明久「僕が女の子に!?」   作:白アリ1号

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不定期でも、ちょこまかと投稿できたらいいんだけなぁ(´・ω・ `)

そう考えると、定期的に投稿できる人って本当にすごいですよね。
テレビ番組のように、その日までプロットを書いて、時間ピッタシに投稿するって……。
作者には到底真似できそうにない……。(-_-;)


83話 強化合宿2日目もいつもと変わらない?

sideアキ

 

 

「明久。お前に頼みたいことがある」

 

「何? こんな朝からなんなのさ」

 

強化合宿2日目の朝。

合宿所の食堂で朝食を食べ始めようとしてた頃に雄二に話しかけられる。

 

雄二は改まった様子でいるが、どうしたのだろうか。

昨日の覗き作戦には懲りて、僕に謝りにでも来てくれたのかな。

 

「お前に覗きを手伝ってほしい」

 

全然、反省しておらず、むしろ悪化していた。

 

「はぁ……雄二……もう朝なんだからいい加減、寝言はそこまでにしなよ」

 

「頼む! この通りだ!」

 

「そんな深々と頭を下げられましても……」

 

聞いた話によると、雄二たちは見回りの先生に捕まり、西村先生の指導で夜を過ごしたらしい。

 

それで懲りたかと思いきや、僕に協力を求めてくるとは……。

 

昨日も覗きを手伝えと言われた気もする。

あれは雄二たちも心底、憤っていたので、勢いでやらかしたのだろうと信じていたが、今日もこの有様だと何を言っても無駄だな。

 

「あのね、雄二。僕はそんなことに参加する気はないって昨日も言ったよね?

そんな悪だくみにメンバーを加えるなら、他をあたった方がいいと思うけど?」

 

「クソッ……もういい。女子風呂で首を洗って待ってろよ」

 

そう言い残して、自分の席へと戻っていく雄二。

 

「まったく……女の子が裸を見られることがどれだけのことか、わかってほしいものだよ……」

 

元男だった僕が言うと説得力に欠けるかもしれないが、女の子になると裸を見られるのが恥ずかしい。

 

まだ男性に見られたことはもちろんないが、水着を着せられたリ、露出度の高い衣装なんか着せられた時なんかは、見られるだけで死にそうだった。

もし裸を見られたりしたら……いや、気持ち悪くなってきたので、考えないでおこう。

 

「いつの間にか女子の味方になってるなぁ……いつもは男子の味方だったかもしれないのに」

 

覗きの被害を受けるのは僕に限らず、他の女子全員も被害者となる。

僕だけじゃなく、女子のみんなも同じ思いをしてほしくない願望からか、今の僕は完全に女子の味方だ。

 

本当に変わっちゃったな……僕。

 

男の僕は死んじゃったのか……。

 

…………いや、まだ男に戻れる術は必ずある……はず!

 

「はぁ……僕も朝から何を考えているんだ……」

 

朝はどうしても頭が回らないタイプの僕だった。

 

 

 

 

今日の合宿内容はAクラスとの合同学習。

学習内容は基本的に自由。要するに自習だ。

 

AクラスとFクラスという、学力に格差のあるクラスと合同で学習なんてできるのか、疑問に思うところだが、それ以上に気になることはそれが自習であること。

 

「なんで授業はやらないんだろう?」

 

「授業? そんなもんやる訳ないだろ」

 

学習を行う場所へと来てから、つぶやくと雄二がそれに答えた。

 

「……この合宿にはモチベーションの向上が趣旨だから」

 

雄二の隣にいた霧島さんが話に入る。

 

「つまり、Aクラスの連中は俺らFクラスを見て、ああはなりたくないと思う訳だ」

 

「……逆にFクラスは私たちAクラスを見て、ああなりたいって思わせたい」

 

霧島さんと雄二の連携プレイでわかりやすく解説してもらえた。

 

「なるほど~……わかりやすい説明ありがとう。流石、夫婦なだけあって、上手な解説だったね」

 

「……夫婦だから息はピッタリ」

 

「おい、俺にピッタリくっ付いてくるな! そして明久も変なことを翔子に言うんじゃねぇ!」

 

どっからどう見ても事実じゃないか……。

 

「ん~……とりあえず、自習ってことは誰かと一緒にやればいいのかな……?」

 

