明久「僕が女の子に!?」   作:白アリ1号

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こんにちは、そしてお久しぶりです。

前書き、何を書こうか思いつかなくても頑張る!(`・ω・´)


58話 元凶退治

sideアキ

 

 

雄二を引きずり、姫路さんと美波と葉月ちゃんを連れて、目的のAクラスの教室にやって来た。

 

「ふぅー……やっと着いたか……」

 

僕は一息ついて小声でつぶやいた。

 

今の自分の身体で雄二を引きずってきたものだから、体力を少しばかり消費してしまった。

前までは楽と言っても過言ではなかったんだけどね……。

 

こういうところで女の子の身体の不便さを感じる。

 

ここに来る途中、この格好(チャイナドレス)だったせいか、多くの通行人にジロジロ見られていた気がする……。

これも女の子の身体ならではの不便さというべきか……。

 

学園祭では仕事の時も休みの時も恥ずかしい思いをしていた。

 

「そんなことより雄二、いつまでも抵抗してないで、行くよ」

 

「……ああ、分かったから放してくれ」

 

「逃げたりしたらだめだからね?」

 

「ここまで来たらもう逃げる気なんざねーよ……さっさと放せ」

 

雄二はげんなりした表情で、掴まれている僕の手を振り払って開放される。

 

なぜこんなに嫌そうにしているのか……。

 

「そっか、ここって坂本の大好きな霧島さんのいるクラスだもんね」

 

美波が雄二の様子を見て理解した模様。

 

「あー、なるほど。彼女のメイド服姿を見るのが恥ずかしいんだね、きっと」

 

「誰が彼女だ!?」

 

まったく雄二は本当に恥ずかしがり屋なんだから。

彼女のメイド服姿を見るという彼氏の役目を果たしてあげないと、霧島さんがかわいそうだよ。

 

面倒な婚約者を持ってしまった霧島さんに同情すら覚えてしまう。

 

「雄二、霧島さんのメイド服姿を見るのも大事だけど、1番の目的は――」

 

「…………!!」(パシャパシャパシャパシャ)

 

見てみると、シャッター音がうるさく響くほどシャッターを切る人物が。

 

「……何やってるの、ムッツリーニ?」

 

「……人違い」

 

その人物はカメラを片手に否定のポーズをとる。

 

「どう見たってムッツリーニじゃないか……こんなところで何やっているの?」

 

「……敵情視察」

 

店を出る前からいないなと思っていたら、こんなところでAクラス女子の撮影をやっていたのか。

 

「もうムッツリーニ、そんなことしている場合じゃないんだから、もうちょっと節度を持った行動を心がけてよね」

 

「……それは失敬、そろそろ店に戻る」

 

ムッツリーニはカメラを大事そうに抱えながら、持ち場に戻る。

 

これからはムッツリーニを見張っておかないとね……ただでさえサボられたら店の状況が悪化するし。

 

「それじゃあ、入るわよ」

 

美波が1番先に入り口をくぐる。

 

「……おかえりなさいませ、お嬢様」

 

出迎えたのは霧島さんだった。

 

「わぁ、綺麗……」

 

「同じく……すごいな……」

 

姫路さんと僕は霧島さんの姿を見て感嘆の声を洩らす。

 

長い黒髪にエプロンドレスの白がよく映えて、黒のストッキングが彼女の美脚を更に際立たせている。

 

なんと言うか……素直に羨ましいです……。

 

何を僕は女の子っぽいこと考えているんだ!

いや、でも本当に羨ましいというか、ズルいというか……。

 

「僕たちも入ろうか」

 

「はい、失礼しまーす」

 

「お姉さん、きれ~!」

 

美波に続いて僕と姫路さんと葉月ちゃんも入店する。

 

「……おかえりなさいませ、お嬢様」

 

と美波の時と同じように出迎えてくれた。

 

……あ、そういえば、ご主人様じゃなくて僕は今、お嬢様だった。

 

霧島さんのセリフに『ご主人様』という言葉が出てこなかったことに、疑問を抱いたのが間違いだった。

 

「ほら雄二。おっかない顔してないで、早く来なよ」

 

「……ったく、しょうがねぇな」

 

雄二は僕達に続いて、渋々入店して来る。

 

もちろん霧島さんは

 

「……おかえりなさいませ。今夜は帰らせません、ダーリン」

 

