大変お持たせ致しました。
一日生徒会長です!
Side空
「人は出会いと別れを繰り返して成長してゆく生き物です!」
不帰の館の事件から三日が経った日の放課後、俺は座っていた椅子から立ち上がって、とある漫画の名台詞を模倣して語った。
『おぉ~!』
周りにいる四人の少女達から声が上がる。
「そんなわけで今から生徒会の仕事を始めまーす」
『はーい』
「……ところで君ら誰?」
メンバーの顔を見渡してから思ったことを口にした。
四人の少女の内の一人はフランなので知っているのだが残りの三人は初めて見る顔だ。
「わたしたちはジャックだよ。よろしくね」
銀色のショートカットの少女はジャック。
彼女の正体は日本では「切り裂きジャック」として知られているジャック・ザ・リッパーだ。
だが、切り裂きジャックの正体は不明な為、彼女の場合は生まれることを許されなかった子供達の集合体がアサシンクラスとなって現れたそうだ。
一人称が「わたし」ではなく、「わたしたち」なのも集合体であるからだろう。
「ワタシはナーサリー・ライムよ」
ジャックと同じ色の長髪を三つ編みおさげのツインテールにしている少女がナーサリー・ライム。
彼女もジャックと似ていて、実在する本が多くの子供に愛され、夢を受け止めてきたことによって一つの概念として成立し、子供達の英雄として英霊となったのだ。
「ジャンヌです!」
最後に、淡い金色の長髪をひとまとめにしている少女がジャンヌ。
伝承にあったジャンヌ・ダルクの人物像よりも大分幼いのは、成長した彼女が若返りの薬を飲んだことによって今の姿になったのだそうだ。
本来であれば英雄になっていない年頃のジャンヌなので彼女も実在しない英雄だ。
正式名称(?)はジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィというらしい。
「フランドール・スカーレットよ」
フランも自己紹介を済ませ、残るは俺だけとなった。
「龍神空だよ。よろしく。…………生徒会って何するんだろ?」
『さあ?』
互いの名前を教え合ったところで新たな疑問が生まれた。
少女達の頭の上にも疑問符が浮かんでいるように見えたので誰もわからないみたいだ。
そもそも俺達はある人に頼まれてここにいるだけなので無理もない。
「ふっふっふっ。それは私が答えてあげるわ!」
会議室の外から不敵な声が上がり、扉が勢いよく開かれた。
そこにいたのはIS学園の制服を着ている水色のショートカットの少女だ。
彼女の右手に持った開かれた扇子には“生徒会長”と書かれていた。
つまり、彼女が俺達をここに呼んだ人物であり、この学園の生徒会長―――
「それで生徒会長さん、俺達は何をしたらいいんですか?」
「違うわ、空君」
「えっと……何がですか?」
「今の生徒会長は私ではなくあなたなの! 何をやるかは自分で決めなさい!」
更識さんの言う通り、俺は一日だけ生徒会長を任された。
ちなみに、副会長がジャンヌ。会計がフラン。書記がナーサリー・ライム。庶務がジャック。
ただ、あえて言わせてもらうと、小学生三年生に生徒会長なんて荷が重い。いや、それ以前にわからないことが多過ぎるのだ。
唯一の救いは、この学園の行事が近くはないので、大きな仕事はないことだ。そんな余裕がある日だからこそ、生徒会長という仕事を任せてきたのかもしれないが。
自分で決めろ、か……。
「それでは改めて、これより会議を始めます。まず一つ目の議題です。―――――兄弟についてです」
『それ生徒会関係ないよね!?』
「ええいっ、五月蝿い! 生徒会長の出した議題に文句あるのか!?」
『逆ギレっ!?』
皆からの非難の視線を無視し、話を進める。
「皆には兄や弟、姉、または妹がいる?」
「私は姉がいるわ」
「わたしたちはいないよ」
「ワタシもよ」
「私には兄が三人、妹が一人います!」
フランとジャンヌには姉や兄弟がいて、ジャックとナーサリー・ライムにはいないそうだ。
二人は例外的な存在なので当たり前のことなのだが。
「俺も兄弟はいないよ。でも最近、可愛い妹ができたんだ。あと、兄さんって呼べる人もいるんだ」
妹とはユーリのことで、兄は士郎さんだ。……一応、恭也さんも兄ってことでいいか。
「で、この議題は終わりね」
『それだけ!? 短っ!』
「いや、ただ聞いてみたかっただけでオチとかなんもないし……あ、そう言えば、更識さんも妹がいましたね」
「ええ、いるわよ。とってもかわ―――」
「事情は分からないけど仲が悪いみたいだけどね」
「グハッ!」
更識さんが独りでに吐血した。
「なんでも言葉が足りなかった所為で酷く落ち込ませたと聞いたわ」
「そ、それは……」
「しかもIS一人で作ったことで余計に拗れたらしいですよ」
「でも、私だって無理なところは誰かに協力してもらって……!」
「その上、生徒会長で学園最強…………じゃないけど、仲が悪くなるには十分だよね」
俺がここに来る前に星花さんや藍さんに負けたそうだ。
ま、二人共転生者だから、是非もないよネ!
