明久「僕が女の子に!?」   作:白アリ1号

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(´・ω・ `)こんばんは、今回は久保くんsideのお話です。


75話 鈍感な優等生:前編

side久保

 

 

今朝の修羅場と言っても過言ではない状況からしばらく時間が経った昼休みの頃であった。

 

「あの野郎、俺たちのアキちゃんと……!」

 

「殺す……マジで久保殺す」

 

「フ●ック……!」

 

自分の周りには敵ばかり…………主に男子。

 

こういう状況は……ええっと……そうだ、四面楚歌だ。

 

僕とアキちゃんが休日に2人で、で……デートというものをしていた話はまたたく間に広がって、今に至る訳だ。

 

朝からずっと授業中も昼休みである今もなお睨まれ続けている始末……。

 

「はぁ……なんでこんなことに……」

 

あまりの理不尽すぎる週明けの月曜日は憂鬱が頂点まで達して、頭が狂いそうだ。

 

「それに……吉井くんも怒ってたし……なぜ怒ってたんだ? 何かまずいことを言ってしまったのか……」

 

今朝のアキちゃんはやけに怒っていたというか、とても不機嫌な様子だった。

 

もしかすると僕とのデートが公に晒されたのが、よほど不快な気分にさせてしまったのかもしれない。

現に僕もこの状況が十分なストレスになっている。

 

しかし、僕があのFクラスの変な集団に事情を話してから素っ気なくなってしまったような……いや、僕は間違ったことは言ってないな。

どう考えても事実を述べただけで、誤解を受けないように話しただけ……だよね。

 

それならなんでアキちゃんが怒っていたのか、ますますわからなくなってくるな……。

 

月曜日だというのに、今日は嫌なこと続きで疲れた。

 

今日は家に帰って授業の復習はしないでおこう……。

 

「完全に男子全員を敵に回してしまったね。久保くん」

 

「おかげでみんなから目の敵だよ……佐山さん」

 

横の席からクラスメイトである、佐山さんが苦笑しながら話しかけてきた。

 

「みんなの憧れであるアキちゃんと隠れてあんなことしてたんだから、仕方のないことよ」

 

また真後ろの席から櫻井さん。

 

「隠れてって……別に隠れてた訳じゃ……」

 

「いいな~アキちゃんとデート……なんで私のこと誘ってくれないんだろ~」

 

「こっちもなぜ吉井くんが僕を誘ったのか知りたいよ……浜崎さん」

 

またまた横からひょっこり現れた浜崎さん。

 

※佐山さん・櫻井さん・浜崎さんの3人については本編の48話を参照

 

「それにしても、久保くんとアキちゃんって付き合ってるの? ぶっちゃけ、どんな感じ?」

 

「それはボクも気になるな~!」

 

「アタシもすっごく気になるわね……詳しく説明してくれるかしら?」

 

「私も気になります!」

 

佐山さんの質問を聞いた、工藤さんと木下さんと佐藤さんも話に加わってきた。

 

すると当然、周りにいる男子たちは

 

「おいおい、次は女子囲んでやがるぞ」

 

「あの女たらしめ……! ますます許せねぇ……!」

 

「Kubo ought to die……No,we should kill it」

 

うわぁ…………事態は深刻化する一方だ……。

 

もう精神的に追いやられているのに、女子6人を相手するのは過酷すぎる……。

さっさと話して、誤解を解かなければ。

 

「前にも言った気がするけど……僕と吉井くんは付き合ってもない、お互いにただの友達のような存在だよ」

 

簡潔に説明するが、それだけでは納得がいかないようで、

 

「そう言われてもね……じゃあ、聞くけど、なんで2人きりでデートなんてしてたの? 普通の男女の友達がそんなことする?」

 

佐山さんはさらに問い詰める。

 

「……吉井くんが恋愛映画のペアチケットを手に入れたそうだけど、誘う相手がいなかったらしくて、結局僕を選んだらしい。もちろんこれは本人曰くだ」

 

これで納得してくれるといいが……。

 

