スーパーロボット大戦OG~泣き虫の亡霊~   作:鍵のすけ

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第五話 神聖騎士団~前編~

 ラビーに連れられ、談話室までやってきた第五兵器試験部隊。

 大きなモニターの前には基地職員が大勢いて、その全員がモニターの人物に注目していた。

 

『――何度でも言おう! 連邦はこの地球圏の守護者足りえん!』

 

 煌びやかな教卓に立っていたのは、白髪が目立つ初老の男性であった。

 全体的に老けており、一見すれば枯れた大木と言う印象を与えるが、その身に纏う覇気がそれを大きく昇華させている。

 差し詰め、深い樹海の中に聳えたつ古城。静謐な威厳に満ち溢れていた。

 男性が掲げていた手を一気に振り下ろす。

 

『危機感が抜け落ち、護るべき対象である市民をすら満足に護りきることの出来ぬ魂無き集団である。見よ!』

 

 そうして切り替わった映像を見て、室内がざわめいた。

 虫のような機動兵器や、人型機動兵器がとある都市を蹂躙している映像であった。都市が炎に飲まれるところで映像が切り替わり、今度は町がずんぐりとした人型機動兵器や獣人型の機動兵器に破壊されている映像が映される。

 それからしばらく色んな町や都市が襲われている映像が流れていった。

 映像が流れる事数分、再び男性に映像が切り替わり、再び演説を始める。

 

『今見てもらえた映像でいかに連邦が後手に回った対応をしているか分かってもらえたであろう。……ある者は楽観視するだろう、ある者はこの状況に不安を感じているだろう。ある者は何とかなっているだろうと言うかもしれない。……だが! 気づいて欲しい。今諸君らが平和に過ごせているのは、数多ある奇跡が積もりに積もった末の……偶然だということを!』

 

 ソラは演説を続ける男性を見ながら、隣のラビーに声を掛ける。

 

「ラビー博士、あの人誰ですか?」

「『ゲルーガ・オットルーザ』。以前は連邦軍の大佐だった人物だ」

「連邦!? なんでそんな人がこんな連邦を非難するようなことを……?」

「非難する()()()ではない、しているんだよ。ほら見ろ」

 

 再び映像が切り替わる。

 今度は町や都市では無く、多数のPTやAMが連邦軍基地へ攻撃を仕掛けている光景だった。

 

「こ、攻撃しているのはあのおっさんの仲間……なのか?」

 

 ソラの呟きに答える者は誰も居ない。

 そうしている間にも、ゲルーガの演説は続く。

 

『正直に言おう。……私は自分に対し、憤りを感じていた。ただ指を咥え、護るべき市民が異星人の思うようにされているのをただ見ているだけしか出来ない自分が……!』

 

 教卓に叩きつける拳が、演技ではないことぐらいはソラには分かっていた。ラビーはそんなソラをただ横目で見ているだけだった。

 

『だから私は同志を募った!! 腐りきった連邦を根元から焼き払い、真なる地球圏の守護者足りえる騎士たちを!!!』

 

 また違う映像が流された。

 今度も連邦基地だが、大きく違う点は一つ。

 

「や、やめろーーっ!!」

 

 気づけばソラは叫んでいた。

 だが、映像のAM部隊にソラの声が届く訳も無く、彼らの攻撃は基地周辺の町を巻き込み、景色を一変させた。同じく映像を見ていたラビーが不機嫌を隠そうともせず言い捨てる。……実に忌々し気に。

 

「……ふん。騎士は騎士でも魔女狩り専門らしいな」

「な、何だよ……何だよ、これ……!?」

 

 ソラはいつの間にか血が滲むほどに握り拳を作っていた。

 たった今、人間が人間を襲った光景をまざまざと見せられ、動揺を隠せないでいたのだ。それと同時、再び現れたゲルーガを睨みつける。

 

『我らこそ真なる地球圏の守護者、『サクレオールドル』である!! 私の訴えに心震えた(つわもの)共よ、我らが旗に集え!! そう……我らこそ地球圏の絶対正義なり!!!』

 