……少しアレンジが加わっていた。

 

そりゃ、彼氏が相手なんだから普通にこう言いうよね、うん。

 

「霧島さん、大胆です……!」

 

「ウチも見習わないとね……」

 

「あのお姉ちゃん、寝ないで一緒に遊ぶのかな?」

 

僕を含めて1人1人のリアクションに違いが出ている3人。

 

「……お席にご案内いたします」

 

霧島さんが席へと案内しだしたので、僕たちは後についていった。

 

「お姉ちゃん、すごいお客さんの数だね」

 

「そうだね、葉月ちゃん」

 

葉月ちゃんの言った通り、Aクラスにはお客さんが数え切れないほど沢山いた。

人材と設備の整ったAクラスだから、当然かもしれないけど……なんだろう…………このFクラスとの天地の差は……。

 

「……では、メニューをどうぞ」

 

霧島さんは全員にメニューを配る。

メニューは手の込んだ作りになっており、まるで高級レストランにありそうなメニューだった。

 

こんな細かいところまで配慮してあるなんて……Aクラスには絶対勝てないな……。

 

「よし、何を頼もうかな――」

 

「にしても、さっきの2-Fの中華喫茶は酷かったな~」

 

「そうだな、テーブルは腐った箱、店の対応も最悪だったしな」

 

何を頼もうか、考えようとした時、聞き覚えのあるゲス声が耳に入ってきた。

 

「あ、お姉ちゃん。あの人達だよ。『中華喫茶は汚いから行かない方がいい』って言ってたのは」

 

葉月ちゃんが指を刺した方へ目をやると、数時間前に営業妨害を仕掛けてきた、常夏コンビが中央の席で騒いでいた。

 

「なるほど、あえて人が集まるところで悪評を流していた……ということか」

 

「雄二、関心している場合じゃないよ。早くあの2人をどうにかしないと、悪評は流れ続ける一方だよ」

 

ひとまず、元凶であるあいつらを黙らせないと、問題は解決しない。

 

「まぁ待て。ここで殴りに行っても、かえって事態を悪化させるだけだ。

もう少し作戦を練って行こう、それからでも遅くはない」

 

「そうだけど、いったいどうするのさ……」

 

「俺に任せろ、おい翔子。ちょっといいか?」

 

「……何?」

 

雄二は隣にいた霧島さんに話しかけた。

 

霧島さんに協力でもしてもらうのかな?

 

「……と言う訳だ……頼めるか?」

 

「……わかった」

 

どうやら霧島さんの了承を得たようだ。

 

「そしたら、明久。今からお前に頼みがある」

 

お、遂に僕の出番が来た!

 

果たしてどんな頼みごとなのだろうか。

あの2人をどうこらしめるか、ちょっと……じゃなくて、とても楽しみだ。

 

「お前は今から、ここのメイド服を借りて痴漢騒ぎを起こして来い」

 

……………………は?

 

「えぇ!? 何で僕が!?」

 

「仮装に向いているのはお前しかいない。それに殴り倒すことができない今の状況ではこの作戦が手っ取り早い」

 

「でも……だからって僕に……」

 

「頼む、この通りだ!」

 

雄二は深く頭を下げる。

 

「あのさ……雄二……絶対に頭下げれば僕がやってくれるとでも思っているでしょ?」

 

「そうじゃないと言ったら嘘になるが、頼む!」

 

おいおい、なんでこの際、本音を言うのかな……?

 

いつまでも僕はそう、易々と引き受けるような人間じゃ――。

 

「アキちゃん、私達からもお願いします!」

 

「そうよ、アンタしかいないんだから」

 

美波と姫路さんからも頼み込まれてしまった。

 

いや、僕に頼むくらいなら2人がやった方がいいと思うけど……?

