阿野岡は応急手当を受けた後にミーナが寝ていたベッドに寝かせられることに。だが、阿野岡は気を失っているようで目を覚まさない。
その間にも晴風では紙が無くなる。立石志摩が明石・間宮の両艦を機銃掃射するという事件を起こすが俺はそれを止められず眠り続けていた。
4月14日未明。
立石志摩の尋問のため、福内と平賀は晴風に一時的に乗船することになった。丁度、沖島艦長の捜索を宗谷監督官から命じられていた。両ブルマーは尋問をする前に艦長へ確認を取っていた。
航洋艦「晴風」内部 医務室ベッドにて。
眠り続ける阿野岡俊作だけがいた。姿としてはほぼ包帯だらけの状態で服装としてはトランクス1枚という低装備だった。
薄いタオルケットだけをかぶっていた阿野岡はノックの音がした気が・・・薄く目を開けて入ってくる人物の姿を見ることが出来た。
つい最近、衣笠のおやっさんの屋台で再会したブルーマーメイドの平賀と福内だった。二人は少し顔が暗く見えていて、手を合わせてまるで俺が死んでいると勘違いしているようだ。二人と一緒に入ってきたのは晴風の乗員で書記の・・・確か、記憶が正しければ納沙幸子という生徒のはずだ。何か話しているようだが、よく聞こえない。
「あの人が教官艦沖島の艦長なんですか?」
「ええ。そうです・・・間違いありません。でも、まさか艦長だったなんて。あ、福内さん?」
「この人は生きているんですか?身動き一つしていないようですけど?」
と言って福内はベッドに力なく横たわる俺に近づいてきた。遠近法の感覚か、福内さんの胸が前に見たときと同じく小さく見えていた。
福内さんは脈を確認した、弱弱しい脈だが生きているのを確認すると安堵したようだ。納沙や平賀も福内のほうに近寄ってきた。
「ホントですか。良かったです・・・えっと、阿野岡教官でしたっけ?お知り合いなんですか?」
納沙は気になっていた疑問を福内と平賀に聞いてきた。
「私は最近、お話したばかりですが・・・福内さんは前から知っている感じですよ。」
「ウっ・・・と、特別仲が良いというわけではなく・・・ただ知ってただけです!」
「そうだったんですか~?この人はどうされるんですか?」
「そうですね。経過を見つつ、歩けるようになったら学校へ帰航していただくのいいでしょうね。」
俺はそんな3人の話を聞きながらただただ身体を動かさないように注意した。結果的に怪我のせいで動けないので関係はないが。
ん?手に温もりが・・・福内さんが俺の手を取ったようだ。少し手が冷たくなっている手がとても熱く感じていた。
平賀と納沙は福内と俺の様子を見ながら、ぼそぼそと話していた。
「あのお二人ってどういう仲なんですか?普通の男女の関係とは思えないのですが?」
「私もよく分からないけど・・・ただ見知ってるという関係じゃないのは確実ね」
福内が顔を近づけてきたので、さらに目を開けようとするが・・・。
ドーン 突然の砲撃音。 どうやら、明石間宮の主砲換装中の晴風近くに着弾したようだが被害はない。砲撃音からして恐らくは教官艦「沖島」と思われる。
もう1発ドーンという音がして、ブルーマーメイドの哨戒艇が吹き飛ぶ音がした。
福内と平賀はすぐさま、警戒状態に移った。
医務室に連絡が入る。ましろの声か?
