ヤンこれ、まとめました   作:なかむ~

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どうも、ようやく新しい話が出来たので投稿しました。
今回は出したい展開を書いてたら思いのほか長くなってしまい、前・後編の投稿となります。
おまけに、今回の話は艦娘がほぼ不在という……(汗
一応、後編についてはなるべく早く上げていきますので、よろしくお願いします。





正体不明のガールフレンド

 

 

 

ある日の夕暮れ。 空はお日様が今日の務めを果たし、代わりに月と星が今日も一日頑張るぞと言わんばかりに輝きだす。

その下では、先が見えないほど長くひかれた線路をたどって、電車が一日仕事を終えて来た人々を駅へと運んでいく。

電車の中ではほかのサラリーマンたちに交じって、一人の青年がスマホをいじりながら電車が駅に着くのを待っていた。

 

 

「おっ、ちょうど遠征組も戻ってきたみたいだな。 よし、補給を終えたら少し休んでてくれ」

 

 

彼は慣れた手つきでスマホの画面をなでながら、画面を操作していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦隊これくしょん。

今、青年がはまっているゲームで、軍艦を擬人化させた少女たち『艦娘』を育成するというものだ。 史実を交えたキャラへの作りこみからプレイヤーがものすごい勢いで増えていき、サービス開始から数年たった今でも根強い人気を誇っていた。

ただ、これは本来ブラウザゲームなので、パソコン以外では遊ぶことができないのだが、運営はそれを聞いてあるサービスを行った。

それは、抽選を行い選ばれたプレイヤーはスマホからゲームをプレイできるようになるというもので、このサービスのおかげで多くのプレイヤーたちは場所を問わず遊べるようになったという。

そして、彼もまた抽選で選ばれたプレイヤーの一人で、今は電車が駅に着くまでの待ち時間を使って、日課の遠征確認を行っていたのであった。

 

 

 

 

 

全員が遠征から戻ってきたのを確認すると、彼はスマホをかばんの中にしまい、自分の膝の上に置いた。

 

 

「いやー、それにしてもほんとこのシステムは便利だよな。 おかげで遠征の効率は上がるし、何より好きな時に皆の顔を見ることができる。 運営、マジグッジョブだぜ!」

 

 

彼が歓喜に震えていると、電車は目的の駅に着いたらしく、彼はかばんを持つとそのまま電車を降りた。

 

 

「あわよくば、このままじかに皆の顔を見れたらな~。 ……って、さすがにそれはないか。 アホなこと言ってないで、明日も頑張るか」

 

 

自分の言った言葉に呆れながら、青年は改札から駅を出ると、家路につくため一人薄暗い道を歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、彼は気づいてなかった。 誰も操作していないはずのスマホに、光がともっていることを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。 身支度を整えた青年は、いつものように自宅のアパートから出ると、職場に行くため駅へ向かおうとしていた。

そんな時、アパートの前を掃除している大家さんと出会い、いつものように挨拶をした。

 

 

「あっ、おはようございます。 大家さん」

 

「やあ、おはよう。 君は、これから仕事かい?」

 

「ええ。 今日も、朝から電車でもみくちゃにされなきゃですから、今から気が重いです」

 

「あはは。 それもまた、社会人の宿命ってやつだね」

 

 

苦笑しながら話す青年に、大家さんもカラカラと笑う。

これだけだったらいつもの日常で終わっていたのだが、この日は違っていた。

 

 

 

 

 

 

「確かに、世の中は仕事以外でも大変なことはあるが、気を強く持ちなさい。 何かあったら、遠慮せず私や恋人に相談するんだよ」

 

「へっ? 大家さん、恋人って……」

 

 

大家の言葉に思わず彼は目を点にする。 何故なら、彼はアパートで一人暮らしの身で独身。 同僚などの知り合いはいるものの、恋人どころか女性の知り合いは全くいなかったからだ。

だが、そんなことを知ってか知らずか、大家はにやけながら彼を肘で突っついてくる。

 

 

