デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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ぐだってこーぜ! イェイ イェイ イェイ!

天下とろーぜ! ほら ノブノブ!

燃やしてこーぜ! イェイ イェイ イェイ!

ぐだぐだ本能寺!


なんか思い浮かんだズッコケ男道の替え歌。
多分自分と同じこと思い浮かべた人いますよね?






アザゼルの実験です!

アザゼルの実験です!

 

Side空

 

今日はヴァーリ、朱乃、黒歌、白音、凛祢、ティアと共に冥界の堕天使領に来ていた。

 

「良く来たな、お前ら。今日は俺の実験に付き合ってもらうぜ」

 

俺達を呼び出したのは堕天使の総督―――アザゼルだ。

見た目はちょい悪イケメンオヤジ。性格は女好きでヴァーリのためなら仕事をさぼりまくる親バカだ。あと厨二病。

 

「……おい、今俺のことをそこはかとなくバカにしなかったか?」

 

「してませんよー」

 

鋭いっ! 見た目と性格はともかく堕天使の長は伊達じゃないな!

 

「また馬鹿にされた気がするんだが……まあいい。こっちに来い」

 

アザゼルさんに付いて行き、研究室に入った。そこにはガラクタにしか見えないようなものばかりが部屋のあちこちに転がっていた。

 

「さっきまで実験してたから片付けしてねぇんだ。ま、適当に寛いでくれ」

 

『(この汚い部屋でどう寛げと?)』

 

寛げと言われても座るための椅子にすら変な道具が置いてある始末だ。

勝手に触って壊したら怒られるだろうし、下手すると爆発するかもしれないから片付けが出来ない。

 

「さてと、早速実験といこうぜ。最初はこれだ!」

 

そう言ってアザゼルさんが懐から取り出したのは黒い宝石が埋まった指輪だった。

指輪を取り出すときに、何故か青い猫型ロボットが秘密道具を取り出すときに流れるBGMが脳内に流れた。

 

「こいつはとある精霊の力が封じてあるんだ。……一応誤解が生まれる前に言っておくが、合意の上で精霊に力を貸してもらったんだからな」

 

「それで、そいつはどんな効果があるんだ?」

 

ヴァーリが作成過程云々はどうでもいいらしいのか先を促した。

 

「龍神家に住む精霊の力―――霊装が纏えるようになる力がある」

 

『!?』

 

人工的に精霊の力の一部を再現するとは途轍もなくすごい事だろう。

俺達の中でも凛祢が特にその道具に驚いていた。

 

「つっても夜刀神達の力とは別の精霊の力であくまで似せたもんだ。その上、纏ったら五秒で自動的に消える。俺自身が試したからな。おかげで全身にダメージが入ったぜ。これでもし人間か下級堕天使が纏ったら確実に死ぬな。ハハハハハ!」

 

『ダメダメじゃん!』

 

アザゼルさんは豪快に笑っているが五秒しか纏えないのなら失敗でしかない。いや、この場合は未完成と言うべきか。

 

「そこでだ。空、お前さんが使ってみてくれ」

 

「絶対に嫌ですよ!」

 

「なんでだよ!?」

 

「逆にこっちがなんでだよなんですけど! 大体、そんな危険なものを俺が使うと思ってる方が不思議なんですが!」

 

「いいじゃねぇかよ。死ぬわけじゃあるまいし」

 

「さっき、人間なら死ぬって言ってましたよね!?」

 

「お前は人間じゃないだろうが。だから多分大丈夫!」

 

「その自信はどこから来た!?」

 

「最悪死ぬが、運が良ければ全身骨折程度で済むだろ」

 

運が良くても最悪な結果でしかない!

 

俺は人間じゃないが、強さで言ったらアザゼルさんの方がまだまだ上だ。そのアザゼルさんが無理だったなら俺には到底無理なはずだ。

 

「頼むッ! やってくれたらなんかやるからよ!」

 

「結果次第ではそれを受け取ることなく終えるんですが!」

 

「そこをなんとか!」

 

アザゼルさんは両手を合わせて拝み倒してきた。

俺に頼んできたのは、俺が精霊の力を使うことを知っていることから、アザゼルさんに使えなくても俺にはもしかしたら使えるのではないかと考えたからだろう。

 

幽世の聖杯(セフィロト・グラール)があるから最悪の場合は何とかなる……かな?

