デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

82 / 118
元の時代に戻ります!

元の時代に戻ります!

 

Sideヴィヴィオ

 

アインハルトさんと二人でランニング中に他愛もない会話をしていた。

 

「二人して同じ夢を見るだなんて不思議ですよね~」

 

「はい、それに内容も不思議でしたね」

 

「私達が過去に行って小さいころのパパ達に会った。うろ覚えですけど、そんな夢でしたね」

 

「空さんやヴァーリさんと真剣勝負をして負けたのも夢……というよりは実際に体験したようにリアルでしたけど」

 

それは私も同じ。夢の中でパパとデートをしたことが本当にあれは夢なのか? というほどだった。

 

「おーい、二人共ー! そろそろ休憩!」

 

もうすぐゴールに差し掛かるところで、一人の男性が手を振っていた。

 

「あ、パパ! うん、今行く!」

 

待っていたのは私のパパこと龍神空だ。

走る速度を一気に上げ、パパに抱き着く。

 

「おっと、ヴィヴィオは甘えん坊だなぁ……」

 

「えへへ~♪ だってパパが大好きなんだもん!」

 

「ありがと。俺もヴィヴィオが大好きだよ」

 

「ヴィヴィオさん、汗をかいたのに抱き着くのはうらや……失礼ですよ」

 

「うわ!」

 

アインハルトさんに引き剥がされ、地面に尻もちをつく。

私が離れた隙に、アインハルトさんはパパとの距離を詰めていた。

 

「これからリオさんとコロナさん、ノーヴェさんも来るそうです」

 

「そうだろうと思って人数分のお昼ご飯あるからあとで食べて」

 

「はい、是非いただきます。それと……」

 

「ん? ああ、わかってる。時間があったら相手になるよ」

 

「ありがとうござ―――――キャア!」

 

アインハルトさんを突き飛ばし、パパの腕を取って歩き出す。

 

「パパ! 早く休憩しようよ!」

 

「お、おう……」

 

私達の()()()()()()()()に段々耐性が出来てきたのか、顔を引きつらせていた。

アインハルトさんもすぐに立ち上がり、私とは反対の方に並んで歩いていた。

 

「パパ!」

 

「どうかした? ヴィヴィオ」

 

 

 

「私、パパの娘になれて幸せだよ!」

 

 

 

Sideout

 

 

 

 

 

Sideトーマ

 

空さんのようにハーレム王になるにはどうしたらいいのだろうか……?

 

そのことで頭が埋め尽くされている。そもそも俺がハーレム王を目指すようになったのは、空さんへの憧れが一番だ。

不思議な夢を見て、(本人は間違いなく気が付いてないが)小さい頃の空さんはすでにハーレムを築いていたような気もする。

 

「おい、トーマ! 聞いてんのか!?」

 

身長が低いが俺の上司にあたるヴィータさんが、どこか上の空で聞いていた俺に怒鳴り散らす。司令室に呼び出され、何かの話をしていたようだがさっぱり聞いてなかった。

 

「聞いてません! それよりも空さんのようはハーレム王になるにはどうしたらいいですか!?」

 

「んなの知るか! アイツを真似るな! ……というかアタシの話を聞いてなかったとはいい度胸してるじゃねぇか……!」

 

「せやな、私もそれにはあんまり賛成は出来ないで……」

 

ヴィータさんだけでなく、その隣に座っていた八神司令にも反対されてしまった。

 

「なぜですか!? ハーレムは男のロマンだと思います!」

 

「いや、私は女だから知らんて……。そもそも、ハーレムを作るには条件みたいのがあるんや」

 

条件……だと……!?

 

「一つ目、複数人を養えるだけの財力が必要や」

 

た、確かにそうだ! お金がなければ食っていけないではないか! 今の俺は訓練生で稼ぎはまだまだ少ない! 階級を上げてがっぽり稼がねば!

 

「二つ目、ハーレムメンバー同士の関係を仲良く保つことや」

 

なるほど! 関係が悪いとハーレムどころではないということか!

 

「三つ目、その……こういう言い方はあれ何やけど……夜の営み。これ以上は何も言わないから」

 

その瞬間、体に雷が落ちたような衝撃が走った! そ、そうだ……肝心なことを忘れていた! ハーレムとはそういう関係になるということ! つまり、相手を満足させられないようではダメなのだ! こうなったらスタミナも付けないと……!