「何言ってるんだ。 お前さん、あんな別嬪さんと知り合いなんだろ? それに、彼女はお前さんに差し入れを渡したいとわざわざ持ってきたんだよ。 あの時は仕事でいなかったから私が代わりに預かったけど、あの子直接お前さんに渡したかったって肩を落としてたよ」

 

 

大家はいったん自宅に戻ると、彼女から預かっていたという差し入れを彼の元へ持ってきた。 紙袋の中には、彼の好きな料理が詰められた保存用の容器があった。

その光景に青年の心臓は早鐘のようになり続け、額からは冷や汗が流れてくる。 何せ、知り合いである同僚も、ここまで自分の好みについては知っていない。

なのに、自分の彼女を名乗る人物は、なぜここまで自分の好みを知っているのか?

おのずと、差し入れを持つ手が震えてきた。

 

 

「いや、それにしても、長い銀髪が素敵な和風美人だったねー。 そのうえ、若いのに礼儀正しいし、今時珍しいよあんな子は。 大和撫子っていうのは、彼女の為にある言葉だろうね」

 

「じゃあ、私はこれで失礼するよ。 君も、彼女に嫌われないよう気を付けなよ」

 

 

楽し気に青年を茶化しながら、大家は自分の部屋へと戻っていく。

しかし、一人残された青年は全く知らない相手からの贈り物に、ただただ言いようのない恐怖に駆られていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

差し入れを家に置いてきた青年は、電車に乗った後、急ぎ足でいつも働いているオフィスに顔を出し、隣の机で仕事の用意をしている同僚へと朝の挨拶をした。

 

 

「おはよう。 今日も一日、よろしくな」

 

「おう、おはよう。 今日はいつもより遅かったが、何かあったんか?」

 

「あ、ああ… 家を出る前に大家さんと話し込んじゃってさ。 それで遅れちゃったんだ」

 

 

苦笑いを浮かべながら、青年は同僚へと返事を返す。 身に覚えのない彼女のことは話さなかった。 …というより、話したくなかった。

気にならないわけではないのだが、今気にしていては仕事に差し支えるし、何より今はそのことを少しでも早く忘れたいからだ。

しかし、そんな青年の不安とは裏腹に、同僚から出た言葉に彼は耳を疑った。

 

 

 

 

 

「そうだったのか。 でも、それは感心しないぜ。 せっかく弁当を届けに来てくれたのに、お前がいないからって物だけ置いて帰っていったんだぞ」

 

「えっ…? それって、いったい誰のことだ?」

 

「何言ってんだお前? お前の彼女を名乗る子が、ここへ持ってきたんだぞ!」

 

 

あきれ顔を向ける同僚に対し、青年は今朝の出来事を思い出し、顔が青くなった。

よもや、大家だけでなく同僚のところにまで顔を出しているとは思わなかったのだから。

 

 

「ほんと、お前も隅に置けないよな。 一体どこであんなかわいい子と知り合ったんだよ? あの子さ、お前に食べてほしいってウキウキしながらここへ来てたんだぞ。 それが、いないと分かったときのあの子の落ち込みぶりときたら、こっちが見てて申し訳ないレベルだったぜ」

 

 

恐怖で震える青年とは裏腹に、同僚はうらやまし気な口調で話を続けるが、同僚の話がひと段落したのを見計らうと、彼は意を決して同僚に尋ねてみる。

 

 

「な…なあ…… その、女の子っていうのは、銀色の長髪をした和風美人だったか?」

 

 

恐る恐る彼は自分の彼女を名乗る人物について聞くと、同僚は一瞬考え込むが、すぐに首を横に振った。

 

 

 

 

 

「うーん… 確かに銀髪だったけど、和風美人ってイメージじゃなかったな。 その子、軍服のような制服と帽子をしてたし、髪もツインテールにまとめてたから、美人というよりかわいいと呼んだ方がしっくりくる感じだったな」

 

「そ、そうなのか…?」

 

「どうしたんだお前、急にそんな質問をして? 自分の彼女なのに、どんな感じか忘れちゃったのかよ?」

 

「あっ… いや、それは…」

 

「ははーん… さては俺に自分の彼女がどう見えてるか自慢する気だな。 羨ましいなクッソー!!」

 

「あ、あはは……」

 

「まあ、いいや。 もし今度彼女が来たら、その子の親友とか紹介してくれよな! 頼むぜ♪」

 

 

同僚の勘違いに青年は無難に愛想笑いをしてごまかしていると、同僚は最後にそう言って仕事に戻った。

青年も仕事の準備を行うが、疑問を感じずにはいられなかった。 なぜ、大家の話と同僚の話が食い違っているのか?

