明久「僕が女の子に!?」   作:白アリ1号

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(´・ω・`)もう夏休みの季節になりましたね~。
もちろん作者の学校は1学期を終え、夏休みとなりました。
この季節になるとやりたいこととか、やらないといけないことで頭が一杯です。

そんな中でも、できるだけ沢山投稿しないとね!(`・ω・´)
基本遊びのことしか考えてないけど、今年はあんまり投稿できないので、この夏休みを使って頑張ります!




60話 予想外過ぎる不況対策

sideアキ

 

 

~学園祭2日目~

 

学園祭最終日の2日目。

今回も初日ほど大掛かりではないが、朝からFクラス全体で出し物である中華喫茶『ヨーロピアン』の準備に取り組んでいた。

 

昨日の常夏コンビの始末をした後、店の不況は少し回復したものの、結果的には成功とはいえないし失敗ともいえない、中途半端な形で1日目は終了してしまった。

なので、今日で昨日の分を取り返そうと、Fクラスのみんなは必死になっている。

 

「おい、明久とムッツリーニはいるか?」

 

その中で、雄二は僕とムッツリーニを呼び止めた。

 

「いるよ、どうしたの雄二?」

 

「……どうかしたか?」

 

「実はお前らに、不況対策として頼みたいことがある」

 

頼みたいこと?

あ、そういえば雄二は店の不況を補うために対策を考えるとか言ってたような……。

 

もしかするといい考えが出たのかもしれない。

雄二の対策とやらに、少しだけ期待。

 

「頼みたいことって、どんなこと?」

 

「……右に同意」

 

なぜ不況対策のために僕とムッツリーニを呼んだのかが1番気になるところだ。

 

「それはだな……おい、島田と姫路。例の物を頼む」

 

「了解」

 

「了解です!」

 

ここで雄二に呼ばれた美波と姫路さんが登場。

手には見慣れない袋を持っている。

 

ん? なんか、嫌な予感が……。

 

「これを見てください! アキちゃん!」

 

姫路さんは袋から衣装らしきものを取り出し、僕に手渡した。

 

「な、何これ……雄二?」

 

それを見た瞬間、雄二に恐る恐る問いただす。

 

「店の不況対策のためだ、これを着て接客をするんだ……考えたのは俺じゃなくて姫路なんだがな」

 

いやそう誰が考えたとかじゃなくて、この衣装は何!?

 

渡された衣はパッと見た感じはチャイナ服かと思うけど、これ、よく見たら水着だ!

 

赤いチャイナ風のビキニに、下はスカートタイプのビキニショーツという、とても接客業にふさわしい衣装ではない。

 

雄二の不況対策に少しでも期待してしまった僕が馬鹿だったよ!

 

「……アキちゃんはよしとして、俺は何をしろと……?」

 

「ムッツリーニ! そこはよしと言っちゃだめだよ!」

 

でも、ムッツリーニとっては美味しい話だから、よし以外の言葉を言うはずがないか……。

 

あ、そういえばムッツリーニにも頼みごとがあることを忘れてた。

ムッツリーニに何をしろと言うのだろう?

 

「これは俺と姫路で考えたことなんだが……ホール役の人数を補うために、ムッツリーニ。お前は女装して接客しろ」

 

「「……は?」」

 

僕とムッツリーニは目を白黒させた。

 

え、待って、人数が少ないからってムッツリーニまでやらせるの?

それに女装ってことは……。

 

「土屋くん、頑張ってくださいね!」

 

姫路さんは袋から紺色のチャイナドレスと取り出して、ムッツリーニに押し付けるように手渡した。

 

「……な、なぜ俺が……!?」

 

予想にもしなかったことに、ムッツリーニ本人が誰よりも驚いている。

 

「こうするしかないんだ、悪いが引き受けてくれないか?」

 

いや雄二、今回も絶対に頼めばいいと思っているでしょ?

