ヤンこれ、まとめました   作:なかむ~

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どうも! やっと話ができたので投稿しました。


今回の話は感想からネタをいただいたので、それを自分なりにアレンジして出してみました。 あと、今回は色々書きたいネタがあるので、前・後編という形で投稿します。 後編はまだですが、なるべく早く書く予定です。


そして、ネタ提供してくれた村人Bさん。 ネタがないところだったので助かりました、本当にありがとうございます!!





両手に華というが、両手の花は重すぎて

 

 

とあるアパートの一室。 一人の青年はいつものようにパソコンを起動すると、ゲーム『艦隊これくしょん』にログインした。

 

 

『艦隊がお戻りなのです』

 

 

モニターから聞こえる初期艦、電の声に彼は頬を緩ませる。

 

 

「ふおお… やっぱり電は可愛すぎる、天使かっ!?」

 

 

一人興奮しながらも、青年はいつものように遠征から戻ってきた艦隊に補給を済ませると、電を旗艦に演習に向けて編成を整えていった。

 

 

「ようやくこっちもここまで充実してきたな。 やっぱり2度目ともなると、だいぶ手順が分かってくるから楽だし、なにより電を初期艦に選べるのが嬉しいぞー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

実は、彼が艦これをやり始めたとき、彼の初期艦は電ではなかった。

彼はもともと友達から艦これというゲームの存在を知り、それから始めることになったのだが、その時彼はクールな容姿に惹かれたという理由で叢雲を選んでいたのだ。

それから彼は初期艦である叢雲と共にあらゆる海域を攻略して仲間を増やし、どんどん資材や練度を上げていった。

そうしてやり続けていくうちに、彼はある一つの問題にぶつかってしまった。

それは、叢雲を筆頭にほとんどの艦娘達を最大練度まで上げてしまったのだ。

海域もすべて制覇し、練度も改修も最大まで済ませ、もうやれることが無くなってしまい、あとできることと言えば毎日出てくるデイリークエストを消化することぐらい。

そんな退屈な毎日に耐えられなくなった彼は、ある思い切った方法を取った。

なんと、彼は新しいアカウントを作り、そこからもう一度艦これをやり始めたのだ。

今度は叢雲でなく、可愛らしい見た目と性格が気に入ってた電を初期艦に選び、再び一から始めていった。

そうしてまた少しずつ艦隊の練度を上げていき、今では前の時の鎮守府に負けず劣らず、だいぶ艦隊と資材が充実していった。

 

 

 

 

 

 

「…叢雲に申し訳ない気もするが、まあ仕方ない。 そこはもう過去の事だと割り切っていこう」

 

 

不意に過去やっていた経験を思い出し、青年は感傷に浸る。

あの頃も艦これに対する知識や経験がない分、いろいろと大変なこともあったが、それでもあれはあれで楽しいこともあった。

電を初期艦にしたあの日からあっちには一度もログインはしていない。

皆に見切りをつけたようでどこか罪悪感を感じていたが、どうにか忘れようと首を振ると、再び彼はゲームの方に意識を向けた。

今日の分の任務を終え、電源を切る前に遠征を出すと、彼は寝床に戻り眠りにつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、いつものように青年はあくびをしながら目を覚ますと、目の前の光景に思わず目を見開いた。

目の前に広がる光景はいつも自分が過ごしている自室ではなく、年季を感じさせる荘厳な机に暖かそうなふかふかのカーペット。

開いた窓からは潮の香り漂う風が吹き込み、脇に下げられた青いカーテンをそよがせる。

自分の服はいつもの寝間着ではなく、シミのない白の軍服によく見ると布団ではなく椅子に座っている。

 

 

「これ… まさか…」

 

 

まるで夢でも見ているかのような状況に彼が一人唖然としていると、突然背後のドアが開き扉の向こうから一人の少女が顔を見せる。

 

 

「あっ、起きたのですね司令官さん!」

 

 

青年が振り向くと、部屋に入ってきたのはいつも自分が画面越しに見てきた艦娘、暁型駆逐艦4番艦『電』の姿があった。

 

 

「い、電っ!? もしかして、電なのか!?」

 