単なる感性の違いか、それとも……

 

 

 

 

 

「…考えてても仕方がない。 とりあえず、今日の作業をこなさないとな」

 

 

青年は自分にそう言い聞かせると、仕事を行うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕焼けに照らされ、仕事を終えた青年は重い足取りで電車に乗り込む。

あれから、例の自分の彼女を名乗る女性のことが気になってしまい、仕事に身が入らなかった。

同僚が預かっていたという弁当は、そのまま捨てるのも恐ろしかったので、渋々食べることにした。 皮肉なことに、味はとてもおいしかった。

しかし、それでも気味が悪いことに変わりはない。

あの後は、また自分の知らないうちに知り合いに接触したという話は聞かなかったが、いつまたこの様な事があるかと思うと、彼も気が気ではなかったのだ。

 

 

「はあ… 一体誰なんだよ? わざわざ俺みたいなやつの彼女を名乗るなんて……」

 

 

青年はため息交じりにスマホを取り出すと、いつものように艦これを起動し遠征が終了した艦娘たちの補給を行う。

その後、演習をこなすと今回の旗艦を務めた鹿島へ補給を済ませた。

 

 

『提督さん。 いつも、ありがと♪』

 

「あはは… ゲームと分かってても、鹿島のこのセリフには癒されるな」

 

 

普段聞きなれたボイスも、今この時は彼の不安を和らげてくれるので、青年は思わず笑みをこぼす。

いつもならこのまま続けていたが、この日は不安に対するストレスと仕事の疲れがあったので、青年は早めに切り上げるためスマホをかばんに戻そうとする。 その時だった。

 

 

 

 

 

『提督さん、大丈夫? 鹿島、心配です…』

 

「えっ?」

 

 

聞きなれないボイスに思わず戻そうとしたスマホを取り出す青年。 しかし、画面にはいつも開いているスクリーンが映っているだけで、それ以外に変わった様子はなかった。

 

 

「今のボイスは一体… 新しいのが実装されたのか?」

 

 

首をかしげながらも、青年はスマホをしまうと目的の駅に着くまで、ぼうっと外の景色を眺めていたのであった。

 

 

 

 

 

家路についた青年は、ドアの前につくと鍵を開けようと鍵穴に差し込むと、

 

 

「あれ…?」

 

 

すんなりと回る鍵穴に違和感を感じる。 なぜか鍵が開いているのだ。 今朝家を出るときは確かに閉めたのに…

まさか、例の女が自分の家に忍び込んだのでは…!?

彼は慌ててドアを開けると、部屋の奥にいたのは……

 

 

 

 

 

 

「おや、お帰り。 こうして会うのは久しぶりね」

 

 

笑顔でこちらに向かって手を振る母親の姿があった。

 

 

「なんだ、お袋かよ… 脅かさないでくれ…」

 

「急にやってきたのは悪かったわ。 実は、急用があってこっちへやってきてね。 せっかく来たんだからってことで、あんたの顔を見に立ち寄ったのよ」

 

 

軽い口調で謝る母親に青年はほっと胸をなでおろし、家に上がり込んだ。

青年の家族はここよりずっと遠い故郷で暮らしており、こうして会うのは久しぶりだった。

明日は休みのはずだし、今日はのんびり思い出話でもしようかと彼は思ったが、

 

 

「それにしてもお袋、よく俺の家に入れたな。 大家さんに合鍵でも出してもらったのか?」

 

「えっ、違うわよ? あたしがここへ訪れたとき、中で掃除をしてたからそのまま上がらせてもらったのよ」

 

「掃除… 大家さんがか?」

 

「何言ってんのよ? あんたの彼女に決まってるじゃない!」

 

 

母のその言葉を聞いた瞬間、彼の手から力が抜けかばんが滑り落ちた。

あろうことか、ストーカーが知らないうちに自分の家にまで入り込んでいたなんて……!

