今回も駄文にならないか心配……。(´・ω・`)
side久保
学校の校門を出て帰路に就いた頃だった。
いつもとは違う帰り道。
学園祭後だから多少は帰り道に変化はあるかもしれないが、今回は訳が違う。
なぜなら僕は今、アキちゃんを背負っている。
しかも水着姿の。
校門を出た今でも酔った状態が続いて寝てしまっている。
しばらくしない限り、起きることはないであろう。
ふにゅ♡
ぐッ……相変わらず背中に柔らかい感触が…………。
いかんいかん、我を忘れては。
背負った時からの話だが、アキちゃんの胸が背中に当たって理性が保てそうにない。
アキちゃんが酔った当時に柔らかさを知ったのだが、この柔らかさは本当に反則だ。
公衆の面前でアキちゃんの水着姿を晒す訳にはいかないので、制服を羽織わせている。
しかし、どうしても前はカバーできないので、水着越しのアキちゃんの胸の感触をどうしても背中に感じてしまう。
更には寝顔が可愛くて理性が今にも崩壊しそうだが、守るべき存在であるアキちゃんを襲うなどという、蛮行を行うのは自分の本心が許さないので、ここはなんとか堪えなければならない。
という風にかなりハードな帰り道です……。
吉井くんの家まで送ろうと考えてはいるが、いかんせん眠っているものなので、僕の家に連れて行こうとしている。
…………にしても通行人が多いな。
この時間帯はあんまりいないはずなんだけど……。
周りを見回してみれば、いつもより通行人が多かった。
学園祭に来ていた一般人の方々だろう。
ここら辺をうろつく人もいる人もいるんだろうな。
「なぁ、あの子、学園祭でFクラスで接客やってた子じゃね?」
「うおっ、マジだ……寝顔可愛い」
「誰だ、あのメガネかけた奴? 彼氏か?」
「彼氏かな? だとしたら羨ましいわ~殺したいほどに」
「彼氏持ちかよ……マジで●●して、●んでほしい……!」
周囲の視線が痛い……。
僕の周りにいる通行人の目線が集まる。
自分とアキちゃんの周りがざわつく。
特に男性からの目線が…………いや、よく見たら女性も結構いる。
だが、それはそうであろう。
そこら辺を歩くだけで、注目の的になるほどの可愛さを持つアキちゃん。
そんな子を僕みたいなのが背負っていれば尚更だ。
注目されるのは予想通りだけど……視線が痛くてたまったものじゃない。
「ねぇ、あの子の姿よく見たら水着じゃない?」
「あーほんとだー、学園祭で仕事してた時と同じやつだー」
…………え? 何で分かったの……!?
近くを通りかかった女性2人組みから耳を疑う声が。
焦って後ろを振り向くと、アキちゃんが羽織っていた制服が片方の肩から外れていた。
そこまでしか目視できないが、きっと後ろは半分くらいは見えているだろう。
ということはアキちゃんの着ているものが水着とばれる上に、アキちゃんの水着姿を公衆の面前で晒していることに……!!
道理でさっきから周りがざわついていた訳だ。
ま、まずい! 悠長なこと考えてないで、一刻も早くここから出ないと!
そう思った瞬間、僕は歩くペースを速めて、逃げるようにその場を去っていく。
★
「ふぅー……ここまでくればもう大丈夫……」
無意識に早歩きしていたら、いつの間にか自分の家の前まで来ていた。
帰り道だというのに、我ながら長い道のりだったと思う。
そんなことはよしとして、今から家に入るのだが、こんな姿を見て親は何と言うだろうな……。
少しの間、自分の家にアキちゃんを置いておきたいところだが、親がね……。
水着姿の美少女を背負って帰ってくる息子を見た時の反応なんて予想できるか?
いや、普通に考えてできない。
確か今は弟の良光と母さんがいるはずだから……。
事情を話せばわかってくれるよね……?
家の玄関のドアを開ける。
これだけの行為に、胸が緊張で締め付けられる
「た、ただいま」
「あ、兄さん、お帰……り……?」
玄関に入ると、僕の弟である良光がいた。
良光は僕の姿を見て、表情からは驚きを隠せていない。
当然のことだが。
「に、兄さん……その子、誰?」
「実は話すと長くなるんだけど……」
まずは事情を話さなければ誤解されかねない。
良光から先に事情を話しておこうとしたのだが、
「おかえりなさい、利光…………だ、誰なの、その子……?」
ああ、タイミング悪く母さんに見つかってしまった……。
「あ~もう……仕方ない……」
僕は良光と母さんにこれまでの経緯と事情を話した。
★
「……という訳で、今に至っているんだ」
「なんだ、そういうことか……」
納得の表情を浮かべる良光。
「よかった、てっきり誘拐してきたのかと……」
母さん、それは息子を信用してなさすぎ。
「それで母さん、少しの間置いておけないかな?」
「そうね……まぁ別に困ることじゃないし、いいわよ」
よかった、お人よしな母さんに感謝。
「にしても、こんなに可愛い子が利光と関わりがあるなんてね……」
母さん……それはどういう意味で言っているんだ?
