デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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ホントはハロウィン書きたかったけど、書けなさそうだったんで早めのクリスマスにしました。






クリスマスパーティーです!

クリスマスパーティーです!

 

Side空

 

暦は12月に入った頃、龍神家では大きめの炬燵を出して皆で寛いでいた。

 

「もうじきクリスマスだねぇ……」

 

「そうだなぁ……」

 

クリスマスと言えば、今年もバニングス家でクリスマスパーティーを開かれることをアリサから聞かされた。去年と違って今年の参加人数はかなり増えているから準備が大変そうだ。

 

「僕知ってる! 美味しい食べ物がいっぱいなんだよね!」

 

炬燵に入らずゲームをしていた美雷がクリスマスという単語に反応した。言っていることは間違っていないが、ちょっとズレてる気がする。

 

「クリスマス……楽しみですね」

 

星奈は知識としては知っているが実際に体験するのは今年が初めてだ。もちろんユーリ達やオリヴィエさんもだ。出来るだけ楽しませられるようにしてあげよう。

 

プレゼント用意しないとね。皆にどんなのをプレゼントしようかな?

 

一昨年は桃子さんと特製のケーキを作った。去年はお手軽に出来るアクセサリーセットをアリサパパがその場用意してくれてその場で作った。

 

今年は……よし、マフラー編もう!

 

渡す対象はなのは達や十香達だけでなく大人も含めた全員だ。たまには大人にもクリスマスプレゼントがあってもいいと思う。

作るものが決まれば、早速材料を集めることにした。それから皆の好きな色を事前に聞いておこう。イニシャルを入れておけば誰と誰かが被っても大丈夫だ。作製時間は影分身を使えばあっという間だから問題ない。

 

 

 

 

 

「え? 一人一つプレゼントを用意?」

 

「そうよ。なんでか知らないけどパパが皆に頼めって」

 

場所は学校の教室。

いつもなら屋上で食べている昼食も、流石に冬だと寒いので温かい教室で食べている。

そんな最中、アリサからクリスマスパーティーのことを告げられた。

誰一人として理由はわからないが、とりあえずプレゼントを用意しておけばいいのだろう。

 

マフラーは一つじゃないから、また別のものを用意しないといけないのか。

 

放課後、ヴァーリ、雄人、ユーノ、クロノ、ザフィーラさんを誘ってプレゼント探しに行くことにした。

 

 

 

 

 

「どんなものが良いんだろうな?」

 

放課後に集合した俺達は駅前のショッピングモールに入った。

しかし、プレゼント選びに難航していた。

 

「アリサからは特に指定は無かったんでしょ? だったら何でもいいんじゃない?」

 

「それだと余計に悩まないか?」

 

「うむ、確かにそうだな」

 

今日の晩御飯は何が良いと聞いて、なんでもいいと返されるのと同じだ。龍神家は人がたくさんいるから毎日のメニューには事欠かない。

 

「だったら自分の好きなものか、直感でいいと思ったものかな」

 

話し合いの結果、自分の琴線に触れたものをプレゼントにすることになった。

ちなみにアリサパパ曰く、プレゼントは当日までのお楽しみらしいので、ヴァーリ達が何を選んだのかは俺は知らない。

 

 

 

 

 

そして、時間は経ち、クリスマスイブ当日がやって来た。

バニングス家に集まるのは夕方からなので時間には余裕があった。それまで修行をしようかと思っていた。

 

「私とデートしてください!」

 

が、朝一でなのはからデートのお誘いを受けた。

最初は断ろうとしたのだが、なのはの不安そうな顔を見て嫌だとは言えなかった。

 

「わかった。すぐ準備するから待ってて」

 

「ありがと!」

 

不安そうなな顔から心から嬉しそうな笑顔になった。

いくら唐突なデートだからと言って、女の子を待たせるのはよろしくない。即座に着替えてなのはとのデートを始めた。

 

「ね、手をつなご?」

 

家を出てからなのはが手袋を付けた手を差し出してきた。

返事は言葉ではなく、彼女の手を取って示した。

 

「さあ、俺達のデートを始めようか」

 

「うん!」

 

手を繋ぎながら目的地もなく歩き出した。

なんとなく歩いて辿り着いたのは、どこにでもあるような公園だった。でも、俺からしたらこの場所はなのはと出会った思い出の場所だ。

なのはに確認を取る事もせずに公園に入り、冷たいベンチに並んで座った。

 

「なんか……なのはと二人っきりって久しぶりな気がするね」

 

「実際そうだよ。学校に入ってから空君ってばいつも誰かといるんだもん。特に女の子ばっか!」

 

ふと思ったことを口に出したら、なのはから返って来たのは棘のある言葉だ。

 

うぐっ……悪いことした気分になるのはなぜに?