 

不安な要素が多くてたとえ聖杯があっても安心はできない。それならば普通は断るのだが、ちょっとした好奇心が俺の判断を鈍らせている。

 

『興味が少しでもあるのならやってみたらどうだ? 案外イケるかもしれないぞ?』

 

ドライグが迷っている俺の背中を押してくる。

 

…………ま、何とかなるか。

 

指輪を受け取り、左手の中指に嵌めた。

 

「そんで、次に『闇の精霊よ、我は力を求める。汝の力を霊装と化し、我が力と成れ』だ」

 

この指輪を使うには中二病っぽいセリフを言わなくてはいけないらしい。まあ龍精霊化の時の呪文(うた)も同じようなものなのだが。

 

「『闇の精霊よ、我は力を求める。汝の力を霊装と化し、我が力と成れ』」

 

呪文を紡ぎ終えると指輪の宝石から黒い靄が吹き出し、俺の体にまとわりついた。何かを形成していくのだが、結局何にもならずにすぐに霧散してしまった。

 

「……失敗でしょうか?」

 

白音が小さく首を傾げながら呟いた。

 

「俺の時とは随分結果が違うが……まあ、こいつは失敗だな」

 

アザゼルさんも諦めがついたのか、俺から指輪を受け取ると机の中にしまった。

 

「よし、次だ」

 

気を取り直して、次の実験に移った。

アザゼルさんが取り出したのは掌にすっぽりと収まる大きさの少し分厚い円盤、いわゆるヨーヨーだった。

 

「名前はまだないが、このヨーヨーは魔力を流し込めば鋼鉄すらも砕く威力が出せるぜ」

 

恐ろしいな!

 

「魔力での実験は成功済みだ。今回試して欲しいことは黒歌の仙術を流し込む実験だ」

 

「私の仙術? ふうん、面白そうだし、やってみよっと♪」

 

黒歌がヨーヨーを受け取ると、ヨーヨーで遊びだす。

 

「相手の体に流し込む感覚でやれば楽に行けると思うぜ」

 

黒歌がアザゼルさんのアドバイス通りに仙術の気を流し始めたのか、ヨーヨーの動きが不規則なものに変わっていった。

 

「ハハハ♪ 楽しくなってきたにゃん♪」

 

調子に乗って来た黒歌はヨーヨーの動きを加速させ、俺達に当たるか当たらないかのギリギリのところにヨーヨーを飛ばし始めた。

 

「黒歌ちゃん、危ないわよ!」

 

「ダイジョーブだって―――――あ」

 

『ッ!?』

 

朱乃の忠告空しく、黒歌の手からヨーヨーがすっぽ抜け、白音目掛けて飛んでいった。

 

やばッ!

 

すぐに反応したが、気を流されていたヨーヨーは凄まじいスピードで飛んでいく。

 

間に合わ―――

 

「……気を付けなさい。下手をするとあなたの妹を殺すところだったのよ?」

 

白音に当たることはなく、ティアが片手でヨーヨーを掴み取っていた。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「謝るのは私にじゃないでしょ?」

 

「うん……。白音、ごめんなさい。朱乃も無視してごめん」

 

「……私はケガをしてませんから大丈夫です。ただし、あんな無茶はもうダメですからね」

 

「そうだよっ、黒歌ちゃん。今度は周りに気を付けてね?」

 

「うんっ」

 

「謝ることが出来たならよろしい。こんなものはもういらないわね」

 

「あっ、ティアマットてめぇ!」

 

ティアが掴んだままのヨーヨーを粉々に砕いてしまった。

 

「ちくしょう! シェムハザに隠れてこっそり作ったのによぉ……!」

 

『いや、仕事しろよ』

 

俺達全員から突っ込まれる。図星を突かれて何も言い返せないのか、「うぐっ……」と言葉を詰まらせるだけだった。

 

「う、うるせぇ! 次だ、次!」

 

開き直ったアザゼルさんがまたまた何かを取り出した。それは一本の刀だった。

 

「こいつは逆刃刀(さかばとう)だ。本来なら人が斬れないと言われてるが、こいつは人を斬ることが出来る」

 

『(それって普通の刀と同じゃない?)』

 

「人斬り抜刀斎とか飛天御剣流ってカッコイイよな。……何故漫画の世界だけで現実の世界にはないんだ!」

 

『知らないよ!』

 

どうやら人間界の漫画の読み過ぎなだけだった。

 

この厨二病総督は……!

 

見せびらかすためだけに出したのか、説明が終わるなりすぐに刀をしまった。

それからどんどんアザゼルさんの発明品を紹介された。

 

「魔王の攻撃に耐えるフライパン!」

 

『フライパンを料理以外の何に使うの!?』

 

実際に魔王の攻撃を試したのか!?

