星に照らされ、風が木々の間を吹いていく音が、暗い森の奥。
その森で集めた木の枝を火にくべ、橙色の焚き火が適当に大きくなったところで、キャスターは炎に手を入れる。
炎の舌は、彼女の腕をはい回るが、それは熱くもなく羽で撫でられているような心地よさしか感じない。そのまま、炎の中で手を開いて閉じることを繰り返せば、炎が弱まる代わりに、魔力が徐々に回復してきた。
「―――――あの、何をしているのですか?」
と、そこで急に焚き火の向こう側に座る人影が問うてくる。
いきなり焚き火に腕を差し入れる振る舞いは、確かに奇妙に見えたことだろう。
「魔力の回復です。私のスキルですので、お気になさらず」
そう説明すれば、それで相手は引っ込んでくれた。正直なところ、他に説明のしようもないから大いに助かる。
こうして焚き火の炎から吸い上げた魔力を、キャスターは宝具発動で、傷ついた霊核の修復にすべて回した。
ふぅ、と魔力の吸い取りを一度止め、焚き火の向こう側にいる相手を見やる。
炎のような赤い髪の、大きな弓を携えた、キャスターと同じくらいか、少し年下に見える少女。
しばらく前に一瞬だけ出会い別れた、赤い髪の少年とよく似た風貌の彼女は、キャスターを助けてくれたサーヴァントだ。
しばらく前、女王とケルト兵たちに追い詰められたキャスターは、足止めのつもりで、辺り一帯をできるだけ巻き込むようにして宝具を撃った。広範囲の攻撃で、目的は達したものの、キャスターはあわや追い付かれかけた。
そこへ、たまたま通りすがった彼女が弓で援護してくれ、森の中へ逃げることでケルトの連中から逃れることができたのだ。
弓を持つ彼女のクラスはアーチャー、真名はシータ。かの、ラーマーヤナに出てくる、理想王ラーマの妻、シータその人だ。
「すみません。私の魔力補充に付き合わせてしまって」
「いいえ。それより、傷んだ霊核とやらは大丈夫なのですか?」
「戦闘に支障はありません」
手をひらひら振って笑ってみせれば、シータは、くす、と微笑んでくれた。
宝具『我が身を燃やせ、白き焔よ』は、キャスターの最期の行いが形になった宝具で、全力で撃つと、それだけで自壊を招くし、全力でなくとも、一度撃てばそれだけで、霊核たる心臓に亀裂が走っていく、という非常に使いどころに困るものである。
最も、限定的な開放だったから、キャスターの仮初めの心臓はまだ動いている。後、もう二、三発撃ったら霊核は砕け散るだろうが、まだ手足は十分動くし、頭もまともだ、とキャスターは考えていた。
しかし、次にあのケルトたちと会えば、無事では済まないだろう。
何しろ、あの理想王ラーマすら、単騎では勝てなかったクー・フーリンと、伝承において数多の戦士を影から操った、女王メイヴが率いている、凶戦士の集団だ。
幸いなのは、彼らには、軍隊としての規律も何もあったものではなく、個々で勝手に動いることだ。
そのお陰で、キャスターやシータのような、戦闘向きではないサーヴァントが東部にいても、彼らを掻い潜っていられるのだ。
が、このままでは、いつか倒れる。
「ラーマ様は、大丈夫なのでしょうか?」
それでも、目の前にいるこの女性は、自分より愛しい人の身を気にかけている。
この人は強い女性だ。それは、力とか宝具ではなくて、彼女の心。本当に素敵な人だと、キャスターは思う。
「火分けした私の宝具は動いています。ラーマさんが、生きている証ですよ」
そして、その彼女に、こうして気休めしか言えない自分がもどかしかった。
邂逅したときに、あの槍の呪いを押し止めるため、キャスターがラーマの心臓に火分けした二つ目の宝具『焔よ、祓い清めたまえ』は、確かにまだ燃えている。