 そう締め括り、ゲルーガ・オットルーザの演説が終わった。

 談話室にいた大勢がぞろぞろと部屋を出ていく中、第五兵器試験部隊……中でもソラだけが呆然と立ち尽くしていた。

 見かねたフェリアがソラの肩に手を掛ける。

 

「何突っ立ってんのよ? 早く行くわよ」

「何が……何が、絶対正義だ……!」

「……何?」

 

 八つ当たりと知りながらも、ソラは手近な机に拳を打ち付けた。

 じんわりと滲む手の痛みよりも、それ以上の怒りがソラの全てを支配していた。

 

「ふざけんな! その守る人達を巻き添えにしている奴らの、一体どこが絶対正義なんだ!?」

 

 ゲルーガ・オットルーザ。

 今日まで生きてきた中で、ソラが最も怒りを感じた瞬間であり、最も怒りを覚えた人物であった。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「そろそろ目的地に到着だ。お前達、用意しろ」

 

 そう言ってラビーが第五兵器試験部隊の面々に声を掛けると、三人は席を立つ。

 

「ととっ」

 

 二人が難なく席を立ったのに対し、ソラだけバランスを崩してしまい、もう一度席に座ってしまった。その光景を見ていたフェリアが呆れたようにため息を吐く。

 

「何やってんのよ……?」

「う、うっせえ! ちょっと機体、風に煽られ過ぎじゃねえか? 危ねえな……」

「はいはい。そう言うことにしておくわよ」

 

 歩いていくフェリアの背中へ、べーっと舌を出した後、ソラは輸送機《タウゼント・フェスラー》の機内を歩いていく。

 

(……あれから何日経ったっけ?)

 

 ――ゲルーガ・オットルーザの演説から数日が経っていた。

 

 その日以降から、ゲルーガが立ち上げた武装組織『サクレオールドル』が各地の軍事施設を襲うようになり、連邦はその対応に追われていた。

 そんな中、ソラ達第五兵器試験部隊に初任務が下された。

 内容はガイアセイバーズの本拠地であった『グランド・クリスマス』の近くに浮かぶ孤島に建造されている軍事施設の護衛であった。

 機内の格納庫に移動していたソラたちは近くのモニターで目的地となう施設の外観を眺めていた。

 

「何か随分最近造られた感がある基地だよな~」

 

 すると隣でノートパソコンを開いていたユウリがソラの質問に答えてくれた。

 

「多分ソラさんの言うとおり、ここは最近造られた施設だと思います。それにしても変なんですよね……」

「何が変なのかしら?」

「この施設、連邦が工事を発注した記録が無いんですよね……。一応連邦の所管となっている所を見ると、“元々あった”施設を軍が接収したのかな~って」

「ほう。良い読みだユウリ君」

「ひゃっ!」

 

 いつの間にかラビーがユウリの後ろに立ってノートパソコンの画面を見ていた。

 ユウリの驚いた声が思った以上に可愛く、ソラは少し顔を紅くしてしまったのは内緒である。

 フェリアにバレたらまた馬鹿にされるコース確定だ。

 

「ら、ラビー博士ぇぇ~……」

「それにしても、人畜無害そうな顔して意外にやるなユウリ君。アクセス許可が無いはずのデータベースに踏み込んでいるとはな。あまつさえ何重にも掛けてあったはずのプロテクトを全て突破とは……末恐ろしいと言ったらないな」

「う……っ!」

 

 笑顔のまま、だらだらと汗を流すユウリの姿を見て、ラビーの言葉が真実だと確信したソラは引き攣った顔で彼女を見た。

 元々言い負かす性格ではないので、目を泳がせまくっているだけ。

 そんなユウリを面白そうに見ていたラビーが、話題変更とでも言いたげに、咥えていた煙草をプラプラ上下させる。

 

「まあその辺は後で追及するとして。……ユウリ君の言った通り、この施設は元々ここにあったものらしい」

「ん? らしいって、俺達が知らないのはまあ無理はないとして、ラビー博士も知らないんすか?」

「ああ。実はとあるチビロリにして狂気に満ち溢れたマッドサイエンティストがレイカー司令に進言したようでね。こうして私達第五兵器試験部隊を始め第九PT部隊と第二十八AM部隊が護衛任務に就いたという訳だ」