 

「嫌いな奴の名前を書き込むだけで簡単に呪いをかけられるノート!」

 

『デスノートのパクリじゃん!』

 

ある意味凄いけど!

 

「遠距離からの攻撃可能な小型衛星! 狙いが雑で使用者に当たる確率8割!」

 

『それはいくらなんでも雑過ぎるでしょ!?』

 

その大きさはなんとアザゼルさんの手のひらサイズ!

 

「これを食べれば今日から君も能力者! その名も悪魔の実! ……デメリットで一生泳げなくなるがな」

 

『そこまで忠実に再現したの!?』

 

このヒト、マジ凄いな!

 

「直接相手の脳内に語り掛けられるイヤホンマイク! ただし届く距離は半径1mにいる相手にだけ!」

 

『だったら普通に話せばよくない!?』

 

しかも念話があるからあまり欲しいとは思わないね!

 

「次で最後になっちまうが、こいつは期待していいぜ」

 

ツッコミの連続で息を切らす俺達の前に、アザゼルさんが自信たっぷりに懐から取り出したのは一丁の銃(?)だった。見た目はSF漫画に出てくるような形の銃だ。

 

「これはな……若返りの光線銃だ! こんなの作れちまう自分の才能が恐ろしいぜ……」

 

『ふーん』

 

「反応薄ッ!」

 

「だって俺達子供ですから」

 

「私、年齢とか気にしないし、その気になれば姿変えられるわ」

 

「私も霊力である程度は老化を抑えられるからあんまり興味はないかな……」

 

「お前らなぁ……! いいぜ、だったら今から試してやる。腰ぬかすなよ?」

 

銃の横にある部分を弄って銃口を俺に向けた。

 

「とりあえず五年分な」

 

五年分ねぇ……その頃の俺ってどんな―――あ、五年前って……!

 

「ちょ、ま―――」

 

慌てて気付くもアザゼルさんが引き金を引いて光線を浴びる方が速かった。

視界が白く染まり、意識が徐々に薄れていった。

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side凛祢

 

え……? え!? ええッ!? 

 

目の前の出来事に頭の整理が追い付かない。

視界に入るヴァーリ君達もかなり驚いていて、私と同じく困惑している。

 

こ、これはどうすればいいのかな!? 

 

空のいた場所には一人の空とそっくりの高校生ぐらいの少年がいた。

前とは違い、金髪ではなく黒髪のままだ。

アザゼルさんは五年分戻したと言っていた。それはつまり、空がこの世界に来たのは四年前。それより前は―――空が()()()()()()()()()()()()姿()だ。

 

「空が大きくなってる、だと?」

 

事情を知らないアザゼルさん達は成長したと勘違いしてるみたいだ。

 

「…………?」

 

空の五年前の姿―――桜木遥も私達と同じく困惑していた。

 

「えっと……初めまして。桜木遥です」

 

とりあえず自己紹介するんだね!? というかこっちは君の名前知ってるけどね!

 

自己紹介をされたのでこちらも一応自己紹介をしておいた。

ただ、一人一人の名前を聞く度に驚愕の表情を浮かべていた。それもそのはず。遥君の世界では私達は創作上の人物でしかない。そんな人物達が目の前にいたら驚くのも無理はないだろう。

 

「これは夢か? それともなんらかの理由でそういう世界に来た? でも原作の世界がそれぞれ……」 

 

私達に聞こえない程度にブツブツ一人で呟き始めた。といっても隣にいた私にはほとんど聞こえてる。

 

ってこんな悠長なことをしてる場合じゃないよ!

 

「アザゼルさん、どうやったら元に戻るの!?」

 

「じ、時間が経てば元に戻るはずだ」

 

「どれくらい!?」

 

「それは俺にもわからねぇ。個人差があるんだ。最長で一か月戻らない奴もいたしな」

 

一か月!?

 

「……アイツは何もんだ? 絶対俺より強いぞ。そういや、空は前世があるって言ってたか? となると、成長したんじゃなくて……前世の姿、か? おい、園神凛祢、その辺どうなんだ?」

 

う、やっぱり私に聞いてくるよね……。

 

「凄いね、ほとんどあってるよ。彼は空の前世の姿―――たったの四年前の姿なんだけどね」

 

「なるほどな……」

 

「前世? ……つまり、俺はこの先、何かしらの理由で死ぬってことですか?」

 

しまった! 本人の前で話すことじゃなかった!

