―黒と緑の物語― ~OVER LORD&ARROW~ 作:NEW WINDのN
「行くでござるよ。殿たちも見ていてくだされ! これが
右膝をついて待っていてくれる
「あいやっ!」
ツルリンと滑って自分の後頭部から落下してしまう。
「ふぎゅっっ!」
ドッゴーン!! と一人で〈垂直落下バックドロップ〉を決めたハムスケは、自分の全体重が後頭部というか、“ほぼ脳天”にかかり、大ダメージを受けて、のたうちまわっている。
(あっちゃー)
それを見ていたアインズは思わず右手で額を抑えてしまう。ちなみに今は、本来の
「まだまだですな、ハムスケ殿」
これも軍服に三穴のピンクの卵頭姿のパンドラズ・アクターがダメ出しをする。
「も、申し訳ないでござるよ。あいたたたたっ」
痛む後頭部に、右手――いや右前足か?――を伸ばすが、体の大きさのわりに短くまったく届いていない。
「……真似をするのはよいが、体型が違うからな」
骸骨姿のアインズはダメ出しをしながら、ハムスケの姿に癒しを感じていた。
「なるほどでござる。さすがは殿達でござるな。このハムスケ、日々勉強の日々でござるよ」
ハムスケは一人納得してコクコクと頷いているが、やはりハムスターがハムハムしているような絵に見える。
ここはナザリック第六階層にある闘技場。「日頃の成果を見せるでござる!」と張り切るハムスケのために場所を借り受けている。
ハムスケは“漆黒”として出番がない時は、基本的にナザリック内で、リザードマンの戦士ザリュース・シャシャとゼンベル・ググーの二人の指導を受けながら“武技”の習得を目指して頑張っている。
そして、それと並行して〈
ただ、人間の姿である
「やはり、体をぶつける系統の技か、爪を使った方がよいのではないか?」
アインズが笑いをこらえながらアドバイスを送る。
「そ、そうするでござるよ。では、これならどうでござるか! 防げるものなら防いでみよ! 〈
ハムスケは助走をつけて、
(お前……全然桃尻ではないぞ。どっちかと言えば白桃――いや、大福だよ)
アインズは心の中で突っ込みを入れる。
「グオオオオオ!」
それを
「グオオオオオオオッ!!」
「うぎゃあああああっ……」
ハムスケは、またもや後頭部をしたたかに打ち付け、悶絶する。
「おおっ! この文献によると、今の技は〈
「まことに。
のんきな二人の目の前では、ハムスケがピクピクと痙攣していた。
二人が覗き込んでいた文献とは“
なお人間の体力では再現不可能な技も混ざっているが、アインズやアローの肉体能力があれば大抵は再現できる。
「おっと、いかんいかん。ハムスケを回復してやらないとな」
アインズはペットの介抱を始めるのであった。
(そうだ! 技に
アインズは心のメモに書き加えた。
ハムスケが、武技を身に着けるには、まだ時間がかかりそうだ。