やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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比企谷隊⑦

「あたしの分のどら焼きが無い!!!」

 

涙目で入って来たのは玉狛第一のアタッカーの小南だった。そうとう不機嫌だった。そう言えば、どら焼きは一応買ってきたんだが空閑と三雲と雨取が食べたので無くなったのだ。

 

「さてはまたお前か!?お前が食べたのか!?」

 

「むにゃむにゃ……たしかなまんぞく……」

 

「お前だなーーー!?」

 

小南は寝ていた陽太郎の足を掴み逆さまに持ち上げた。小南、それ以上してしまうと陽太郎が大変な事になるから降ろした方が良いぞ。

一応、言っておくか。

 

「小南、お前の分のどら焼きはこっちの三人の腹の中だよ」

 

「はぁ!?」

 

「今度、来る時買ってきてやるから」

 

「あたしは今食べたいの!!」

 

「―――なんだなんだ騒がしいな小南」

 

「いつもどおりじゃないですか?」

 

部屋に入って来たのは玉狛第一の隊長のレイジさんと同じく玉狛第一のオールラウンダーの烏丸だった。

そうか防衛任務が終わったのか。

 

「……おっ……この三人が迅さんが言っていた新人ですか?」

 

「新人……!?」

 

烏丸は部屋に居た空閑達に視線を向けた。小南はなんだか不機嫌だな?まだどら焼きの事を引きずっているのか?

 

「あたしそんな話聞いてないわよ!?なんでウチに新人なんか来るわけ!?迅!!」

 

小南は相変わらず迅さんの事を呼び捨てにしているな。まあ、人によってはちゃんと敬語を使うからな小南は。

なんだか鶴見と似ているな。言ったら師弟の二人に蜂の巣にされるな。

 

「まだ言っていなかったけど、実は……こっちの白髪の子は俺の弟なんだ。それで反対側のメガネの子が従兄弟で真ん中の女の子が比企谷の従兄妹なんだ」

 

「えっ!?そうなの?」

 

……迅さんの言った嘘を完全に信じているよ小南は。どこを見たら納得するんだよ。レイジさんと烏丸は?マークな顔をしているし三雲はかなりビックリしていた。

それはそうだ。いきなり従兄妹発言だからな。

 

「迅に弟や従兄弟がいたんだ……!とりまる。あんた知っていた!?」

 

「もちろんですよ。小南先輩は知らなかったんですか?」

 

烏丸は迅さんの嘘に乗るようだな。こいつの小南からかいもよくやるよな。飽きないのか?いや、騙される小南のリアクションを見ていれば飽きも来ないか。

 

「言われて見れば迅に似ているような……こっちのメガネはそんなに似ていないわね。でも女の子は比企谷に似ているわね。アホ毛がそっくりだし!」

 

小南は迅さんと空閑を見て比べて納得したよ。三雲の場合は疑っているようだが、信じているんだろうな。後、雨取と俺は従兄妹では無い!

どうしてこうも簡単に信じてしまうのだろうか?小南は……。

 

「レイジさんは知ってたの!?」

 

「ああ。迅が一人っ子だって事を」

 

「……!?」

 

小南はまだ気が付いて無いらしい。本気でこいつの将来が心配だ。教えておくか。

 

「小南。さっき迅さんが言ったのは全部嘘だよ」

 

「嘘!?全部って……え?全部!?だ、騙したの!?」

 

「いやー信じるとは流石小南」

 

迅さんは笑っているが小南はキレるかもしれないな。

 

「このすぐ騙されちゃう子が小南桐絵17歳。こっちのもさもさした男前が烏丸京介16歳。それでこっちの落ち着いた筋肉が木崎レイジ21歳」

 

「どもうもさもさした男前です。よろしく」

 

「落ち着いた筋肉……?それ人間か?」

 

もさもさした男前でいいのか?烏丸。落ち着いた筋肉って、確かに人間なんだろうか?落ち着いたと言う事は落ち着かない筋肉もあるのだろうか?

さて、俺はそろそろ帰るか。

 

「迅さん。俺はそろそろ帰ります」

 

「そうか。例の件よろしくな」

 

「ええ。分かっています」

 

「そう言えば、どうして比企谷がここに居るのよ」

 

帰ろうとしたら小南がそんな事を聞いてきた。俺が答えようとしたが迅さんが先に答えてしまった。

 

「今日から比企谷隊は玉狛第二としてやって行くんだよ」

 

「そうなの!?だったら比企谷は今日からあたしの後輩みたいなもんよね?」

 

どうして俺が小南の後輩になるのかが分からないが本当の事を言っておいた方が早めに。てか、頭が由比ヶ浜とは言わないが残念な奴だ、小南。

 

「後輩にはならない。それに玉狛に移籍するつもりは無いから。さっきのはまた迅さんの嘘だぞ。小南」

 

「え?ま、また騙したの!?」

 

「ホント、小南はすぐに騙されるな」

 

笑い事では無いぞ迅さん!怒りで小南はプルプルと震えている。早めに帰ろう。

 

「それじゃ三雲、空閑、雨取。頑張れよ」

 

「は、はい。比企谷先輩」

 

「またなはちまん先輩」

 

「はい。比企谷さん」

 

