New Styles ~桜井夏穂と聖森学園の物語~   作:Samical

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 今回は初挑戦の日常もとい野球から離れたお話です。
 
夏穂たちのグラウンド外の姿をお楽しみください。意外な奴らが活躍するかも・・・?

P.S.一部ミスを修正


Break time Story 夏穂と仲間たちの高校生活譚

  ・聖森学園の日常 その1 「夏穂たちと文化祭」

【これは夏穂や松浪たちが木寄たちに相談をした少し後日のお話です】

(夏穂視点・・・)

 秋も深まって来た11月。聖森学園は来る文化祭に向けて学校全体が盛り上がっていた。私たちのクラスでもホームルームにて会議が始まっていた。実行委員であるトモ(周りに煽られて「やってやろうじゃねえか!」と言ってしまったのが全ての始まりだったのだが)が前に立って話を進めた。

「・・・って訳で、ウチのクラスは何を出すかを決めるんだけど、意見あるやつは?」

「当っ然っ!! メイド喫茶でやんすううう!!!  ってぐべはっ(でやんす)!?」

「アンタはそんなのばっかりかっ!」

 すかさず自分の意見(欲望)を顕示した矢部川くんに姫華がツッコむ(もとい引っ叩いた)。

「ま、まあ矢部川の意見は置いておいて他にあるか?」

「「「うーん・・・」」」

「「「いざ聞かれたら困るなあ・・・」」」

「今のままだとメイド喫茶になるけど・・・」

「「「それだけは嫌!!」」」

「いいじゃないでやんすか!」

「ダメだよっ!!」

 とこんな感じで大騒ぎに。メイド喫茶はしたくない女子陣と矢部川くんに乗っかる形でメイド喫茶を推す男子陣で議論が起きる。め、滅茶苦茶だ・・・。そんな中に恵は「はい、は~い」と手を挙げる。

「メイド? は置いといて喫茶店にしようよ~。なんだか文化祭らしくていいかな~って~」

「そうだな、喫茶店はアリだな・・・。他にはないか? ・・・うん、なさそうだな。じゃあこれで決まりだな」

「メイド・・・」

「しつこいよっ!」

 というわけで私たちのクラスは喫茶店を開くことになった。

 

 準備を進める中で役割分担も始まっていった。

「料理できる人って誰かいるの?」

「俺はできなくはないけど?」

「トモは知ってるよ、他には?」

「私出来ない~」

「恵、それなら言わなくていいって・・・」

「私、お菓子ならできるよっ!!」

「じゃあ姫華はデザート担当ね」

 と、まあこんな感じでクラスの40人を料理班13名、接客班16名、その他宣伝などを請け負うメンバー11名に分かれた。トモ、姫華、大は調理班に私と恵、彩ちゃん、風太は接客班に矢部川くん、田村くん、元木くんは宣伝などのフリー班に決まった。

「っていうか大って料理できるんだね」

「・・・ああ、俺も自炊してるからな」

「俺と大は一人暮らしだからな。風太はわざわざ自宅から通ってるけど」

「トモと大はそうしてるのに風太は?」

「あいつは案外適当な私生活で親が許してくれなかったんだよ」

「なるほど・・・」

 夢尾井組にも色々あるんだね・・・。私は料理が出来なくはないけど、トモ達ほどではないので彩ちゃんや恵、風太と共に接客班になった。矢部川くんのメイドの案は通らなかったが接客班は制服の上からエプロンを着るか、着たければ何かコスプレをしていいということになった。・・・まあ、したがる人はそうないと思うけど・・・。

 

 なんだかんだで迎えた文化祭前日。授業は無しになって文化祭の準備に当てられることとなり、学校内は早くもお祭りムードとなっていた。

「今日で一気に追い込みかけるからな! しっかりやれよ!」

「「「おおー!!」」」

 トモの音頭でみんなが準備を開始する。

「メニューの方はどうしたの?」

 文化祭だし、そんなに多くはできないはずだし・・・。

「夏穂か、メニューはこれだよ。ちなみに料理班のリーダーは福山だからなんかあったら福山に伝えてくれたら全員に伝わるから」

「ん、理沙に伝えるんだね。わかったよ。LINEでいいよね?」

「ああ、頼むぜ」

 クラスのLINEとは別に各班ごとのグループがあるそうだから、リーダー(ちなみに接客班は私が、フリー班は矢部川くんがリーダー)に伝えればグループ全員に伝わるって算段だね。ちなみに福山、というのはウチのクラスの女子で料理部所属の女の子で私は下の名前の理沙って呼んでいる。