「こちら艦橋です。教官艦沖島が攻撃を行っている模様。ただちに全員、配置に付いてくれ。・・・一体何が起こってるんだ・・・?」
教官艦「沖島」は明石・間宮・晴風に距離を詰めると拡声器でこう告げた。
「東郷俊作を出せ。晴風に乗せているのは確認している直ちに沖島に引き渡せ。さもないと砲撃も止む無し!また、人質の命はない。」
女性の声だった。沖島の乗組員は艦長以外女性だが、副長はブルーマーメイド所属ではない。聞き覚えがあった・・・恐らくは副長である、霧ヶ峰葵の声だろう。
その声は仕留め損なったことを恨みがましく感じているのだろう怒りの声だった。
医療室にいたブルーマーメイドの平賀、福内とスク水姿の納沙幸子はすぐに甲板へ向かっていった。誰もいなくなった・・・今ならなんとか抜け出せそうだ。
しかし、トランクス一丁で出るのはいささか・・・恥ずかしい気がした。とりあえずは着替えを探さなくてはな。
ふと、横を見ると俺の一張羅が置いてあった・・・包丁で刺された跡なので、ボロボロになっているかと思ったが縫い合わせてあったので感謝して着た。
そして、甲板に向かってダッシュしたかったが身体が思うように動かないので壁を支えに歩いていった。
晴風甲板。
甲板では複数の晴風乗員が学校の指定のスク水や持ち込んだ水着に身を包んでいた。黄色いビキニを着用していた万里小路楓は薄っすらとではあるが船が見えたような気がした。だが、もう一度同じ方向を見てもそこには何も無かった。
「何でしょうか・・・アレは。」
万里小路楓 航洋艦「晴風」の水測員兼ラッパ手である。砲雷科所属 15歳
彼女は愛知県名古屋市出身で東郷家とは姻戚関係にあり、俊作の実母で叔母の彩は薙刀の師匠。音楽の楽しさも叔母から教えられた。いとこに当たる東郷俊作の事を実の兄のように慕っている。お見合いをするも俊作のほうから断りを入れている。
さて、話は戻るがなんとか甲板近くまで重傷の身体を無理矢理、引きずりながら来た阿野岡は階段を登り始めていた。甲板上では平賀、福内の両ブルマーが知恵を絞りつつ生徒たちを守ろうとしていた。
沖島は晴風の艦首に無理やり、接舷すると人質を連れた女性…副長の霧峰葵が血まみれの包丁を手錠で繋がれている女性の喉元に向けていた。
他の乗員は人質の安全を第一にして、副長から距離を置いていた。阿野岡はようやく、甲板に上がってくると人質の女性が誰なのかを確認することが出来た。
…阿野岡咲。叔父の阿野岡廉二の長女だった。昨年、呉海洋学校からブルーマーメイド・宗谷真冬の部隊に配属された従妹だ。
見ると咲の腹部も処置をしてあるが血で真っ赤になっていた。副長は阿野岡の姿を認めると…これまでに見せたことがないくらいの憎しみの表情をしながら。
「艦長 この子はあなたのせいでこれから私に首を切られます。助けたいのなら、武器をすべて捨ててこちらへ来てください」
「分かった。」
阿野岡は護身用のナイフと拳銃一丁を投げ捨てると、副長の元によろよろと近づいていった。
と、ブルマーの福内に行く手を塞がれた。
「阿野岡さん 駄目です。これは罠です!近づけば…あなたが」
「知ってます。俺の事なら…いつ死んでもイイと思ってます。でも、他の人は俺が死んでも護ります!! どいてください…福内さん」
まだ何か言いたげで心配そうに俺を見つめる福内さんを手で軽く押しのけた。どうやら俺の傷口が開いたらしく、また制服が鉄くさい血で染まり始めた。出血多量で死ぬ恐れもあるが、今は目の前の…咲を助けなければという使命だけがそこにはあった。
「ふふふ、本当にバカですね。」
「バカなのは昔から変わってないもんでね。さあ、咲を離せ。」
副長は人質の咲を後ろに放るとすぐさま、俺に包丁を突き刺そうとした。一瞬早く動いていた俺は死なない程度に副長を失神させる事に成功した。包丁は腕をかすめた程度だった。
その後、気絶した副長を沖島の営倉に放り込むよう指示すると、俺は力尽きたかのようにその場で倒れ伏した。周りで悲鳴が起こり、福内さんは一番に近づいてきた。
そのまま、阿野岡は眠りに落ちるのだった……。
数時間が経つと俺は夢の中で目が覚めたような感覚で気がついた。誰かの膝に頭を載せられているようで、柔らかかった。顔を覗き込むと、10年前に他界した母の顔があった。その顔は何処となく、嬉しそうで天国に来れた。いや、来てしまったのかと…勘ぐった。
一度、眼を瞑って無心になり…また目を開けると。目の間にいる女性が母ではなく今にも泣きそうな福内さんがいた。いつものタヌキ耳がさらに際立って輝いて見えた。
そして、自分と福内の周りには納沙、宇田らの姿があり一様に頬を赤く染めているようだ。
その頃…東舞鶴男子海洋学校は武蔵を発見した。北緯19度41分東経145度0分にて巡航中という報告メールは校長経由で阿野岡のほうにも送られていたが負傷していたため気づいていなかった。
真霜は古庄教官に帰り際に聞かれた。そう、阿野岡という新任教官のことだ。
