デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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ガチンコ対決です!

ガチンコ対決です!

 

Side空

 

アースラのトレーニングルームの真ん中でヴァーリとアインハルトが向かい合って立っていた。

俺達は二人の邪魔にならないように上から眺めている。

 

『よろしくお願いします』

 

『こちらこそ』

 

『二人共準備は良いみたいだね。それじゃあ、戦闘始め!』

 

二人が挨拶を交わして、エイミィさんが戦闘開始のブザーを鳴らした。

ヴァーリはすぐさま上昇し、禁手(バランス・ブレイカー)を使う。その間、アインハルトは何もせずに眺めているだけだった。恐らく、ヴァーリの本気が見たいがために敢えて何もしなかったのだろう。

 

「パパはこの勝負どっちが勝つと思う?」

 

「ヴァーリ」

 

ヴィヴィオの質問に自信をもって答えた。

 

『(……即答とか、どんだけヴァーリ大好きなんだ……)』

 

皆から変なものを見るような視線を向けられられた気がした。

 

「どうしてそう思うの?」

 

「白龍皇の半減の力はアインハルトじゃ、相性最悪……というか、誰に対してもチートを発揮できるからね」

 

能力の効果がないのは神格を持つものくらいだ。効いたとしても魔王や神王にはまだまだ勝てないだろうけど。

 

《Half Dimension‼》

 

ヴァーリが半減する空間を展開するとアインハルトの速度が下がる。しかし、魔力強化を使い、一気に速度を上げてきた。予め、魔力強化を抑えることで半減されたときにすぐに対応できるようにしていたのかもしれない。

 

『考えは悪くない。だが、甘いな』

 

この三か月、ヴァーリは強くなっている。今のアインハルトのような手段をする相手のことを考えないはずがない。

大量の魔力弾を生成し、放つ。

最初の内はステップを踏んで躱したり、拳や脚で撃ち落としていたが、徐々に対応しきれなくなり直撃した。

 

《Divide‼》

 

そして、半減の能力が発動。

 

『ッ!?』

 

皆が驚いてるのも無理はない。白龍皇の力は普通なら相手に()()触れなければならないのに、能力が発動したからだ。

この技は未完成もいいところで、欠点は当然存在する。通常の能力とは違って、一回の攻撃に付き一度しか半減出来ない。でも、そこのところは物量でカバーしているので、魔力量の多いヴァーリにとっては欠点になっていない。

 

「空さん、今のはどういうことなんですか?」

 

質問してきたトーマ以外のメンバーも聞きたそうにしていた。

 

「種明かしをするとね、ヴァーリは魔力に上乗せして半減の能力を発動させたんだ」

 

一見、簡単そうに聞こえるが、能力を飛ばすということは実際にやってみるととても難しい。

ちなみに、俺の場合は元からそういう仕組みで作られている禁手なので、ドラグーンから出る射撃が当たれば発動できるようになっている。

 

『覇王! 空破断!』

 

アインハルトが碧銀の衝撃波を放つが、半減された状態ではヴァーリに届くころにはそよ風となっていた。

接近して攻撃するも、遅すぎて簡単に躱される。

ヴァーリのパンチがアインハルトの腹に入り、吹き飛ばされた。

 

『降参するか?』

 

『いいえッ、まだです……!』

 

床から立ち上がり、構えなおした。

その眼は死んでいなかった。それどころか、より強い輝きをオッドアイの瞳は持っていた。

 

「頑張れ、アインハルトー!」

 

そんな姿に心を動かされて、つい大声で応援してしまった。

俺の声が聞こえたらしいアインハルトは、(恐らく俺に向けて)小さく笑ってから、再びヴァーリに視線を向けた。

 

『……空さんに応援されたのであっては、そう簡単には負けられませんね』

 

『勝てると思ってるのか?』

 

『勝てるかどうかじゃありません……―――――勝ちます!』

 

アインハルトが気合を入れて発すると共に彼女を中心として碧銀の魔力の暴風が吹き荒れる。

やがて風が集まりだし、アインハルトの両手に巨大な龍の顎、背中に二対四枚の翼を形成した。

 