「そうなのです! 司令官さんに会えて、電も嬉しいのです♪」

 

 

年相応のあどけない笑顔と共に電は青年の元に駆け寄ってくるが、対する青年はますます状況が理解できずに困惑気味になる。

なぜ自分がこんな格好でここにいるのかとか、どうして電は自分を司令官と呼んでいるのかとか、自分に向かって笑いかけてくる電はかわいくてやっぱり天使ってはっきり分かんだねとか、いろんな思考が頭の中で巡っていたが、

 

 

「どうしたのですか司令官さん? 司令官さんは、いつもこの舞鶴鎮守府で電たちを指揮してくれてたじゃないですか」

 

 

電からそう尋ねられ、青年はハッとする。

確か、自分が登録したサーバも舞鶴鎮守府だったはず。

試しに彼は自分がゲームで設定した艦隊名や自分が寝る前にどの遠征に出したかを電に問うと、電はどれもぴたりと言い当ててみせた。

そこまで聞いて、ようやく彼は理解することができた。

ここはゲームの中の世界で、今自分は自分がプレイしている鎮守府に来ているのだと…

 

 

「し、司令官さん? どうしたのです? 体の具合でも悪いのですか…?」

 

 

突然俯きながら体を震わせる青年を見て、電は心配そうに声をかける。

だが、彼は震え声でそれを否定した。

 

 

「…違うんだ、電。 俺は… 俺は今、こうしてリアルに電に会えたことに猛烈に感動しているんだ!」

 

 

青年は顔を上げた途端、思いっきり電に抱き着いた。

突然の事に電も戸惑っていたが、大好きな提督に抱き着かれた彼女もどこか嬉しげな表情で拒むようなことはしなかった。

しばらくするとようやく彼も冷静になったのか、突然抱き着いたことに謝るが、電は気にしないでと言わんばかりに首を横に振った。

それから、電は提督である青年の手を引いて鎮守府を見て回ろうと提案した。

彼もそれを拒否することなく、電についていく。

まずやってきたのは、第一艦隊の艦娘たちがいる作戦指令室。 そこでは、長門や陸奥・翔鶴や瑞鶴達がおり、提督である彼の姿を見た途端に皆一斉に顔を綻ばせた。

 

 

「提督、ようやく来てくれたのか!」

 

「もう、提督ったら来るのが遅いじゃない! お姉さん待ちくたびれたわよ」

 

「よお、長門! 陸奥も謝るからそんなむくれないでくれって」

 

「仕方ないですよ。 長門さんも、陸奥さんも、司令官さんが来るのをずっと待ってたのですから」

 

 

膨れっ面ですねる陸奥に提督が謝っていると、電が合いの手を入れる。

 

 

「はあ… こうして提督に直に会えるなんて、私夢のようです!」

 

「もう、翔鶴姉ってば大げさだよ。 まあ、瑞鶴もこうして提督さんに会えてうれしいけどね」

 

「翔鶴みたいな美人にそう言ってもらえるとか、俺にとっても夢のようだ! もちろん、瑞鶴に会えたのも嬉しいぞ」

 

 

幸せの絶頂に至る翔鶴と、苦笑いを浮かべながらそれを窘める瑞鶴。

そんな彼女たちにも提督はフォローを入れる。

一通り挨拶が終わると、提督は皆から演習に来てほしいとか一緒に遊びに行こうとか誘われるが、電が司令官さんはまだ電と一緒に鎮守府を見て回るということを説明すると、皆渋々ながらも引き下がってくれた。

提督はこれが終わったらみんなに付き合うよと言い残すと、再び電と共に他の場所へと向かっていった。

その後は、食堂でいつも遠征に出ている駆逐艦娘たちに顔を合わせに行った。

 

 

「いつもみんなには遠征を頑張ってもらって、俺も助かってるよ」

 

「そんな、気にしないでください。 私も、私なりに頑張っているだけなんですから」

 

「そーでごぜーますよご主人様♪ 潮とか、いつも遠征から帰るたびに『この遠征を大成功させたら、提督喜んでくれるかな?』とか、いつも言ってますしね」

 