「彼も無事なのかしら?」
「……未確認ですが、亡くなったと聞いています。海に転落したそうで」
「この事を島崎くんが聞いたら…」
古庄の恋人は阿野岡俊作の呉海洋学校時代の同期生で現在、同じ病院にて入院中とのことだが症状は軽い。最初の挨拶で気になっていた古庄は大賀に確認を取り、阿野岡が演習で声を交わしたドイツの教官だと知った。大賀も新任として横須賀女子にやってくるということは知らなかったらしい。
真霜は足早に病院の廊下に出た。そして、RATsの話を聞くことが出来た。
彼の、阿野岡の為にも私が頑張らないとと思いながら…。
そんな時にはスク水天国という幸せな時間が戻ってきた。俺は平賀、福内に抱えられながらまた医療室のベッドに寝かされた。お見舞いにやってくる女子生徒がいた…まず従妹の万里路楓、優斗の妹・順ちゃん、宗谷ましろは入ってくるなり…順ちゃん並のハグアタックを喰らう。ましろは泣いていた。一度は生死不明という知らせを聞いて、涙を堪えながら頑張っていたようだ。俺はただ頭を撫でてやる事しか出来ない。
「お兄さん もう無理しないでくださいね。姉さんたちも心配します。でも、無事で良かった。」
「分かってる。無理はもう…約束は出来ないけどな。」
二人の時間は唐突に終わる。日置順子のハグアタックを受ける事になったからだ。
他にも珍客がいた。明石の艦長、杉本珊瑚がベッドに居座ってきた。
明石艦長の父親はウチの親父の古い友人で幼い頃に珊瑚の世話した事があった。まさか、明石の艦長をやってるとは知らなかったが。どうやら、彼女もましろと同じく俺が生死不明という知らせを聞いたのだろう…あまり心配してなさそうだ。
「生きてたの。そぅ…おっと、宗谷副長。主砲の換装が終わったので我々は行くよ。また会う日まで〜」
それだけ言うとさっさと医療室から出て行き、自分の船に戻り出航していった。間宮もそれに続く。
さてと、俺は沖島を通じて無事を知らせておかないとな。手近に阿野岡咲、新副長が居たので知らせてもらう事にした。さて、問題は……このベッドで添い寝し始めた3人をどうするかと頭をひねることになりそうだ。ましろ以外は水着
もう一度、3人を見て寝ていることを確認してから口内の超小型無線機を使い、ボソボソとどこかへ連絡を取った。
福内さんと平賀さんは現在、立石志摩への尋問中でいない。福内さんが少し名残惜しそうに見えたがきっと気のせいだろう・・・。
大まかな作戦内容を伝えると無線をOFFにしておいた。さてと、そろそろ起こすか。
声をかけようとした時だった。万里小路楓が寝起きの顔を向けて。
「お兄様? どちらと連絡を取ってらしたのですか?」
「沖島の副長に指示を送ってたのさ。起こしちゃったか?」
「いいえ お兄様がいらっしゃるかもう一度確認したくて…」
「そうか。でも、悪いね。そろそろ起きてもらえると助かるんだけど?」
「分かりました。日置さん?副長? 起きてください!」
少し大きめな声で楓はそう告げた。まだ添い寝していたいのか日置順子は「あと10分」と言ってごねていた。ましろもまだ眠そうに目をこすりつつ、伸びをして俺のほうに顔を向けてきた。
「お兄さん…もう朝? もう少し寝ていた・・・ハッ?! 」
「おはようございます副長。でも、もう夕暮れですね。明日は半舷上陸の日ですので、お部屋に戻りませんか?お兄様も安静にしていただきたいですし。」
「う、うん。それがいい…ところで万里小路さんはどうして、お兄さんの事をお兄様って呼ぶの?」
「あら? 私とお兄様は実は従兄妹同士で、私が小さい時にはよく叔母様と一緒に遊んでくださったんですわ。副長もお兄さんというのはどういう事ですか?お兄様、それに副長?」
しまった、という顔をしたましろは言葉が出なかった。お見合いの件は他言無用と母と約束しているので、本当の事が言えないのだ。阿野岡のほうはそう来たかという顔をしていた。
「宗谷のお母さ、校長とはブルマー時代から知り合いでね。家を訪問した時にお兄さんと呼んで懐いてきた事があるからそのせいかな。」
「あらあら。そうだったのですか。お兄様がそう呼ばせてるのかと思いましたが、違うようで良かったです。」
「(お兄さん…フォローありがとうございます!) ・・・・。」
「んんぅ 俊にぃ…えへへ、また動物船行こうね?」
日置の寝ごとに一瞬、冷や汗がした……楓だけでなくましろにも睨まれていた。日置様日置大明神様順子様・・・ここで言うか普通。
「「お兄様(さん)?」」
仕方ない・・・キチンと話しておかないとあとが怖いだろうから。
「実は日置の兄とは呉海洋学校の同期生でよく日置の実家に遊びに行ってた時に言い始めたんだ。別にやましいことは無い。」
2人にはどうやら納得してもらえたようだ。ガチャ、医療室の主である鏑木美波が戻ってきた。
何だか、不機嫌な顔をしている。ウチの乗組員の治療を頼んだのだが、そのせいか?