「って、こんなにメニュー出して大丈夫!?」

「なんでもメインはサンドイッチで挟む具も家庭科室で調理済みのものを使うから問題ないってさ。飲み物も小型冷蔵庫は借りれるそうだし。あとは・・・」

 まとめると理沙があらかじめ文化祭に向けて色々考えてくれていたそうだ。色々難しい取り決めをクリアしているあたりは素晴らしい発想だね。

一方で、接客班は簡単な接客マニュアルだけまとめたら飾りつけなどの手伝いをするんだけど・・・。

「衣装はそろえた方がいいかな?」

「そのほうがかわいいかもね~」

「でも、予算苦しくねえか?」

「「確かに・・・」」

 風太の指摘はもっともで予算は限られているからやれることには限度がる。

「でも、制服にエプロンだけだと、寂しい気も・・・」

 という彩ちゃんの意見も最もなんだけど・・・。

「小物ぐらいなら持ってきたり、買ったりできないかな~?」

「「「それだっ!!」」」

 恵の呟きに全員が反応。その案を採用して、あとは個人のセンスに任せることに。

「私服とか各自自前の衣装もアリにしたら~?」

「それはちょっと確認してくるね!」

 恵の追加の案にも応える。実行委員の生徒会の人に聞いたところ、奇抜すぎたりせず、また登下校時にはちゃんと制服を着るならOKとのことだったのでこれも採用。

 これで少しは盛り上がるといいんだけど・・・。

 あとは飾りつけ、チラシやポスター作り、宣伝(フリー班作(主に矢部川くん)の謎のマスコットが校内を闊歩し注目を集めたそうだ)などなど、順調に準備を進めていった。

 

(松浪視点・・・)

 そして文化祭当日、準備は万端。あとは開催と夏穂たち接客班が着替えるのを待つばかりなんだが・・・、

「接客班はどんな格好するでやんすかねえ!」

「特に女子陣は楽しみだぜ・・・」

「メイドにできなかったのが残念だが・・・」

「おい3バカ、お前ら欲望丸出しなんだよ・・・」

「「「何が悪い(でやんす)!」」」

「開き直るなよ!」

 こいつら・・・。

「着替え終わったよー!!」

「おう、待ってたぞ」

 そういって接客班組は教室に戻ってくる。

「「「おおお・・・!!」」」

「「「きゃー! すごーい!」」」

 男女関わらず歓声を上げる。風太などの男子は制服のブレザーの代わりに各自好きな色のジャケット(似合うのが無かった奴には風太が貸しているらしい)を羽織ることにして若干ホストのような印象になってる。まあ、髪を染めたりしてるわけではないので服だけとはいえなんだかいつもよりかっこよく見えるな。

 一方の女子陣は各々私服を持ってきていたらしい。さすがに女子陣はふだんからおしゃれをしているからか私服も中々だった。

「夏穂ちゃん、似合ってるでやんすねえ」

「ああ、ありがとね!」

「にしても野球のユニフォーム着てる時とは別人だな」

「3バカ、にやけ過ぎだぞ」

「「「なっ!!」」」

「お前ら本当に仲いいな・・・」

 夏穂は白のカッターシャツに黒のスカートという普段の活発さとは対照的なシックな色合いの服に黒のエプロン着用、頭には黒のベレー帽といったいで立ちだった。

「どうよトモ、似合ってるでしょ?」

「ああ、なんかいつもと違って良家のお嬢様みたいだな」

「いつもとは違って、とは失礼な!」

「私がアドバイスしたんだ~」

「ああ、恵がか。・・・お前も似合ってるな」

「へへ~、そりゃどうも~」

 恵はスカートではなく普通のボトムスを履いてる。元々背も高くて足も長いから際立って見える。上は夏穂に似て白のカッターに黒エプロンだった。彩香も夏穂に似た感じの服で頭にはこちらは白い花飾りがついている。どうやら女子陣はモノトーンをテーマにしたみたいだな。

「よし、全員揃ったな2日間の文化祭、しっかりやり切るぞ! ファイト!」

「「「「おおおおお!!」」」」

 

(風太視点・・・)

 文化祭が始まる。今日はまだ平日なので客は生徒がメイン。店を出していない1年生と自由時間を謳歌する生徒がほとんどだ。とはいえウチの学校は出来てすぐなので1年生が2,3年生の1.5倍くらいいるから客は意外と多い。