 

「えっと、ごめんなさい……?」

 

「謝って済むなら警察入りません! ……でもね、それは皆空君のことが大好きなんだよ。あっ、もちろん私も大好きだからね! ―――って、今の好きは変な意味とかじゃないからね!?」

 

? 好きに変な意味があるの?

 

良くわからないがこのことを聞くのはやめておいた方がよさそうだ。無理に聞いて砲撃が来たらひとたまりもない。今日の作戦は“いのちをだいじに”で行こう。

 

「ここで私と出会ったこと憶えてる?」

 

「もちろん。忘れないさ」

 

「あれからもう四年かぁ……。時間が経つのは早いね」

 

「そうだね。気が付けば今年も終わりが近いから。……それにしても今のなのはのセリフ、ちょっと年寄りっぽい」

 

「もーっ! 茶化さないで!」

 

両手を上げて怒るなのはを見て思わず笑ってしまう。本人も本気で怒ってないのが分かっていたからなのはも一緒になって笑い出した。

 

「最近、管理局の仕事はどう?」

 

ひとしきり笑った後、強引に話題を変えて当たり障りのないことを聞くことにした。

 

「まあまあ慣れたかな。まだ嘱託魔導士で子供だからなのか、難しい仕事はやらされないみたい」

 

「訓練は? なのはよりも強い人いる?」

 

「うん、いるよ。たくさんってほどでもないけどね……この間はフェイトちゃんと組んだのに教官の人に負けちゃったんだ。魔力量では私達が完全に勝ってた。でもそれなのに負けたんだよ」

 

なのはの話に段々興味が湧いてきた。日頃の戦い方を見ていれば管理局の人には負けないと思っていた。フェイトと組んだのなら尚更に。

考えられるのはコンビネーションを上手く利用して、二人の動きを封じたのではないだろうか。

 

「その教官がね、面白い事言ってたの」

 

「どんなこと?」

 

「『自分より強い相手に勝つにはどうしたらいい?』だって」

 

「そりゃ、勝てる部分で勝負するしかないんじゃない?」

 

例えば、なのはだったら守りの硬さと一撃必殺の砲撃がある。そんな彼女に勝つためには砲撃を撃たせなければいい。

例えば、フェイトだったら速さがある。そんな彼女に勝つためには攻撃を耐え抜いて、一瞬の隙を突くしかない。

現に、なのは達は自分の強みを知らず知らずの内に活かして俺に勝つこともあるのだ。

 

言い訳じゃないけど、負けるときはブレイブを使っているときであって神器(セイクリッド・ギア)とか精霊の力使えば負けない。……大事なことだから二回言うけど言い訳じゃないから!

 

「アハハ、空君はやっぱりすごいね。私達が何日もかけて出した答えを一瞬で出しちゃうんだから」

 

「そうでもないよ。ヴァーリだってわかると思う」

 

「あー……確かにそうかも。でも、その答えがあっても空君達の本気モードには一回も勝ててないんだよね……」

 

「フフン! あの力でそう簡単には負けるわけにはいかないから」

 

禁手(バランス・ブレイカー)を使って負けたなんて笑えない冗談だ。ドライグやアルビオンが泣く。

 

「今度その教官の人と戦わせてよ」

 

「そう言うと思った……。空君みたいに戦うの大好きな人じゃないから向こうは遠慮するだろうけど、一応聞いてみる」

 

「そっか。ありがと」

 

戦いたくないのであれば無理強いは出来ない。そもそも管理局に入ってない俺が戦えるとは思ってもいない。

 

「次、行こっか」

 

なのはの管理局での話を聞き終えて、別の場所に移動することにした。

すでにお昼近くになって来たのでチラホラお店が開き始め、雰囲気の良さそうな喫茶店に入った。

温かいココア二つと大きめのパンケーキを頼んで、静かな時間をまったり寛いだ。

 

「小学生なのに背伸びし過ぎかな?」

 

「アハハ、かもね。もうちょっと大人になってからまた来ようか」

 

「! 今のはまたデートしてくれるってことで良いのかな!?」

 

