転生チートテイルズ物語 〜幻の冬カノンノに転生〜 作:プラネテューヌ大好き勢 kanamiss
次村陣八さんのコメントから参考に変えてみました。これから全話修正なので投稿は20までしませんすいません( ̄▽ ̄)
あとカノンノは出番少ないです。
私達はあの後2日かけて無事セントビナーにたどり着いた。ルークにとって幸いなのはあれきり、一度も追っ手に出会わなかったことだ。決意したものの、人殺しを避けるに越したことはなかった。だか、その幸運もここまでのようだ。
「なんで神託の盾騎士団がここに……」
街の入り口に、神託の盾兵がいる。たまたま立ち寄った、というふうには見えない。あきらかに人を探している様子であったし、街の中に相当な数がいると見えた。
「タルタロスから一番近い街といえばこのセントビナーだからな。休息に立ち寄ると思ったんだろ」
茂みの中に倒れてそのままになっていた馬車の陰に隠れて、ガイがそう言うと、ジェイドが意外そうな声を出した。
「おや。ガイはキムラスカ人のわりにマルクトに土地勘があるようですね」
「卓上旅行が趣味なんだ」
さらりと言ったガイに、ジェイドは例の薄い笑みを浮かべる。
「これはこれは、そうでしたか」
そうさ、といって、ガイはその話を断ち切った。とー
「大佐、あれを……!」
ティアが緊張した声を出した。ルークにもその理由はわかった。街の巨大な門の内側から、タルタロスで見た顔が現れたからだ。魔弾のリグレット、妖獣のアリエッタ、黒獅子ラルゴもいる。ともに現れた鳥の嘴のような仮面をつけた濃い緑の少年は初めて見る顔だ。
仕留め損ないましたか、とジェイドが呟くのが聞こえた。ラルゴのことだろう。襟のところから微かに白いものが覗いているのは、おそらくは包帯。
「導師イオンは見つかったか?」
リグレットが遅れてきた兵士に訊くと兵は首を横に振った。
「どうやら、この街には訪れてないようです」
それを聞いて、アリエッタがぬいぐるみを顔をうずめるように抱きしめる。
「イオン様の周りにいる人たち、ママの仇……この仔たちが教えてくれたの。アリエッタはあの人たちのこと、絶対許さない」
「導師守護役がうろついたってのはどうなったのさ」
ぶっきらぼうに、仮面の少年が訊いた。その声は、どこかで聞いたことがあるような気がしたが、思い出せなかった。記憶違いだろうか?
「マルクト軍と接触していたようです」
別の兵が答えた。
「もっともマルクトのやつらめ、機密事項と称して情報開示に消極的なようでして」
アニスは無事のようですね、とジェイドが呟いた。それは心配していたというより、当たり前のことを確認のよう。
仮面の少年は、導師守護役としか言わなかったが、ここでアニスとの待ち合わせをしていることを考えれば、それは彼女以外にはありえなかっただろう。
獣のようにラルゴが呻いて、太い首をうなだれた。
「俺があの死霊使いに負けなければ、あの導師守護役を、取り逃がすこともなかっただろう……面目ない……」
するとー
「ハーハッハッハッハッハッハッハッ!」
やけに甲高い、聞く者の癇に障るような声が辺りに響いた。六神将は眉をひそめてひそめて周囲を見渡した。
伏せて、とジェイドが小声で、しかしするどく言い放ち、ルークたちはさらに身を屈めた。
そうして、馬車の木材の隙間から見た光景は、響いた声以上に奇妙な者だった。
なぜならー空から椅子が降ってきたからである。
豪華な。
王侯貴族が使うような、一人がけのソファ。
「だーかーらー言ったのです!あの性悪ジェイドを倒せるのは、この華麗なる神託の盾六神将、薔薇のディスト様だけだと!」
「薔薇じゃなくて死神だろ?」
「この美し〜い私がどうして死神なんですか!」
だかそのことにそれ以上言及する者はいなかった。
リグレットなどはディストを完全無視すると、
「過ぎたことはどうでもいい、どうする、シンク?」
「エンゲーブとセントビナーの兵は撤退させるよ」
「しかし!」
異を唱えようとしたラルゴを、シンクと呼ばれた仮面の少年は振り返り、首を傾げた。
