教員艦「沖島」の艦長に着任す!
主人公 阿野岡俊作は横須賀女子高等学校の教員に晴れて採用された。
彼は呉の海洋学校出身で神通に配属されていた。(呉では潜水艦の各科と航海科の2つが選択できる学校であった。※男子のみ。)航海科は5人の定員制でその一人であった。
しかし、阿野岡は最近まで警察官だった。
そんな時の冬に横須賀女子海洋学校の校長から教員にならないかという書類が送られてきた。最初はイタズラかと思ったが何の気なしにサインして送り返してみた。
「何か・・・懸賞でも当たるといいな・・・」
横須賀女子の合格発表の日だった阿野岡はその日、最後の勤務についていた。
見回りをしていると・・・ブルーマーメイドの制服を着た綺麗な赤色の女性が何かを探すようにしていた。
ふと、下を見てみると・・・ネコの耳。いや、タヌキの耳のようなヘアバンドが落ちていた。何の気なしに拾ってみて、その女性に冗談のつもりで聞いてみた。
「すみません 警察の者ですが先ほどからお探しになっているものはこちらのヘアバンドではありませんか?w」
耳が悪いのかもう少し踏み込んでみて、そう伝えると・・・
聞かれたブルーマーメイドの女性は顔を真っ赤にさせながら・・・
「はぃ・・・私のです。ありがとうございます」
と言ってヘアバンドを受け取りその警官の目の前で頭に付けた。
「すみません これが無いと話がまったく聞き取れなくて本当にありがとうございました。」
頭を下げて、その場を去る。タヌキミミの女性・・・
「チョットイイオトコダッタナァ」と聞こえたのは気のせいだろうか・・・。
それはいいとして、勤務に戻るのであった。
そんな時だった・・・少し離れたところにポニーテールの黒髪の少女を見つけた。何の気なしに見ていると、後ろがかなり騒がしかったので見るとツインの女の子が意味の分からない単語を後ろの友人の女子たちに言いながら走っていた。
直線コースには先ほどの黒髪ポニテ・・・衝突したのだった。
「わっ わ、わ、わーーー、え?!」
大急ぎで阿野岡は陸側に女の子を突き飛ばし、自分はその反動で海にダイブした。
その後、海から上がるといつの間にか 複数のブルーマーメイドによって教員艦「猿島」に連れて行かれた。(プロローグに続く。)
そう彼は・・・阿野岡俊作。横須賀女子の教員になった彼はこの先にどのような結果が待っているかは想像できないだろう・・・。
横須賀女子高等学校 入学式当日。教員となった阿野岡は校長室に出頭した。
「失礼します。 阿野岡俊作、只今参りました。よろしくお願いいたします」
校長の宗谷真雪はとりあえず、隣に控えている女性に自己紹介するよう促した。
「初めまして、私は教員艦「猿島」の艦長と生徒たちの教育を任されている古庄薫と言います。よろしくお願いしますね。」
じっと古庄教官を見ていると・・・古庄は何かに気づいたようで
「あなた・・・どこかで会ったこと無かったかしら?」
以前のお見合いで経歴についての欄に記載は無かったが、一時期にヴィルヘルムスハーフェン校にて4年ほど生徒の教育に従事していた。
もちろん、ヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルクやテア・クロイツェルとも面識があり教え子だ。
当たり前だが、演習にも参加しているため。古庄とは無線越しではあるが会話をしたことがあった。
古庄とは年齢も近く、その当時は真霜と遠距離恋愛中だった為に交際には発展していないし直接、顔を合わせることも無かった。
ちなみにその当時は艦長代理兼副長という立場だった。教育内容は日本語講師、体術の師範等を行っていた。
声はまったく変わっていないのでそれでバレる恐れもある。
「いいえ、まったく記憶にありません。古庄教官」
少し黙考した後、古庄はこの話は終わりと
「そう。分かったは阿野岡艦長兼教官補佐 少し肩書きが長くなるけど頑張ってくださいね。宗谷校長、そろそろ入学式が始まるので行きましょうか?」