「…………」
うんうん頷いていたらいつの間にか更識さんが倒れていた。
「キャー! 生徒会長が倒れているわ!」
ナーサリー・ライムがわざとらしく叫んだことに俺も便乗することにした。
「な、なんだってー!? 一体誰が……」
「これは……事件ね」
「解決するのは難しいと思います……」
フランやジャンヌも乗ってきて妙に真剣な顔つきで呟く。
「犯人は誰かなー?」
ジャックはわかっているのかわかっていないのか定かではないが、場の流れに沿っていることに違いはない。
「こうなったら私達生徒会で犯人を捜すしかありませんね!」
『おー!』
ジャンヌの提案に俺達は拳を掲げ、状況整理から―――――
「犯人も何も全部あなた達の所為じゃない!」
倒れていた更識さんがガバッと立ち上がり、声を張り上げた。
『…………え?』
「なぜそこで首を傾げるの!?」
はて、俺達は何かしただろうか?
「俺達は普通に兄弟について話してただけですよ」
「あなた達姉妹の話はたまたまよ」
『うん、たまたまだよね』
「あなた達随分と仲が良いわね!」
「さて、次の話題にでも行こう。何かある?」
「ワタシ、お茶会がしたいわ」
『さんせーい』
ナーサリー・ライムの提案は話題、というほどでもないがお茶会で談笑するのもいいと思う。
「え!? 犯人捜しは!?」
『犯人は……口下手で不器用な姉です。……実に悲しい事件でした』
「グハッ!」
またしても吐血して倒れた。
心なしか更識さんの胸のあたりに『真犯人』と書かれた巨大な矢印が刺さったように見えた。
「さ、お茶会と言ったらお茶菓子と飲み物が必要だわ。用意しましょう!」
更識さんを無視し、食堂からお菓子を貰いにいくことになった。
『おばさーん、お菓子をくださいなー』
食堂のおばちゃんにお菓子を子供らしく
『ククッ……こんな子供っぽい空は中々見られんから実に面白いな! グハハハハ!』
『ちょ、ちょっとドライグ、あんまり笑うんじゃ…………プッ、ご、ごめん空……流石に私も……フフフッ』
中にいるドライグをはじめとして十香達精霊にまでも笑われた。
……べ、別にみんなと一緒だから恥ずかしくなんかないしっ。
「おやまぁ、可愛い子供達ね。……ああ、でもごめんなさいね。お菓子を上げたいんだけど、材料があるだけで何にもないんだよ……」
「そ、そんな……」
一番楽しみにしていたナーサリー・ライムは今にも泣きそうになり、ジャックやジャンヌもかなり落ち込んでしまった。フランも少しだけ残念そうにしていた。
「あ、材料さえあれば問題ないよ」
「! 空はお菓子を作れるの!?」
「そこそこだけどね。それに自分の手で作ってみるのも面白いと思わない? ナーサリー・ライム」
「盲点だったわ! 無いなら作ってしまえばいいのよ!」
悲しい表情から一転し、嬉しそうにはしゃぎだした。
「そんじゃ、皆でお菓子作ろっか!」
『おー!』
おばちゃんが微笑ましそうに見守る中、俺達五人はお菓子作りを開始した。
一時間程でお菓子作りを終えて、生徒会室に作ったお菓子を持ち運んだ。その後に紅茶を淹れてお茶会の準備は万端となった。
「楽しいお茶会の始まりよ!」
ナーサリー・ライムの号令でお茶会が始まった。
今回、俺達が作ったのはクッキーとショートケーキだ。
彼女達のお菓子作りには危なっかしい場面がいくつかあったが、そこは俺の腕でカバーした。
「ご自分で作ったお菓子はどうですか? お嬢様方」
『最高に美味しい!』
感想を聞くと、まったく同じセリフが満面の笑みと共に返って来た。
「あら? 美味しそうな匂い……ってお菓子じゃない」
「更識さんも食べます?」
俺達がお茶会を始めるまで更識さんはずっと倒れていたようだ。
「ええ、折角だからいただくわ」
更識さんも交えての楽しいお茶会となった。
お茶会後も生徒会の仕事は続いた。