「え?」

 

まさかの凄い食いつきだった。

そんなにパンケーキが美味しかったのか、他のメニューも食べたいのかもしれない。

 

「いや、その時は皆も一緒―――グフッ」

 

「そこは()()()()()()()()って言ってね? はい、もう一度。今のはまたデートしてくれるってことで良いのかな?」

 

「う、うん。その時は二人で行こう」

 

暴力的な行為は良くないと思います。特に魔力強化しての腹パンは止めましょう。

 

“いのちをだいじに”で行くはずだったのに、すでに魔王(なのは)の一撃で瀕死なんですけど……。

 

「ホント!? すっごく嬉しい!」

 

なのに当の本人は腹パンしたことなんて毛ほども知らずと言った感じで喜んでいた。

時折女の子というのはずるいと思うときがある。幼馴染故の甘さもあるのかもしれないが、笑顔一つでこっちまでつい嬉しくなってしまう。

 

「そろそろ戻ろっか」

 

お店を後にしたら丁度いい時間帯だった。

一度家に戻ってからプレゼントを持って皆と一緒にバニングス家に向かった。

 

 

 

 

 

玄関ではズラリと左右にメイドと執事が並んでいたが、毎度のことなので俺達は軽く会釈するだけだ。

 

「な、なにこれ!? 全部アリサのお家の雇ってる人達!?」

 

「そうよ」

 

初めて見たイリヤと兄さんはこの光景に目玉が飛び出すんじゃないかというくらいに驚いていた。

鮫島さんの案内のもと大きな広間に入って他の人達が来るまでの間、待機となった。

 

「旦那様、本日参加する方が全員集まりました」

 

十分後には全員集まったようだ。

 

「ご苦労。鮫島、始めてくれ」

 

「かしこまりました」

 

大広間にある壇上にマイクを持った鮫島さんが立った。

 

「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。司会を務めさせていただく、鮫島と申します。さて、皆様のお手にはお飲み物はございますでしょうか? ……はい、大丈夫のようですね。それでは、乾杯の音頭を龍神様にお願いします」

 

俺の名前が出た途端に一斉に視線が集まる。

この様子だと逃げ道はなさそうだ。

大人しく壇上に上がり、マイクを鮫島さんから受け取った。

 

なんて言ったらいいものか……。

 

「えー……本日はお日柄もよく……はないですね」

 

定番の挨拶から入ろうとしたのだが、なのはとのデート中から曇りだしたことを思い出した。

 

「今夜はクリスマスイブです。お父さん方が奥さんのことを気にせずお酒を飲める日です。ええ、多少なら目を瞑ってくれることでしょう。ただし、他の人は一切の責任を取りませんので、問題を起こした場合は自己責任でお願いします」

 

『(き、気を付けよう……)』

 

なんとなくだが、釘を指したら皆のお父さん達の気が引き締まった感じがした。

 

「そして、今日は非リア充達にとって最悪な日と言っても過言じゃないでしょう。そんな非リア充達を代表して呪いを込めて乾杯を―――」

 

『どちらかと言えばお前はリア充側だけどな!』

 

「まあ、冗談はこれくらいにしておいて。今夜はいっぱい食べて、いっぱい飲んで、いっぱい語り尽くしちゃいましょう! メリークリスマス!」

 

『メリークリスマス!』

 

ジュースの入ったグラスを掲げると皆も同じように掲げた。

 

 

―――楽しいクリスマスパーティーの始まりだ。

 

 

 

 

 

「皆様、壇上の方をご覧ください」

 

十香達と食事しながら話しているときに鮫島さんから声がかかった。

壇上には大きさに差はあるものの、包装されたものが山積みに置かれていた。

 

「こちらは皆様が用意されたプレゼントでございます。それらを使ってプレゼント交換をさせていただきます。しかし、この人数でプレゼント交換するのは難しいです。そこで、今回はビンゴ形式での交換とさせていただきます」

 

自分で用意したプレゼントを取る人はいないだろうから、よっぽどのことがない限りは全員に誰かのプレゼントが渡るはずだ。

それにビンゴは早い者勝ち。普通にやるよりは一喜一憂する人達で溢れ、盛り上がる事だろう。

鮫島さんがビンゴカードを皆に渡していく。

 

「リーチになった方は手を上げて壇上に上がってきてください」

 

『ねえねえ。空君はどんなプレゼントに―――』

 