 

あまりに唐突な出来事に注意力が緩んでいた。

 

「ああ、そうだ。そしてこの世界に龍神空としてやって来る……らしい。俺はその辺の詳しいことはよく知らん」

 

隠し通すことが出来ないと思ったアザゼルさんは正直に伝えた。

 

「そうですか」

 

だが、彼は自分が死ぬということに興味がないのか素っ気無い返答をしてきた。

 

「君は……死ぬことが怖くないの?」

 

「ううん、怖い。すごく怖い」

 

「じゃあ、どうして自分の未来が分かってるのに平然としていられるのかな?」

 

「だって、龍神空として生きるんだろ? ……この場合は生まれ変わる? ともかく、それだけでも十分じゃんか。そしたらきっとアイツらのところにまた戻れる。美桜達との約束を守れるから」

 

ああ、そうだ。彼は空の前世なんだ。こんな答え方をするに決まってるじゃないか。

 

「やっぱり君は凄いね」

 

「そう? まあ、これでも一応神様だから」

 

「おいおい、笑えない冗談だな……」

 

アザゼルは遥君の神様発言に頬を引きつらせていた。

 

「うーん、しばらくどうしよっかなー。戻るのにも時間が掛かるみたいだし、ここ最近は戦ってばっかだからたまにはゆっくりしますかね」

 

こういうのんびりしたところも空と同じだ。

 

「時間があるなら俺と戦ってくれ」

 

「ん? アハハ、いいよ。やろっか」

 

ヴァーリ君の頼みを笑いながら快く引き受け、堕天使領の誰も使っていない土地で戦うことになった。

 

「二人共準備はいいか?」

 

「ああ」「はい」

 

軽い準備運動を済ませた二人が向かい合っている。

ヴァーリ君はすでに禁手(バランス・ブレイカー)の状態だ。

一方の遥君は素手だ。

 

『以前の遥は空の体が弱かったせいで本気ではなかったが、今のアイツは体も本人だ。今回は本気を出せるだろうな』

 

ヴァーリ君のアルビオンが遥君の状態について述べた。

 

「さ、やろうか。白龍皇の力を見せてくれ」

 

「ああ、存分に見せてやるさ」

 

アザゼルさんが開始の合図を出すと、ヴァーリ君が高速で突っ込んで殴りかかる―――がそこに遥君はいなかった。そして、ひとりでにヴァーリ君の鎧が完全に砕けた。

 

『ッ!?』

 

ヴァーリ君の背後に彼はいた。

 

いつの間に……!

 

誰もが目を見開いた。彼の動きが全く見えなかったからだ。あの堕天使の総督や龍王の一角でさえもだ。

 

「子供にしては速い方だろうな。でも、まだまだ」

 

圧倒的な力量の差が二人の間には存在した。

ヴァーリ君は自身の持つ膨大な魔力を使って鎧を修復し、再び攻めた。今度は魔力による遠距離攻撃だ。

 

「……そういうことだったのね」

 

「ティアマットさん?」

 

隣にいたティアマットさんの呟きが気になった。

 

「私が空に惹かれた理由がようやくわかったわ。さっき自分が神だと言ってたけど、恐らく龍に関する神。私達龍種からすれば絶対的な存在になるわ。だから空に―――いいえ、桜木遥に惹かれたのね」

 

私達精霊は天照にそのことを予め聞かされていたから驚くことはない。

 

「それに白龍皇の彼、強い神格を持つ相手だと能力が発動しないのでしょ? 効く効かないの前に触れられるかどうかも怪しいところなのだけどね」

 

ヴァーリ君が遥君を攻め続けるが一度も攻撃を当てることが出来ていない。

空が上げた赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)も使い始めているが、遥君は涼しい顔で躱し、かすりもしない。

 

「倍加してもその程度か……」

 

期待外れとでも言いたそうな言い方だった。

 

「お前、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)は使えるのか?」

 

「いいや、使えない」

 

「そっか。じゃあ、ここまでだな」

 

遥君の右手に光が集まりだし、一瞬だけ右手がブレた。あまりに速過ぎてブレたようにしか見えなかっただけだろう。

何かが割れるような音に気が付けば、ヴァーリ君の鎧が綺麗に真っ二つにされていた。

 

「……今、アイツはなにしたんだ?」

 

アザゼルさんの疑問に答えられるのはこの場では彼だけだ。

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side???

 

 

 

―――感じる。初めて感じる力だ。

 

―――知りたい。長い時の中で初めて何かに興味を持ったかもしれない。

 

―――会いに行こう。その者の力を借りれば、我の悲願は確実に叶うだろう。

 

 

 

空間に裂け目を作り出し、力の感じる場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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