「カフェオレ2つとタマゴサンド2つ! オーダー入ったよ!」

「了解!」

「こっちは~、バニラアイス2つとコーヒーとオレンジジュースだって~」

「すぐ作るねっ!」

 とまあ中々の大盛況。接客班も調理班も忙しく動き回る。

客の会話や様子を見てみたけど・・・、あっ、あれはウチの部員の田村快都と草野、白石じゃねえか。

「・・・快都、ずっと何見てるんだ?」

「そりゃあおめえ、夏穂さんに決まってんだろ? あんな可憐な姿、眼福だぜ!」

「夏穂さんもいいけど、彩香さんや恵さんも・・・、普段と違う姿が映えるなあ・・・」

「・・・シゲ(1年の中での草野のあだ名、繁光から来ている)まで・・・」

「そーいう白石は気になんねーのかよ!」

「俺はそういう目で先輩たちは見ていない・・・!」

「またまた~、そんなわけ・・・」

「おう、お前らくつろいでくれてるか?」

「「「風太さん!?」」」

「いちゃ悪いのかよ・・・」

「いや、そういうわけでは・・・」

「まあいいや。まあお前らも客だし・・・、ゴホン。注文の品、ハムサンド、タマゴサンド2つ、それとアイスコーヒー3つ、お持ちいたしました。では、ごゆっくり」

 そういって俺は恭しく頭を下げて引き下がっていく。

「「「(ホ、ホストか何かか・・・!?)」」」

 ・・・ホストみたいだと思ってんだろうけど・・・、こういうマニュアルなんだよ。夏穂の奴め、絶対楽しんでやがる。練習の時も1発目は爆笑してやがったし・・・。

 とはいえ、女子陣も似たようなもんだから多少は恥ずかしいと思うんだが・・・、

「はい、注文承りました! では、ごゆっくりどうぞ!」

 そういって注文を取っていた夏穂はお辞儀をしてから引き返す。客である男子生徒(おそらく2年)はデレデレしていた。

 ・・・あいつは楽しそうにやってやがる・・・。恥ずかしさもねえのか・・・。

「注文、お願いします」

「はい、ただいま!」

 そういってすぐさま夏穂が飛び出していく。元気だな・・・。だけど元気に注文取りに行った夏穂だったが客の顔を見るなり固まっていた。良く見たら客は木寄さん、御林さん、岩井さんだった。

「あ、ちゅ、注文は・・・」

「あら夏穂、似合ってるじゃない」

「練習の時とはまるで別人だな」

「僕はすごく似合ってると思うよ」

「あ、ありがとうございます・・・」

 滅茶苦茶顔が真っ赤になって今にも火を噴きだしそうになってる。さすがにあの人たちの前でやるのは恥ずかしかったか。

「じゃあ、これと、これと、これで」

「は、はい、注文ありがとうございます」

「あとさっきのやってくれない? かわいかったから」

「え、ええ・・・」

 木寄さん、悪い顔してるな~。きっと夏穂がノリノリでメイドっぽい店員をしていたのが面白かったのだろう。メイド喫茶に反対しながらも雰囲気作りを求めた結果、ホストとメイドの接客っぽくなったからな・・・、マニュアル。

「で、では・・・、ごゆっくりどうぞ・・・っ!」

 そう言うと夏穂は顔をさらに真っ赤にして引き返していった。見に行ってみると裏の方で「うう・・・、木寄さんたちにガッツリ見られちゃうとは・・・」とまだ顔を赤らめていた。

「巡り巡ってお前の自業自得じゃんかよ・・・」

「ここまで恥ずかしいとは思わなかったの!」

「それは気づいとけよ!」

 聞いてみると考えている間は楽しかったらしい。いざやるとなると思ったより恥ずかしく、開き直ってやっていくことにしたものの流石に知り合いには恥ずかしいと感じたそうだ。もっと早く気づけよ・・・。でもこれで少しはマニュアルを変える気に・・・、

「で、でも途中で投げ出したダメだと思う!」

「何だよ、その謎の意志の強さは!」

「みんな、まだまだ頑張るよっ!!」

「「「おおおっ!!」」」

 ・・・もういいや、どうにでもなれ・・・。

 

(松浪視点・・・)

色々とあったが1日目はなかなかの繁盛っぷりを見せ、さらに「かわいい女子が店員をやってる」という噂が飛び交い、2日目には生徒だけでなく一般の人向けにも開放されたこともあって多くの人が訪れ無事に全商品が完売。見事に黒字で終えることに成功した。まあ料理班も大車輪の働きをする羽目になったんだが(俺は決められた通りの盛り付けを、大は出す料理の下準備のほとんどを、姫華もデザートの大半をこなしていた)。