「最後にですが、一つ注意点がございます。全員にプレゼントが渡されるまでプレゼントに関する詮索や教えることは無しでお願いします」

 

「だってさ、よしのん」

 

『ちぇー。まあ、しょうがないよねー』

 

どれになるかわからないというのもこのプレゼント交換の面白いところだ。

鮫島さんが番号の書かれた玉が入っているスロットを回し、一玉飛び出した。

最初の番号は8だ。

その瞬間、当たって喜ぶ者、外れて残念にする者の二つに分かれた。

俺は外れた側なのでちょっと残念。

 

「やった! 私リーチ!」

 

『はやッ!』

 

四つ目の玉の番号が出た時、イリヤがリーチになった。もしかすると次の番号でビンゴしてしまうかもしれない。

 

「では、次の番号は…………」

 

もったいぶって番号を発表した。

 

「46でございます。イリヤ様、どうでしたか?」

 

「ビンゴ!」

 

『マジ!?』

 

まさかの本当にビンゴになってしまうとは……。

 

「おお! それはおめでとうございます! それではお好きなプレゼントをお選びください」

 

「どれにしようかなー? (空君のはどれなの!?)」

 

必死になってプレゼントを選んでいるイリヤ。誰かのプレゼントを狙っているのかもしれない。

それはさておき、渡すなら今が丁度いいだろう。

鮫島さんに近寄り、事情を話すと二つ返事であっさり了承してくれた。

 

流石鮫島さん。話が分かる人。

 

「イリヤ、メリークリスマス」

 

紙袋からイリヤに渡すマフラーを取り出して、プレゼント選びに夢中なイリヤの首に巻いた。

 

「わっ!? え? マ、マフラー? って空君!?」

 

「プレゼント交換とは別のクリスマスプレゼントなんだ」

 

「これ……私のイニシャル? もしかして手編み……!?」

 

「うん、そうだよ。どうかな?」

 

「すっごく嬉しい! ありがとう!」

 

そこまでして喜んでもらえると作った甲斐がある。

すると、背中に誰かの視線が痛いほど突き刺さった。

 

『むー……!』

 

振り返れば、睨んだり、膨れたり、そっぽを向いたりと様々な反応をする人達が見えた。

 

「えっと……全員分用意してるから、ビンゴしたら渡すね。もちろん大人にだってあります。(ドライグ達にもあとで渡すね)」

 

『!』

 

参加している全員と俺の中にいるドライグ達が驚いていた。

 

「お、おい、聞いたかマー坊?」

 

「あ、ああ。ばっちり聞いたよ神ちゃん……。まさか僕らにまでマフラーを作ってくれるなんて……」

 

『なんて親想いの息子なんだ!』

 

「魔王と神王の息子になった覚えはありませんよ!?」

 

「そうですよ、ユーストマさん、フォーベシイさん。空君は私達の息子です」

 

「士郎さん、それも違いますから!」

 

そこから俺が誰と結婚するんだのなんだのとビンゴそっちのけで盛り上がった。盛り上がったのはお父さん方で、奥さんに止められるまで続いた。

 

きっと酔ってたんだな。うん、きっとそうに違いない。

 

「ちょっとしたハプニングもございましたが、気にせずにビンゴを続けましょう」

 

イリヤに始まり、次々とビンゴになった人達にマフラーを渡していく。

 

「主、あなたのデバイスとして家族としてこんなに嬉しいことはありません」

 

《マスターのデバイスは私です! 勝手にマスターのデバイスを名乗るんじゃありません!》

 

シエラとブレイブが喧嘩したり―――

 

「君からのプレゼント、大事にするよ。……これは私からのクリスマスプレゼントだ。受け取ってくれ」

 

「へっ!?」

 

『んなッ!?』

 

リインフォースさんから頬にキスされて会場が騒然としたり―――

 

「だーりんに抱きしめられてる気がします!」

 

「アハハ、大袈裟だって……」

 

美九の可笑しな喜び方に苦笑いしたり―――

 

「クリスマス……私の時代にはない文化ですがこれほど素晴らしいとは……やっぱり生き返って良かったです!」

 

「私のお兄ちゃんはすごいですね!」

 

初めてのクリスマスをオリヴィエさんやユーリにも楽しんでもらえたり―――

 

「男からプレゼント貰うのって変な感じがするけど、ありがとな!」

 

