やはり俺がボーダーA級部隊隊長をやっているのは間違っている。-改訂版ー   作:新太朗

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村上鋼

由比ヶ浜の木炭クッキー作り、並びに試食をした夜。

俺は、鈴鳴支部に向かっていた。その理由は鈴鳴第一の隊長の来馬さんから、急遽合同防衛任務の頼みが来たからだ。

支部に向かう前にタイ焼きを鈴鳴第一の人数+俺の分を買って、まだ時間があるので何故、今夜の任務に俺を呼んだのかを聞こうと思った。

ちなみに浅葱や他の女子メンバーは他の隊のオペレーターの女子達と共に女子会をやっている。

よかった。来馬さんからの防衛任務のお誘いがあって。女子会は比企谷隊の作戦室で行われるので、必然的に俺は追い出される。俺、隊長なのに……。解せん。

そんなこんなで鈴鳴支部に着いた。

 

「おじゃましま~す。来馬さん、いますか?」

 

「あ、いらっしゃい比企谷君。今日はごめんね急な頼みを聞いてもらって。よかったらお饅頭があるけど、食べる?」

挨拶をして支部に入ると出迎えてくれたのは、鈴鳴第一隊長の来馬さんだった。

 

「それでしたらタイ焼きを買ってきたんで、食べましょう。……ところで、村上先輩は?」

 

「今、鋼は……」

と来馬さんが言い掛けた時に部屋に入ってきた人物達が挨拶して来た。

 

「あ、比企谷君。いらっしゃい」

と今さんが挨拶して来た。

 

今結花。鈴鳴第一のオペレーターで何かと面倒見がいい人で成績優秀で料理上手で陰ながら鈴鳴第一を支えている大和撫子のような人だ。

 

「あ、比企谷先輩。いらっしゃいです」

と次に挨拶して来たのは、別役だった。

 

別役太一。鈴鳴第一のスナイパーで鈴鳴ムードメーカーの元気ボーイだ。ただ、この別役は相手を思って行動しているんだが、何かと空周りして色々と台無しにしている。

過去に、俺が飲んでいたマッ缶を別役の行動で零してしまいキレそうになったほどだ。その時は来馬さんが謝り、新しいマッ缶を買ってもらい、怒りは何とか収まった。

 

これで、鈴鳴のメンバーは後一人になった。

村上鋼。鈴鳴第一のアタッカーでボーダーナンバー4アタッカーだ。

過去の対戦では7対3で、俺が勝っている。ただ弧月一本での戦いだったら村上先輩の方が上だ。

あの人、今何をやっているんだ?俺がそう考えていると、来馬さんからお願いと荒船さんの話を俺に聞いてきた。

 

「実は、比企谷君にお願いがあるんだ。鋼のことなんだけど、荒船君がアタッカーからスナイパーに転職したのは、知っているかな?」

 

「荒船先輩のことは、知っていますよ。それが何か関係あるんですか?」

 

荒船哲次。B級荒船隊の隊長で、数日前にアタッカーからスナイパーに転職した人だ。本部ではそれなりに接点のある人で、ある計画を荒船先輩と一緒になって進めているところだ。

 

「荒船先輩の転職で何か村上先輩にあったんですか?」

 

「……見て欲しいことがあるからこっちにきてくれないかな?」

と、来馬さんに案内されたのは鈴鳴の倉庫と思われる場所だった。

中を見て見ると、村上先輩が体育座りでガチ泣きしている光景だった。

俺は村上先輩のことについて来馬さんに聞いてみた。

 

「これは、何ですか?……どうして村上先輩は泣いているんですか?」

 

「さっきの荒船君の転職のことで泣いているんだ。鋼は荒船君がアタッカーを止めたのは自分の所為だと言ってるんだ」

 

「…………オレの所為なんだ。……いつもそうなんだ。…………俺が楽しくなっていると、最初からいた人間はいなくなっていくんだ。…………グループの場が壊れるんだ。今回だって、オレは荒船から理論を教わっただけ……本当はやるべき苦労をやっていないんだ。……オレはサイドエフェクトでみんなの努力を盗んでいるだけなんだ……」

 

村上先輩のサイドエフェクトは『強化催眠記憶』と言うもので、体験して眠ることでほば100%自分の経験に反映することが出来る。

俺のサイドエフェクト『脳機関強化』とは近いようで違う。村上先輩は一度眠る必要があるがおれのは、眠る必要はない。

俺のは、起きていても記憶していくし何より脳への負担が大きい。だから俺はマッ缶を飲んで糖分を摂取する必要がある。その所為で中学の時に勉強が出来るボッチと訳のわからない理由でよくいじめられた。

サイドエフェクトを持つ者は日常生活で、結構苦労している人がよくいる。菊地原とか耳がいいからよく陰口が聞こえてきたとか。

 

だが、荒船先輩の転職で村上先輩が凹むのは間違っているような気がする。俺はそのことを村上先輩に言った。

 

「村上先輩。……俺は人から、師匠から業を盗むことが間違っているとは、思いません」

と俺が言うと鈴鳴のメンバー全員が俺の方を見てきた。

 

「どういう意味だ。それは……?」

と聞いてきたので俺なりの師弟関係について説明した。

 

「弟子は師匠から教わり、また、その技術を盗んで強くなっていくものだと思うんですよ。だから村上先輩が荒船先輩の業を盗むということは、自分が強くなるためでしょ。何を落ち込む必要があるんですか」

 

俺の話しを聞いてか少しだけ村上先輩の表情が元に戻った気がした。それにしても、荒船先輩はあの計画のことを言ってないのか?一応説明しておくか。

 

「俺は、なぜ荒船先輩がスナイパーに転職したのか。その理由を知っています」

 

「「「「……………………はぁ!?」」」」

と、俺の言葉に四人の間抜けな声が聞こえた。

 


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