「わ…わーわー!! 漣ちゃん、余計な事言わないでー!!」

 

「全く、皆提督が来たからと言って浮かれおって… 情けなくて見ておられんのう」

 

「えっ? でも私達姉妹の中で、提督が来たのを知って一番嬉しそうだったの初春姉様じゃなかったっけ?」

 

「しぃ…! 駄目だぞ子日、そんなことを言っては。 初春姉さんもそれを知られたくなくて、あのように興味なさげに振る舞っているのだから……」

 

「余計な事を言うでない子日! 若葉も聞こえておるぞ…!」

 

 

艦娘たちは色んな反応を見せるが、みんな自分が来たことをうれしく思っているらしく、提督もそれを見て笑顔を見せた。

艦娘と一緒にいた妖精たちもわいわい喜んでいるようで、食堂を出るとき艦娘達と一緒に手を振りながら見送ってくれた。

しばらくはいろんな場所を見て回った二人だが、海の見える母港まで来ると、少し休憩しようということで二人とも一息ついた。

 

 

「……。 自分で言うのもあれなんだが、俺ってこんなに皆に慕われてたんだな。 碌な指揮しないとか、遠征が多すぎるとか文句の一つも出るんじゃないかと思ってたんだが」

 

「まあ、中にはそういう不満を持っている子もいるかもしれませんが、それでも電たちは司令官さんのおかげでこうして無事にいられるんです。 それに、電たちのためにここまで尽くしてくれた司令官さんを嫌いになんかならないのです」

 

 

朗らかに笑いながらそう答える電に、提督も思わず照れ笑いを浮かべた。

間宮さんのところで何か飲み物をもらってくると言って、電はこの場を去っていく。

提督も一緒に取りに行くと言ったが、電は司令官さんは少し休んでてくださいと言って彼をここに残していった。

ポツンと一人残った提督だったが、今の彼の心境はこれ以上ないほど浮かれあがっていた。

 

 

「ふおお… まさか電と一緒にいる夢がかなうどころかあんなことまで言ってもらえるなんて……! 艦これライフ、万歳!!」

 

 

思いっきり両手を挙げながら、彼は視界一杯に広がる海へ叫んでいた。

だが、そんな彼へと何者かが足音を立てながら歩み寄ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと見つけたわよ! アンタ、私達をほったらかしにしてどこで油売ってたのよ!!」

 

 

甲高い声に驚きながら振り返ると、そこには両腕を組んで仁王立ちをする一人の艦娘の姿があった。

銀髪の長い髪を海風に揺らしながら、スレンダーな体つきをした艦娘。 頭にはウサギの耳をほうふつとさせるような艤装が取り付けられていた。

提督はその艦娘を見た途端、大きく目を見開く。

そこにいたのは彼が初めて艦これをやった時、初期艦として選んだ艦娘。 吹雪型駆逐艦5番艦『叢雲』だった。

 

 

「ええー! おま…もしかして…… 叢雲…なのか?」

 

「何言ってんのよアンタ。 長いこと会いに来なかったせいで私の顔まで見忘れたっていうの? 呆れたものね」

 

「全く… いつまで経っても来ないと思って探しに来てみたら、こんなところにいたのね。 ほら、さっさと戻るわよ」

 

 

そう言うと、叢雲は提督の手を引きながら港を去っていった。

どうにか提督も待ってくれと言いながら抵抗しようとしたが、見た目は少女とはいえ艦娘は人の形をした軍艦。 元より人間の力で逆らえるわけもなく、彼は叢雲に連れられるまま歩き続けた。

電たちの鎮守府がある場所とは真逆の方向へと連れられていたが、しばらく歩き続けると、「ようやくついたわよ」と言って、叢雲が前を指さす。

提督がそちらを見てみると、何とそこにはさっきまでいた鎮守府とは別に、もう一つ鎮守府が建てられていたのであった。

ふと、自分を呼ぶ声がするのでそっちに顔を向けてみると、鎮守府の入り口……そこで、こちらに向かってかけてくる数人の艦娘たちの姿があった。

 

 

「テートク――――!! 私から目を離しちゃノーって言ったじゃないですカー!!」

 