「ちょっと待って、なんでアタシが誘われないのよ……アタシでもよかったじゃない」

 

しかし、木下さんはそれを聞いて急に怪訝そうな顔をする。

 

「ボクも誘ってくれれば喜んで行ってたんだけどな~」

 

「私も……アキちゃんの猫耳パーカー姿見たかったです……」

 

工藤さんと佐藤さんも木下さんと似たり寄ったりの反応。

 

「はっ! もしかして……最近、妙に2人の距離が近いと思っていたけど、この前の学園祭の帰りに吉井くんを襲って、既成事実を作ったんじゃ……!」

 

ふと思い出した木下さんは、僕を睨みつける。

 

「そ、そんなことは決してない! 神に誓ってない!」

 

「本当に……? 怪しいわね……」

 

誤解を解くはずが、いらない誤解を生んでしまった……。

一歩間違えれば女子からの信用まで失われかねない。

 

そうなったらもう……この学園にはいられないな。

 

「そう……なら、それはいいとして、久保くんはどう思っているのよ?」

 

「な、何がだい?」

 

「吉井くんのことよ。いくら久保くんでも、あの可愛さと魅力にはなんとも思わない……ってことはないでしょ?」

 

「まぁ……木下さんの言う通り、吉井くんはとても可愛いくて、それでいて性格も完璧な女の子だとは感じているけど……」

 

「やっぱり久保くんもアキちゃんのこと好きなんだね~」

 

「アキちゃん、恐るべし……!」

 

佐山さんと浜崎さんがやけに食い付いてくる。

 

「いや別に好きとは言ってないけれど……」

 

「でも、好きなんでしょ? 顔にそう書いてあるよ」

 

佐山さんの一言でドキッとした。

 

顔に出てしまっていたか……。

 

「……なんというか……その……佐山さんの言う通り、僕はアキちゃんのことは……す……す、好きだよ……」

 

下手に隠してもどうせバレるだろうと、ここで告白。

 

「やっぱりー! 久保くんもそうだよねー!」

 

と興奮気味な佐山さん。

 

「これは意外ね……あの久保くんが……」

 

櫻井さんにとっては予想にもしなかったそうだ。

 

「だんだん、おもしろくなってきたじゃない!」

 

何がおもしろそうなんだろう……浜崎さんは。

 

「久保クンも男の子なんだね~」

 

ニヤニヤとこちらを見つめる工藤さん。

 

「ふ~ん……やっぱりそうだったのね……」

 

目を細める木下さん……って、顔が怖い!

 

「詳しく聞きたいです……!」

 

メガネを輝かせながら詰め寄る佐藤さん。

 

「ちょっと、みんな落ち着いてくれ……」

 

赤裸々な事情を告白した瞬間、あまりの反応に対応できなかった。

 

しばらくして、

 

「ここからが本題なのですが、2人きりでデートしたということはそれなりの関係になっているということでしょうか?」

 

と佐藤さんが若干ストレートな内容をぶつけてきた。

 

というか、本題って……さっきのは本題ではなかったのか……?

 

「し、知らないよ……何度も言うけど、僕自身はあくまでもいい友達だとは思っているよ」

 

誰しも相手が自分をどんな存在で見ているかわかるかといったら、それは無理なことで、不可能に近い話だろう。

 

そんなのわかってしまえば、苦労はしない。

 

「それなら、今までアキちゃんとどんなことをしてきましたか?」

 

「どういうことなんだ、それは?」

 

「久保くんの性格から考えて、相手を外見で好きになるほど単純な性格ではありません。

それなら、2人の間に何かあったはずです。それを聞きたいのです」

 

佐藤さんが真剣なまなざしで見つめる。

なぜここまで真剣な顔つきなのかはよくわからない。

 

アキちゃんに惚れた理由はあの誰でも魅了するほどの可愛さ、でもあるけど……確かに性格などの内面がよくなければ好きにはなってないだろうな……。

 

「答えないならこっちから質問しちゃおう! 2人が一緒にいる頻度ってどのくらい?」

 