この広い大地の、どこで燃えているのかまでは分からないが、心臓を破ろうと侵食する呪詛に抗している気配は、感じ取れていた。
感じ取れるが、火分けした焔はあくまで抗しているだけで、呪いを打ち消せる訳ではない。
それを察しているだろうに、シータは、祈るように息をついた。
「―――――良かった。あの方を助けてくれて、本当に、ありがとうございます」
「いえ。私も貴女に助けて頂きました。礼を言うのはこちらの方です」
真っ直ぐに感謝されるのに弱いキャスターは、少し落ち着かない気分になって、目をそらした。
「本当なら、貴女の名前を呼んで感謝を述べたいのですが」
「それこそお気になさらずに。今の私はキャスターです。ただのキャスターと呼んでください」
キャスターが呪いで名前を名乗れず、逸話も何もない妙なサーヴァントである、ということを、シータはすんなりと受け入れてくれている。それは、彼女自身と、その最愛の人であるラーマにかけられた呪いのことがあるから 。
シータは、キャスターに、己にかけられている、愛する人と決して巡り会えないという、別離の呪いのことを話してくれた。生前にラーマがかけられ、二人が英霊になってもその効果を失っていない、恐ろしい呪いのことを。
共感ができるとは言えないが、大事な人とずっと会えないやるせなさは、身につまされた。
強い王女から眼を逸らして、キャスターは森の木々を透かし、星空を見上げた。
故郷の星空とは違うが、その輝きは懐かしいまま。
そして、その煌めきの下で、人が人を殺そうとするのも昔のまま。
お互いを思い合う人々が、会えないままにされるのも、昔のまま。
全く、悲しいくらいに変わっていなかった。
「―――――さて、あなたがここにいたら、未来を守るため、自分の責務を果たすため、一体、どう動きますか」
己を奮い立たせるために、唄うように呟く。
胸の奥にしまったままの面影を楔にして、前を向くとは、自分は何年経っても、一度終わりを迎えても、全くの未熟者だ。
だけれど、今は楔が必要なのだ。
キャスターは星空から眼を外し、橙色の炎に照らされたシータの顔を見る。
「シータ。これからのコトですが、私は西部と東部の境目に向かうべきだと思います。西には、ケルトに対抗している一団があるようですから」
現状、この大陸では、西と東に別れて戦っている。そして恐らく、特異点の原因たる聖杯を持っているのは、時代に逆行しているケルト側だと、二人は考えていた。
第一、時代の流れ以前に、あちらはアメリカ大陸に住む人々をほぼ皆殺しにしている。
民間人を見逃している者もいないではないようだが、町を破壊し、竜やキメラのうろつく荒野に、着の身着のままサーヴァントでもない人間を放り出して、どう生き延びろというつもりなのだろう。
いずれにしろ、待つのは悲惨な光景だ。
冬木でマスターたちを補助していた、ドクターという人の話を鑑みると、カルデアのマスターたちが聖杯を手に入れれば、歴史の修正は成功するはずだ。
斥候としてたまに遭遇するケルト兵たちの話を漏れ聞くに、二人が今いる東は、もうケルトの支配下にあるが、西はまだケルトと戦いを続けているという。
しかし、西に行くということは、ケルトに包囲された東部を突っ切って、前線に行くということなのだが。
「ええ、行きましょう」
と、シータは一も二もなく言い切った。
力強いその答えにキャスターも頷き返し、立ち上がろうとして―――――、
「ッ!?」
南、森の入り口から、急激な魔力の高まりを感じて、鳥肌が立った。
キャスターの頭の奥で、直感ががんがんと警報を鳴らす。
「伏せて、シータ!」
キャスターがシータの腕を掴み、横に飛んで伏せるのと、奔流を伴った水の槍が、一瞬前までこちらのいた地面をえぐりとり、木々をなぎ倒して、森の奥へと消えたのは、ほぼ同時だった。