「まだ何かしなきゃだめですか?」
「まだお茶会しただけよね!? ま、どうせあなた達は暇なんだからいいじゃない」
さっきのことをまだ根に持っているのか、ちょっとだけ拗ねた口調で更識さんは答えてきた。
「今度は何するのー?」
「誰かあるー?」
「うーん……あ、私、“ラジオ”というのをやってみたいです!」
突然閃いたジャンヌが意見を出してきた。
「じゃあ、それやろっか。次の生徒会活動は学内ラジオで決定!」
「いや、明らかに生徒会の仕事じゃ―――」
「今の生徒会長は更識さんじゃなくて俺ですぅ~! 決定権は俺にありますぅ~!」
止めに入る更識さんを遮って、生徒会長の権限を使って強引にラジオの準備を進める。
実際、子供五人が上目遣いで“お願い”しただけで放送部は快く承諾してくれた。
「うちの放送部使って準備させるって……私でもしたことないわよ……。しかも、結構本格的だし……」
準備が済んだ状況では更識さんは呆れるだけで止めようとはしてこなかった。
「ではでは~、本番入りま~す。さぁ~ん……にぃ~……いぃ~ち……すたぁ~と~」
本来の生徒会書記ののほほんさんの合図でラジオが開始した。
「IS学園生徒会のラジオ! 始まりまーす! 生徒、職員の皆さんこんにちは!」
『こんにちは!』
「今日は生徒会ラジオ、記念すべき第一回目です。パーソナリティは臨時生徒会長の龍神空がやらせていただきます」
「これ以降があるの?」
「多分ないよ。更識さんじゃやらないでしょ」
ポンコツ部分もあるが、基本的に真面目な性格な更識さんがこんなおふざけはしないと思う。
「あ、そうそう。この番組、人気次第では
『どっから!?』
「スピードワゴン財団」
その名前を出すだけで「あー……なるほど」と納得していた。
「ワタシ達が子供っぽくワイワイするか、媚びていればリスナーなんて釣り放題だわ」
「ナーサリー・ライムさん、リスナーを見下げた発言は控えましょうね!」
「あ、空君以外まだ自己紹介してません!」
「むっ、それは大事なことだね。じゃあ、フランからどうぞ。なにか一言あるといいって更識さんから指示が出てるよ」
「(そういうのは言わなくていいのよ、空君!)」
なんだかんだ乗り気な更識さんに咎められるような視線を向けられるが、無視してフランに自己紹介を促す。
「会計のフランドール・スカーレットよ。一言……そうね、私の年齢って495歳なの」
「ロリババアって奴?」
「ぶっ〇すわよ」
「放送コードに引っかかる発言もやめてましょうね! 今のは俺が悪かったけども! はい次の人!」
「生徒会副会長のジャンヌ・ダルク・オルタ・
『(うん、噛んでたね……)』
当の本人は顔を恥ずかしさの余り真っ赤にして俯いてしまった。
「えーっと……うん、まあ、そういうこともあるよね。はい、次の人!」
何を言ってもフォローにならなさそうだったので次に進めた。
「書記のナーサリー・ライムよ。本は良いものだから、たくさん読むといいわ」
「はい、最後!」
「庶務のジャックだよ。えっとね、好きなことは人間の解た―――」
「ジャックさん、それ以上は止めましょうね!」
「えー? どうしてー?」
「どう考えても放送コードに引っかかるから!」
「これで自己紹介は終わったわね。次は定番とも言える相談コーナーから行くのがいいのかしら?」
「そうだね。じゃあ、皆で順番にお便りを読んでいこう。最初は俺からやるね」
どこから用意したのかわからないお便りを更識さんから受け取り、読み始める。
「えー、ラジオネーム《ワンサマー》さんからのお便りです。『生徒会の皆さんこんにちは。実は相談したい悩みがあるんです。』ほうほうお悩みとな」
「悩み相談ってラジオっぽくていいわ!」
「『俺には彼女がいるんですけど、俺よりも料理が下手なのを気にしているみたいなんです。なんて言ったらいいかわかりません。どうしたらいいですか?』だって」