 

 今さらっととんでもない悪口が聞こえた気がしたが、誰も突っ込む度胸がなく、またソラも無いので、仕方なく聞き流してしまう。

 まあ安心しろ、とラビーが人差し指を立てる。

 

「今回の任務はこの施設の有用なデータを全て伊豆基地に移すまでの二日間、サクレオールドル……SOからこの施設を守ることだ」

「それは分かりましたけど、こんな所にそんなSOが欲しがるようなデータがあるんすか?」

「ああ、ここには廃棄される予定の試作兵器のデータなどがいくつかあるからな。そうだな……例えば、新型MAPW(大量広域先制攻撃兵器)のデータとか」

「は、はあっ!? 何でそんなもんがあるんすか!? さっさと処分すれば――」

 

 フェリアがソラの言葉に被せてくる。

 

「……そのMAPWがどんなシロモノかは分からないけど、例えば廃棄される原因がコスト面や技術面だとするわ。今は無理でも、コスト面や技術面が発達すれば問題が無くなるかもしれない。そんな可能性もあるのに、さっさとデータ廃棄なんて有り得ないわよ」

「ああ。フェリア君の言うとおりだ。と言っても、下手に廃棄して後でサルベージされても困るから扱いが慎重になっているだけなのだけどね。あとは単純に即決できないだけかもな。この類いの兵器は廃棄を巡って色々上層部で揉めるところまでが様式美だ」

「そ、そんなもんなんすね……」

 

 フェリアとラビーの言葉を何とか理解していきながら、ソラはまた施設の方へ視線を落とす。

 

「……ん? 何だあれ?」

 

 見えたのは一瞬だが、ソラの目は海岸に何か灰色の物体が打ち上げられているのを捉えていた。

 

「な、ユウリ。今何か見えなかったか? 灰色の、何て言うか……装甲板ぽいもの」

「多分施設の一部なんじゃないですか? 何故か所々傷ついていますし……台風か何かで外壁が剥がれたのだと思います」

「ふ~ん、そんなもんかぁ?」

 

 次の瞬間、機内に警報が鳴り響いた。

 途端変貌する機内の空気。整備兵が機体の最終チェックに移り、パイロットたちはそれぞれの機体へ走って行く。

 すぐさまラビーが機内のパイロットに連絡を取ったあと、ソラ達へ振り返る。

 

「どうやら早速来たようだ。SOだと思われる機動兵器群が施設の警戒ラインに入ったらしい。三人とも、すぐに機体へ搭乗し、迎撃に移ってくれ」

 

 ソラは息を呑んだ。

 ずっと考えないようにしていた。だが、もう逃げる訳にはいかない。

 手早くパイロットスーツに着替えたソラは自分の機体へ走って行く。

 

(これが、初めての実戦……!)

 

 武者震いだと、己の中で必死に震えを鎮めていた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 気づけば戦場となる施設近くの海上を飛行していた。

 いつ機体に乗って、起動手続きをして、発進したのか全く記憶にない。

 それが、実戦への恐れということを理解していたソラは両手を頬に打ち付ける。

 

「つっ! けど……目が覚めた……!」

 

 フェリア達に語った自分の、軍に入った目的を今一度思いだし、ソラは操縦桿をしっかりと握りしめた。

 

「索敵終わりました。フェリアさん、ソラさん、今送ります」

「ありがとうユウリ」

「ああ、サンキュー」

 

 ユウリから送られてきた索敵結果によると、どうやら敵は三個小隊……数にして十二機。

 三方から攻める布陣だ。

 

「ソラ君、フェリア君、ユウリ君。私達第五兵器試験部隊は三時方向からくる敵を担当することとなる」

「い、一機多いのに俺らだけでかよ!?」

「他はもう二方に対応しているし、この位置だと私達が対応したほうが早い。頼むぞ」

「くそっ、簡単に!」

「あと三十秒で目視距離に入ります。フェリアさん、ソラさん、気を付けてください」

 

