やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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玉狛支部②

迅さんとレプリカと一緒になって空閑をボーダーに入隊されるにはどうしたらいいかを話し合った。色々と話し合った結果、迅さんはブラックトリガー「風刃」を本部に預ける事にした。

それで済めばいいと思うが、そうはいかない。預けたところで入隊させなかったら意味が無い。そこで俺は上層部と取引をする事を考えた。

三輪隊だけでは負けてしまったので次はもっと大勢の精鋭で来るはずだ。だが、今のボーダーにはA級は半分しかいない上、城戸派もそうおいそれと部隊を動かす事が出来ない。

 

通常業務を疎かにして街に被害でも出したら城戸指令は今の立場にいる事が出来なくなってしまう。上層部としても城戸指令としてもそれだけは避けたいはずだ。

だからA級部隊を送って来ない。下手にB級を送るわけにはいかない。B級なら空閑には勝て無い所か空閑のブラックトリガーの能力でコピーされて戦いを不利にしてしまう。

だからこそ送って来ない。

 

だが、あいつが来ないのはどうしてだろうか?迅さんが空閑に味方しているから三輪隊の次は来ると思ったんだが?

まあ、来ないならそれに越した事は無い。俺は玉狛支部のキッチンで朝食を作りながらそんな事を考えていた。

 

《おはよう。ハチマン》

 

「レプリカ?おはようさん」

 

朝食を作っているとレプリカが挨拶をして来た。妙に礼儀正しいな、こいつは。ウチのAIとは大違いだ。一言、余計なんだよなモグワイは。

 

《それにしても料理をしながら考え事か?ハチマン》

 

「ん?まあ、な。城戸指令達がどうして天羽を送って来ないのか気になってな」

 

《アモウ?とは一体誰だ?》

 

「ボーダーに居る迅さん以外のもう一人のブラックトリガー使いだよ」

 

天羽月彦。

ブラックトリガーを持つS級隊員でオールラウンダー。迅さんを上回る戦闘力を持つとされるが、素行やトリガーの使用時の外見に問題があるらしく、戦線に出そうとした際はメディア対策室長の根付さんが顔を曇らせたとか。

確かサイドエフェクトが敵に関する何らかの情報を色として認識するものだったはずだ。

本部に三バカがいない時に偶にランク戦する。もちろんノーマルトリガーでだ。

 

《そのアモウが来ないのが気になるのか?確かにユーマのブラックトリガーを奪いに来るなら同じブラックトリガー使いでないと相手になら無いなからな》

 

「ああ。でも天羽のブラックトリガーって聞いた話だと火力が高過ぎて後処理が面倒なんだよな。玉狛を吹き飛ばしたら周りへの説明が大変だからな」

 

ホント、送ってこなくて良かったよ。ブラックトリガーと真っ正面から戦う気なってないからな。

 

「おっ!旨そうな匂いがすると思ったら比企谷が朝食を作っていたのか」

 

「どうも迅さん」

 

レプリカと話して暫くすると迅さんが現れた。その後ろには三雲、空閑、雨取に宇佐美と林藤支部長、陽太郎に雷神丸が居た。

てか、この支部に居る人間が勢揃いしたよ。

 

「おはようございます比企谷先輩」

 

「おはようはちまん先輩」

 

「えっと……お、おはようございます比企谷さん」

 

「おはよう!ハチ君」

 

「朝食は比企谷が作ってくれたのか?美味そうだな」

 

「……う~む。うまそうだ~……ぐぅ……」

 

三雲、空閑、雨取はしっかりとしているな。宇佐美と林藤支部長はいつも通りだが、陽太郎がまだ眠たそうだ。朝食食べそこねるぞ?

 

「朝食を食べた後は修君と遊真君と千佳ちゃんにはアタシとハチ君がボーダーについて教えておげるから」

 

「え?俺も教えるのかよ?」

 

「現役の隊長が居れば三人もよりボーダーの事を知ってもらえるからね」

 

宇佐美はそう言うが俺が必要か?まあ、いいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を食べ終わった俺達は玉狛の少し広い部屋に居た。居るのは俺と迅さん、宇佐美、三雲、空閑、雨取に寝ている陽太郎と雷神丸だ。

部屋にはホワイトボードがあり宇佐美の説明の準備は万全だった。

 

「さて諸君!」

 

ばっちり準備が整った所で宇佐美はメガネを上げて今まさに説明を始めようとしていた。一瞬、メガネが光ったのは気のせいだろうか?

 

「諸君はこれからA級を目指す。そのためには……もうB級になっている修君を除く千佳ちゃんと遊真君の二人にB級に上がってもらわなければならない!それは何故か!」

 

宇佐美はホワイトボードに書いたピラミッドの真ん中の「B級」と書いた所を叩いて空閑達に注目させた。

 

「まずはB級……正規隊員にならないと防衛任務にもA級に上がるための『ランク戦』にも参加出来ないのだ!」

 

「『ランク戦』……?」

 

「そう『ランク戦』……ではその説明をハチ君よろしく!」

 

「いきなり振るなよ」

 

空閑が聞き慣れない言葉にいきなり俺が説明する事になった。最後まで説明しろよ宇佐美。

 

「はちまん先輩。『ランク戦』とは?」

 

「……隊員がB級からA級に上がるには防衛任務の成績とボーダー隊員同士の模擬戦で勝たなくてはならない。それが通称『ランク戦』だ」

 