まぁ確かに否定はできないが……。
「いつも兄さん、この子のこと話すからね……確かに言われた以上に可愛い」
アキちゃんを眺めながら良光。
家族には前からアキちゃんのことを無意識に話していた。
元男だったことはまだ教えてないけど。
「思ったんだけど、この子とはどういう関係なの?」
母さんが唐突に変な質問を僕に投げかける。
「どういうって……気軽に話せる仲というか、友達かな……?」
「なんで疑問系になるのよ……」
いきなりそんなこと言われても……返答に困るよ。
「も、もしかして兄さんの彼女?」
良光が突然、興味津々な表情と共に予想外の質問を聞いてきた。
「そ、そんな訳ない! ぼ、僕が吉井くんなんかと……」
そんな夢のような関係は存在しません。
自分で言ってて悲しくなるけど。
「でもいいんじゃない~? 頑張って付き合いなさいよ。
ガリ勉のアンタにはいい相手になるんじゃない?」
「母さんまで……」
別に僕は勉強だけしてきた訳じゃないけど……。
というか、何でいきなりこんな話になったんだ?
「ぅん……あれ……久保くん……」
「あ、吉井くん!? 目が覚めた?」
母さんと良光に質問攻めを喰らっていたら、アキちゃんが目覚めた。
酔いが回ってないといいけど……。
「ここは……どこ?」
「僕の家だよ。吉井くんが酔って眠ってしまったから、ここまで運んできたんだよ」
「え!? そ、そうなの? ご、ごめん……迷惑掛けちゃって」
もしかして覚えてないのかな……?
「いや、別に気にしなくていいよ。仕方ないことだし……」
元凶はお酒を買ったFクラスの誰かだ。
アキちゃんは悪くない。
「あら、起きたの? よかったわね」
「よかったね、兄さん」
「?」
アキちゃんは僕の母さんと弟の吉光を見て思考顔になる。
そういえば、アキちゃんはこの2人とは初対面だったことを忘れてた。
「吉井くん、この2人は僕の母さんと弟だよ」
「初めまして、利光のお母さんの久保利美よ」
「同じく弟の良光です」
2人はアキちゃんに軽い自己紹介をする。
「あ、こちらこそ、吉井アキです……ご迷惑を掛けてすみません」
「いいのよ、こんな可愛い子が我が家に来てくれるなんて大歓迎よ」
「わわッ!?」
母さんはそう言って、アキちゃんに抱きついた。
もしかして家に上げた理由はこれなんじゃ……?
「ねぇ、吉井さん、あなたと利光はどういう関係なの?」
「え、久保くんと……?」
「か、母さん! なんてこと聞いているんだ!?」
まったく、たまにデリカシーがなくなるんだよな、母さんは……。
そこが難点というか、面倒なところ。
「ええっと……私と久保くんの関係は……」
「吉井くん! 別に無理して考えなくていいから!」
顔が赤くなりながら、必死に答えようとしている吉井くんを落ち着かせる。
落ち着いてないのは僕の方だけれど……。
「兄さん、母さん、そろそろ帰らせたほうがいいんじゃない?
外は暗くなってきたし……」
「あ、いつの間に……」
良光に言われて、窓に目を向けると、既に薄暗くなっていた。
「大丈夫なんですか? こんなに暗くなって帰るのは危ないと思いますけど……?」
良光が心配そうにアキちゃんに尋ねる。
「だ、大丈夫です! 心配しなくても」
本人は気にしてないみたいだが、
「そんなこと言われても……吉井さんみたいな子は夜道を歩いてると、いろいろ危険よ?」
「そうですよ、少し警戒した方がいいですよ」
母さんと良光は心配なご様子。
「そしたら、僕が送るよ。ここに運んできたのは僕だし」
自分も心配なので、アキちゃんを送り届けようと思う。
「え……別に心配しなくていよ! これ以上迷惑掛けたくないし……」
「迷惑なんかじゃない。僕は吉井くんが心配なんだ、だから遠慮しないで」
「それじゃあ……お言葉に甘えて……ごめんね、今日はいろいろと……」
アキちゃんは申し訳なさそうにしている。
とりあえず、完全に暗くなる前に送り届けなければ。
「それじゃ、母さん。ちょっと吉井君を送り届けてくるよ」
「気をつけてね、いってらっしゃい」
母さんから送り届けると言い、僕は送りにいこうとした。
「ちょ、ちょっと久保くん……着替えは?」
しまった、水着姿でいたことを忘れてた。
「そうだった。はい、これ」
僕はアキちゃんの着替えを渡す。
「あ、僕の荷物持って帰ってきてくれたんだね。ありがとう」
アキちゃんは急いでいるのか水着を着たまま、上に制服を着る。
「それじゃあ、行ってくる」
玄関のドアに手を掛ける。
「おじゃましました、そしてお世話になりました」
ペコリと頭を下げるアキちゃん。
僕とアキちゃんは久保家を後にした。
★
~帰り道~
「ごめんね……今日はいろいろ世話焼かせちゃって……」
「謝らなくていいよ、そういえば、Fクラスの打ち上げの時、覚えてる?」
記憶がないと言っていたが、どこまで覚えているのか気になる。
「う~ん……覚えてない……何かあったの?」
「え……いや、特に何も……」
言わぬが仏。
あんなことされたとは言い難い。
アキちゃんは何も覚えてない状態だし、言っても信じないだろうし……。
「そっかー……(本当はちょっとだけ覚えてるんだけど……)」
「どうかしたのかい?」
「ううん、何でもない」
首を横に振って、ふふっと笑うアキちゃん。
いちいち反応が可愛いなぁ、もう。
「そういえば、ちょっと久しぶりかも」
「ん? 何がだい?」
「久保君と一緒にいること、最近全然会ってなかったよね……」
「ああ、確かに……少なくとも数週間くらいは会ってなかっね」
考えてみれば、今日会うまで、アキちゃんと全然会っていなかった。
学園祭準備とかで忙しかったから仕方ないけど……。
期間はそこまで長い訳ではないが、ここまで会わなかったのは今回が初めてだ。
メールとかで連絡を取り合ったりはしてたけど、それでは会っていないことに変わりはない。
「だから、今日久保くんに会えて、ちょっと嬉しいんだ」
「え? どうして?」
「ずっと前から、たまに思うことがあるんだ……」
「……うん」
何か悩みでもあるのだろうか?