雄人が心から言ってくれるのが分かって嬉しくなったりして、皆からのお礼の言葉が聞けて作って良かったと思えた。

 

「それでは全員プレゼントはお持ちですね? 一斉に開けましょう」

 

鮫島さんの合図で皆が包装紙を取った。

俺の選んだプレゼントは手のひらサイズのものだ。

大きめのを選んで持って帰るのが面倒だったのと、パッと目に入ったのがたまたまこのプレゼントだっただけだ。

中に入っていたのはドラゴンを模ったシルバーアクセサリーだった。

誰がこれを選んだのかすぐにわかってしまった。

 

「俺のを選んだのは空か」

 

「やっぱりヴァーリのだったか」

 

どことなくアルビオンに似ていたから選んだのではないだろうか。

 

「良い物くれてサンキュ」

 

「ああ」

 

さて、俺のが誰に渡ったのか探してみようか。

 

探す途中で誰がどんなプレゼントを貰ったのかが色々わかった。

 

「鉄アレイとか選んだの誰よ!?」

 

「それは私が選んだプレゼントだな」

 

「シグナム!? あんたねぇ! もうちょっとまともなもの選びなさいよ!」

 

「む、失礼な。その鉄アレイはだな、重さの調節が出来るのだ。子供の手に渡っても大丈夫なように考えた結果がこれなのだぞ」

 

アリサはシグナムさんから鉄アレイ貰ってかなり気に入らなかったようだ。

よく考えられている理由ではあるが、クリスマスプレゼントで女の子が貰って嬉しいものではないだろう。

 

「私のはフライパンですか」

 

「あ、それは私が選んだ奴なんや」

 

「はやてちゃんがこれを?」

 

「せや、これ使って料理の練習してみ」

 

「はいっ、ありがとうございます」

 

ネリネははやてからフライパンを貰っていた。

後日、ネリネが料理を作ってキッチンが原因不明の爆発が起こったのはまた別の話だ。

 

「これ……誰のだろ?」

 

「わぁ! 素敵な鍵っすね!」

 

「鍵、と言えば六喰さんでしょうか?」

 

どうやら俺のプレゼントはリコリスの手に渡ったみたいだ。水色のガラス細工の鍵を見て、これだ! と思わず衝動買いしてしまったのだ。

 

「リコリス、その鍵は六喰じゃなくて俺が選んだんだ」

 

『えッ!?』

 

すると、驚いたのはリコリスだけでなく、会場にいた人のほとんどだった。

 

そんなに反応することでもないと思うんだけど……。

 

「そっか。これ空君のなんだ。……えへへ」

 

リコリスが大事そうに鍵を握り締めていた。喜んでもらえてこちらとしても嬉しい。

 

「羨ましいっす……」

 

「……うん、そうだね」

 

傍にいたシアとネリネが未だに鍵を見てはニヤついているリコリスを羨ましそうに見つめていた。

鍵のプレゼントがそんなに良かったとは思いにもよらなかった。

 

皆、鍵が欲しかったのかな? 実際に使えるものってわけじゃないんだけどなぁ。

 

プレゼント交換のほとぼりが冷めない内に、他の催しもたくさん行われた。

夏休みの時みたく歌を歌い、勢い任せにカミングアウトしたり、大食い対決をしたりと大いに盛り上がった。

 

 

 

 

 

「今年は一段と盛り上がったなぁ……」

 

パーティーを途中で抜け出し、バニングス家の屋根の上で街を見下ろしていた。

色とりどりのイルミネーションが輝く街は幻想的だ。

恋人たちが寄り添いあい、幸せそうにしている光景に微笑ましく感じる。

寒い中、サンタの格好をした人達が一生懸命に働いているのを心の中で応援する。

 

「アハハ、今のはジジ臭いかな。―――え?」

 

しばらく同じような光景を見つめていると、不意にベルがリンリンとなる音が聴こえ、突然空から箱が俺の下に降って来た。

上を見てもそこには何もなかったのだが、気が付くと雪が降り始めていた。

 

 

 

『この一年頑張ったお主にご褒美だ。―――サンタより』

 

 

 

箱にはそんな言葉が書かれていた。

誰が渡してきたのか気になり、箱を開けた。中には青いマフラーが入っていた。しかもご丁寧に俺のイニシャルまで入れてある。

 

「サンタってホントにいたんだ……!」

 

温かいマフラーを首に巻き付けて、しばらくの間、雪の降り積もる街を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 


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