せっかくの合同学習なのに、1人でやるのはもったいないだろう。

なので、一緒に勉強する相手を探すことにした。

 

Aクラスの生徒もいることだし、そこのクラスの誰かに教えてもらおうかな……。

 

キョロキョロとAクラスの生徒の中から、教えてもらえそうな人を探してみる。

 

まず、目に入ったのは佐藤さん。

佐藤さんならAクラスとFクラスの一騎打ちの代表になっていたから、Aクラスの中では上位の実力があるはずだ。

 

よし、佐藤さんに決めた……って、んん? 佐藤さんの横に姫路さんと美波までいる。

 

佐藤さんの隣には姫路さんと美波がいて、その周りを複数のAクラスの女子が囲んでいた。

何があるかは知らないが、あそこに僕が行くと人数が多くなりすぎるからやめておこう。

 

「ん~……そしたら誰にしようかな――」

 

「アキちゃん! 私と一緒に勉強しよー!」

 

「わわッ!? 佐山さん!」

 

後ろからギュッと抱きしめられ、声と抱きしめられた感触で佐山さんだと気づいた。

いつもいろんな女子から抱かれるせいか、抱きしめられた感触で判断できるようになってしまっている。

 

「部屋も一緒な上に勉強までできるなんて思ってもなかったよ。ほら、こっちに来て」

 

手を繋がれて、それを引っ張られながら席へと移動する。

 

「アキちゃん連れてきたよ~」

 

「おぉ! 待ってました!」

 

「部屋でも今回もよろしくね。アキちゃん」

 

同じ部屋のメンバーである浜崎さんと櫻井さんが席に座りながら待っていた。

 

「ボクも混ぜてくれないかな?」

 

「アタシがいる方が効率的だと思うわよ」

 

そこへ工藤さんと木下さんまで加わってきた。

 

「よーし、ここのみんなで勉強会開始!」

 

佐山さんの一言で僕たちの合同学習が始まった。

 

「わからないところがあったら遠慮なく聞いて頂戴」

 

「ありがとう、木下さん。それなら、ここの問題を教えてほしいな」

 

Aクラスの優等生から気軽に教えてもらえるのが合同学習のいい所。

僕にとっては実になる時間だろう。

 

「私もアキちゃんの勉強手伝いたいな~」

 

「いいけど、吉井くんが今やっている教科は数学……それでもいいの?」

 

「ごめん、それなら遠慮しとく」

 

「私は教えられそうにないわね」

 

「得意科目だったらなぁ……」

 

佐山さんと櫻井さんと浜崎さんの3人の中に数学ができる者はいない。

 

「保険体育の実技だったらあれこれ教えられるんだけどな~」

 

「あ、私もそれ教えられる」

 

工藤さんも保健体育の実技だけが取り柄であり、佐山さんも恐らくその次だろう。

 

「そんなこと言ってたら吉井くんに追い抜かされちゃうわよ。現にAクラスの問題も解けるようになってるわよ」

 

「ええぇ!? アキちゃんに抜かされちゃったらお姉ちゃんの立ち位置がなくなっちゃうじゃん!」

 

「そんなことしている場合じゃないね!」

 

木下さんの言葉に焦った佐山さんと浜崎さんの2人は急いでペンを進め、問題を解いて行く。

 

「まぁ私も危機感は持っておいた方がいいかもしれないわね……」

 

問題を必死に解く2人を目にした櫻井さんはため息をついて、それに続く。

 

「……それじゃあ、次はどこを知りたいのかしら?」

 

「数学はもうやったから……英語のここを教えてもらおうかな?」

 

「どれどれ…………ん? これは……」

 

問題を見せると、木下さんは珍しくしかめっ面になる。

 

「どうしたの? 木下さん?」

 

「な、なんでもないわ……ちょっと待っててね……」

 

手を顎に当てて、真剣に考えだす木下さん。

 

「くっ……アタシとしたことが…………こんな問題を吉井くんに教えてあげられないなんて……!」

 

「えっと……木下さん?」

 

「これには優子もお手上げみたいだね。他の人に教えてもらえれば?」

 

工藤さんによると、木下さんはこの問題が理解できないみたいだ。

まぁ木下さんも完璧にどんな問題でも解ける人間ではないから……解けない問題の1つや2つはあるはずだ。

 