「さらに同じクラスの中で競い合って強い人間が『上』に行くってわけ」

 

俺の説明に宇佐美が続けた。説明するなら最初からして欲しかったな。

 

「うむ。つまりおれがB級になるにはC級の奴らを蹴散らせばいいわけだな。それいつからやるの?今から?」

 

空閑は自信満々だな。三輪隊との戦闘を見ていれば、納得してしまうな。

 

「流石に今からでは無い。それに空閑はまだ入隊していないから本部に行けば蜂の巣になるな」

 

空閑が本部に一歩でも近付けば城戸派の隊員に攻撃されるのは目に見えている。

 

「まずボーダー本部の『正式入隊日』ってのが年に三回ほどあってC級はその日に一斉にデビューする事になっている」

 

「うむ。なるほど」

 

「その日を迎えるまで空閑は訓練もランク戦も参加する事が出来ない」

 

「え~~~~……」

 

空閑は不満らしい。もしかしたら空閑は案外、戦闘狂なのか?そうでなくとも戦う事が好きなのかもしれない。三バカと少し近いか?

 

「そう慌てるなよ遊真。お前はボーダーのトリガーに慣れる時間がいるだろ。ランク戦ではお前のブラックトリガーは使え無いぞ」

 

「ふむ……?なんで?本部の人に狙われるから?」

 

「それもあるけど。ブラックトリガーは強過ぎるから自動的に『S級扱い』になってランク戦から外されるんだ。メガネ君と千佳ちゃんと組めなくて寂しくなるぞ」

 

「ふむ……そうなのか。使わんとこ」

 

まあ、ランク戦でブラックトリガーを使えば上層部は空閑を殺す大義名分を得てしまうからな。

 

「千佳ちゃんはどうしよっか?オペレーターか戦闘員か……」

 

「そりゃもちろん戦闘員でしょ。あんだけトリオン凄いんだから」

 

宇佐美が雨取のポジションを聞こうとしたら空閑が即答した。それにトリオンが凄い?もしかして駅の時に見た巨大なトリオンキューブの事か?

もしかしてあれが雨取のトリオン量なのか?だとしたら遠くから見ていた俺にも十分わかる大きさだったぞ。

 

「それにこの先ネイバーに狙われた時のためにもチカは戦えるようになった方がいいだろう」

 

「千佳ちゃんってそんなに凄いの?」

 

「見たらビビる」

 

確かに近くで見たわけでは無いがあれはビビるな。凄い大きさだったな。

 

「私も……自分で戦えるようになりたいです」

 

「なら戦闘員で決まりだね!じゃあ次はポジションを決めよっか」

 

「ポジション……?」

 

宇佐美が俺を見てきた。すると自然と全員が俺を見てきた。

 

「……ポジションってのは戦闘員の戦う距離で分けられるんだ。近接の『アタッカー』中距離の『ガンナー』と『シューター』長距離の『スナイパー』と言った具合だ。それで雨取としてはどこのポジションをやるかだな」

 

「それで千佳ちゃんどれが合っているかって話だけど……千佳ちゃん、運動神経はいい方?足は速い?」

 

「いえ。あまり……」

 

「数学は得意?」

 

「成績は普通……です」

 

宇佐美は次々と雨取に質問していった。俺が思うに雨取はアタッカーには向いていないなと思う。トリオン量が凄いならガンナーかシューターが良いかも知れない。

もしくはスナイパーだな。アイビスで撃ったらどんな事になるのか想像できないな。

 

「チームスポーツも経験無しかーう~ん……」

 

「すいません。……取り柄がなくて……」

 

「えっ?ううん大丈夫だよー参考にしているだけだから」

 

雨取はすっかり落ち込んでいるな。

 

「千佳は足は早く無いですけど、マラソンとか長距離はけっこう早いです」

 

「おっ持久力アリね」

 

落ち込んでいる雨取の代わりに三雲が雨取の事を答え始めた。

 

「それに我慢強いし真面目だしコツコツとした地味な作業が得意だし集中力もあります。あと、意外と身体が柔らかいです」

 

「おおっー……!」

 

空閑は驚いているが俺は気になっている事がある。……どうして三雲は雨取の事を詳しく知っているんだ?雨取の兄が三雲の家庭教師をやっていたからそれで詳しく知ったのだろうか?

それにしても知り過ぎているような気がするが、気にしないでおこう。

 

「ふんふん、なるほど……よし、わかった!」

 

得意げにメガネの位置を直した。またメガネが光ったような気がした。

 

「わたくしめの分析の結果、千佳ちゃんに一番合うポジションは……」

 

「スナイパーだな」

 

「スナイパーしかないな」

 

宇佐美が言う前に迅さんと俺が答えてしまった。宇佐美があまりにももったいぶるものだからつい言ってしまった。

 

「あー!!迅さん!!ハチ君!!アタシが言いたかったのに!なんで言っちゃうのもー!」

 

「はっはっはっお前がもったいぶるから」

 

「……いや、宇佐美があまりにももったいぶるからつい」

 

迅さんも俺も宇佐美のセリフを取った事を謝る気は無い。こう言うのはもっと早くに言えってもんだ。

その時だった。部屋の扉が勢いよく開き一人の少女が涙目になりながら入って来た。

 

「あたしの分のどら焼きがない!!」

 

 

 

 


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