 

「あ、最後にこれだけは言っとくで―――――空君はモテようとしてモテたんじゃない。空君だからモテたんや」

 

「え? よくわからないんで―――――」

 

詳しく聞こうとしたら八神司令の携帯端末に連絡が入った。

 

『はやて、今いい?』

 

「え、空君!? う、うん、大丈夫やで!」

 

なんと相手は空さんだった! 

 

急に乙女の顔つきになった八神司令にヴィータさんは頭を抱え出し、両隣にいたアイシスとリリィがひそひそ話をしていた。

 

「要件は?」

 

『デートのお誘いだよ。もうじきはやての誕生日だからね』

 

「そのデート、絶対に行く! もし仕事があってもヴィータに押し付ける!」

 

「アタシかよ!?」

 

『あ、アハハ……別にそこまでしなくてもいいんだけど。じゃあ、デートの日取りはそっちが好きにしていいから。はやての方に合わせる方が楽だからね。じゃあ、またね』

 

「うん、またね。………………ハッ!」

 

連絡を終えた後で俺達の存在を思い出し、顔を真っ赤にしていた。

 

「コホン……あー、なんか気分が上がって来たわー。誰かちょうどいい相手が……お、そう言えばこのあと高町隊長が来るんやったなぁ……。よし、上官のプライベートを覗いた三人への罰として私と高町隊長を相手に戦ってもらおっか」

 

『なんて理不尽な理由だ!』

 

このあとの確定した絶望に白目になりながら、司令室を出ていく。

 

あれ? 結局、何の話で呼ばれたんだっけ?

 

ふと思い出したが、そこまで大事な話じゃなかったのだろうと思い、戦闘準備を始めるのだった。

 

 

 

「ハーレム王に、俺はなる!」

 

 

 

『トーマ、ちょっと訓練前の運動に付き合ってくれる? あ、拒否権なんてないから安心してね』

 

あれ? これ、戦闘前に死ぬパターン?

 

Sideout

 

 

 

 

 

Side空

 

「……ん……あれ? ここは……あ、エルトリア―――」

 

目が覚めると知らない部屋のベッドで寝ていた。

 

「―――のアミタとキリエ達の家だ」

 

小さなドライグが枕元で俺に続くようにして教えてくれた。

 

「この星は元通りになった?」

 

「ああ、お前によってこの星は救われた。……無茶したおかげで一週間も寝ていたがな」

 

「そっかぁ。うん、良かった良かった。―――――え? 一週間!?」

 

腕に付けられていた点滴を抜いている最中に告げられたことに驚きの声を上げた。

 

「星一つを救うということは、龍精霊化以上に力の消費が激しいに決まっているじゃないですか! それなのに……!」

 

「わ、悪かったよ。でも、治せたんだから――――」

 

「そういう問題じゃありません!」

 

「……はい、ごめんなさい」

 

ヤハウェに珍しく怒られた。無茶をしたことが相当許せないようだ。

 

これは反省しないと後が怖いな……。

 

「ところで、話は変わるけど十香達は?」

 

「あいつらならエルトリアの復興を手伝っている」

 

死蝕を治したと言っても、死蝕によって生まれた魔獣が消えるわけではないし、壊れたものが戻るわけではない。そう言ったことで十香達が力を貸しているのだろうと結論付けた。

 

「俺も手伝う―――――おろ?」

 

俺のお腹が鳴った。

 

「はぁ……一週間何も口にしていないんだから腹が空いてるに決まっているだろ」

 

やれやれ、と言わんばかりにアルビオンが呆れていた。

 

「腹が空くのは元気な証拠だ。これでも食っておけ」

 

九喇嘛の隣には小型の冷蔵庫みたいなものがあり、中にはおにぎりがいくつか入っていた。形が一個一個不規則なのからすると複数人で作ったのだろう。

 

「お前がいつ目覚めてもいいように十香達が用意していたもんだ」

 

九喇嘛に教えてもらい、電子レンジを使ってホカホカのおにぎりを食べ始めた。

おにぎりの具が一つ一つ違ったので、一週間ぶりの食事はそこそこ楽しめた。

 

「ごちそうさまでした」

 