アキちゃんの表情を見る限り、深刻そうな気がする。
「何の用もないし、会う必要もないのに……『会いたい』って思うことがあるんだ……」
「…………うん」
「これって、おかしいことかな……?」
不安そうな表情で、僕に答えを求めるアキちゃん。
正直、返答に困った。
なんと答えてあげるべきか、どういう返し方をすればいいか……。
しばらく悩んだ……。
「……友達としての『会いたい』じゃないかな?」
「……え?」
「僕もたまにだけど、友達に会いたいって思うことがあるんだ……。
友達って、いつでも会いたいと思う存在でもあるでしょ?
よく分からないけど、そういうことじゃないかな?」
まともな返し方ができない自分が情けなく感じるけど、僕に言えるのはこれくらいだ。
「……そうかもね、うん」
僕の返答を聞いて、少し納得したアキちゃん。
「ごめん。僕はこれくらいのことしか言えない。参考にならなければ、忘れて欲しい」
「いや、久保くんが言っていることは多分、合っている思うよ。ごめんね、急にこんなこと聞いちゃって」
気を取り直したのか、さっきの表情とは一転して、いつもの明るい表情に戻るアキちゃん。
「そうかい、役に立てて何よりだよ」
「ありがとう久保くん……あ、もう僕の家の前だ」
ちょうど話が終わるタイミングで、アキちゃんの住むマンションに着いていた。
「今日はいろいろとありがとう。そして、いろいろと……ごめんね」
「いや、いいんだ別に……僕も吉井くんと2人になれて嬉しかったよ」
「……ありがとう///」
ん? どうした?
2度もお礼は言わなくてもいいけど?
「それじゃあ、またね、吉井くん」
「うん、またね……」
別れの言葉を交わし、背を向けて帰宅しようとした時、
「ちょっと待って……!」
背後から、僕を呼び止めるアキちゃんの声が。
「どうしたの?」
アキちゃんの声が耳に入った瞬間、立ち止まる。
「あのね……」
アキちゃんは俯いて僕に踏み寄って来る。
どうしたんだろう? まだ、用があるのかな?
「どうしたの――」
僕はアキちゃんにどうしたのか聞きたかったが、できなかった。
アキちゃんが僕に抱きついてきたからだ。
「……!? よ、吉井くん……?」
どうしたんだ……!?
もう酔いはとっくに覚めたはずなのに!?
「……少し、このままでいてくれないかな…………」
小さくて、震えた声で言うアキちゃん。
「……うん」
僕は反射的に答えた。
今、ここで断ったらいけない……そんな気がしたからだ。
しばらくこんな状態が続き、
「もう大丈夫だよ……」
そう言ってアキちゃんは抱きついていた腕を緩めて、放す。
「あの……吉井くん……?」
僕はどうしたのか聞こうとしたが、
「それじゃ、今日はありがとうね」
アキちゃんは明るく微笑んだ後、すぐにその場を去った。
「…………」
あれはいったい、どういうことだったんだろう……。
僕は頭が混乱して、しばらくその場に佇んでいた。
★
sideアキ
逃げるようにその場を去って、全力で自分の部屋まで駆けた。
部屋に着いた時、僕は学園祭での疲労と、走って疲れたせいなのか、着替えるのも煩わしく、制服のままベットに横たわる。
「…………寂しかっただなんて言えないよ」
僕はポツリとつぶやいて、悶々としながら眠りについた。
久保くんの家族って原作じゃ全然登場しませんよね~。
あ、久保君の親はオリキャラということで認識しておいてください。
感想と誤字脱字報告よろしくお願いします。