 後日にはこの模擬店を出したことにより様々な出来事があった。

 ・・・まあ、主なこととして、1つは大が料理男子として女子陣から注目され始めたこと。大柄だし寡黙で近寄りがたかった存在から料理の話ができる存在に変わって話しかけやすくなり、交流の幅が広がったみたいだ。このことは大の親友として嬉しい限りだ。そしてもう一つは・・・、

「・・・ついに手に入れたでやんすよ・・・! 夏穂ちゃんが接客してる時の写真!」

「マジか! 見せてくれ!」

・・・とまあ、店員をやっていた女子陣の写真が出回ることになったらしい。これに関してはウチのクラスだけではなく他クラスの生徒のもの(お化け屋敷の仮装とか)も出回ったりしてるのだが・・・。さすがというか2年生の中でも人気の夏穂の写真は人気のようだ。・・・それ盗撮なんだけどな・・・。まあ、俺が手を下すまでもなく・・・、

「矢部川! それは没収―っ!!」

「ふぎゃー、でやんす!」

 矢部川たち3バカには姫華による鉄拳制裁が下された。・・・あいつらなんだかんだで実は仲良いんじゃないだろうか?

 

*      *      *      *       *

 

  ・聖森学園の日常 その2 「野球部員-野球=・・・?」

【これは文化祭の少し後のお話です】

 

「パス! パ~ス! 夏穂!」

「よし来たっ! 姫華・・・、と見せかけて恵!」

「あ! しまった!」

 体育の授業、広い体育館の片面では女子がバスケットボールをしていた。野球部女子陣+αVSサッカー部女子陣の戦いは大きな盛り上がりを見せていた。

「空川さんには撃たせないよ!」

「ん~、じゃ~パ~ス」

「うわっ!?」

 恵がのんびりした動きから突然パスを出す。その先には、先ほどパスを出した後にゴール近くに走り込んだ夏穂にボールが渡り、

「よっと!」

 華麗にレイアップシュートを決めて見せる。そして試合終了の笛が鳴った。

「きゃー! 夏穂ちゃんすごーい!」

「あれならウチに入っても戦力になるわ・・・!」

「また夏穂にやられた・・・」

 夏穂は5分の試合で2つのゴールと2つのアシストを記録する奮闘ぶりだった。女子バスケ部の部員たちも太鼓判を押す大活躍だった。

「夏穂ちゃん、いえ~い!」

「いえーい!!」

「さすが夏穂っ! かっこいいね!」

「恵と姫華もナイスシュート! あと奈子と由衣もシュート決めてたし!」

 奈子と由衣とは夏穂のクラスメートの大平奈子と鈴木由衣のことでそれぞれテニス部と吹奏楽部である。

「何言ってるのさ、守備の注意をほとんど夏穂が引き付けたおかげだよ!」

「そーそー。ずっと走り回ってたしー」

 とそれぞれチームメイトを讃えあっていた。

 一方、男子はもう一方の面でフットサルをしていた。矢部川たち3バカは休憩中に女子の方を眺めていた。

「いや~、女子陣の体育を見れるとは眼福でやんすう!」

「まったく同意だぜ!」

「右に同じく!」

 と完全に注意を女子の体育に向けていたのだが・・・

「おーい! お前ら危な・・・」

「グハアアア!?(でやんす)」

 大体こういう時の被害者は矢部川である。飛んできたボールを頭に食らってしまった。ボールを飛んできたクラスメイトの倉がボールを取りに来た。

「あ~あ、お前ら目を離してたらダメだって言われてただろ・・・」

「「「すぐそこに楽園があるんだよ(でやんす)!」」」

「次はお前らと俺らの番なんだよ! 来ないなら順番飛ばすぞ!」

「「「すいません、すぐに行かせていただきます!」」」

 なんだかんだで体を動かすことが好きな野球部員の面々だった。

 

*      *      *       *       *

 

 キーンコーンカーンコーン・・・

時間はお昼休み。そして学生にとって戦争にも等しいこの時間が・・・、

「食堂に、急げえええ!!」

「くそう、授業がちょっと延びちまった!」

「諦めて購買に狙いを変えるぞおお!!」

 といった具合で大騒ぎとなる。去年までは生徒数も少なかったのだが1年が増えたこと、その中に新しくできた寮に入った食堂利用者がそれなりに多いことが原因で混雑するようになったのだった。それに伴い購買も食堂に行けなかった生徒であふれかえるようになり売り切れも続出するように。人気のメニューなどはなおさらだ。そのためこのような激しい争奪戦が始まってしまうのだった。