「ああ… 提督…ようやく戻ってきてくれたのですね! 榛名、感激です!!」

 

「ひどいじゃないですか提督! 突然私たちを置いてどこか行ってしまうなんて。 私、危うく資材庫のボーキをやけ食いするところだったんですから!!」

 

「赤城さんの言い分はともかく、こうして提督に直に会えて流石に気分が高揚します。 これからは、もうどこにも行かないでくださいね」

 

「えっ… 金剛に榛名、赤城、それに加賀まで… それに、この鎮守府って一体……?」

 

 

ただただ呆然とすることしかできなかった提督に、叢雲は顔を向ける。

 

 

「何寝ぼけたこと言ってんの! アンタの鎮守府はあそこで、アンタは私の司令官でしょ! 大体あんたじゃない、私を綺麗な子だなって言って初期艦として選んだのは。 わ、忘れたとは言わせないわよ!」

 

 

若干顔を赤くしながら叫ぶ叢雲を見て、提督はようやく思い出した。

確か自分が艦これを初めてやるとき、そんなことを言いながら叢雲を選んでいたことを。

同時に何か気付いたのか、「まさか…」と呟きながら、彼は叢雲へいくつか質問をぶつけた。

 

 

「なあ、叢雲… 俺が初めて建造を行って出した艦娘は誰だ?」

 

「村雨でしょ。 それが何?」

 

「じゃ、じゃあ… 俺が初めて改にした艦娘は?」

 

「そんなこと、忘れるわけないじゃない! アンタが最初に改にしてくれたのは私よ。 そして、初めて改二にしたのもね」

 

 

そこまで聞いて、ようやく彼は確信した。

叢雲の答えは、すべて自分の最初のプレイ経験と一致している。

それを知っているとすれば、自分以外なら前にやっていたころの艦娘ぐらいしかいない。

つまり、ここにいる叢雲は自分が初めて艦これをプレイしていた頃の叢雲で、後ろにいる金剛たちは前の鎮守府で主力艦隊として使っていた子達なんだという事を理解した。

 

 

「とにかく、こんなとこで突っ立ってても始まらないわ。 早く鎮守府に戻りましょ、アンタにはやってもらわなきゃいけないことが山ほどあるんだから」

 

 

どこか嬉し気な口調で叢雲は再び提督の手を引く。

そして、提督もまた叢雲に引かれるままに鎮守府へ連れて行かれそうになった時だった。

 

 

 

 

 

「司令官さんに何をするのですか!?」

 

 

突然響く声に叢雲たちが振り向くと、そこには息を切らせる電を筆頭に、長門や翔鶴たち新しい鎮守府側の第一艦隊の艦娘たちが艤装を展開していた。

嬉しげな表情から一変。 叢雲は訝しげな眼で電を睨み付けると、ぶっきらぼうな口調で言った。

 

 

「はあ? 何よアンタ、別に私たちの司令官をどうしようとこっちの勝手でしょ? 邪魔をしないでちょうだい」

 

 

しっしっと、まるで野良犬でも追い払うかのように叢雲は手を振って電を追い返そうとする。

しかし、電の方も毅然とした態度で言い返した。

 

 

「その人は電の司令官さんです! そっちこそ、司令官さんから離れてください!!」

 

 

叫びながら、電は艤装を展開。 叢雲へとその矛先を突き付ける。

 

 

「ちょちょっ!? お前ら落ち着けって!!」

 

 

慌てて提督が止めようとするが、お互い聞く耳を持たず。

それどころか、電と叢雲以外にもあちこちで衝突が起こっていた。

 

 

「ヘーイ長門ー! 私のテートクに気安く近づかないでほしいデース!!」

 

「口の利き方に気を付けろ金剛…! その人は私の提督で、貴様のではない!!」

 

「落ち着いて姉さん。 でも、そんなふうに提督にくっつく姿を見せられちゃ、お姉さんもちょこっとばかりカチンときちゃうかな~?」

 

「陸奥さんこそ、榛名たちの提督にあまり近づかないでもらえますか? 大事な提督との一時を邪魔されては、榛名は大丈夫じゃありません……」

 