 

「とりあえず、来い。準備はもうできている」

 

「え、ちょ、ちょっと雄二! 待って! ちょっと……!?」

 

雄二は僕の手を掴んでどこかへ向かおうとする。

 

今度、連れて行かれたのは僕の方だった……。

 

 

 

 

「ほらここだ、明久」

 

雄二は僕をAクラスのウエイトレス役が待機する場所に連れて来られた。

 

「無理矢理なんて……酷いよ雄二……」

 

いつも人使いが荒いんだから……本当に……。

 

「そんじゃ、俺は席で見張っておくから、しっかりやれよ」

 

「あ、ちょっと! 何を勝手に話を進めて――」

 

雄二を止めようとしたが、雄二は逃げるようにさっさと行ってしまった。

 

なんで僕がこんな目に……あの2人……絶対に許さないんだから。

 

「この際、恥じらいなんか捨てて、粛清してやる! 見てろよ、雄二!」

 

雄二を恨むのか、常夏コンビを恨むのか……どちらにもぶつけたいのかわからない怒りで、自暴自棄になりかけていた。

 

「…………とは言ったものの……どうしたらいいんだ?」

 

確か、メイド服を借りてとか言ってた気がするけど……どうすれば?

 

ガシッ

 

「ひゃあ……!?」

 

後ろから、何者かによって胸を掴まれた。

 

「だ、誰!? 誰なの!?」

 

胸を掴まれ……揉まれたまま、後ろを向く。

 

「ボクだよ~♪ 吉井クン」

 

振り向くと、そこにはメイド服を着ていた工藤さんがいた。

 

「びっくりした……脅かさないでよ……」

 

「あはは、いやー……ごめん、ごめん。そんな姿でいる吉井クンを見たら、ついうっかり☆」

 

「うっかりじゃないよ! もう……」

 

例え、この格好(チャイナドレス)であろうが、なかろうが工藤さんなら、どの道すると思うけどね……。

 

学園祭でも工藤さんはいつも通り……。

 

「ちょっと、愛子。サボってないでこっちを手伝って……って吉井くん?」

 

「あ、木下さん」

 

工藤さんを呼びに来たのであろう、木下さんが待機場所の入り口に立っていた。

もちろん、彼女もメイド服姿だった。

 

「どういうこと? なんでそんな格好で吉井くんがここにいるの?」

 

「いやぁ~、実はいろいろあってね……」

 

僕は2人にこれまでの経緯を話した。

 

「なるほどね……ここに来るなんて思いもしなかったわ」

 

「ボクも吉井クンがここに来るなんて、思ってもいなかったよ」

 

2人に限らず、Aクラスのメンバーは理解が早くて助かる。

 

「……吉井」

 

2人に事情を話し終えたところで、霧島さんがやって来た。

 

片手には……メイド服を持っていた。

 

「……はい、これ、使って」

 

霧島さんは持っていたメイド服を僕に渡す。

 

「えっと……霧島さんはいいの? これは僕たちの問題なんだけど……?」

 

僕たちの抱えている問題に霧島さんたちを巻き込むのは少し気が引ける。

 

しかし、霧島さんは首を横に振って、

 

「……あれだけ騒がれると流石に迷惑、それに雄二の悪口を聞くのも許せないから」

 

「そっか……」

 

どうやら僕たちだけの問題ではなさそうだね……。

 

まったく、あの連中はつくづく迷惑な奴らだ。

 

「冤罪を吹っ掛けるのはどうかと思うけど……こっちもいい迷惑だし」

 

「お願い吉井クン。そっちも迷惑だけどこっちも同じだから……ね?」

 

木下さんと工藤さんも霧島さんの言った言葉に賛成した。

 

うーん、確かに、やらなかったらやらなかったで、悪評は流れる一方だし、Aクラスにも迷惑が掛かり続けることだろうからね。

 

ここはお互いの首を絞める選択はなしにして、やるしかないね。

 

「わかった、ここは僕に任せて」

 

そう言うと、3人はうんうんと頷いた。

 

「それじゃあ吉井くん、迷惑なお客さんの始末をよろしくね(メイド服姿を見せて頂戴)

 

「ちょと、優子!? 本音と建前が混ざってるんだけど!?」

 

どうしたんだ、木下さんと工藤さんは……?

 

「……それじゃあ、吉井、よろしく」

 

霧島さんからメイド服を手渡される。

 

「……着替えはあっちで」

 

霧島さんは指を刺して着替える場所を案内する。

案内された場所は以前のAクラス体験でお世話になった更衣室ではないか。

ちょっと懐かしい気分。

 

あそこで着替えて、あの迷惑な常夏コンビの悪行を阻止しないとね。

絶対に上手くやってやる。

 

そう決意して僕はメイド服を持って更衣室に向かった。




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ネタは大体決まっているから、次回は多分、早めに投稿ができる……かも。

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