気が付けばあっという間に食べ終えていた。

 

「さーてと、腹ごしらえも終わったことだし、外に出よっか」

 

ドライグ達を連れて部屋を出て、出口までの案内をしてもらって家の玄関の扉を開けた。

 

「おおっ!」

 

視界に一杯に映ったのは、自然豊かな世界だった。一週間前まで荒れ果てていたのが嘘のようだ。

 

「なんか……こんな景色を見ると、死蝕なんて無くて元からこうだったんだぞー、俺がしたことはただの夢なんだぞー、って思っちゃうよ……」

 

「それはわからんでもない。だが、お前がやったことは紛れもない現実だ。誇りに持て、とは言わんが、お前が救った世界をその眼に焼き付けておくといい」

 

実際、俺一人では無理だった。聖槍の力はヤハウェのものだし、何故かはわからないが、最後に俺が力尽きかけた時に力が溢れてきた。

 

あの声、誰だったんだろう……。誰かは知らないけど、助けてくれてありがとうございます。

 

力を貸してくれた謎の声に心の中で感謝をして、ふと目に入った川に向けて歩き出した。

 

「天使様!? 目が覚めたのですね!? 良かったです!」

 

歩いてる途中で後ろからやって来たアミタさんが、俺の顔を見るなり、両手を上げて喜んでいた。

 

「あ、皆さんにも連絡しないと! 博士! キリエ! 天使様が目覚めました!」

 

連絡を終えるなり、アミタさんは俺を抱きかかえて先ほどいた部屋に入った。折角外に出たのに戻されてしまったことに多少不満があったが、心配をかけたのだから仕方がないと思い、何も言わないことにした。

 

「天使君が目が覚めたってホントなの!?」

 

「あ、キリエさん。おはようございます」

 

「よ、良かった~! 天使君が目を覚ました!」

 

部屋の扉を力強く開けて入って来たキリエさんは、目を覚ましている俺を見て余程安心したのか、その場で座り込んで泣き出してしまった。

 

『空(さん/だーりん/少年)!』

 

キリエさんに続いて十香達が雪崩れ込むように入って来た。

機械の体のキリエさんとは違い、人間の体の十香達は大粒の汗を額に浮かべていた。

知らせを聞いてから、それだけ急いで戻って来たのだろう。

 

「おはよう、みん―――――どわっ!」

 

十香達にタックル……ではなく、抱き締められた(抱き締められるというよりはもみくちゃにされるの方が合っているだろう)。

 

前にも無茶して目が覚めたらこんな感じだったっけ……。

 

皆の輪から何とか抜け出したら、扉の付近に白衣を着た男性がいた。ここに来た時に見た男性―――――グランツ・フローリアン博士だ。

 

「君が私を若返らせ、この星を救ってくれた人でいいのかな?」

 

「らしいです」

 

未だに実感が湧かないので他人事のように答えた。

 

「ありがとう。無茶をした娘を助けてくれて、死ぬはずだった私を救ってくれて、そして、この星を―――――エルトリアを救ってくれて、本当にありがとう!」

 

それなのに、博士は白衣が汚れるのも気にせず土下座をした。

どうして日本の独特の謝り方を知っているのか問いただしたいところだが、今はそれどころじゃない。

 

「あ、頭を上げてください!」

 

男性の頭を無理矢理持ち上げて立たせる。

 

「だが、君には……」

 

「えっと、俺は人として当然のことを……」

 

この言葉はおかしいな。俺、人間じゃないし、星を救うのは当然というか滅多にないからね。

 

「たまたま……」

 

たまたまで星一つが救えるとかギャグ漫画かよ。

 

「キリエさんとアミタさんの故郷を救いたいという想いに感銘を受けまして……」

 

これだ! と思ったが、なんか嘘くさいな……。

 

「俺、天使なんで!」

 

うん、これだね!