宗谷校長は古庄は促されつつ、退室する前に阿野岡にこう告げた。
「あなたは入学式には出席できないから、先に「沖島」の乗組員と顔合わせしてくるといいわ」
と言いながら沖島までの道のりが書かれた地図と艦長の証である艦長キャップを渡された。校長と古庄はそのまま、退室した。
横須賀女子高等学校 構内
なぜか、30分近く迷っていた。地図どおりに来たはずだったがまったく、分からなかった。 阿野岡は無類の方向音痴だった。
よろよろと歩いていると・・・声をかけられた。
「あれー? お巡りさん? なんでなんで?」
バカっぽい感じの声は・・・駿河留奈であった。彼女は航洋艦「晴風」の機関科に属する乗員だ。彼女がいるということは、当然のように左右には若狭、伊勢、広田の3人がいた。
「ホントだ、どうしてウチの学校の制服着てんの?転職?」
「クビになった感じ? でも、窃盗なんて最悪だよ」
「二人とも、失礼だよ。えっと・・・何をされてたんですか?」
この4人は合格発表時にたまたま、話しかけてきた子たちだ。海に飛び込み溺れたのはもちろんながら、駿河だ。助けたのは同じく晴風乗員の航海科、勝田。
「いや、ここに行きたいんだよ。(地図を見せた)あと今回は校長の依頼で校内の見回りをやってるんだ。制服は借りた。」
校長からの命令通り、ごまかした。本来・・・彼は生徒との直接的な接触は禁じられている。理由は単純で3姉妹以外に女を作れないようにするためだ。
4人は地図をジッと見ながら黙考。と、後ろから覗き込む女子生徒が
「あ ここって確か、ウチの船の隣だよ。案内しよっか?」
突然、話しかけてきた女子生徒に即答。
「うん お願いするよ。」
地図を見ながら黙考している4人を置いて、その女子生徒に手を引かれながらその場所へ向かった。
気がつくと目の前には比叡の姿があった。女子生徒は比叡の隣を指差して、
「あれが「沖島」じゃないですか?」
猿島に若干、似てるものの迷彩柄でステルス迷彩を搭載している教員艦「沖島」の姿がそこにあった。
「ありがとう 助かったよ。迷いに迷ってたんだ」
阿野岡は女子生徒に礼を言った。
ふと女子生徒が気になったので聞いてみることに。
「君は一体? 比叡の生徒か?」
その女子生徒はあの時、タヌキミミのヘアバンドをしていたブルーマーメイドに似ていたからだ。
「私は比叡の艦長で福内幸絵です。姉は海上安全整備局で働いています。」
なんと! 彼女はあのタヌキミミのヘアバンドをしていたブルーマーメイドの女性の妹だった。 どことなく似ている気はしていたが・・・
「ということは・・・あの女性も福内?」
「はい、姉は彼氏いないので。以前に姉のヘアバンドを探してくださったという男性の話を姉から聞いていたのであなたがそうなのかなと思いました」
それで困ってたお巡りさん(自分)に手を差し伸べてくれたらしい。
「そうか、恋人はいないのか。 あ~ごめんなんでもない。本当に助かったよ。ありがとー」
とりあえず、それだけ言うと自分は「沖島」に乗艦した。
「沖島」の甲板には既に乗員が集まっていた。すべて、年若い女性だった。
まだ阿野岡の到着に気づいていない乗員たちは雑談しながら待っていた。
「艦長ってどんな人なんだろう~?」「若いって聞いたよ~」「以前はドイツの学校で教鞭を振るってたとかって」「私たちには遠い存在なのかも」
カンカンと歩く音が響いて、乗員達は話を中断して艦長を待つ。
艦長のために用意された壇上へ行く阿野岡教官。
「私が新しく、この教員艦「沖島」の艦長に着任した阿野岡です。皆さん、よろしくお願いします!」
阿野岡は敬礼した。ずっと直立不動だった乗員たちをいたわるため挨拶を短くしたのだ。
「では配置に着いてくれ。以上で着任式を終了する」
「「「「よーそろー」」」」」
その日、阿野岡は教員艦「沖島」に着任した。
多聞丸(猫)です。
プロローグで書ききれなかったことを最初に書いて、途中から本編が始まりますw
オリジナル設定。古庄教官・・・彼氏持ち。婚約中。恋人は大賀で阿野岡の呉海洋学校時代の同期生。