魔法ってこんな殺伐としたものだったっけ?   作:納豆坂

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ep7

「んでー問題の魔力反応ってどこよ?」

〈んーちょっとまってね……。あ、神社の上にいるあれじゃないかな〉

 

 ……犬っぽいなにかがそこにいた。

 

「なんていうか戦闘になる予感しかないな。バルムンクセットアップ」

〈セーットアーップ〉

 

 

 

「んで、着替えたのはいいけど、あれいったいなんなんだ?」

〈補足した魔力反応があのわんわんの中にあるから、神社だし変な怨念みたいなのの影響うけちゃったんじゃないかなー?〉

 

 なにそれ怖い。

 

「霊的な何かに反応したってことでいいのか?」

〈霊的なっていうよりも、不安定な魔力結晶が神社に宿る念に反応したってだけだね。残留思念っていったほうがいいのかな?〉

 

 いやそれも十分いやなんだが。

 

〈くるよマスター〉

 

 飛び掛ってくる犬からバックステップで大きく距離をとる。

 バルムンクとの仮想戦闘はいやというほどやった俺だが実戦はこれが始めてだ。

 慎重にいくことに越したことはないだろう。

 

「バルムンク!」

〈了解!〉

 

 見た目から近接攻撃しかもっていないだろうと決めつけて遠距離からチクチクしてみる。

 二年間痛みに耐えただけあって魔力量も上がっており、カートリッジによるブースト無しでもそれなりの威力をもつに至った俺の魔力弾により大きくその身を削られていく。

 

「今までがんばってよかった……」

〈ボーっとしてないでマスター! まだ終ってないよ!〉

「プロテクション!」

 

 完全に油断していた俺に飛び掛ってきた犬をプロテクションで弾き飛ばす。

 

「あっぶねー完全に油断してたわ」

〈全身を吹き飛ばすか、元となる魔力結晶を切り離すかしないとすぐに再生しちゃうよ〉

 

 再生するからちょっと削ったぐらいじゃ意味が無いと。

 切り離すのは中心になっている魔力結晶の位置がわからないので却下。

 つーことは高威力の魔法で吹き飛ばすしか選択肢はない訳だ。

 

「再生持ちなら練習相手にはちょうどいいな」

 

 俺は距離をとりながらも、堅実に魔力弾を足に当て機動力をそいでいく。

 再生を繰り返しながらも迫ってくる犬に、少しずつだが確実に交わす距離を少なくしながら攻撃する。

 

〈いいよマスター! その調子〉

「バルムンク、セイバーモード」

 

 何度攻撃を交わしただろうか、相手の動きに慣れてきた俺は直接斬りつけ足を切り落とす。

 

「チェーンバインド」

 

 切り落とした足が再生しきる前にバインドで拘束し、再び距離をとる。

 

「バルムンク!」

 

 名前を呼ぶだけでバルムンクが俺の意思を汲み取り、カートリッジ炸裂させる。

 確実にオーバーキルになるであろうだけの魔力が俺の体に満ちていくが、このカートリッジシステムにはリスクがある以上やばくない状態で試運転しておくことにこしたことはないだろう。

 

「マジックカノンチャージ。ファイア!」

 

 突き出した切っ先から青い光の奔流があふれる。

 光が消えるとそこに犬の姿はなく、青い宝石のようなものがあった。

 

「これがさっきのの本体って訳か」

〈ずいぶんと状態が不安定だけどやっぱり高濃度の魔力結晶だね。人の願いとか祈り、感情ってのはすごく弱いけど一種の魔法だからそれに反応しあんなのが出てきたんだと思うよ〉

「このまま持ってて大丈夫なのか? 俺もあんなふうになったりしないよな?」

〈ちゃんと封印すれば大丈夫だよ。とりあえずあずかっておくねー〉

 

 バルムンクについている宝石に、今手に入れた魔力結晶を入れる。

 ……そこ収納スペースだっのか。

 

「夜の神社だったからまだよかったけど、あんなんが街中にでてきたらやばいな」

 

 明日にでもすずかの家のやつを回収しないとだな

 

〈あと20個あるからねー。どうするのマスター?〉

「どういった代物かわからんけど、あんなんが出てくるだけのものが21個もあるわけないし、ちゃんとした手順を踏めば使い物になるんだろ?」

〈なんでそー思うの?〉

「お約束、予定調和、テンプレってやつから推測した。俺の解釈ではそういったのは統計的に一番確立が高いからこそのものだと思ってるからな」

〈答えは正解。本来の用途は魔力タンクってところだろうね〉

「街を守る、魔力結晶が手に入る。正に一石二鳥だな」

〈……マスターこれ使う知識ないじゃん〉

「そこは優秀なデバイスさんにお任せしますよ。神様特製のデバイスなのにまさかできないーなんて言わないよなー」

〈そりゃできるけどさー。そのかわり帰ったらちゃんとお手入れしてよねー。変なの斬って汚れちゃったんだから〉

「そんぐらいよろこんでやりますともさ」

 

 

 

 

 


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