 

「“これだね!” じゃないわよ、アホ!」

 

ようやくまともな(?)セリフが思いついたので言ってみたら琴里に頭をはたかれた。

 

「……もういいじゃないですか。この星は救われた。博士も元気になった。めでたしめでたしのハッピーエンドなんですから」

 

「それではダメだ! 君には返しきれない恩が出来てしまったんだ! 私に出来ることなら何でも言ってくれ!」

 

「私も博士と同じです!」

 

「私もよ」

 

「元居た時代に帰していただければ十分です」

 

「その準備なら一日で終わった! いつでも君達を帰すことが出来る! だが、それだけでは足りない!」

 

早ッ! しかも足りないって……。

 

困ったことになってしまった。どうやったらこの三人が納得いくのだろうか。

 

「あー……じゃあ、作って欲しいものがあるんですけどいいですか?」

 

「何だい!? なんでも作ってみせよう! 超絶美少女(ロボット)のお嫁さんだって問題ない!」

 

『それはいらない。作ったらソレぶっ壊すから』

 

軽く暴走しかけてる博士を十香達が冷たい声音で物騒なことを言って止めた。

キチンと俺の要望を伝え、完成するまでの間はしばらくこの家に滞在することになった。

 

 

 

 

 

エルトリアが元に戻ってから二週間ほどが過ぎた頃、博士に頼んで作ってもらったものが完成した。

時々手伝いもしたが、高度な技術過ぎてついていけないことがほとんどだったので、キリエさんやアミタさんに勉強を教えてもらいもした。

時折、魔獣の討伐や復興の手伝いもした―――のだが、この星に残っていた人々に俺のしたことが知れ渡っていたらしく、崇められたり、供え物を渡されたり、挙句の果てには銅像まで建てられそうだった。

 

「これが君に頼まれていたものだ」

 

「ありがとうございます!」

 

博士から完成されたものを受け取り、帰り支度を済ませる。

 

「よーし、帰ろっか!」

 

ドライグ達や十香達を俺の中に入れて、草原に立つ。

キリエさんとアミタさん、博士だけにしか伝えて無かったのだが、知らぬ間に残っていた全員が俺の見送りに来ていた。

ゲートを上空に開いているので、あとは通るだけだ。

 

「行ってしまうのですね……」

 

後ろには悲しそうな顔をするアミタさんとその隣にはキリエさんと博士がいた。

 

「いつまでもここにいるわけにはいかないですから」

 

帰る場所があるんだから、帰らないと皆に怒られちゃうよ。

 

「寂しくなるわね」

 

アミタさんを茶化すのかと思っていたが、キリエさんも同じように別れを惜しむ表情をしていた。

 

「だったら、また来ればいいじゃないですか」

 

「ですが、時間移動は……」

 

「遊びに来る程度なら大丈夫ですよ」

 

「フフフ、そうね。その時はまたあなたのお家に泊めさせてもらうわ♪」

 

「ぜひ歓迎します。だから“さよなら”じゃなくて―――――“またね”!」

 

飛行魔法で浮かび上がり、ゲートに向けて加速していく。

 

「天使様!」「天使君!」

 

「はい―――――ッ!?」

 

あと数mのところで二人に呼び止められた。

忘れ物でもしたのかと思って後ろを振り向いた瞬間に両頬に温かいものが触れた。

 

『んなッ!?』

 

「あ? え? へ? い、今の……」

 

「またお会いましょう!」「またね~!」

 

トン、と軽く押され、何か言おうとする前に二人はそそくさと俺の傍を離れていき、俺は二人にされたことに呆けたままゲートに吸い込まれていった。

通るときに発生する痛みで我に返ったのは言うまでもないが。

 

Sideout

 

 

 

 

 

Sideアミタ

 

「ああああああああああああああッ!」

 

天使様が居なくなってすぐのこと。とあることに気が付いた。

 

「ど、どうしたの、アミタ!?」

 

「大変ですよ、キリエ!」

 

「一体なにが大変なの?」

 

絶対にしてはいけないことを私達はしてしまったのだ。

 

「天使様を送った時代の座標を間違えていたんです……!」

 

「な、何ですって……!?」

 

流石のアミタも内容が内容だけに焦りを隠せないでいた。それも当然のことだ。なにせ恩人を元の時代に帰すのではなく、―――――()()()()()()()()()に送ってしまったのだから。

 

恩を仇で返すような真似をして申し訳ありません、天使様! この命に代えてもあなた様を絶対に助けに行きます!

 

決意を胸に、彼を助ける方法を探し始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 








次回、エイリアンマンさんの『スタンド使いの男の娘のIS人生』とのコラボ始まります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。