スーパーロボット大戦OG~泣き虫の亡霊~   作:鍵のすけ

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第二話 仄めかされるタイムリミット

 シラユキ・カタハナの身柄を拘束してから一日が経った。

 地球連邦軍情報部の力は流石、といったところであっという間にシラユキの身元情報を洗い出せた。

 その情報を収束したタブレットを片手にフウカは呟いた。

 

「情報の精度はそれなりのようですね」

 

「あぁ、タースティアに関する証言について、正確に供述している。疑いの余地はないだろう」

 

 タウゼントフェスラーの中でフウカとギリアムが意見をすり合わせていた。現状、情報源はシラユキ・カタハナの存在のみ。その人物の発言なだけで重要な情報である。

 フウカは一室に軟禁状態にしたシラユキについて思いを馳せる。

 

「あの子、どうするつもりですか? そのまま行けば拘束して、然るべき場所で然るべき対応を受けるのが当たり前だと思うのですが」

 

「ああ、普通はな。仮にも私設武装組織の一員だ。危険分子だということは誰の目から見ても明らかだ」

 

 しかし、とギリアムはコートを翻し、シラユキのいる部屋を目指す。

 その後ろにつくフウカは呆れ顔を浮かべた。彼が何をしようとしているか悟ってしまったからだ。

 

「しかし、そういう事情を持つ者は()()()()()。そうだろうフウカ?」

 

「よりにもよってそれを私に言いますか? 本当に良い根性してますよね。並行世界の渡航を経験すると、そうまでイイ性格になるものなんですか?」

 

「それは君の想像にお任せしよう。そら、着いたぞ」

 

 電子ロックを解除し、部屋に入った二人はシラユキを確認する。

 特に暴れたような形跡や、()()()()()とした形跡もない。本当におとなしくしていたようだった。

 

「やぁヌーブ。フウカさんがやってきましたよ、ついでにギリアムも」

 

「私をヌーブと呼ぶなド三流」

 

「なるほど、まだ頭に刻み込まなきゃならないようですね」

 

「絡むなフウカ。……シラユキ・カタハナ。そこに座っても?」

 

 無言で承諾したのを確認し、ギリアムは椅子に腰掛けた。フウカはその背後に直立で待機していた。

 ()()()の時に備えるための儀礼的な対応である。シラユキの目を見て、とうの昔にそんな気がないのは理解しているが、念には念をということである。

 

「タースティアに関する君の証言について全て裏が取れた。我々は改めて君の話を聞く用意が出来た。その上で聞きたい。……タースティアを壊滅させて欲しいというのは本当かな?」

 

「本当だよ。タースティアのリーダー、『ビリィ・アラーナム』は世界に対して宣戦布告をしようとしている。地球連邦軍でも、どっかにいなくなったノイエDCでもなく、タースティアが世界の守護者になろうとしているんだ」

 

「それを可能とする程の手札があると?」

 

 一瞬の沈黙。思わずギリアムとフウカは顔を見合わせた。

 ギリアムが慎重に続きを促すと、シラユキは言いづらそうに続きを口にする。

 

「……最初はAMだけだったんだ、私達の組織が持つ戦力って。けどウチらの活動を支援してくれるっていう団体が何組かあってさ。徐々に戦力が整ってきた」

 

 そこでギリアムはレリオンの存在を思い返していた。ちゃんとした軍組織ならまだしも、その辺の傭兵の集まりが手に入れられる代物ではない。

 ちゃんとしたバックがいるのは明白。だが、当然リスクはある。それを上回って余りあるリターンがあると見て間違いないのだ。

 

「だんだんウチは大所帯になって、そして持てる戦力も変わってきた。その頃辺りかな? ビリィが変になってきたのは」

 

「具体的には?」

 

「今までのタースティアの活動は地球連邦軍が守ってくれない地域の治安維持がメインだったんだ。この世界、手に入れた機動兵器で奪える所から奪うなんていう時代遅れの山賊もどきがいるしね」

 

「噂は聞いていた。金の流れや兵器の仕入れルートなど、調べるところは山程あったが、反社会的な行動を取っていなかったからこそ、情報部(ウチ)の強制捜査の序列を下にしていた。……しかし」

 

「分かっている。ちょっかい出してるんでしょ? そっちにさ。最近はそういうのが多くなっているみたいだね」

 

 フウカがシラユキを見る。

 

「貴方は? シラユキも連邦軍とやりあっていたんですか?」

 

「ううん。私はメインの仕事をずっとしていたよ。そっちの方はフロノがやっていた」

 

 フロノという名前は二人に覚えがあった。

 

「『フロノ・プレイゼンター』か。タースティアの幹部にして、実働部隊の隊長と聞く」

 

「そうそうよく知ってるね……まあ、フロノは連邦軍とかなり派手にやっているからそれも当然か」

 

「話が逸れたな。それで、ビリィはどんな根拠をもって世界の頂点に君臨しようとしているのだ?」

 

 するとシラユキはポケットからデータチップを取り出し、ギリアムへ放り投げた。

 それを受け取った彼は、インターネットから切り離した完全スタンドアロンの端末にそれを差し込み、データのインストールを行った。

 すぐに出てくる何かの図面。

 読み込み、ギリアムは目を見開いた。それを後ろから覗き込んだフウカも僅かに表情を凍らせる。

 

 その図面が(もたら)す出来事を想像するには余りにも簡単すぎた。

 

「大型重力場発生弾頭ミサイル……だと?」

 

「ビリィはこれを作り上げて、世界中に撃とうとしているんだ」

 

「馬鹿な。この規模の重力場はMAPWにしても威力が高すぎます。こんな物をパカパカぶっ放しでもしたら地球にどんな影響があるか分からない……」

 

「……どうやら、思っていたよりも話が大きくなってきたようだな」

 

 ギリアムの頭の中でこの事態をどう収集するかのシミュレーションが超速度で開始されることになった。

 それを後ろから見ていたフウカはこんなことを思っていた。

 

(まぁたロクにご飯も食べられないお仕事になりそうですね。今のうちに美味しい物をたくさん食べておかないと)




ギリアムとフウカは書きやすい

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