「練習あるのみじゃない? 私は料理なんてしたことないからその辺のことは知らないけど」
確かにフランの意見が一番だと思う。それとワンサマーさんとその彼女さんの料理の腕の差にもよるんだが。
「女尊男卑の時代でも料理ができる男の人はモテますからね。彼女さんはそこを気にしているのではないかと」
「なるほどね。他の人に取られるんじゃないかって心配してるんだ」
「それだったら、彼女に向かって『料理が出来なくたってお前を愛してる!』って言えば解決じゃないかな?」
「それがいいかな。皆は今のジャックの意見でいい?」
『問題なし!』
他の三人の賛成を得られたので悩みへの回答を伝えた。
「ワンサマーさんは彼女さんに『料理が出来なくてもお前を愛してる!』と言ってみてください。それと二人で一緒に料理してみるといいかもしれません。次のお便り行きまーす。フラン、お願い」
視界の片隅で更識さんがサムズアップしていたので十分な回答だったということだろう。
「ええ、任せて。ラジオネーム《ジョジョる男の娘》さんからのお便りよ。『男の娘であるせいで女性ものの服しか似合いません。でも、たまには男性の服も着てみたいです。男性の服が似合うにはどうしたらいいでしょうか? というか誰も着させてくれません』ね」
『そういう星の下に生まれたから諦めてください』
スタッフも含めての満場一致の即刻解決だった。
「次ね。ジャンヌ、お願い」
「はい! ラジオネーム《嘘吐き焼き殺すガール》さんからです。…………。……これはちょっと読むの遠慮したいです」
手紙を読み込むジャンヌの顔がみるみる青ざめていく。
どんな内容が書かれていたのか気になったので俺達も見ることした。
『うん、これは止めよう』
《嘘吐き焼き殺すガール》さんのお便りは見なかったことにして、別のお便りをジャンヌに呼んでもらうことにした。
「ラジオネーム《叛逆の騎士》さんからです。『父上と仲良くな―――りたくは別にないけどよ、少しはコミュニケーションを取りたいっていうか……別に仲良くなりたいわけじゃねぇから! そこんとこ忘れんなよ!』だそうです」
『(うわー、めんどくさい人だなー)』
俺達の顔がげんなりとしたものになった。
ラジオ放送だから顔を見られる心配がないことが幸いだった。《叛逆の騎士》さんが目の前にいたら怒られるか、気分を悪くさせてしまうだろう。
「……とりあえず毎日挨拶するのがいいんじゃない?」
「そうね。小さなことからコツコツとやっていけば、そのうち会話も増えていくはずよ」
「はい、回答は毎日挨拶していくといいかもしれません。《叛逆の騎士》さん、頑張ってください」
次はナーサリー・ライムの番だ。
「ラジオネーム《竜殺し》さんからだわ。『すまない。とある英霊にシグルドという人物と似ている所為で殺されそうなんだ。こんな便りを送るのは迷惑だとわかっているが助けて欲しい。本当にすまない』ですって」
「一大事じゃん!」
「あ、まだ続きがあったわ。『お前達のラジオ放送、期待してる』って」
『命狙われてるのに随分余裕だね!?』
「それで俺達はどうすれば……?」
「大丈夫。いつものことだから気にしなくていいわ」
『いつも命狙われてるの!?』
ナーサリー・ライムの口から零れた事実に驚きを隠せない。
つまり、顔を合わせるたびにその英霊に殺されそうになっているのを放置しているというわけだ。
「(その便りはもういいから、次行って)」
カンペで更識さんからの指示が伝えられた。
こくり、と頷いて受け取った次のお便りをジャックに渡した。
「ラジオネーム《ドイツの黒兎》さんからだよ。『恋愛相談を自分の隊の副官にしているのだが、今一効果が得られない。例えば、裸で私の嫁のベッドに潜り込んだり、スクール水着で迫ったりしている。間違いなのか?』だってさ」