「避けられたな」
己の忠実な黒髪の槍兵を伴い、森の入り口に立つ金髪のサーヴァント、フィン・マックールは、そう呟いた。
静かな夜を過ごしていた森は、直線上に木々が抉られ倒れ、無惨な姿を晒している。
それを成したのは、フィン・マックールの宝具、『無敗の紫靫草』。神の力を宿した水の奔流を伴う一撃よる破壊の跡が、これだった。
「真ですか、我が主よ」
「ああ。勘が良いのか、手応えがまるで無かった。方向としては間違っていなかったはずだがね」
フィン・マックールは、魔術を用いて己の気配は絶ったまま、標的が確実にいると思われる方向に、威力を抑えていたとはいえ、宝具を撃った。それも、任を確実に果たすためだ。
騎士らしからぬ、暗殺者のような振る舞いをしてまでの奇襲だったにも関わらず、標的のサーヴァントは二体とも無傷。やはりこのような真似はするものではないな、と首を振った。
とはいえ、成果がなかった訳ではない。サーヴァントとしての知覚能力で、フィン・マックールはすでに標的を捉えていた。
標的は、赤い髪の大弓を携えた、アーチャーらしい少女のサーヴァントと、灰色の布で顔を隠した、恐らくはアサシンと思われるサーヴァント。
「行け、ディルムッド。露払いは任せた」
「承知!」
俊足の槍士が、破壊によって作られた道を風となって駆ける。
距離は一瞬で詰められ、灰色のサーヴァントを刺し貫かんと、ディルムッドの槍が走る。
闇に紛れることが本分の暗殺者ならば、その一撃で絶命していただろう。
「ほう」
だが、灰色のサーヴァントの行動は、フィン・マックールに驚きの声を上げさせた。
灰色のサーヴァントは、咄嗟に少女のサーヴァントを突き飛ばして離れさせ、腰に差した短めの剣を抜き放って、ディルムッドを迎え撃ったのだ。
闇の森に火花が散り、灰色のサーヴァントの首はまだ胴体についている。
一撃、二撃、三撃、と続けてディルムッドの槍が振るわれるが、それらすべてを灰色のサーヴァントはいなしていた。
「勘がいい、のだろうな。だが足りないぞ。暗殺者よ」
わずかに離れた位置で、フィン・マックールは呟く。彼は手を出さない。その必要がないからだ。
「キャスター!」
果たして、攻防は長く続かない。
灰色のサーヴァントの肩を、ディルムッドの『必滅の黄薔薇』が切り裂いて血が吹き出し、アーチャーの少女が悲鳴を上げる。
「何!?」
だが、驚きの声を上げて飛び退いたのは、槍の戦士の方だった。
槍が傷を刻み、灰色のサーヴァントの血が飛んだ瞬間、虚空から青い焔が吹き上がり、ディルムッドに襲い掛かったのだ。
意志持つ蛇のように襲い来る焔を、ディルムッドは魔力を打ち消す『破魔の紅薔薇』で振り払う。
「よもや魔術師の類いだったとはな」
槍の戦士の言葉に、灰色のサーヴァントは答えられない。血が流れる肩を押さえ、荒い息を吐いている。
ディルムッドの宝具、『必滅の黄薔薇』で穿たれた傷は、治癒しない。そういう呪いがかけられた宝具だからだ。
あのサーヴァントの腕は、もう満足には動かない。そのはずだ。
だが、灰色のサーヴァントが肩から手を離すと、そこには橙色の焔が灯っており、見る見る内に傷が塞がっていった。
「我が槍の呪いを打ち破るとは。……その焔、それが貴様の宝具か?」
答える義理はない、とばかりに灰色のサーヴァントは、背に少女を庇ったまま、再び剣を構えた。
フィン・マックールから見れば、その構えはあまりに拙い。基礎はそれなりにあるようだが、フィオナ騎士団の一番槍を相手取って少女を守るには、到底足りない、藁の壁だ。
「いや見事。魔術師とはいえ、なかなかどうして戦士ではないか」
が、その心意気は称賛できる。
