを僅か四十勝で弟子入り出来るのだからな。

だが、それを呑むと言う事は由比ヶ浜を裏切ると言う事だ。そうなれば、後で何を言われるか分からない。

 

「先輩達はさっきから何について話しているんですか?」

 

「葉山が俺の弟子になるための条件だよ」

 

「弟子ですか?」

 

一色は首を傾げた。知らないなら一応教えておくか。葉山はまだ悩んでいる様だしな。

 

「ボーダーじゃあ師弟関係を結ぶ事なんてそう珍しくも無い。強くなるために強い人間から技を盗む事だってする。まあ、スポーツだって強くなるために上の者から学んだりするからな」

 

「確かにそうですね」

 

「葉山はボーダーに入隊して日が浅い。だから俺に弟子入りして少しでも早く強くなりたいんだよ」

 

「そうなんですね」

 

一色はなんとなくだが納得したようだ。それにしても葉山はまだ悩んでいた。悩んでいる時点で葉山が言ったに違いない。

それにしてもどうして葉山は雪ノ下に言ったんだ?葉山にメリットなんて無いと思うが?

いや待てよ。確か陽乃さんが葉山は雪ノ下の事が好きだと言っていたような?もしかしたら雪ノ下の好感度を上げるために言ったのか?

 

副会長の綾辻がわざわざ俺に頼みに来たなら何か面倒事の可能性が高い。それを解決する事で自分が有能だと知らしめたいのかもしれないな。

まったく面倒な女だな、雪ノ下は。

だが、雪ノ下の思い通りにはするつもりは無い。どこまでも無能だと思い知らしめてやる。

 

「……ヒキタニ君。さっきのは本当なのか?」

 

「ああ。もちろんだ」

 

「…………君の言う通りだよ。綾辻さんが君を訪ねてきたからそれを雪乃ちゃ……雪ノ下さんに教えたんだ。結衣経由で」

 

まあ、そうだよな。葉山の事を嫌っている雪ノ下が素直に嫌っている人間の言う事を信じるわけがない。よし!葉山と由比ヶ浜は絶対に弟子にはしない。

 

「それでいろはの生徒会長の件と言うのは?」

 

「実は一色、クラスメイトの女子からいじめられていてな」

 

「な!?それはホントなのか!?いろは?」

 

「ちょっ!?比企谷先輩!?」

 

一色は俺を睨め付けてきた。どうせ、生徒会長の件で話す事になるのにな。

 

「いじめの事を話さないと先には進めないだろう。それとも葉山には知られると不味いのか?」

 

「……そう言うわけではありませんけど……」

 

一色は葉山の顔をチラチラと見ていた。やっぱり何かあるのか?だけど、一色と葉山の間に何があろうが俺の知った事ではない。

 

「それで、いろはが受けているいじめって、具体的にはどんなのだい?」

 

「一色を生徒会長にしようとしているんだ。本人にはなる気がないのにだ」

 

「それは……」

 

葉山は考え始めた。こいつが何を考えているかその内容は大体、想像出来る。それは一色に生徒会長をやってもらえないかと言う事だろう。

葉山の目的が雪ノ下の生徒会長になる事の阻止なら一色が生徒会長になった方がいいと考えて要るだろう。

生徒会長とボーダー隊員の両立は難しい。オペレーターくらいなら大丈夫と思うが、戦闘員なら絶対に無理だろう。

 

「……いろは。君が生徒会長をしてはもらえないだろうか?」

 

「葉山先輩?それってどういう事ですか?」

 

「そ、それは……」

 

葉山が視線を俺に向けてきた。ここで俺に助けを求めるのか?ホント、よく考えてからものは言えよな。

まあ、別に構わないけどな。一つ貸しにしておいてやるよ、葉山。

 

「……一色が生徒会長になった方がメリットが大きいと言う事だよ」

 

「そのメリットって何ですか?」

 

「まず履歴書に生徒会長をしたとかいてもらえる事、次に一色を推薦したバカ共を見返せる事」

 

「一つ目はわかります。二つ目はどう言う事ですか?」

 

一色は一つ目は分かったようだが、二つ目は分かっていないようだ。てか、葉山も分かっていなかった。だって、首を傾げていたからだ。

 

「つまり一色が生徒会長に就任した時に推薦した女子達に笑顔で『みんな、私は推薦してくれてありがとね♪』告げるっていう具合にな。いじめで一色を生徒会長にしようとした連中からしたら悔しいだろうよ。なんたって、いじめで推薦したのに本当になってしまうんだからな」

 

「……なるほど。それは悔しいですね」

 

一色は分かってくれたようだ。すると少し考えているようだった。

 

「でもそれって私が生徒会長にならないとダメですよね?私、生徒会長にはなりたくなんですよね……」

 

「いろは。なりたくないのは分かったよ。それでも頼むよ、なってくれないか?」

 

「葉山先輩……」

 

葉山は一色に頭を下げていた。一色からしても葉山が頭を下げるのが余程、驚きなようだ。葉山からしても後輩に頭を下げただけで自分の目的を果せるなら易いものか。

 

「一色が生徒会長になれば、クラスの女子連中を見返せる。まあ、一年で生徒会長ってのも大変だよな」

 

「……はい。あまり自信はありません」

 

「そこは大丈夫だろう。困ったら葉山が助けてくれるしな」

 

「えっ!?ちょ、ちょっと待ってくれ、ヒキタニ君。どうして俺が?」

 

いきなり振られて葉山は動揺しているが、俺には関係ない。それにこれは最初から考えていた。もしも一色が何か手伝って欲しいと言ってきてもやりたくは無い。

だからこそ、代わりにやってくれる人物が必要だった。葉山は一色と親しい仲のようだし問題ないと思う。

 

「え?もしかして葉山、お前……頭を下げて頼んでおいて後は知らん振りを決めるつもりだったのか?それはあまりにも無責任じゃないか?一色もそう思うよな?」

 

「え?……た、確かにそうですね。葉山先輩は私がやりたくも無い生徒会長をやらせようとしているのですから何か手伝ってもらわないと私は生徒会長はやりたくありません!」

 

一色は俺の考えを読んで乗ってきた。一色は葉山に好意を寄せている。ボーダーに入りたいのも葉山が関係している。

だが、ボーダーに入らなくても葉山との距離を縮められるなら別に何でもいいのだろう。なので一色は乗ってきた。

 

「わ、分かったよ。俺で手伝える事があれば、手伝うよ」

 

「ありがとうございます!!葉山先輩!!」

 

一色は満面の笑みを見せた。やる気が出てよかったぜ。

これで明日を待つばかりだ。明日の放課後に急遽、生徒会長選挙をする事になった。俺も念のために仕込みをしておくか。

話が終わったので俺は帰ったが、葉山と一色はもう少しお茶して帰るそうだ。

後、数日で遠征部隊が帰ってるな。なるようになるだろう。

 


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