無理だからね、今回ばかりは。

 

「い、嫌だよ! こんな衣装を着て接客なんて出来ないよ!」

 

「……まったくだ……!」

 

横でムッツリーニもコクコクと頷いている。

その気持ちは痛いほど分かるよ、ムッツリーニ。

 

「アキ、土屋、ちょっとこっちに来なさい!」

 

「え、何? ど、どうしたの、美波?」

 

美波は僕とムッツリーニの手を引いて廊下まで連れて行く。

 

どうしたんだ、美波まで……今日はみんな、なんだかおかしいよ。

 

「2人とも、今からよく聞きなさい」

 

「う、うん」

 

「……」(コクコク)

 

美波は真剣な表情になったので、これはよく聞いておかないといけない。

 

と僕とムッツリーニは思った。

 

「本人は誰にも言わないで欲しいって言ってたから、誰にも言うつもりはなかったんだけど……2人にだけは話すからね……」

 

美波がそう言った瞬間、僕とムッツリーニの額に不思議と冷や汗が流れた。

 

「実は瑞希なんだけど……」

 

「姫路さん? 姫路さんがどうかしたの?」

 

「……何か問題でも?」

 

「あの子、転校するかもしれないの」

 

「「……!?」」

 

姫路さんが転校……?

 

「どういうことさ! さんが転校だなんて!」

 

「……詳しく!」

 

衝撃の事実に、僕とムッツリーニは慌てて美波に理由を問う。

 

「今言った通りよ……瑞希は転校しちゃうかもしれないの」

 

「それはわかったから……どういった理由で転校することになったの?」

 

「説明すると長くなるけど……簡潔に言えば、Fクラスの環境ね……」

 

「Fクラスの環境……?」

 

「……どういうことだ?」

 

美波の言葉に僕と、ムッツリーニは首を傾げた。

 

「もしかして、Fクラスの設備の問題とか……?」

 

「そう、Fクラスの設備の問題ってことになるわね」

 

「なるほど……やっと分かったよ」

 

「……納得した」

 

美波に言われて、やっと理解ができた。

 

姫路さんにとってFクラスの設備は相応しくない。

設備は普通の教室とも思えないような設備に、周りの人間は馬鹿ばかり。

 

学習能力の高い彼女に、Fクラスの最悪な環境では対価に合わない。

こんな理不尽なことをされては親も黙ってはいられないであろう。

 

「それにね、瑞希は体が弱いし……」

 

「そうだよね、それが1番問題だね……」

 

外見も中身も最悪なFクラスは病弱な身体を持つ姫路さんの健康に害を及ぼす可能性がある。

 

あんな教室にいたら姫路さんは体調を崩して、下手をすればただ事じゃ済まない問題になってくるかもしれない。

 

それこそ親が口を出してくる訳だ。

 

「だから、アンタたちには協力してもらいたいの。Fクラスの設備向上と瑞希がこの学園に存続できるように……そのために、何としてでも成功させたいから」

 

「「……………」」

 

僕とムッツリーニは2人で沈黙して、この状態が数分の間続いた。

 

もし、学園祭が失敗に終わり、姫路さんが転校してしまったら、

それは僕たちのせいになるだろう。

 

僕たちのせいで姫路さんが転校するのは嫌だ。

 

隣にいるムッツリーニだってそうだろう。

心境は読み取れないけど、ムッツリーニの顔からは罪悪感で押しつぶされそうな、暗い表情があるからだ。

 

(ムッツリーニ……姫路さんのとめにもここは恥を忍んでやろう)

 

(…………ッ了解)

 

同じ考えを持つ、僕とムッツリーニでアイコンタクトを取り、雄二(考えたのは姫路さん)の不況対策を了承することにした。

 

「ごめん美波……僕たち、やるよ」

 

「……やるしかない」

 

「アンタたちならそう言うと思ったわ」

 

安堵の表情を浮かべる美波。

 

男だらけのクラスに、唯一いる姫路さんがいなくなったら、女友達がいなくなってしまうからね……。

 

1人の友達をなくすだけでも辛いのに、そんなことになったら、たまったものじゃない。

これは美並のためでもある。

 

「よーし、ムッツリーニ行くよ……」

 

「……わかった」

 

姫路さんのためにも、ここは恥ずかしさを我慢してでもやるしかない。

クラスメイトを1人助けることに繋がるなら、こんなことはお安い御用だ。

 

 

 

 

「アキちゃん、土屋くん。そろそろいいですかー?」

 

