大幅な修正と編集の末、半年ぶりの投稿となってしまいました……。
今回からまた投稿再開するので、よろしくお願いします。
side久保
はぁ……まさかあんな内容の映画をアキちゃんと2人で観賞することになるとは……。
スクリーンから出てから、僕は顔には出さないようにしているが、先程の映画のラストシーンで生まれた気まずい雰囲気をどうにかしようと平然を装うのに必死だったため、精神的に参っている。
「…………///」
横ではアキちゃんもどこか気まずそうに俯いている。
あまりさっきの話題を振らない方がいいな……。
「……目的の映画は見終わったけれど……この後はどうする?」
下手に口走っては不穏な空気が悪化するので、映画の内容については触れないでおく。
アキちゃんは僕の声を聞いて、ビクッと反応してから、
「まだ……お昼ごはん食べてないよね……?」
「もちろん食べてないよ……そういえば、互い食べ損ねてしまったね」
現在の時刻は2時。
映画の上映時間が昼だったとはいえ、昼食をとることを忘れていた。
「だよね……じゃあ今からお昼にしない?」
「ああ、そうだね……なら、どこで食べようか……」
周りを見回す。
ここの辺りにいい店でもあるといいが……前もってこの周辺の情報を調べておくべきだった。
「ついて来て。いい場所があるから」
いきなり僕の手を引いて、どこかへ行こうとするアキちゃん。
「吉井くん? いきなりどこへ――」
手を引かれるまま、進んでいった。
この時、我ながら女性にリードされるのが情けなくも思っていた。
もしこういった状況になったら、自分がリードできるようにしよう……と反省。
にしても、アキちゃんはどこへ行く気なんだろうか?
★
手を引かれてしばらくした頃、とある公園のベンチに2人で座った。
「えっと……ここでいったい何を……?」
公園ということは……売店などで買って食べるとでもいうのだろうか。
しかし、食べ物を売っているような場所はなさそうだし、ここへ来る途中、何も買っていないのだが……。
「あのね……実は……」
ごそごそと自分のバッグから、何かを取り出す。
すると、巾着に包まれた箱のようなものが……これはなんだ?
「お弁当作ってきたの。よかったら食べない?」
「えっ……?」
アキちゃんが弁当箱を開ける。
とても美味しそうな手料理の数々が弁当箱の中を彩っていた。
見てるだけで空腹を刺激される。
「作ってきたって……吉井くんが作ったの?」
「うん! 料理には少しだけ自信があるから、もしものために作ってきたんだ」
「そ、そうなんだ……」
まさかのアキちゃんが作ったお弁当を食べられるとは……明日は台風が日本列島を直撃するのだろうか……。
いや、そんなことを考えてないで、早く食べるとしよう。
腹は減ったし、何よりアキちゃんがわざわざ作ってくれたものだし。
これはちゃんと味わって食べなければ。
「なら、ありがたくいただくよ」
「そしたら…………はい、あ~んっ」
すると、アキちゃんは卵焼きを掴んだ箸を、こちらに差し出してきた。
「……え?」
突然の行動に僕は固まる。
「ほ、ほら……久保くん、あ~ん!」
困惑している僕の口元まで近づけてくる。
「い、いきなり、どうしたんだ?」
「そ、その……間違えてお箸を1本だけ持ってきちゃって……だから」
「いやいや、そんなことしなくても……吉井くんが先に食べてていいから、その後に僕が使えば……」
「久保くんに食べてもらうために作ってきたから、まずは久保くんから食べてよ!」
グイッと箸を近づけてくる。
僕のために作ってくれたのはとても嬉しい話だが、流石にこれは……。
「わっ、あの子たち、あ~んしてる~!」
「本当だわ。2人とも可愛いカップルね。微笑ましいわ」
「ふふ、若いって羨ましいわねぇ……」
すると、少し離れたベンチからこちらをニヤニヤと見つめる女性3人組。
「……く、久保くん……恥ずかしいから、早く食べて///」
見られていることに気づいたのか、顔が赤くなりながら、小刻みに震えているアキちゃん。
「いや……でも……」
……待て、ここを拒んではアキちゃんだけが恥ずかしい思いをしてしまう。
この際、恥じらいなんて気にしてはならない。
ええい、ままよ!
僕は思いきって、アキちゃんが差し出している卵焼きを口に含む。
モグモグ……………………。
…………うまい。
いざ食べてみると、あまりの美味さに言葉を失う。
ちょうどいい甘さと、ふわふわとした食感。
卵1つで出せるような味ではない。
こんなに美味しい卵焼きは生まれて初めて食べたかもしれない……。
「美味しいよ……うん、すごく美味しい」
「そ、そう? よかった……じゃあ……次はこれ」
続いて、これまた美味しそうな唐揚げを差し出してきた。
恥ずかしい気はするが、これで2度目なのであまり気にならず、あ~んと口を空けて食べる。
…………これもうまい。
時間もしばらく経っているだろうというのに、出来たての美味しさと食感。
飽きずに何個でもいけそうなくらいだった。
「うん、とても美味しい……本当に料理上手なんだね」
「えへへ……ありがとう」
こうしてしばらくの間、幸せなお昼を過ごすこととなった。
かなりの重大イベントだったので、うまくまとめようとしたのに長くなってしまった……。
次回で完全にデートの回は終わらせます。
感想と誤字脱字報告、よろしくお願いします。