恐怖で顔面蒼白になる青年を他所に、母親は楽しそうに話をつづけた。

 

 

「あたしも最初会ったときは、部屋を間違えたのかと一瞬焦ったわ。 全く、あんなにかわいい子がいたなんて、なんでもっと早く知らせなかったのよ!」

 

 

知らせるも何も、自分にとっては全く身に覚えのない相手だというのに…!

彼からすれば声を大にしてそう叫びたかったが、当の母親はとてもその話を信じてくれるような雰囲気ではなかった。

 

 

「そういえばあの子、外国から来たんだって? あたしも掃除を手伝ってあげたら、お礼にって母国の料理をふるまってくれたのよ。 あたしも外国の料理なんて初めて食べたけど、とってもおいしかったわ。 あの子、料理上手なのね」

 

「それに聞いたところによると、あの子あんたの事すごく好いてるって顔を赤くしてたわ。 あんなかわいいうえに、料理上手な子を捕まえるなんて、あんたも大したものね♪」

 

 

聞けば聞くほど身の毛がよだつ話だった。 自宅も職場も知られ、自分の知らないうちに家に入られ、家族には懇意にしてると吹聴している。

徐々に外堀が埋められていくような恐怖感を味わいながらも、彼は母親を混乱させないよう話を合わせようとした。

 

 

 

 

 

「あ、ああ… お袋も会ったんだな。 かわいかったろ? 俺も、あんなかわいい子に会えてよかったと思ってるんだ。 俺としては、彼女の魅力は何といってもあの銀色の綺麗な髪だと思うんだ」

 

 

だが、それを聞いた途端、母親はきょとんとした顔を見せる。

「何かおかしかったか?」と青年が尋ねると、母親はまるでまくしたてるように言った。

 

 

「銀色…? あんた、誰のこと言ってるの!? あの子の髪は、銀髪じゃなく金髪だったじゃない!」

 

「え… ええっ!?」

 

 

またしても食い違う情報。 今まで大家や同僚が会った子は銀髪の子だという話だったのに、母親が会った子は金髪と内容が異なっていた。

 

 

「あの子、金色の髪を二つ、おさげのようにおろしてたわ。 外国から来たっていうのに、すごく日本語が上手だったし、あたしとしてはそっちの方に驚いたけどね」

 

 

一体どういう事なんだと困惑する青年に対し、知らない彼女のことを呑気に語る母親。 お茶を飲み終えると、母親は荷物をまとめ立ち上がった。

 

 

「できればもう少しゆっくりしたかったけど、まだ家に用があるからそろそろ帰るわ。 あんたも、今度家に来るときはあの子も連れてきてあげなさい。 あたしも、未来の娘をお父さんに紹介したいからね」

 

「え、あ…! あの、お袋……!」

 

 

これから帰るという母を、彼はとっさに呼び止めようとしたが、母親はいそいそとした足取りで家を後にし、彼は結局本当のことを言えないままその場に立ち尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母親が返った後、青年は自宅で艦これをやりながらぼんやりと考えていた。

本当は疲れているし、早く休みたいところなんだが、今日の出来事を思うとなかなか寝付けなかった。

突然自分の彼女を名乗る誰かが自分の知り合いのもとを訪ねてくる。

知らないと言おうにも、とても信じてくれる雰囲気ではなく、誰かに相談できそうな状況ではない。

 

 

「はあ… 一体どうしたらいいものか」

 

 

彼が天井を仰ぎながらぼんやりつぶやくと、

 

 

『提督! 私やりました! 艦載機の子達も、随伴艦の皆さんも、本当に頑張ってくれました! 感謝です!』

 

「うおっと…!?」

 

 

パソコンの画面から、旗艦である翔鶴のボイスが流れ慌てて画面の方に向き直った。

 

 

「ああ、そういえば出撃してたんだった。 いかんいかん、ついぼんやりしてた…」

 

「お疲れさん、翔鶴。 補給を終えたら今日はもう休んでくれ。 明日も頼むぜ」

 