『とりあえず、その副官は首にしましょう』
全員分回ったので相談コーナーはここまでとなった。
「続きましてお電話のコーナーです。だれに繋がるかは生徒会にもわかりません。その相手と生徒会でトークをしていきたいと思います」
更識さんからすでに誰かと通話中となっている電話を受け取る。
「もしもーし、IS学園の生徒会長です。こんにちはー」
『ハロハロー。初めましてだね、龍神空君。君たちのラジオは今聞いてるところだよ』
「ありがとうございます。お名前を窺ってもいいですか?」
『そうだね……《通りすがりの天災兎》とでも名乗らせてもらうよ』
「わかりました。《通りすがりの天災兎》さんは何か話したいことでもありますか?」
『君の持ってるデバイスとLBXとかいうものをたば―――この天災兎さんに見せてくれないかなー?』
LBXはともかくデバイスのことを誰かに説明したっけ?
LBXは一夏さん達との試合で使った後で説明もしたから誰かに知られても可笑しくはない。だが、デバイスに関しては誰にも教えた覚えはない。
『おー、驚いてるねー。フフン、天災兎さんは何でも知ってるんだよ。君の隣にいるフランドール・スカーレットが吸血鬼であることなんかもね』
声は出していないのに俺が驚いていることがわかっているらしい天災兎さんは、生徒会のラジオ放送をまるで見ているかのような口ぶりだ。
『それで? 君は私に協力してくれるかい?』
「いいですよ。でもデバイスはこの世界の人には役に立たないので見せるのはLBXだけです」
LBXも魔力が無いと使うことはできないが、仕組みだけなら教えても問題はなさそうだ。
『……わかったよ。じゃあ、今から行くね』
『え、今から?』
誰もが驚く中、通話が向こうから切られてしまった。
そして、五秒後には―――
「どどーん! 束さん到着ー! あ、実名言っちゃった。ま、いっか」
生徒会室の窓を何者かが蹴破って入って来た。
不思議の国のアリスのような服装に頭にはうさ耳のカチューシャが付けられていた。
「さあさあ、LBXをお姉さんに見せてみなさいな。大丈夫ダイジョーブ、怖い事なんてないからね」
「その言い方で信用度が一気に下がったんですが……」
「ちぇー、なんだよ。折角この束さんが優しい大人のお姉さんを演じてやったのにさぁ。原作では書かれないような描写が台無しじゃん」
俺の反応が気に入らなかっただめにいじけた天災兎さんもとい束さん。彼女はISの生みの親であり、箒さんの姉だ。
本来は宇宙開発用のために発表したISだったが、当時は誰も本気にしなかった。
そこで『白騎士事件』でISの有用性を示したところ、多くの国に評価された。
―――――兵器としての価値を。
これによって本来の目的から遠く離れた軍事兵器となってしまった。
条約で軍事利用の禁止とされているが軍が所持していては条約なんてすでに意味を成していないだろう。
しかもその上、理由は一切判明していないが、ISは女性にしか動かせない。その影響によって女尊男卑が広まっていったようだ。
「束さんは……世界が
「……ッ! ……お前みたいな勘の良いガキは嫌いだよ……」
細めていた目を少しだけ開け、眉間にしわを寄らせていた。
「……あー、なんか今ので興ざめしちゃったな。かーえろっと」
踵を返し、入って来た窓から学園を去っていった。
「思いのほか時間が経ったからラジオ放送はここまでにしまーす。ご清聴ありがとうございましたー!」
『ありがとうございましたー!』
途中でハプニングはあったものの、何とか無事にラジオ放送を終えた。
「ふぅ~、疲れた~」
「お疲れ様、皆。初めてのことだったけどかなり楽しかったわ」
疲れて椅子にもたれかかる俺達を更識さんが労ってくれた。
「今度はゲストでも呼んでやってみない?」
『やりませんッ!』