多くの国土を水没によって失われてしまった日本。海上の交通の発達により海を守る女性「ブルーマーメイド」が少女たちの中で憧れる職業となった時代。
そんな「ブルーマーメイド」に憧れ、海洋高校に入学する岬明乃とは何ら関係ありません。
プロローグ 宗谷家の将来!
横須賀 そう横須賀女子の教員艦「猿島」の中にある一室だ。艦長の古庄は休暇を与えられているためいない。
そこには無理やりに集められた、宗谷家の三種の神器とも言える存在。宗谷3姉妹がいた。
そして、教壇にはその3姉妹たちの母親にして横須賀女子高等学校の校長である宗谷真雪が真剣な面持ちで3人を眺めていた。
「あなたたちには宗谷家の将来がかかっています!なので、あなたたちには婚約者を決めてもらいます。絶対に一人は選んでください! ましろについては高校卒業してブルーマーメイドになるまでは挙式は待ってもらうことになっていますが・・・真霜と真冬には関しては婚約後、すぐにでも挙式をあげてもらいます。」
毅然と真雪はそう告げた。突然の指示に驚きを隠せないでいる宗谷3姉妹。
続けて真冬は「今、渡した資料には本日 面談する相手の情報が事細かに載っているので参考にしてください」
かなりあきれた顔の宗谷真冬は今日も黒いブルーマーメイドの制服に身を包んでいた。
「母さん? この資料、なんかページが多くないか? 刷りすぎたんじゃ?」
適当にペラペラとめくっていく、真冬がそう聞いた。
反対に真霜とましろは資料を細かく見てはため息を吐きつつ、ページをめくっていく。
おもむろにましろが「母さん・・・ほとんど、40代~50代の人なんですが・・・はぁ、不幸だ」
「猫におっかけられるままに来なきゃよかった。」とましろは後悔した。
真雪は特に反応することなく、無表情で続ける。
「ではエントリーナンバー1番の方から面談に入っていただきます。どうぞ」
エントリーナンバー1番はガタイの良いおっさんだった。見た目、日焼けしているので海の男なのだろう。
「エー 私がエントリーナンバー1番の東舞鶴高等学校の教頭の○○です。私の希望相手は次女の真冬さんです。元気があって、私と相性が良さそうだと感じました。ぜひ、私と婚約してください。」
男は汗をだらだらとかきながらそう告げた。
当の真冬は・・・口アングリであった。嫌そうな顔を滲ませながら・・・
「わ、私はもうちょい歳が近いのがタイプなんだよ。すまねえ・・・」
他の2人も却下のジェスチャーが出たため、東舞高の教頭は退場させられた。
その後も入ってくるのは歳のいっているオジサンばかりで自己紹介をさせないまま。
100人くらいを追い帰したあたりで不意に真霜が答えた。
「お母さん 333番の男性以外の方には帰っていただいてもいいでしょうか?」
「? その333番の彼が気に入ったのかしら?」
真霜は少し照れた感じになるも真剣にそう答えた。
真雪は真雪で待っていたかのようだ。真冬とましろは急いで、333番の男性の情報を見入った。
「ふ~ん 25歳で警察官か。少し上にも感じるけど、他のに比べたらいいか」
「はぁ・・・不幸だ・・・」
ましろはましろでまだヒステリックしていた。
宗谷真雪は少し微笑を浮かべながら、333番の男以外を退室させた。
「真冬もましろも後はその男性しか居ないから、3人で取り合うことになるかもしれいないけどいいかしら?」
「え、マジかよ。でもな~他にいい男なんて居なかったし真霜姉と取り合うのも面白そうだな。でも、シロよ・・・お前のやわなケツじゃなびく男なんて居ないと思うからやめとけ」
「姉さん・・・もうすぐ高校生なのにいきなりあんなオッサンたちはハードル高すぎます。」
少し、2人が落ち着くのを待ってから真雪は男を入室させた。
「エントリーナンバー333番です。よろしくお願いします。」
入ってきたのは横須賀女子高等学校の教員服に身を包んだ若い男性だった。
意外にも真っ先に話しかけたのは真冬だった。
「なあ・・・なぜ横須賀女子の教員服、着てんだ?」