「あんたはまだ怪我が癒えてない。なんたって、あの死霊使いに殺されかけたんだ。しばらくおとなしくしてたら?それに、奴らはカイツールから国境を越えるしかないんだ。このまま駐留してマルクト軍を刺激すると外交問題に発生する」
「おい、無視するな!」
ディストは椅子をぐるりと回してーあの椅子はどういう仕掛けかわからないが浮いているー四人で輪になるように顔を付き合わせた他の六神将の間に割り込もうとしているようだったが、その隙はなかった。
リグレットは腕を組み、自分の二の腕を指で叩いた。
「カイツールでどうやって待ち受けるか……ね。一度タルタロスに戻って検討しましょう」
ラルゴは不承不承頷くと、
「伝令だ!第一師団、撤退!」
街の隅々まで響くような大声で、そう告げた。
了解、と答え、兵士たちが散る。
神将たちは街の中から現れた馬車に乗り込むと、街道を北へータルタロスのある方へと向かって走らせた。
「きぃぃぃぃっ!私が美と英知に優れているから嫉妬してるんですねーっ!!」
そんなことを叫び、ディストは現れた時と同様、椅子ごと空中に飛び上がると、遥か高みを、タルタロスとは別つの方向へ飛んで行って見えなくなった。
「あれが六神将か……初めて見た」
感慨深そうに呟いたガイをルークは振り返った。
「なあ、六神将ってなんだ?いろんな意味ですげー奴らだってのはなんとなくわかるんだけど……」
それを、聞くとイオンは笑った。ルークの色んな意味がわかったのだろう。
「ルーク。六神将とは、神託の盾の幹部、六人のことだよ」
「へぇ……あのちびっこ二人もそうなのか」
「でも、五人しか居なかったな」
「黒獅子ラルゴ、死神ディスト、烈風のシンク、妖獣のアリエッタ、魔弾のリグレット、いなかったのは鮮血のアッシュだな」
「おや、詳しいですね」
感心したようなジェイドの言葉に、ガイはそうか?と首をすくめた。
「ちょっと興味のある奴らなら、連中の通り名くらい、知ってると思うぜ。それに、六神将ってなんだ、なんで訊くのはルークくらいだろ?」
「確かに」
「納得するな!」
「彼らは」
と、ティアが話を戻すように言った。「ヴァン直属の部下よ」
師匠の名前に、ルークは振り返った。
「ヴァン師匠の!?」
「六神将が動いているなら、戦争を起こしているなら、ヴァンだわ」
「ち、ちょっと待てよ!」
「そうだとしても」とイオンが話に割って入った。
「六神将は大詠師派です。モースがヴァンに命じているのでしょう」
だったら、カノンノが言う。
「犯人は大詠師モースでヴァンはモースが戦争を起こすための代わりをやっているんじゃない?」
だか、ティアは確信があるかのように、首を振った。
「大詠師閣下がそのようなことをなさるはずがありません。極秘任務のため、詳しいことをお話しするわけには参りませんが、あの方は平和のために任務を私にお任せくださいました」
おかしくない?とカノンノがさらに言う。
「いくら極秘任務とはいえ、大詠師モースは導師イオンの部下なんだよ。だったらイオンにどんな任務か先に話さないといけないんじゃない?」
「だから言ってるじゃない!私は極秘任務だから言えないの」
「導師イオンに言えないくらいの極秘任務なんてあるわけないんじゃない!」
「二人とも落ち着いてください」
イオンの仲裁に、ガイも頷いた。
「そうだぜ。モースもヴァン謡将もどうでもいい。今は六神将の目をかいくぐって戦争を食い止めるのが一番大事なことだろう」
ティアは、それでもしばらく、カノンノを睨んで譲らなかったが、やがて。ため息をつくように深呼吸すると
「……そうね。ごめんなさい」
と微かに消え入りそうな声で呟いた。だか、自説を撤回したわけではない。
「終わったみたいですね、それでは街に入るとしましょうか」
黙ってやり取りを聞いていたジェイドがにこやかに言った。
「あんた、いい性格してるよ」
ガイは呆れたように言ったが、じは笑って馬車の陰から出て街の方へと歩き出しさながら、しかし否定はしなかった。
ルークたちも警戒しながら後に続いて、セントビナーという名らしい街の大門をくぐった。