やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー 作:新太朗
ネイバーである空閑遊真をボーダーに引き入れるために迅さんは三雲の肩を持っていた。三雲と空閑が友好的な関係を築けば、空閑をボーダーに入れる事が出来る。
そして他に分かった事がある。イレギュラーゲートの原因を迅さんが見つける事が出来たのは空閑の存在が大きいだろう。
あれは迅さんが見つけた訳ではなく空閑が見つけて三雲経由で知ったのだろう。まあ、おかげでイレギュラーゲートを解決出来たのだから。
それにしても迅さんはどうして空閑を三輪隊と戦わせたのだろうか?これも後に必要になってくるのだろう。
空閑と三輪隊の戦いを見た俺は迅さんと今後の話をするために玉狛支部を訪れていた。迅さんに言われた通りどら焼きを人数分買ってだ。
そして迅さんは空閑と三雲と雨取の三人を連れて玉狛支部に帰ってきた。
「よお、お前ら」
「え?ひ、比企谷先輩!?」
「おっ……はちまん先輩」
「……えっと……誰ですか?」
玉狛支部に来た三人に声を掛けたら三雲は俺がここにいる事に驚いた。空閑は毎度マイペースだな。雨取はまったく知らない俺に首を傾げていた。
すると迅さんが俺の近くまで来て肩に手を置いた。
「千佳ちゃん。彼は比企谷八幡と言って自分より年下の女の子のお願いは絶対断らない男だから何かあれば頼るといいよ」
「おい!コラ!!人をロリコン扱いはやめろ!セクハラ常習犯が!!せめてシスコンにしろ!!」
いきなりこの人は何を言うんだ!?お返しにセクハラ野郎だと言っておいた。三雲と雨取が苦笑している。空閑はロリコンの意味が分からずに首を傾げていた。
「シスコンならいいんですか!?」
「……ロリコン?シスコン?……とは?」
三雲は俺のシスコンにしろと言ったらツッコミを入れて来た。ツッコミ担当でも狙っているのか?
空閑はシスコンの意味が分からず首を傾げていた。
「まあまあ、立ち話なんだし座ってよ。ハチ君が良い所のどら焼き買ってきたから」
宇佐美が気を利かせてくれて俺が買ってきたどら焼きを出してきた。いつの間にか陽太郎が空閑のどら焼きに手を伸ばしていた。まだ食い足りなかったのか?
もうすぐ夕食だと言うのに食べられなくなるぞ陽太郎。
「こら!陽太郎!あんたは自分のを食べたじゃん!」
「あまいなしおりちゃん一つだけでまんぞくするおとこだとおもったらおおまちがいだぜ」
陽太郎は妙に格好付けていた。てか、人のどら焼きに手を出すなよ。
「おぶっ……!?」
空閑はそんな陽太郎にチョップを繰り出し陽太郎は思わず涙目になっていた。
「悪いなちびすけ。おれはこのどらやきと言うやつに興味がある」
「ぶぐぐ……おれのどらやき……」
陽太郎が悔しそうにしていると雨取が自分のどら焼きを陽太郎に差し出した。
「良かったら私の食べて良いよ」
「おおっ……!!きみかわいいねけっこんしてあげてもいいよ」
「えっ!?結婚……!?」
雨取は陽太郎の結婚発言に引いていた。てか、五歳児が結婚とかどこで覚えた?そもそも早過ぎて出来ないからな陽太郎。
「おれとけっこんすればらいじん丸のおなかさわりほうだいだよ。けっこうきもちいい」
陽太郎は自分の相棒を持ち出してきた。いいのか?当の雷神丸はいつも通りボーとしていた。
「こう。ゴロンってやって…………」
「……出来ていないぞ。陽太郎」
陽太郎は雷神丸を横にしよとしていたが、雷神丸はまったくと言って動こうとはしなかった。代わりに空閑がやるとすんなり横に倒れた。
陽太郎はその事にショックを受けていた。
「なんて言うかここは……本部とは全然雰囲気が違いますね……」
「まあ、玉狛は特殊だからな」
三雲はこれまでのやり取りを見て本部とは違う事を感じていた。本部はもう少しピリピリしているからな。
「まあ、そうだね。ウチはスタッフ10人しか居ないちっちゃ基地だからねー」
宇佐美はどこか軽い感じで三雲に言った。マジで軽いな。
「でもはっきり言って強いよ」
「玉狛は強いだろ。実際に……」
「!」
三雲はどこか驚いたような顔をしたいた。
「ウチは防衛隊員は迅さん以外に3人しか居ないけど、みんなA級レベルのできる人だよ」
パーフェクトオールラウンダーの隊長にその弟子とボーダー最大火力のアタッカーと言うチームだからな。
「玉狛支部は少数精鋭の実力派集団なのだ!」
宇佐美は実力派と言うと三雲は唾を飲み込み驚いているようだった。
「君もウチ入る?メガネ人口増やそうぜ!」
「……増やすのも大概にしろよ?宇佐美」
「分かっているって!」
ホント、分かっているのか?宇佐美の奴は?まあ、それは三雲の問題だから俺には関係無いけど。
すると今まで黙って話を聞いていた雨取が手を上げていた。
「あの……さっきあの迅さん……が言っていたんですけど、宇佐美さんも『むこう』の世界に行った事あるんですか?」
「うん。あるよ。1回だけだけど」
雨取はネイバーフットに興味があるようだな。兄が居るかもしれないからな。それは気になるよな。
てか、宇佐美の奴すんなりボーダーの機密を喋っているんだけど、止めた方がいいだろうか?