「・・・ああいうの見てたら弁当作っておいて正解だったと思うぜ」

「そ、そうだな・・・」

 松浪や風太、竹原は弁当持参組だった。一方で夏穂や恵、姫華、矢部川たち3バカは食堂へと向かっていた。そして20分後。

「いやー、今日はなんとか間に合ったよ」

「助かった~」

「ギリギリだったけどねっ!」

 夏穂たちはなんとか間に合ったようだが一方で矢部川たちは・・・、

「負けたでやんす・・・、なんだか今日の購買のパンは敗北の味がするでやんす・・・」

「2連敗だな・・・」

 どうやら3バカはダメだったようだ。

「なあ、そんなに毎日争ってるなら敢えて最後の方に行くとかさ・・・」

「「「腹減るじゃん(でやんす)!!」」」

「お。おう」

 確かにそれは分からないでもない松浪。

「(まあ、見てる分にはおもしろいからいっか)」

 

*      *       *        *

 

  ・聖森学園の日常 その3  「3バカと満と可愛い彼女?」

 

 この日は練習が休み。そのため矢部川たちはどこかへ寄り道するかを相談していた。金曜日なので明日からは練習が続く、そのため今日のうちに遊んでおこうというところだ。

「カラオケでも行くでやんすか?」

「うーん、そうだな~」

「・・・野郎3人で遊びに行くのも悲しいな」

「「それは言わない約束だ(でやんす)!!」」

「確かにそうだけどよ・・・。ん? あれ満じゃねえか?」

 元木が指さした先には確かに満がいた。寮は学校のすぐ近くなのですぐに着替えて出てきたようだった。そして、満は駅の方へと歩いていく。

矢部川たちもどちらにせよ駅付近のアミューズメントパークに行くつもりだったので少し後を付けてみることにした。学校が終わってあまり時間も経ってないのに既に一度着替えて出かけている満に興味が湧いたのが大きい。

「そういえば満ってクールだよなあ」

「夏穂ちゃんとは対照的でやんすね。でもその夏穂ちゃんから溺愛されてるでやんすね。夏穂ちゃんに満くんの話を聞くとすごく嬉しそうに話すんでやんすよ」

「いいなあ、おれもあんな可愛くて優しそうな姉ちゃんがいたらなあ・・・」

 などと話していると到着したのは学校最寄りの望田駅。満はその構内で改札に入るでもなく、スマホと時刻表を確認していた。

「待ち合わせでやんすかね?」

「なんなんだろうな・・・、って、ああっ!?」

「「!?」」

 遠目に満を観察していた3人は驚愕した。普段クールなイメージの満が待ち合わせしていたのはなんと可愛らしい女子だった。可愛らしい顔、おっとりしているようで元気さを感じる足取りもそうだが、加えて服装もその顔のイメージにぴったりのお洒落な可愛らしい格好だった。

「「「(彼女・・・、だとっ!?)」」」

 そしてそのお洒落少女は満を見つけると小走りで近寄って来て、軽く抱き着いてきた。

「「「(なーーーーっ!?)」」」

 それを見てさらに驚愕。あのお洒落少女と満はそれほどの仲なのか。

「許さん、許さんぞ・・・!!」

「俺らに内緒であんな可愛い彼女がいたとか・・・」

「こうなったらさらに追跡して弱みを見つけてやるでやんす!」

「「おう!」」

こうしてツッコミ不在で暴走中、かつ嫉妬に狂った3バカは満の追跡を始めたのだった。

 

