「将来……か……。みんなはもう結構きまってるんだよね?」
お昼休み、お弁当を囲みながらなのはがそう切り出してきた。
「あたしは両親とも会社経営だし、いっぱい勉強してちゃんと跡をつがなきゃなーって」
「あたしは機械系が好きだから、工学部に進学して専門職かなー」
明らかに小学三年生とは思えない二人。
俺が知らないだけで今時の小学生ってこんなもんなの?
「んで、なのはは? 翠屋の二代目なんでしょ?」
「んーそれもビジョンとしてはあるんだけど……。あたしこれといって取り柄もないし、なんかもっとできることがあるんじゃないかなーって」
「バカチン! そんなこというんじゃないの! それに、あんたあたしより理数の成績いいっていうのにどの口がそんなこというのよ!」
そういってなのはの口をむにむに引っ張るバーニー。
「誠君はどうなの?」
じゃれる二人を無視してお弁当を食べながらすずかが聞いてくる。
「俺? 夢は大きくお嫁さんって思ってるけど」
「あんたね……」
いつの間にかじゃれ終わったらしく、バーニーがこちらを睨んでいた。
「夢っていうのは不可能に挑戦するものだってよく言うじゃん。だからお嫁さん。ほら間違ってない」
「はい却下。もっと真面目に考えなさいよね」
「じゃあ適当に進学してバーニーの会社で雇ってもらう」
「あんたね……。学年でも一番の成績の癖に何いってんのよ!」
学年一位って言っても転生者だし普通じゃね?
「っていわれてもなー。やりたいことなんて何もないし。あ、でもかわいいお嫁さんは欲しいな。まあそれぐらいかな。まあ将来の夢が見つかっていないもの同士仲良くしようね、なのは」
「あんたみたいなのとなのはを一緒にするんじゃないわよ! なのは、ああいうのはちゃんと反面教師にするのよ」
「わかってるよアリサちゃん」
……なにげにひどくね? お前ら。
その夜の事。
〈マスター! 高魔力反応21、うち19個の反応を見失っちゃったー。ごめんね〉
「気にすんな。どうせそれも規定事項なんだろ? そうでもなきゃ見失うわけないしな」
じいさん謹製のデバイスがそんなミスをするわけがない。
そのぐらいは二年の付き合いの中で俺が一番よくわかっている。
つまり、これがじいさんの望む事件の始まりなのだろう。
「とりあえず捕捉した反応の場所を表示してくれ。どうせ危険なものなんだろうから今すぐそこに行く」
〈了解マスター。んっとこことここだよー〉
空中に地図を表示するバルムンク。
「神社と……すずかの家じゃねえか」
〈どっちから行くのマスター?〉
「とりあえず神社だな。すずかの家は正面から行くには時間が遅いし、忍びこむにはリスクがでかい」
同級生の女の子の家に夜中忍び込むとか、ばれたら社会的に死ねるからな。