 前回の模擬戦の反省を活かし、ソラはまず周りを見やった。

 後方にはユウリ、右側の海上をフェリアのピュロマーネがホバーで進んでいた。そして、障害物になりそうな物体が無いことを確認し、ソラは前方へカメラを向ける。

 

「……来た、か」

 

 映るのは四機の影、徐々にその姿ハッキリしていく。

 ユウリから送られてきた詳細なデータを見て、ソラはまた唾を呑み込む。影の正体は三機の《リオン》、そして後方には《バレリオン》。

 恐らくあの《バレリオン》が攻撃の要となるのだろう。

 

「良い? ユウリは後方で支援射撃。私が先に斬り込むからソラ、貴方は散開した敵を個別に撃破していきなさい」

「俺がか? てっきり自分で全部やるとか言うのかと思った」

「……悔しいけど、一人で数の差を覆せるのはごく一部のパイロットよ。ましてやこれは模擬戦じゃなく、命のやり取りよ。つまらないこだわりなんかとっくにゴミ箱へ行っているわ」

「……思い切りやってやれ」

「言われなくても」

 

 短いやり取りを終えた後、ピュロマーネが先行し、バックパックのレクタングルランチャーを構えた。

 敵機も気づいたのか、発砲を開始するための動作を開始する。それよりも早く、ピュロマーネのカメラアイが光った。

 

「行くわよ、サクレオールドル……!」

 

 耳をつんざくような轟音が三発。

 そのどれもが当たりはしなかったが、フェリアの目論見通り敵機を散開させることに成功した。中でも大きく離れた《リオン》へ、ソラは狙いを定める。

 

「おおお!」

 

 すぐに携行武装であるフォトン・ライフルの引き金を引いた。

 しかし、一発が掠っただけであとは全て外れてしまう。

 

「そう上手くは当たらない……か!」

 

 敵のレールガンがソラ機へ向けられる。すぐさま操縦桿を倒し、射線上に入らないよう立ち回るソラ。

 その姿を見て、フェリアが感心したように声を上げる。

 

「へえ、今日は山の頂上に踵を引っ掛けないのね」

「お前を倒すためにずっと練習してたんだよ!」

 

 言葉通り、ソラはフェリアの負けて以降、時間を見つけてはPTの操縦訓練をしていたのだ。

 しかし一朝一夕で向上するわけも無く、ただ単にPTの操縦に慣れた程度の成果しか上げられなかったが。

 

「それは良いことを聞いたわね……!」

 

 M950マシンガンを両手に持ち替えていたピュロマーネが挟み撃ちをせんとする二体の《リオン》へ向け、銃を乱射していた。

 それだけでなく、脚部に追加された三連装ミサイルポッドのハッチが開き、そこからミサイルが何発も射出される。たった一機で敵の《リオン》二体以上の弾幕を形成するピュロマーネを見て、やはり名前通りだなと思いながらソラは目の前のリオンへプラズマカッターで斬り掛かる。

 だが《リオン》はあざ笑うかのように、ひらりひらりと避けていく。

 つい焦ってしまう、がそこで焦ったらまた模擬戦の時のようなことが起こると確信していたソラが一旦頭部のバルカン砲を放ち、距離を離した。

 コクピット内にアラートが鳴り響いた。フェリアが対応している方向だ。

 カメラアイを向けると、二体の内の一体がこちらへレールガンの砲口を向けていた。コクピット直撃コース。

 

「まずい……!」

「ソラさん!」

 

 ユウリのオレーウィユが接近してきた。

 何をやるつもりだとソラが内心戸惑うが、彼女は何も答えない。代わりに、オレーウィユのレドームが展開した。同時に放たれるレールガンの弾頭。思わず目を瞑った。

 

「……ん?」

 

 確実に当たったはずなのに、機体は無傷であった。

 

「ソラ!」

 

 ピュロマーネがソラを攻撃した機体の推進装置へレクタングルランチャーを撃ち込んだ。

 どうやら直撃だったようで、リオンが海に落ちていく。

 