俺は玉狛から出る前に三人にエールを送っておいた。あいつらが大変なのはこれからだし俺としては応援してやりたい。

まあ、その前にやらないといけない事がいくつかある。

 

「もしもし浅葱。ちょっと話したい事があるんだが、時間あるか?」

 

玉駒から出てすぐに俺は浅葱に連絡した。迅さんの手伝いをする事を話しておかないと後が怖い。修学旅行で散々、説教されたからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話し合い場は比企谷家した。流石にボーダー本部で話せない内容だからな。喫茶店と考えたが誰が聞いているのか分からないので辞めた。

 

「どうしてお前らも……」

 

俺は浅葱だけに連絡したのが何故か比企谷隊の他のメンバーも居た。どうやら俺が浅葱に連絡した時に全員居たらしくどうせならと浅葱が連れてきたのだ。

 

「それで?八幡は今回、どんな無茶をする気なの?」

 

「……いや、無茶では……無いと思うけど」

 

「それじゃ最初から最後まできっちり説明してよね?」

 

浅葱の笑顔が怖い!?まるで蛇に睨まれた蛙のような気分だな。俺は覚悟を決めて浅葱達に全部を話した。

空閑がネイバーだという事と空閑をボーダーに入れるために迅さんと一緒になって上層部と戦う事など全部話した。浅葱達は最後まで黙って聞いてくれた。

 

「……なるほどね。迅さんは普段は信じられないけど、予知については信じられるからね」

 

「出来れば、この事は黙っていて欲しいんだけど……」

 

「はぁ!?八幡、こんな事を黙っていられる訳がないでしょ!」

 

「はい。おっしゃる通りです」

 

こんなに怒っているのは修学旅行以来だな。俺の彼女はマジで恐ろしい!それに夜架はまあ、怒っているのか分からないがシノンと雪菜は怒っている。

だって、顔が怖いから!!

 

「だからその話、私達も乗るから」

 

「え?でももしかしたら降格、最悪はボーダーを辞めさられるかもしれないんだぞ。俺の単独行動にしておけば、この隊は最悪守れるし……」

 

「八幡がいなくなったこの隊になんて価値なんて無いわよ。八幡が居てこそ比企谷隊でしようが!」

 

なんか凄く嬉しいな。涙が出て気そうだな。

 

「いいのかそっちの三人は?」

 

「はい。主様と居られないならボーダーを辞めても構いませんわ」

 

「……八幡と居るの楽しいし、いなくなるならボーダー辞めた方がいいかな」

 

「八幡先輩と同じ部隊だからこそいいんですよ。いなくなったら意味がありません」

 

本当に凄く嬉しいな。俺はこいつらの事を考えたつもりだったが、俺の自己満足だったんだな。話して良かった。

 

「それでこれからどうするの?」

 

「とりあえずは遠征組みが戻ってくるまで城戸派は動かないだろうな。よくて監視と言った所だろ」

 

「それじゃ問題は戻って来てからね。それについてもちゃんと考えているんでしょ?八幡」

 

ホント、浅葱は何でもお見通しだな。

 

「遠征組が戻ってきたらすぐに玉狛に向かうはずだ」

 

「はっきりと言うわね」

 

「太刀川さんや風間さんが空閑のブラックトリガーの能力を知れば、コピーされる前に倒そうとするからな」

 

俺はそれから玉狛で考えた作戦を全員に説明した。嵐山隊も協力してくれるから十分に勝算がある事も伝えた。

俺達は更に作戦を詰める事にした。

 

「戦う場所は慎重に選ばないとな」

 

「ならここがいいんじゃないの?」

 

浅葱が見せてきた地図の場所は大きめの公園と高いマンションがある場所だった。ここなら狙撃出来るし拓けているから大人数での戦闘が可能だ。

 

「今はとりあえず、こんなものだろう。後は遠征組が帰って来てからだな」

 

「遠征組みの帰還が分かり次第、モグワイから皆に伝えるようにするから」

 

これで準備は終わりだ。遠征組みが帰ってくるまで何事もなく過ごせればいいが、大丈夫だよな?

 

「八幡先輩。第三中学校で会った白髪の子がネイバーだったんですね」

 

「ああ。そうだ」

 

雪菜は中学校で出会った空閑の事を思い出していたようだ。

 

「ちなみに空閑は雪菜と同い年だからな」

 

「え?そうなんですか?てっきり年下かと……」

 

あの身長なら雪菜でも年下と思っても不思議では無いな。夜架とシノンに聞いてみるか。

 

「夜架とシノンは迅さんの手伝いでネイバーをボーダーに入隊させる事になったが二人はどう思う?」

 

「私は主様の指示に従うだけです。確かにネイバーの事は許せ無いと思いますけど、それはそれ、これはこれですわ」

 

「私も夜架と同じかな……それにネイバーに特に恨みはないから」

 

二人はこんな事を思っていたのか。ちょっと意外だな。浅葱と雪菜にも聞いてみるか。

 

「浅葱と雪菜はどうなんだ?」

 

「私は特にかな?恨みは無いから大丈夫よ」

 

「私もですかね。それにこのメンバーでいるのが楽しいですから!」

 

俺はもっとこいつらの事を信頼するべきだった。よし!帰って寝よ。

 

 

 


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