故に、フィン・マックールは歩み出た。
「女王からの命は、灰色のサーヴァントの抹殺と、少女のサーヴァントを捕縛、だったが。素顔を晒さぬ灰色のキャスターよ。貴様、それなりの騎士であるな」
だから何だ、とでもいう風に、キャスターは剣を構えたまま、邪魔になったらしい、顔を隠していた布を乱暴に剥ぎ取った。
その下の素顔に、フィン・マックールは驚く。未熟な少年を想像していたというのに、そこにあったのは、長い黒髪を金の輪で一纏めにし、青い瞳を燃え立たせた少女の顔だったからだ。
「いやはや、この少女にしてやられたのか。我らが女王は」
「メイヴに命じられて来たのですか、貴殿方は」
黒髪の少女が口を開いた。澄んではいるが、少女にしては低い声だった。
「無論だとも。私たちの任は、君の殺害、及び、そこのアーチャーのお嬢さんの捕縛だ」
「シータを、ラーマさんへの人質にでもするつもりですか?姑息ですね、女王とやらも」
「さて、な。我らは命じられるままに戦うのみだ。魔術師のサーヴァント、君はここまでだ。君を殺せば、我らの敵のサーヴァントの命を守っている宝具は消えるのだろう?」
黒髪の少女は答えず、赤い髪の少女の方が、その言葉に顔色を変えた。
体術に劣り、魔術に優れるキャスターは、ディルムッド・オディナと極めて相性が悪い。
白兵戦は言わずもがな、生半可な距離で魔術を撃っても、彼の宝具に打ち消される。
遠距離から、接近されないよう隙間ない弾幕のように魔術を打ち続けるなら可能性はあるかもしれないが、このキャスターは、すでに距離を詰められている上、フィン・マックールという後詰めもいる。
だというのに、眼前のキャスターはどう見ても諦めていなかった。
惜しいな、とフィン・マックールは思う。
剣を構えるキャスターと、槍を構えるディルムッドの間に、緊張が走り、そして、キャスターの方が、口元をつり上げる。
嫌な笑みだった。
「ディルムッド!宝具が来るぞ!」
フィン・マックールは叫んだ。
忌々しげにメイヴが語っていた。
キャスターの宝具は、相手を囲い込んで爆発させる広域破壊型だと。範囲攻撃には、ディルムッドの魔術を打ち消す宝具も及ばない。
だから、追い詰められればキャスターが宝具を撃つだろうということは分かっていた。そのために、水神の力を持つ、フィン・マックールもいるのだから。
炎は水に弱い。それは魔術においてもだ。
しかし、魔力を高めていくキャスターは、フィン・マックールの言葉を聞いて、彼の槍に水の魔力が集まるのを見ても、笑みを消さなかった。
「誰が、何度も宝具なんて撃ちますか」
言うなり、キャスターは剣を地面に突き立てた。
地に刺された剣を中心に、雷と水が、鎌鼬が、そして青色の焔の蛇が、ディルムッドとフィン・マックールへ襲い掛かる。
彼らは知らなかったが、キャスターの呪術による攻撃であった。
土を巻き上げ、太い木々を斬り倒す暴虐の嵐は、束の間、ディルムッドとフィン・マックールの視界から、少女たちの姿を隠した。
ディルムッドには、魔力を伴う攻撃は打ち消せても、魔術に伴う物理的な破壊は打ち消せない。知ってか知らずか、キャスターは彼の宝具の弱味をついたのだ。
「だが、逃がすわけにもいかないのだよ」
魔力の痕跡は、消えていない。
フィン・マックールは、ディルムッドを伴って、消えた二人の追跡を開始した。
―――――油断した。
森を走り抜けながら、キャスターの思考は焦燥で赤く染まっていた。
あの二人のランサーは強い上、キャスターとは、非常に相性が悪い。勝てるとは思わない。本気で、逃げるだけで精一杯だ。
走っていても、後ろからの殺気が消えず、呪術にも、次は上手く引っ掛かってくれはしないだろう。
どうする、どう逃げる?