「うーん……誰に教えてもらおうかな?」

 

そういえば、浜崎さんは英語の実力が学年1位だったとか言ってたような……。

 

横で問題が解けずに悔しがる木下さんをよそに、浜崎さんの方へ目をやる。

 

いや、今は必死に解いているみたいだからやめておこう。

集中している場面を邪魔する訳にはいかないし。

 

「でも、そうなったら問題は解けないし……どうしよう……」

 

「吉井クン、こうなったらボクが適役を呼んでくるよ!」

 

と言って、工藤さんはどこかへ行ってしまった。

 

適役とはだれを呼んできたのだろう?

 

「吉井クン! 呼んできたよ!」

 

しばらくして、戻ってきた工藤さん。

横にいた人物はというと……。

 

「あはは……よ、よろしく」

 

「久保くん! 工藤さんが呼んできたのって久保くんだったの?」

 

「そうだよ~。久保クンは学年で2番目に頭がいいし!」

 

確かに適役ではあるけれど……。

 

「あの、久保くん」

 

「な、何かな……!?」

 

ん? 久保くん、なんだか様子がおかしいけど……。

 

「……どうしたの? 今日の久保くん、なんか変だよ?」

 

「そ、そうかな? それはそれでいいとして……わからない問題があるというなら僕を頼ってほしい。合同学習なんだから、遠慮する必要はない」

 

「うん、ありがとう」

 

強化合宿期間で何かあったのだろうか。

だが、特にそこまで気にすることではないので追及はしない。

 

「なら、吉井くんのわからない場所を見せてもらえるかな?」

 

「ここの問題なんだけど……」

 

問題を見せようと、久保くんの横までくると、

 

「うわぁ!? よ、吉井くん!」

 

「わぁっ!? な、何!? 久保くん!?」

 

身体をビクッとさせて、僕との距離を離す。

 

「どうしたの……? 何かあったの?」

 

「いや、すまない……少し驚いただけだ……」

 

「……?」

 

久保くんの説明を聞いても僕は何がなんだかサッパリわからない。

 

「……じゃあ、改めてここを解説するね」

 

「うん……」

 

「まず、吉井くんはここがなぜ未来形の文なのに動詞が現在形なのかを知りたい……で合っているかな?」

 

「そうそう。この文は本当にこれで正解なの?」

 

「未来の時制は現在形の動詞で代用できるんだ。これは確定的な予定である場合だから、それが使えるんだ」

 

「へぇ~……そうだったんだ」

 

更に久保くんは解説を続ける。

 

「そして、時を表す副詞節。before、after、untillという接続詞が来たら副詞節になる。

whenとifは副詞節以外に名詞節の場合もあるから、どちらかを区別して現在形にするか未来形にするかを決めるんだ」

 

「なるほど……ありがとう。理解できたよ」

 

「参考になったのなら何よりだよ」

 

そっぽを向いて返事を返す久保くん。

 

やっぱり、今日の久保くんはなんか変だよ…………他人行儀というか、いつもと接し方が違う気がする。

 

「流石ね……悔しいけど久保くんには敵わないわ……」

 

「本当にすごいよね~久保クンは」

 

「いや、そんなことはない。僕は授業の内容をそのまま覚えて、教えたまでだ」

 

「それがすごいのよ……沢山の情報を覚えるなんて、アタシには真似できそうにないわ」

 

「英語ってそこが難しいよね~。ごちゃごちゃしてて、よく混同しちゃうから……」

 

「大事な要点を暗記しておけばいい。英語は教科書や参考書に無駄なものが載りやすい教科であるから、必要最低限のことを覚えれば既に完璧にできるはずさ」

 

あ、あれれ……?

なんで木下さんと工藤さんとは普通に会話できているの?

僕の時とは態度が大違い……。

 

「久保くん、いい所に! ちょっと、こっち手伝って!」

 

「ん、どうしたんだい?」

 

「ここの問題教えて!」

 

「ああ、もちろん。ここの問題は――」

 

…………佐山さんの時も普通に接してる……。

 

なんで僕だけ……?

僕、久保くんに何かしたっけ……?

 

その後もずっとこのことが気になってて、あまり学習が捗らなかった。




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