「……一機!」

「もう一機……!? 早い……!」

 

 元々フェリアはPT部隊に所属していたというのは既にラビーから聞いている。

 ということは、少なからず実戦に出ていて、敵と交戦しているということで。改めてソラはフェリアとの経験の差を痛感した。

 

「大丈夫でしたかソラさん!?」

「さっきの攻撃が当たらなかったのは、もしかしてユウリのおかげか!?」

「はい! ハッキングして敵のリオンの照準システムを少し滅茶苦茶にしました」

「そ、そんなことが出来るのか……?」

「ですが、とても簡単な攻撃なので、すぐに復旧します。気を付けてくださいね」

「ああ!」

 

 レドームが元に戻った後、近くの《リオン》へ牽制射撃をしたあと、またオレーウィユは後方へ戻っていった。そうしている間にも、ピュロマーネの左腕三連マシンキャノンが二体目の《リオン》を海へ叩き落としていく。

 

「二機……!」

 

 瞬間、ピュロマーネの足元に何かが着弾する。

 

「くっ……! どこから!?」

「フェリア! ……あいつか!」

 

 遠方の《バレリオン》が本格的に攻撃を始めたようだ。

 ミサイルを交えた砲撃が、三機を徐々に押していく。

 その間にも残った最後のリオンが、三機の中で一番火力の高いピュロマーネに狙いを絞ったのか、執拗に攻撃を仕掛けていく。

 

「くそっ……やるしかないのか……!」

 

 《リオン》へライフルを放っていたソラが、《バレリオン》へ向きを変え、ペダルを踏み込んだ。

 

「待ちなさいソラ! 一人でバレリオンの相手は……!」

「なら早くそいつを落として援護に来い! このまま固まっていたらあのバレリオンにやられちまう!!」

 

 牽制用のミサイルランチャーの雨を被弾覚悟で突っ込みながら、ソラ機がライフルを乱射する。だが、分厚い装甲がウリの《バレリオン》には大したダメージを与えることが出来なかった。

 

「うあっ!」

 

 避けきれなかったミサイルの何発かがソラ機へ被弾した。

 すぐに損傷を確認し、まだ動けることを確認したソラは臆することなく突撃を選択する。

 

「下がりなさいソラ! しつこい……!」

 

 そういうフェリアは、《リオン》に手こずっているのか、ユウリの支援射撃をもらいながら交戦中であった。

 まだ援護に来てもらうには時間が掛かるだろう。

 待っている余裕などないソラは、左手にライフルを持ち替え、右手にプラズマカッターを持つ。

 

(どこが弱点か分からねえ。……だけど、弱点ぽいところなら……! くそっ、こんなことならちゃんとAMのことを勉強しておけば良かった……!)

 

 まだAMやPTの理解が浅いソラは思い切って賭けに出る。

 見当外れの所を叩くより、それっぽいところを叩いたほうが建設的だという判断であった。しっかり狙いを付けているところを見ると、どうやらあの大口径レールガンを放とうとしているのだろう。……都合が良かった。

 

「おおおおーっっ!」

 

 今まさに放たれんとする《バレリオン》の頭部砲門へソラ機は逆さまに持ち替えたライフルの銃床を叩きつけた。叩きつけた衝撃で砲口が歪んだのか、《バレリオン》の頭部が小さな爆発を起こす。

 その隙を見逃さなかったソラ機はプラズマカッターで《バレリオン》の胴体を斬り付けた。

 刃は見事に胴体を斬り抜くことに成功し、ソラ機はすぐさま離脱した。

 

「ソラ、無事!? こっちは片付いたわ!」

「……ぁ」

 

 炎を上げ、海上に落ちていく《バレリオン》を見て、ようやくソラは事態を理解した。

 命が懸かっていたとはいえ、自分のやったことは――。

 

「……敵を、倒した……? パイロットは? ……死んだ、のか……?」

 

 この時、ソラは軍人と言う職業の“重さ”を初めて理解したような気がした――。




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