「ちょっと! 一航戦の先輩だからって、馴れ馴れしく提督さんに触らないでよ!!」

 

「別に部下として上官の傍にいるのは当たり前じゃない。 五航戦の子こそ、提督に近づかないで。 不愉快だわ」

 

「おいだから止せって! まずは喧嘩をやめてだな…!!」

 

 

ますます過熱する艦娘たちとの衝突をどうにか止めようと、提督が必死に呼びかけていると、

 

 

「うおっと!?」

 

 

足がつまずき、提督はその場でよろけた。

その拍子に、提督の上着のポケットから何かが落ち、提督がそれを拾い上げる。

 

 

「あれ…? これって、ケッコンカッコカリの指輪?」

 

「ああ、そっか… そういえば、俺ってまだケッコンカッコカリはしてなかったんだよな。 皆かわいい子ばかりだから、誰にしようか決めらんなくって…」

 

 

提督がそんな独り言をつぶやいて顔を起こした時、彼は気づいた。 艦娘たちの意識と視線が一瞬で自分の方へと向けられていることを。

皆の目は普通じゃなかった。 まるで獲物を狩る捕食者のような目で自分を見ている。 正確には、自分が持っているケッコンカッコカリの指輪が入った箱の方なのだが……

 

 

「え、ええと… み、皆……」

 

 

周囲の気迫に押され気味になりながらも提督が声を漏らすと、一番近くにいた叢雲が彼によってきた。

 

 

「ねえ… アンタって、もともと私を気に入って初期艦に選んだのよね? まだ相手が決まってないっていうんなら、私がアンタの結婚相手になってあげるから感謝しなさい!」

 

 

妖艶な笑みを浮かべながらも、どこか有無を言わさぬ気迫を感じさせながら叢雲は提督にすり寄ってくる。

思わず提督が後ずさりすると、今度は反対側から電が彼の腕に抱き着いてきた。

 

 

「司令官さん… 電は信じているのです。 その指輪は他の誰でもない、電のために取っておいてくれたんだって。 だから、電も司令官さんの気持ちに応えたいので、喜んでその指輪を受け取るのです」

 

 

腕に抱き着いたまま、にこやかに微笑む電。 だが、その眼はドス黒く光が全く灯っていない。 しかも、黙って指輪を差し出せと言わんばかりに、徐々に腕に抱き着く力が強くなっていく。

よく見ると、急に様子がおかしくなったのは二人だけではない。

遠くに見える金剛や長門は自分を選べと言わんばかりに威圧感を放ち、加賀は表情を変えず、翔鶴はどこかそわそわとした様子で何かものほしそうな態度を見せていた。

この様子を見せられれば、彼も嫌でも理解できた。

間違いなく、皆はこの指輪を狙っている。

下手すれば、今ここで指輪を巡って血で血を洗う修羅場となりかねない。

極限の恐怖に晒されながらも、どうにか提督はこの場を打開する方法を考える。

そして、自分を選べという空気がピリピリと張り詰める中で、提督は必死に声を張り上げた。

 

 

 

 

 

「そ、それじゃあ今日一日一緒に行動して、一番好きになった子にこの指輪を渡すことにする! 皆、いいな!?」

 

 

それを聞いた途端、場の空気は一変した。

殺気に満ちていた場は、歓声を上げる者、不満そうな顔をしながらも渋々納得する者、微かに舌打ちをする者など、色んな反応を見せていた。

提督もその場の空気と二人から解放されて、大きく安堵のため息を吐いた。

 

 

「はあ… これ…一体どうなるんだろうな?」

 

 

この場は収まったとは言えど、危機を脱したわけではない。

これから、どんな修羅場が待ち構えることになるのであろうかと、彼は頭を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っててくださいね、司令官さん… 電、すぐに司令官さんから指輪をもらいますからね」

 

 

 

「ふふふ… 上等よ、アンタの相手にふさわしい子なんて、私以外いないってことをこの場で教えてあげるわ。 覚悟なさい、アンタは絶対逃がさないから…!!」

 

 

 

 

 

ドス黒い瞳を向けながら笑う二人に声に気付かないフリをして……

 

 

 


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