「できたよ……うぅ……こんな姿で接客するのか……」

 

「……屈辱的」

 

着替え終わった僕とムッツリーニは姫路さんに呼ばれて、Fクラスに戻るところである。

 

僕はただ単に着替えただけだが、秀吉がムッツリーニに着付けとメイクを施してくれた。もう今のムッツリーニは男とは思えないほどの姿になっている。

 

小柄な体型に、弱々しそうな子顔。

まるで子猫のような、愛らしさ思わせる可愛さを持っていた。

 

まさかこんな逸材が眠っていたとは……。

 

「2人ともとっても可愛いです!!/// これなら繁盛間違いなしです!!」

 

「かなり似合っておるぞ、これは期待大じゃな」

 

姫路さんと秀吉は僕たちの姿を見ながら褒め上げる。

 

「どうだかなぁ……」

 

「…………」

 

そもそも僕が水着姿で接客したところで繁盛したら苦労はしないと思うけど……。

ま、多少は増えるかも……ね。

 

「……ムッツリーニ、その……とっても似合ってるよ」

 

ムッツリーニは意外とチャイナドレスが似合っている。

元々、体型は女の子っぽい気もするし、顔も少し手を加えれば女の子に見えるくらいだったし。手を加えた姿は今、初めて見たんだけど。

 

「……褒め言葉になっていない」

 

そうだよね、女装を褒められて嬉しがる男子なんて稀な存在だからね……。

 

「……アキちゃんこそ似合ってる」

 

「はは、ありがとう……というか、大丈夫なの? 僕がこんな格好してて?」

 

今日はなぜかムッツリーニは鼻血を出さない。

 

海に行った時なんかは、大出血どころの話じゃなかったのに……。

 

こんなに露出の高い衣装でムッツリーニがここまで平然としていられるのは不自然な光景だ。

 

「……今はそれどころじゃない」

 

あ~、なるほど。

よっぽど女装をして、接客することに対する抵抗感が勝っているのか。

 

道理でムッツリーニらしくないと思ったよ。

 

そうこうしている内にFクラスに到着。

 

いざ、僕とムッツリーニのお披露目タイムとなる。

 

「お、戻って来た…………か……」

 

雄二とFクラスの男子生徒全員は僕とムッツリーニの姿を見た瞬間、驚いて言葉を失ったかのように突っ立っていた。

 

(ねぇムッツリーニ……これ、大丈夫かな?)

 

(……俺に聞くな…………)

 

ですよね~……。

 

なんで、みんなは黙ったままなの?

せめて何か言ってくれないと、羞恥と屈辱で死んでしまう!

 

「やべぇ……まさかアキちゃんの水着姿を生で見れるとはな……」

 

「ああ、まったくだ……感激過ぎて死にそう」

 

「ムッツリーニも見てみろよ、あれってマジでムッツリーニなのか?」

 

「面影が残っているからそうだろうけど、あれは反則だろ……」

 

僕とムッツリーニに男子生徒の視線が突き刺さる。

 

耐えろ、僕とムッツリーニ!

後でこれより恥ずかしい接客仕事が待っているのに、ここで怖気づくのはまだ早い!

 

でも恥ずかしいのは変わりないんだよなぁ……。

 

「その、なんだ……お前ら、似合ってるぞ」

 

若干、照れ気味に雄二が率直な感想をくれた。

 

「ありがとう……正直、嬉しくないけど」

 

言われて悪い気はしないけどね……。

 

「よし、これで完璧だ、初日の遅れを取り戻すように上手くやれよ。お前ら」

 

雄二はこれで準備万端と見なしたのだろう。

 

僕たちに代表としての一言を放った。

 

「りょ、了解……」

 

「……承知した」

 

(頑張ろうね、ムッツリーニ)

 

(……そっちもな)

 

こうして学園祭2日目開始。

 

姫路さんの存続を賭けた僕たちの戦いが始まった。




ムッツリーニの女装が見たい!
という読者が数名程いたので、この機会に無理矢理ながらもやってみました。
慣れないネタだから心配しかない……(;´・ω・`)

だが、慣れてようが慣れてなかろうが、
次回は(o´艸`)ムフフな展開にできるようにしたい……!

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