「キャスター、話があります」
考えつつ走りながら、横にいるシータを、弓を携えた強き王女を、キャスターは見た。
「私が囮になります。あなたは、その間に逃げてください」
「そんな―――――」
「お願いします。あなたには、あなただけではなく、ラーマ様の命もかかっています。彼らは、私は殺さない。でも、あなたは殺されてしまいます」
だからどうか、とシータはキャスターを見た。
「あなたにとって、辛いことを言っているのは分かっています。それでも、お願いします。―――――あなたは、もう、あの宝具を撃ってはいけません」
言うなり、シータは弓を構えて後ろに向き直る。止めようとしたキャスターを、シータの赤い瞳が射竦める。
細くて小さくて、それでも芯の通った背中に、歯を食い縛って一つ頭を下げ、走り続けた。
走り続けるうち、何度か爆発音がしたが、それきり後ろは静かになった。
噛み締めた唇からは血が流れるが、それでも足は止めない。止められない。
駆けて駆けて、仮初めではない心臓だったなら、爆発しているのではないかと思うくらいに駆けて、森を抜けた。
視界が開け、満点の星空と、果てしない大地が目に入る。
足を緩めかけたそのとき、首筋に悪寒が走って、キャスターはとっさに剣を後ろに振るった。
がきん、という固い手応えと、暗闇に散る火花。
二槍使いの黄色い槍と、キャスターの短い剣とがぶつかり合っていた。
「今の一撃で仕留めたと思ったのだがな。つくづく、勘の良い魔術師よ」
確かに、勘の良さはキャスターの武器の一つではある。
けれど、勘の良さだけで捌ききれるほど、この槍士は甘くない。
「名を名乗らぬ魔術師よ。お前に恨みはないが、主のため、ここで命を頂戴する」
朱い槍と黄色の槍が掲げられ、キャスターも剣を構え、魔力を高めた。
撃ちたくはないあの宝具。自分は、またあれに頼るしかないのか。
キャスターの口が開かれかけた、その瞬間。
「右に避けなさい、同郷の術師よ」
聞き覚えのある、声が聞こえた。
声に従い横に飛べば、その空間を貫いて、閃光がランサーに直撃し、砂塵が舞った。
だが、程無く砂塵は晴れ、ランサーは無傷な姿を現す。驚いているようではあったが。
直撃したように見えたが、恐らく直前で避けたのだろう。
「新手か!?」
「-----少なくとも、今の私はあなた方の敵ですね」
後方から聞こえる声。
知っている。キャスターは、この声を知っている。
宿敵だ、と、彼が言っていた武将。あの時代のあの国において、一番の栄光に死ぬまで包まれていただろう、神の寵児。
そして最後の戦いで、彼を殺した人間。
キャスターは、顔が強張るのを感じた。
「引きなさい、槍の騎士。ここで戦うことにお互い益はないでしょう。それとも、我が弓にかかって、ここで果てますか」
端正なランサーの顔が歪む。
多分、彼も雰囲気で悟ったのだろう。荒野から唐突に現れた、褐色の肌をした、大弓を持つサーヴァントが、ただの英雄などではないことを。
それでもランサーは槍を構える。が、何かに呼び掛けられたように動きを止め、そして彼は槍を引いた。
「我が主より、帰還せよ、との命令が下った。命拾いをしたな、魔術師よ」
砂埃を残して、あっという間にランサーは消えた。
「さて、危ないところでしたね、術師のサーヴァント」
そして、大英雄はこちらを向いた。キャスターはその顔を、正面から見た。
「はい。助けて頂いたことには礼を言います。―――――アルジュナ様」
キャスターにとっては、因縁浅からぬ、しかし、あちらにとっては、初対面である弓兵のサーヴァントは、鷹揚に頷いて見せたのだった。
アルジュナ「私が来た」
主人公「チェンジ!!!」
・・・・・という話です。
捕捉ですが、アルジュナは呪いで主人公のことを覚えていません。
彼にとってみれば、キャスターは同郷の気配がする単なるサーヴァント(しかも弱そう)です。