代わりに真雪が説明する。
「よく分からないけど、捕獲する際には既に服がずぶ濡れになっていたので、着てもらったのよ」
・・・まだ3月なのに海を泳ぐなんてやるなという関心の目で見る真冬。
隣のましろとは一瞬、目が合ったが逸らされた。
とりあえず、真霜は濡れた原因を聞いてみる。
「なぜずぶ濡れだったのですか?」
男はいったん、ましろに視線をやりつつ
「エート・・・そちらの方が海へダイブしそうだったので・・・」
どうやらましろが合格発表を見に行った帰りに港で水平線の向こうを見ていたら、後ろからツインテールの女の子に突き飛ばされて海に落ちそうになったところを男に救われたそうだ。
結果・・・男はずぶ濡れ。そして、そのすぐ後に真雪の配下に連れ込まれたそうな。
「あの・・・お礼、その言ってませんでした。あ、ありがとうございました」
ましろは上目遣いで弱弱しくそう告げた。
真霜は特に感心していたものの、ましろとのやりとりが気に食わないようで・・・。
「あの」
「あのさ、あんた・・・呉の海洋学校の出身なんだろ?実家はこっちなのにどうやって通ってたんだ?」
真霜がアピールしようとしたところで、真冬に横槍を入れられた。
「はい 呉の航海科出身です。実家は神奈川県横須賀市汐入町ですが、呉では寮に入っていました。たまに帰省することもありましたけどそれが何か?」
男性は質問に丁寧に答えると疑問に思ったことを。
「いや、ナニ。昔 一緒に遊んでくれた高校生のことを思い出してね。確か、呉の海洋学校とか言ってたから。「海上戦士オーシャン」って知ってるか?」
真冬は昔よく見ていたアニメの話をし始めた。
男は少し顔色を変えて、考え込んだ・・・。
「まさか、真冬か? お、大きくなったな・・・(主に胸が)」
「やっぱし、アニキか。懐かしいな~あれから何年 経つんだ?」
「確か、高校卒業して少しの期間は実家にいたけど・・・6、7年振りかな。いや、真冬 成長したなあ。」
「えへへ アニキの女になるんだからこれぐらい当然だろ?」
この言葉に・・・真霜だけでなく、ましろも驚きの顔を見せた。当然ながら、真雪や周りにいる警備のブルーマーメイドすら。
しかし、男性は・・・
「?! そんな約束・・・したっけ?」
「したぜ・・・大人になったら海上戦士オーシャンみたいな男になるから俺の女になれってな」
「自分の記憶では真冬がアニキのお嫁さんになるって言ってた気がするんだが」
「昔の思い出なんか関係ないさ。さ、アニキ 結婚しようぜ!」
勝手に話を進めていく、真冬を遮ったのは言うまでも無く真霜だ。
真霜は男性に詰め寄ると抱きついた。そして耳元にこう呟いた。
「俊くんですよね?私が誰か分からないとは言わせませんよ」
俊くんはじっと真霜の顔を見てみた。
「宗谷監督官・・・」
一瞬、血の気が引いた俊くん。真霜の元彼で結婚の約束をしていたらしい。
「前みたいに真霜と呼んでください。あ・な・た♪」と耳元に囁く。
真冬は辛抱が無くなったか、同じく俊くんにタックルをかます。
「アニキ、真霜姉にデレデレすんな。あたしがいるんだからさ」
「あなたたち、もうお見合いはおしまい。3人とも彼でいいのね? 無言なのは了解したことにするわよ」
収拾がつかなくなりそうなので、宗谷真雪はこれでお見合い面談を終わりにした。
その後も真霜に抱きつかれつつ、真冬に蹴りやら頭突きやら、ましろには微妙な顔されながらなんとか逃げ出したのは夜中のことだった。
なんとか、教員になったということはバレなかったらしく後日 採用通知が届いて晴れて横須賀女子高等学校の教員として働くこととなった。
続く。
どうも、多聞丸(猫)です。約1年半振りにやります。よーそろー
事後報告ですが、オリジナル設定公開。
呉海洋学校・・・共学のホワイトドルフィン&ブルーマーメイド養成学校。男子は潜水艦科と倍率高めの航海科があり、原則として男子は航海科のみ。女子は横須賀女子と同じ仕様。阿野岡入学当時の航海科の定員は5名。ましろ横須賀女子入学時は3名となっている。