まあ、別にいいか。
「じゃあ……その『むこう』の世界に行く人ってどういうふうに決めているんですか?」
「それはねーA級隊員の中から選抜試験で選ぶんだよね。大体はチーム単位で選ばれるからアタシも付いて行くんだけど」
その試験に次は比企谷隊が参加するんだよな。急に緊張してきたな。
「A級隊員……。……って、やっぱり凄いんですね……」
「400人のC級に100人のB級のさらに上だからね。そりゃツワモノ揃いだよ」
やっぱり試験とかネイバーフットの事とか兄の事が気になるんだな。てか、兄が妹を置いてどこかに行くとか兄の風上にも置けない奴だな。
話が一区切り付くと同時に今まで消えていた迅さんが現れた。
「よう3人とも。親御さんには連絡して今日はウチに泊まっていけ。ここなら本部の人達も追って来ないし空き部屋もたくさんある。比企谷もついでに泊まって行けよ」
「俺もですか?」
「小町ちゃんに連絡しておいたから」
「な、何だと!?」
俺は驚きが隠せなかった。あの迅さんが妙に優しい。これはあれか?後でとんでもない無茶な頼みを聞かされるのでは無いだろうか?
「そんなに驚くなよ比企谷。それと宇佐美、面倒見てやって」
「了解!」
宇佐美はビシッと敬礼をした。それにしても早く寝たい。
「遊真とメガネ君。来てくれ。ウチのボスが会いたいって」
「は、はい!」
「うむ。わかった」
三雲と空閑は迅さんに連れられて上の部屋に向かった。と思ったが急に迅さんが引き返してきた。どうしたんだ?
「比企谷に会わせたい人がいるんだった」
「……会わせたい人?」
一体誰だろうか?もしかして今から会いに行けとか言わないよな?迅さん
「それではレプリカ先生、お願いします」
《ああ。心得た》
どこかで聞き覚えのある声がしたと思ったら俺の視界に宙に浮く黒い物体が入って来た。な、何だ……これ!?
《初めまして私はレプリカだ》
「こ、これはどうも比企谷です……」
「それじゃ後、よろしく」
迅さんは上の部屋に向かった。どうしろと言うんだ!?これ。
「それじゃ千佳ちゃん。私達は向こうで話そうか?」
「は、はい!」
宇佐美に助けてもらおうとか思ったが、雨取を連れて別の部屋に移動してしまった。それにしても気まずいな。
とりあえず自己紹介した方が良いのか?元ボッチとは言え何者か分からないのにどう自己紹介したらいいんだよ!!
《では、改めて。初めまして私はレプリカ。ユーマのお目付け役だ》
「……お目付け役?」
《そうだ。こちらとむこうで常識が違うのでユーマにアドバイスを送るのが私の役目だ》
「なるほど……あ、じゃあこちらも改めて……ボーダーA級比企谷隊隊長の比企谷八幡だ。よろしく」
《ああ。よろしく頼む》
何だか妙な感じだな。聞いてみるか。
「えっと、レプリカ?……は一体何なんだ?」
《私は自律型トリオン兵だ》
「自律型か……ネイバーフットには凄いのを作る奴がいるんだな」
《ちなみに私を作ったのはユーマの父のユーゴだ》
空閑の親父さんか。どんな人なんだ?気になるな。
「ん?親父さんと『こっち』に来ていないのか?」
《ああ、来ていない。ユーゴはすでに死んでいる》
「……死んでいるのか」
《正確に言えば、ユーマのブラックトリガーになっている》
空閑のブラックトリガーの核は自分の父親か。ちょっと興味があるな。
「聞いてもいいか?空閑の過去を」
《少し長くなるが?それでも構わないか?》
「今夜はここに泊まるから問題ない」
《そうか。では話そう。ユーマの過去を》
レプリカが話す前に俺は玉狛支部の空き部屋に移動した。誰に聞かれるわけでもなかったがなんとなくそうした方がいいと思ったからだ。
今夜は眠る時間が少なくなりそうだな。それと面倒な事になりそうだなと思った。
それと後で小町に連絡して迅さんが何を言ったか、聞いておかないと。余計な事は言っていないよな?あのセクハラ常習犯は。