明久「僕が女の子に!?」   作:白アリ1号

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前回、誤字脱字報告がありました。
ミスをしてしまい申し訳ないです。(*_ _)スミマセン

それではどうぞ


29話 山に行く4

アキside

 

 

ただいまの時刻は6時。

早朝の層雲で森に霧が漂っている。

 

そんなことより、今回は予定にあったとおりの昆虫採集をする。

 

僕も小学生の頃はよくやってたけど、この年になるとやる気力もないし興味もなくなる。

 

なぜ行うのか?

ムッツリーニいわく、返る(?)ことと、自然と触れ合うという目的らしい。

 

うん、意味が分からない。

なぜこんな、いい年した高校生が網とかごを持って山に来て昆虫を採り、

童心に返ろうとするんだ……。

 

まぁ自然と触れ合うのはいいことだし、家で暇している人よりはマシだけど。

 

「集まったなお前ら。今から昆虫採集を始める、準備はいいな?」

 

ここでも雄二はリーダシップを見せる。

 

もちろん全員虫かごと網を手にもって、準備は完了済み。

 

「よし、ただ採るだけじゃ面白くねぇから、全員で勝負しようぜ。

ルールは単純で多く昆虫を捕まえる。一番多く捕まえた奴には豪華な景品を用意してあるぞ」

 

「豪華な景品?」

 

この日のために雄二は何か用意していたのだろうか?

 

「ああ、そうだ。ムッツリーニ、説明を」

 

「……豪華な景品は、昨日の川でのアキちゃん透けブラ写真と夏休み中のアキちゃんの写真をプレゼント……」

 

…………うわー……いらね。

 

というか、勝手に僕の写真を景品にしないでよ!

まったく、こんなもののために勝負を仕掛ける人なんているのだろうか。

 

「頑張ります! アキちゃんの写真は私がもらいます!」

 

姫路さんはやる気満々のようだ。

 

まさか、こんな勝負を本気でやる人がいるとは思わなかったよ。

 

「そんじゃ、昆虫採集スタートだ」

 

雄二の掛け声とともに昆虫採集が始まる。

果たして誰が1番昆虫を捕まえられるのか。

 

 

 

 

「オラァ!」

 

ドス!

 

ポトポト

 

「よしゃ! ゲットだぜ!」

 

雄二が木をおもいっきり蹴って、昆虫を木から落としている。

 

ああやって虫を捕まえることもできるのか……。

よし、それなら僕もやってみよう。

 

僕も雄二と同じ作戦でいこうと、周りの木を見渡す。

 

ん~…………あの木がいいかも。

 

近くに立派な木が立っていたので、そこまで踏み寄る。

 

大きくて、葉っぱが茂っていて、昆虫が多く集まりそうな木だ。

 

「よーし……てい!」

 

木を蹴るのは自然破壊……のような気もするが、それは気にせず狙いをつけて、まずは渾身の蹴りを一発。

 

ポカ

 

しかし、木は微動だにせず。

 

「あ、あれ……? もう1度!」

 

狙いどころが悪かったのかと思い再び狙いを定める。

 

ポス

 

案の定、木は微動だにせず。

 

「あ、あれれ……? おかしいな?……もう1度!」

 

三度目の正直とばかりに、また蹴りを入れる。

 

ポム

 

二度あることは三度ある、木は微動だにせず。

 

「ダメだ、力が入らない…………もう、なんで上手く行かないの!」

 

なんか悔しかったので、サンドバックのように木を何度も何度もポカポカ蹴る。

 

「えい! やぁ! はぁ!」

 

傍から見れば、蹴る姿と迫力はあると思うが、威力は心もとない。

 

うぅ……悔しい……やっぱりこの身体不便だよ!