「鏑木。すまなかったな、咲はどうだった?」
「・・・命に別条はない。傷が残らないように縫っておいたから大丈夫だろう。ところでだな…副長と他2名は出てってくれないか?コイツの傷の具合も診るから邪魔だ。」
3人は少し残念そうに出て行った。それぞれ、安静にしてくれと言ってきたがそうも言ってられない。
鏑木は俺の意図が読めたのか、さらに不機嫌さが増していた。
「何かする気なのか? これ以上、傷口を開けまくったら私は知らないぞ。」
「ハハハ。悪い悪い…でも、あの2人を通路で寝かせるわけにはいかないだろ?」
「? ああ、青人魚の2人か。どこで寝かせるんだ?お前のベッドに寝かせるのは許可しないが?」
「いや、沖島で空いている部屋で寝てもらうよ。ところで、尋問は終わったのか?」
「終わっているはずだ。多分、甲板で哨戒艇の残骸が無いか探してるだろう」
「鏑木、痛み止めは無いか? 歩く程度に回復させたい。」
鏑木は無言で飲み薬の痛み止めを渡してきた。「三日分」だということだ。ん?今気づいたが、鏑木の机にハムスターを入れたカゴが置いてある。俺は立ち上がると、カゴのほうに手を出すが鏑木が手を払いのける。
「触るな。何か危険な匂いを出しているのが分からないのか?」
鏑木が怒ってそう言うが、俺は素早くカゴをひったくった。そして、カゴの中のハムスターに手を入れて……噛まれた。??…何も起こらないが? 何があるんだハムスターに?
「なんとも…無いのか?! 」
「え?何がだ? 何かあるのかコレ?」
「そのハムスターが原因で砲術長が暴れたんだが…猫以外に耐性がある奴がいるとは…」
「痛み止めも飲んだし行くわ。またな、鏑木。」
それだけ伝えると医療室を出て行った阿野岡俊作。甲板に向かう。
鏑木の言ったとおり、甲板で福内さんと平賀さんを発見した。彼女らは途方に暮れていた。
なんとか宗谷監督官と海上安全委員会に報告出来たものの、哨戒艇の都合がつかないということで立ち往生となってしまっていた。阿野岡はゆっくりと、2人の元に向かう。
「平賀さん?福内さん? 今、大丈夫ですか?」
「え? 阿野岡さん…もうお体のほうは?」
「おかげさまでなんとか・・・えっと、沖島でお送りしましょうか? ただ点検で多少、出航が遅れますが。」
「ぜひお願いします!…平賀さんもそれでいいですね?」
とりあえず、夜も更けてくるので沖島に乗艦してもらうことにした。
沖島では点検の真っ最中で夜も更けてくるということで、艦長の阿野岡は本日はここまでにして明日からまたお願いしますと告げて作業を中断させた。
教官艦「沖島」 内部。
福内と平賀は当てがわれた一室にいた。2段ベッドが置かれており、学生艦の部屋によく似た構造だ。
沖島の乗員人数的には1人1部屋でも問題ないが、掃除する手間を省くという判断で一緒の部屋になった。ドアをノックする音…入ってきたのは20手前の沖島乗員だった。食事を現在、調理中なのでお風呂でも入ってきませんか?ということだ。リンスインシャンプーやボディーソープ、タオル類を渡された。
そして、福内と平賀は浴場に向かって行った。驚くことに通路や風呂場で他の乗員に出くわさなかった。艦長の配慮なのかもしれない。
沖島の風呂場は全体的に手狭な感じだった。福内は自分の胸に手を置き、苦虫を噛み潰したような顔をしながら平賀さんの豊満な胸を凝視していた。確か、平賀さんは恋人がいるという話を聞いたことがあった。
平賀さんの彼氏は阿野岡俊作の同期生で元雪風のコック兼乗員だったが、現在はカレーショップ呉を経営している。平賀さんが休みの時はよく店の手伝いもしてくれているほど。
余談だが、豪の奴は平賀さんの事を下の名前で「とも」と呼んでいる。
そんなことを考えていると、脱衣所に2~3名の沖島乗員(真冬部隊の新人ブルーマーメイド)たちが入ってきた。大浴場の扉が開き、その女性は「お風呂の後は食堂に来てくださいね。艦長が手料理を作ってくださったので、私たちは先に頂きましたのでどうぞ。ごゆっくり」
スランプに陥っていました。ブルーマーメイドの多聞丸(猫)です<嘘w>
アニメ原作にオリジナルストーリー加えて、いんたーばるっの内容も参考にしつつ執筆予定。出来れば・・・原作からまるまるセリフを持ってきたくないので設定を考慮しつつ頑張るよw
突然ですが・・・現在、不定期更新になります。
半舷上陸の話に入った後のイベント後に次話の投稿を予定しています。
ではまた、よーそろー!! 福内さん多めで行くよw
ブックレット情報により、福内典子(のりこ?)さんと平賀倫子(ともこ?) 各、判明。
志度さんと寒川さんも絡ませる予定