初めて書くから、緊張しております。
sideアキ
2学期が始まってから早くも、その翌日。
雄二に無理矢理任せれらることとなった宣戦布告のため、僕と秀吉はDクラス教室前にいる。
「いよいよだね、秀吉」
「そうじゃの……では開けるぞい」
ガラッ
「失礼します」
「失礼するのじゃ」
僕と秀吉はDクラスの教室に入る。
自分のクラス以外の教室に足を踏み入れるのは、少し緊張感が膨れ上がる。
「なんだなんだ? 2学期早々、美少女がこのクラスになんの用だ?」
まずは教室の入り口付近にいた男子生徒が、僕たちの存在に気が付いたようだ。
それにしても、このセリフ、どこかで聞いたことあるような……。
「突然ですが……僕たち、FクラスはDクラスに試召戦争を申し込みます」
なんとか噛まずに言えた……よし。
「おいマジかよ……2学期早々、宣戦布告かよ」
「しかも使者にアキちゃんと木下を使うとは……」
「んで、どうするよ?」
いきなり宣戦布告されたものだから、この反応は当然か……。
さて、困った。
こうなると、宣戦布告は失敗に終わる確率が高い。
このタイミングで来ること自体間違っていたかもね。
雄二ももう少し、残念な脳をフル活用して、作戦を立てればいいのに。
「落ち着いてください。相手はFクラスとはいえ宣戦布告をするために派遣された使者です。丁重に扱うべきですわ」
ざわめくDクラス生徒一同に、清水さんが呼びかける。
女の子にだけは優しいな、清水さんは……。
元の姿で来るのならば……いや、今はよそう……。
「あぁ! アキちゃん!」
あ、もしかしてこの声は……。
「あ、お、おはよう……玉野さん……」
「アキちゃん、アキちゃん! またアキちゃんに着せるための服を持ってきたの!」
出会ってから早くも、僕に服を着せるつもりですか、そうですか……。
「確かに玉野さんのお願いは聞いてあげたいけd……だから玉野さん、ここで服を脱がそうとしないでと、何回言ったら分かるんだ」
服を脱がしにかかる玉野さん。
それをけん制する僕。
ここで脱がすのは流石にないと思う。
周りには男子がいるんだから、少しはTPOをわきまえて欲しいものだ。
いや、TPO以前の問題かもしれないけど。
「もう、美紀ちゃん。ここで脱がすのはダメって何回も言ってるでしょ」
「着替えるなら女子更衣室に、ね?」
Dクラスの女子生徒たちが僕を更衣室に連れて行こうとする。
「なんでみんなは僕を更衣室に連れて行こうとするの?」
「そりゃ、アキちゃんのコスプレが見たいからよ?」
当然のように言われて、引っ張られていく。
「なぜワシも連れて行かれるのじゃ……?」
ついでに、秀吉も連行されました。
★
あの後、宣戦布告は失敗に終わるかと思われたが、なぜか相手は承諾してくれた。
どういう理由でなのか知らないが、無事に済んだことなので、Fクラスの教室に戻る。
「おお、戻ってきたか……お前ら、どうしたんだその格好?」
「それは聞かなくても分かるでしょ……雄二」
僕と秀吉は玉野さんとDクラスの女子生徒から着せられたコスプレを着たまま、
教室に戻ってきた。
僕と秀吉が着せられたコスプレは紺色のセーラー服。
中学生の頃を思い出す、懐かしい衣装……な訳あるか。
僕が中学生の頃はちゃんと学ランでした。
「セーラー服のアキちゃん……可愛いです!」
僕を見た途端、姫路さんが僕に抱きついてくる。
姫路さん、僕が女の子になった時から、雰囲気とかいろいろ変わったな。
「……写真を撮らなければ……」ドバドバ
「ムッツリーニが凄いことになってる!」
カメラを手に持ちながら、鼻血を大量に流してるムッツリー二がいた。
セーラー服なのにそこまで興奮することなのだろうか……?