 

「あはは、やっぱり吉井クンは何やっても可愛いな~」

 

「健気な姿がとてもいいわ……妹にしたい……」

 

工藤さんと木下さんが木に隠れて、ジーッとこっちを見ている。

 

見ないで……恥ずかしいよ、こんな姿……。

 

「もう、なんで落ちないんだ!」

 

ポト

 

なげやりに蹴ってみると、頭に何か小さな虫らしきものが落ちてきた。

 

「おお……やった~!」

 

どんなものかワクワクしながら頭に手をやる。

 

大きさ的にクワガタのメス……いや小さなカブトムシだろうか。

 

手に持った生き物を確認する。

 

8本の足。

 

頭と胴体がくっ付いているようなデザイン。

 

なんて立派な蜘蛛なのだろうか。

 

……………………。

 

「いやあああぁぁぁぁぁ!?」

 

あまりの気持ち悪さに思わず、手に持った蜘蛛を投げ捨てた。

 

あまりの不快感と恐怖でその場から走って逃げる。

 

「うわあぁぁぁん! 木下さぁぁん!」

 

逃げた道中で出会った木下さんに思わず抱き着いた。

 

「きゃっ……よ、吉井くん……どうしたの?///」

 

「うぅ……蜘蛛がね……落ちてきて、僕に引っ付いてきたの……」

 

「あぁ……そういうことね……アタシも虫は苦手だからよく分かるわ……よしよし」

 

頭を撫でてくる木下さん。

 

やっぱり、頭撫でられるの気持ちいかも……。

 

気持ちがよくて、ちょっと落ち着いた。

 

「吉井くん、むやみに大きな木を蹴ってはダメよ。自分の出せる力で揺らせる木を見つけるのよ」

 

「うん……そうする……」

 

やはり、あの大きさは無謀だったか……。

もう少し小さな木で挑戦しよう……。

 

 

 

 

「この木なら大丈夫かも」

 

細くて、なおかつ小さな広葉樹を見つけた。

 

いる確率はわからないが、手当たり次第に探すしかない。

 

木の一点に集中して狙いを定める。

 

「今度こそは……!」

 

先程と同等の力で蹴りを入れると、大きく木が揺れた。

 

ポト

 

すると、僕の目の前に小さなカブトムシが。

 

「よし! やっと捕まえられた」

 

サイズは小さいものの、やっとの思いで手に入れたのだから嬉しいものだ。

 

この調子でもっと捕まえようと他の木を探し、見つけては蹴って捕まえる。

 

この作業を楽しみながら繰り返してると、虫かごの中が大体8匹くらいの昆虫が詰まっていた。

 

「よし、もう日も昇ってきたことだ。集まって集計結果を確認するぞ」

 

雄二の掛け声でみんなは元の場所に集まる。

 

集計結果は以下の通り。

 

僕:8匹

 

雄二:14匹

 

ムッツリーニ:5匹

 

秀吉:6匹

 

美波:12匹

 

霧島:5匹

 

工藤:10匹

 

久保:15匹

 

優子:3匹

 

姫路:20匹

 

1番多く捕まえたのは姫路さん。

数は圧倒的だ。

 

「姫路さん、よくそんなに捕まえられたね……」

 

「アキちゃんの写真のためです!」

 

それだけのためによく捕まえたな……。

 

姫路さんはどこまでも凄い。

僕たちができないことを平然とやってのける。

 

「そんじゃ、捕まえた昆虫は逃がすとするか」

 

虫かごの蓋を開ける雄二。

 

「そうだね、このままはかわいそうだし」

 

「キャッチ&リリース精神が大事じゃな」

 

僕と秀吉に続いて、みんなもそれぞれ捕まえた昆虫を逃がそうとする。

 

「じゃあ、またなお前ら。元気でいろよ」

 

雄二はそう言って、昆虫を逃がしていく。

 

僕たちに少しの間、捕まっていた昆虫達は森どこかへ飛んでいってしまった。

 

「ちゃんと逃がしたんだから、いつかは、あいつらが恩返しにしに来るかもな」

 

「そうだね」

 

雄二の言葉に少し微笑んだ。

 

こうして自然と触れ合う2日間が終わった。

また楽しい思い出ができたんだと実感した。

 

……………………。

 

…………ん? ちょっと待って。

確かに、逃がしてあげたのはいいことしたように聞こえるけど、

よく考えたら、僕たちがやったのはただ単に、一方的に昆虫を捕まえて

逃がしただけじゃないか!

 

恩返しはもちろん来ることはなかった。




まさか20匹も捕まえるとは……。
恐るべき姫路さんのアキちゃんへの愛。( ゚д゚)
さすがに作者も姫路さんには頭が下がります。(笑)

今回で山の話は終わりです。
次でやっと夏休み後半です。 
なんかいろいろと長かったような…………。

あと3話くらいで終わらせたいと思う作者。(◎-ω-)。o○(想像中)

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