 満とお洒落少女は歩いて駅から移動。近くのケーキショップへと向かった。二人で何かしら話しながら(遠いので会話内容は聞き取れない)ケーキを選んでいた。

「むむむ、あんな仲睦まじく・・・」

「爆発しろ、でやんす」

 そしてどうやらお持ち帰りで買ったらしく、箱を持って出てきた。2人はそのままスーパーへと向かった。

「スーパーには何を買いに行くんでやんすかねえ?」

「持ち帰りってことは家に入れるつもりか!?」

「寮に彼女連れ込むのはダメだろ!?」

 3人は戦慄しているがそんな事は知らない満たちはジュースなどを買ってまた歩き始めた。向かっているのは・・・、

「寮ではないでやんすね?」

「どこ行くつもりだ・・・?」

 そして2人が入っていったのはある綺麗なアパート。

「ここに入って行ったでやんす!?」

「追うぞ!」

 そして追っていくと2人はある部屋に入って行った。そこの部屋の表札には・・・、

「・・・桜井・・・?」

「ここってもしかして・・・」

 そして中から聞こえる声には聞き覚えが・・・、

「この声は・・・、姫華ちゃんや恵ちゃんでやんす!?」

「・・・? なんか誰かいるのっ!?」

 バ――ン!!とドアが開けられるとやはり姫華がいた。

「あれ? 矢部川たちじゃんっ! どしたの?」

「オイラ達、街中で彼女と歩いてた満くんを見つけたのでやんす!」

「それを追ってきたんだけど・・・」

「しかもその彼女めっちゃかわいいし!」

「なになに? 矢部川くんたちが来たの?」

 そう言って出てきたのは夏穂本人だった。・・・なぜか三角帽子をかぶっているが。

「夏穂ちゃん! 満くんにかわいい彼女が!」

「一緒に歩いてたんだぜ!」

「抱き着いたりしてた!」

「もしかしてその可愛い女の子って・・・」

 夏穂がいったん引っ込み、誰かを連れてきた。

「この子じゃない?」

 夏穂が連れてきたのは先ほどまで満と歩いていたお洒落少女だった。

「さ、さっきの女の子!」

「まさかお姉さんも公認の仲・・・でやんすか!?」

「あはは! 違うよ、3人とも! このかわいい子はね、私の愛する2つ下の妹の“小春”だよ」

「「「い、妹―!!??」」」

「あ、初めまして。桜井小春って言います! 野球部の人ですよね? 夏穂おねーちゃんとみっちゃんがいつもお世話になってます」

「ご、ご丁寧にどうもでやんす」

「もしかして私とみっちゃん、デートしてるように見えました?」

「あ、ああ」

「だってー! みっちゃん! 私たちお似合いだって!」

「そんなこと言ってなかっただろ! ・・・うう、恥ずかしいところを見られた・・・」

「にしてもなんで妹さんが?」

 満をからかい続ける小春に田村がもっともな質問を投げる。それには小春が答えた。

「私の中学、今日は創立記念日でお休みで部活も引退したんでこの3日を利用して夏穂おねーちゃんのおうちに遊びに来ようと思って」

「で、プチパーティをしようってことで姫華と恵、彩ちゃんも呼んで来てもらったってところ」

「「「そ、そうか・・・」」」

「あ、私この土日は練習を少し見せてもらおうかなって思ってます。その時はまたお願いしますね!」

 と小春は満面の笑顔で言った。

「「「(や、やはり可愛い・・・!)」」」

「(小春スマイルの被害者がここにも・・・。まあ可愛いし仕方ないね)」

 小春自身はあざとくしているつもりでは無いのだが、天然で見せる笑顔には普段から見慣れている夏穂さえもドキッとするものがあるようで(夏穂が妹バカなのもあるが)、この3バカたちも例にもれず見とれていた。

「で、ではオイラ達はこれで失礼するでやんす!」

「じょ、女子会の邪魔するわけにはいけねえしな!」

「んじゃ、また明日な」

「うん、また明日ね!」

「お、俺も・・・」

「だーめ! 私、みっちゃんともお話したいの!」

「だからって女子陣5人の中に1人は・・・!」

「いーじゃん、いーじゃん!」

 そこまで言ってドアは閉まってしまった。

「とりあえず分かったのは・・・」

「満くんの弱点は妹さん、ってことでやんすね」

「よしっ、謎も解けたし、気を取り直してカラオケ行くか!」

「「おおおっ!」」

 と、切り替えも速い3バカだった。(内心では明日に見学に来る小春が楽しみでもあるのだが)

 

 




 3バカを多用し過ぎた感が否めない・・・。これはこれで楽しかったのでまた余裕があればしたいです。ただ、このペースだといつまでたっても終わらないので多少はペースを上げなくては・・・。次回で23話の続きと選手紹介のおまけもやる予定です。
 ここまで読んでくださった方は次をお楽しみに、ここだけ読んだ方は前のお話も良ければ読んでもらえればうれしいです。

この作品の中で好きな登場人物は?(パワプロキャラでもオッケー)

  • 桜井夏穂
  • 松浪将知
  • 空川恵
  • 久米百合亜
  • ここに上がってる以外!(コメントでもオッケー)

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