ムッツリーニの想像力が豊かすぎるのか、女の子に耐性がないのか……。
どちらにしろ、ムッツリーニの思考は特殊過ぎて、追いつけない……。
「ところで、宣戦布告は上手く行ったのか?」
「うん、なんとかね」
「そうか……よし、じゃあ試召戦争に備えて、今から補充テストをする」
雄二の声とともに、Fクラス全員が点数補充のためテストを始めた。
「よしゃ、やるぞ!」
「こんな簡単な問題、さっさと解いてやるぜ!」
「アキちゃんの写真集は俺のものだ!」
みんな、2学期始まってすぐなのに、なんでこんな力が出せるのだろうか……。
理由は分かってはいるけど……。
なぜこれを普段はやらないのだろうか。
半分は驚きで、もう半分は呆れだった。
そんなことより、僕も頑張らないと。
どんな理由であれ、Fクラスのみんなの努力を棒に振るような真似はしたくない。
僕もみんなに続いて問題を解いて行く。
★
「お前ら、夏休み中に何があったんだ……? 全員Dクラス並の点数だぞ?」
補充テスト終了後、Fクラス全員のテスト結果を見て、西村先生は珍しく驚愕の表情を浮かべていた。
Dクラス並の成績……とりあえず、相手と対等な実力差に追いついただけでも大きい。
よくやった、Fクラスのみんな。
ちなみに僕は全教科A、Bクラス並みの点数だった。
夏休みの最後で木下さんに、分からないところを教えてもらったのが吉と出たのかもね。
そういう訳で、僕は3つの腕輪を手に入れることができた。
どんな腕輪かは試していないので、効果などは分からないが、3つも獲得できたのはラッキーだ。
「明久、新しく腕輪を貰ったらしいが、どんな腕輪を貰ったんだ?」
「えーと……まず1つ目は……『ドレスチェンジ』だって……」
「それはどんな腕輪なんだ?」
『ドレスチェンジ』
召喚獣の武装と衣装がランダムに変わる腕輪。
ただ衣装が変わる訳ではなく、召喚獣の能力なども衣装によって、違ってくる。
召喚フィールド外に出るなどすると、元の姿に戻る。
武装と衣装は選べるわけではなく、ランダムなので消費点数は10点。
「アキちゃんにピッタリの腕輪ですね」
腕輪の説明を聞きながら、目を光らせる。
「なるほど……もう一つの方はどうなんだ?」
「2つ目は……『Lovemanipulate』だよ……」
「これはまた、面白そうな腕輪だな」
『Lovemanipulate』
相手召喚獣を操ることができる腕輪。
召喚者に好意などを寄せている者にのみ発動できる。
ただし限度があり、操ることができる召喚獣は2体まで。
消費点数は30点。
「お前が使うからにはかなりの能力を発揮しそうだな……じゃあ3つ目は?」
「3つ目は……『Flameblade』」
「最後の最後でかっこいいものが来たな……どんなものなんだ、それは」
『Flameblade』
アキちゃんの武装である太刀の刀身が燃える効果がある。
この状態で、相手に攻撃を当てると通常の1.5倍のダメージと追加効果を与える。
追加効果は召喚獣が少しの間、1秒毎に5ダメージを受ける。
召喚フィールド外に出るなどすると効果は消える。
召喚フィールド内にいれば効果が続くので消費点数は80。
「すごく強そうな腕輪なのじゃ、ワシもそんな腕輪が欲しいのう」
「ウチも頑張ればアキみたいな腕輪が手に入るのかしらねぇ」
羨ましそうにしている秀吉と美波。
「使えるかどうかは、実践してみなきゃ分からないよ」
と言いつつも、かなりの強みになると確信していた。
「なるほど……この戦いの切り札は明久と姫路になるな……」
雄二が、腕を組んでブツブツとつぶやきだした。
「よし、それじゃ作戦を説明する。まず前衛の部隊長は明久、お前だ」
「え? そんな役割を僕がやるの?」
雄二のことだから、かなり重要な役割に任命されそうだとは思っていたけど……。
でも、切り札が前衛の部隊長をしてもいいのかな?
切り札って、普通は後に取っておく存在だと思うけど。
「安心しろ、Fクラスのメンバーはお前を死ぬ気で防衛するだろう」
死ぬ気でって……いくら召喚戦争とはいえ、そんなことに命を懸けるようなことをする訳……
「大丈夫だアキちゃん! 何がなんでも君を守ってみせる!」
「アキちゃんのためなら死んだっていい!」
あった……。
「前線を押してその次に中堅部隊が援護する、姫路と明久は温存しておくんだ」
ということはDクラス代表や後続部隊を倒すのは姫路さんと僕なのか。
「そういえば、どうして僕を前衛部隊長にしたの? 僕と姫路さんは温存しておくのに」
「お前がいたら前衛の士気が上がるからな、それにお前が出る幕はないだろうし」
どうして僕がいるだけで士気が上がるんだろうか……それくらいで士気が上がるほどFクラスは単純じゃない気がするけど。
「この作戦で問題はないか?」
「うん、他のみんなが特に異議なしなら大丈夫」
「そんじゃ、もうすぐでDクラス戦だ。いつでも出られるようにしておけよ」
「そっちこそね……」
女の子になってから初めての試召戦争。
どうなるか少し楽しみな気もする。
この前のアンケートにご協力いただきありがとうございます。
素晴らしい意見をいただいたので、試召戦争が楽しくなりそうです。
ありがとうございましたm(*-ω-)m