 

独り言のように画面越しに見える翔鶴にそう話すと、彼はゲームをする手を止め、改めて考えてみた。

 

 

 

 

 

今朝の大家さんや同僚の証言では、二人に会った子は銀髪の髪をしていた。 それは間違いないはずだ。

でも、二人の証言は微妙に食い違いがあった。

大家さんは大和撫子のような和風美人だと言ってたが、同僚は西洋のような軍服と帽子をした女の子だと話してた。

それに髪型も、大家さんの時は長い髪をたらしてたと言ってたが、同僚はツインテールにまとめた髪だという話だ。

その子が髪形を変えたということもなくはないだろうが、わざわざそんなことをする理由が分からないし、何より服装も違っている。

さらにお袋が会った子は、外国から来た金髪の女の子とのこと。

二人の証言とはまるで違っているし、外国から来た以上和風美人という線も考えられない。

それに、髪の色が違う時点で二人が会った子と同一人物という可能性もきわめて低い。

その考察を踏まえて、彼はある結論を出した。

 

 

 

 

 

 

「…ひょっとして、俺の彼女を名乗ってる子は一人じゃない? 二人…もしくはそれ以上の子が俺を狙っているのか!?」

 

 

ありえないながらも出した結論に、彼は背筋が寒くなる。

自分の知らないうちに自分に好意を持つ女の子が、自分の知り合いに会いに来ていることに、恐怖を感じる。

いつから俺に好意を抱いた? なぜ俺を好きになった? お前らは、いったい何者なんだ!?

正体の分からない恐ろしさに苛まれ、彼は頭を抱えていると、

 

 

 

 

 

『提督、大丈夫ですよ。 心配しないでください』

 

「はっ…!?」

 

 

突然聞こえてきた声に頭を上げると、そこには母港画面で微笑む翔鶴の姿が映っていた。

 

 

「あ… ああ、そっか。 つい操作を止めてたから、放置ボイスが流れたのか」

 

 

彼女の顔を見て少し落ち着いた青年は、このまま考えてても仕方ないと言うと、パソコンの電源を落とし、今日はもう休むことにした。

正体不明の女のことは気になるが、それはまた明日考えようと結論付け、彼は布団にくるまり静かに寝息を立てるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜のアパート。 明かりの落ちた部屋で深い眠りについた青年の横に置いてあるスマホ。

すでに電源が切られ、黒い画面を写しているはずのモニターが急に光だし、そこから声が流れてきた。

 

 

 

 

 

『提督さん、寝ちゃってる。 かわいい♪』

 

『あーあ… せっかくAdmiralさんに会えると思って楽しみにしてたのに、残念だなぁ…』

 

『まあまあ、そう気を落とさないでください。 明石さんも言ってましたけど、まだ提督に会うわけには行かないんです。 こうして提督のいる場所に行けただけでもよかったじゃないですか』

 

『今回はまだ会えないですけど、それもあと数日の辛抱です。 我慢してください』

 

『…そう、ですね。 今日はこうして提督さんの顔を見れただけで良しとしましょう』

 

『うん、分かった! 私も、早くAdmiralさんに会いたいから、その日が来るまで待ってるね!』

 

『お二人とも、その意気ですよ。 それじゃ、明日もありますし、私達もそろそろ休みましょう』

 

 

 

 

 

スマホから流れてくる声。 光を放つ画面には、三人の女の子の姿が映っている。

 

一人は大家の証言にあった、長い銀髪の和風美人。

 

一人は同僚の証言にあった、軍服を着たツインテールの少女。

 

そして、もう一人は母親の証言にあった、金髪の外人の女の子。

 

 

 

三人は、同じ目的の為にお互いに声を掛け合いながら気合いを入れあっていた。

 

 

 

 

 

『待っててくださいね、提督。 今はこうして直に会うわけには行かないのですが、いずれは直接会いに行きます。 そして、会えたその時は………ウフフ、楽しみです♪』

 

 

三人の一人、和風美人の女は寝ている青年の顔を見つめながら、妖艶な笑みを浮かべるのであった。

 

 

 


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