まず先に手を上げた佐山さん。

 

「ええっと…………休み時間や学校の行きがけと帰りにいるくらい……?」

 

「たまに一緒にいますよね。もちろん私もいますけど」

 

アキちゃんと行きがけと帰りを共に行動する佐藤さんは頷く。

 

「それなら、連絡先などは交換しているの? 例えばL●NEとか」

 

と次は櫻井さん。

 

「交換してはいるよ。むしろ、吉井にとって初めて交換した相手が僕だったりするけど……」

 

「ほほぅ……これはポイントが高いですね……」

 

とメモを取り始めた佐藤さん。

 

いったい何を書いているのだろうか……。

 

「じゃあ、次はボクが質問する番だよ! ボクもそうだけど、吉井クンと一緒に過ごしてきた中で、とても急接近できたイベントは!? ラッキースケベとかもアリだよ!」

 

工藤さんらしい質問だね……。

 

「うーん、特にはないけど……」

 

「嘘つかないでちょうだい。夏休みにガラの悪い連中から吉井くんを守ったり、夏祭りの後、2人で帰ったりしたじゃない」

 

木下さんの指摘にギクッとなる。

 

「つまり、ナンパからアキちゃんを助けたってこと……? これ、なかなかアキちゃんにとっては好印象なんじゃない?」

 

と櫻井さん。

 

「そうかもしれませんね。アニメの王道シチュエーションって感じがしていいですね!」

 

佐藤さんはペンを動かしながら、メモを書き進める。

 

……これは他人に話していいことなのだろうか?

 

「あの……木下さんここではあまり話さないほうが……」

 

「他にも学園祭の時、打ち上げを抜け出して吉井くんと2人でいたじゃない。

あれもすごく気になっていたのだけれど、何よりその後、寝ている吉井くんを連れて帰ったじゃない! あれから絶対に何かあったでしょう!?」

 

うわあああ……どんどん人に言えない事情が暴露されていく……。

 

「ええ!? そんなことがあったんですか!?」

 

これには佐藤さんを始めとする、女子一同は驚きを隠せない。

 

「打ち上げ抜け出していないと思ったら、アキちゃんと2人でいたの?」

 

「えぇ!? なんで!? 気になる~!」

 

あの時、僕がいなかった理由を聞いて佐山さんと浜崎さんは気になる様子。

 

「優子に聞いたけど、なんで吉井クンと2人でいたの? もしかして、こっそり抜け出して――」

 

「ああもう! わかったから工藤さん、何も言わないで!」

 

また誤解を生みそうなので、大声で工藤さんの口を封じる。

 

「アタシもなんでFクラスに……しかも吉井くんと2人でいたのか気になるわ」

 

と暴露した側の木下さんも知らない様子。

 

「今から話すよ…………他言はしないでくれ、絶対に」

 

もう嘘をついたりごまかす気力もないので、すべてを洗いざらい話した。




思ったより、長くなりそうなので前編と後編に分けて作ろうと思います。

それと今回は48話で登場した3人のAクラス女子生徒が目立ちましたね。
オリキャラを作る予定などなかったのですが、作者の都合でオリキャラ(?)っぽいものを作ってみました。

登場回数はモブ並み程度ですが、少しだけキャラ設定を紹介します。

佐山五月(さやま さつき)


黒髪のショートカットで、女子の中では高身長。
中学の時から陸上部を続けており、運動神経抜群で力も並みの男子より上。
誰とでも親しみやすく、クラスのムードメーカー。
保健体育や国語、古典が得意な反面、理数系科目が大の苦手。


櫻井菜乃葉 (さくらい なのは)

黒髪のロングでメガネをかけている。
書道部に所属しており、文芸学に精通している、絵に描いたような文学系少女。
内気な性格ではあるが、別に人と接することが苦手ではない。


浜崎朱莉 (はまさき あかり)

茶髪のストレート。
特に部活などはしていない。
海外留学を目指しているので英語の成績は学年で1位レベル。
デリカシーのない発言などが多いものの、真面目な時は真面目なので信頼はされている。

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