「あれはアインハルトさんの奥の手―――――覇王・天龍嵐舞。……パパの技を真似たんだけどね」

 

元になったのは、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を纏った時に使う技、紅天龍撃拳を放つときに出る炎の翼だろう。

 

俺と戦ったときにも出して欲しかったよ。

 

『行きます!』

 

半減されてまともな速さが出ない自らの足ではなく、背中の翼を羽ばたかせて発生した風を蹴ることによって体を移動させた。

接近を許すまいとヴァーリが魔力弾の雨を降らすが、アインハルトの周りで吹き荒れる風が弾き飛ばす。

そして、ついに攻撃の届く範囲までの接近を許してしまった。

 

『せいッ!』

 

アインハルトが右ストレートを打ち込む。ヴァーリは左に躱したが鎧の至る所に亀裂が入った。完全に躱したと思っていても、高圧縮された風が鎌鼬となり、攻撃になったようだ。

攻撃を完全に躱しきるには、かなりの距離をとらないといけないだろう。

 

『まだです!』

 

風を蹴っての移動方法は魔力強化しているときよりもずっと速い。

またしてもヴァーリは接近を許し、怒涛の連撃がアインハルトの拳から繰り出される。直撃は避けているが、拳が振るわれる度にヴァーリの鎧の亀裂が広がり、ついに―――――

 

『はあッ!』

 

粉々に砕け散った。しかも、鎧に一度も触れることなくだ。逆に言えば、ヴァーリに一度も致命傷を与えられていないことにもなるが。

鎧を砕かれたことによってヴァーリの素顔が露わになった。だが、その表情は鎧を壊されたことを気にした様子が感じられない、いつも通りのものだった。

 

『鎧なら空に何度も壊されてる。今更驚くことじゃない』

 

特にこの三か月の間は俺の龍精霊化の特訓もあったので、一日に十回以上は壊れていたと思う。

 

『それに鎧だけが俺の使うことのできる技じゃない』

 

左手に赤い籠手を出して右腕で刀を抜くように引き抜くと、刀身に緑色の宝玉が埋まった赤い大剣になった。

 

『……そちらも使っていただけるとは光栄ですね』

 

赤龍帝の力を見て、畏怖どころか歓喜に満ち溢れていた表情だった。

 

『『はあああああああああああッ!』』

 

二人同時に駆け出し、二人の叫び声と大剣と拳が衝突。

決着が着いた。

 

 

 

 

 

「チート過ぎですよ……倍加。半減もですけど……」

 

俺の背中に背負われているアインハルトが愚痴を漏らした。

それに賛同するかのように、周りの皆も頷いていた。

 

「ま、二天龍は強いから、落ち込む必要なんてないさ。アインハルトはまだまだ若いんだからこれからだよ」

 

軽く励ましてからアインハルトを長椅子に寝かせる。

 

「次は誰が戦うの?」

 

「トーマ君とシグナムさんだって」

 

俺の質問になのはが答えてくれた。

当の本人達はすでにトレーニングルームに立っていた。

トーマはすでにリアクトをしてる状態でシグナムさんもレヴァンティンを構えている。

 

「トーマのあの格好ってヤンキーみたいだから、見た目だけで言ったら完全に悪役だよね」

 

銀髪に黒い服。赤い痣が肌全体に出ている。

 

「パパ、それ本人も気にしてると思うから言わないであげてね」

 

ヴィヴィオのお願いに素直に頷き返し、始まった試合を見ることにした。

 

『行くぞ! アヴェニール!』

 

シグナムさんが先手を取り、魔力の斬撃を連続で四つ放つ。

 

『危ないかもだよ、トーマ!』

 

『任せろリリィ! その幻想ぶった切る!』

 

色々ツッコミたいセリフを叫びながら大剣を四回振るう。

ガラスが割れるような甲高い音はせず、大剣に触れた斬撃は静かに消えていった。

 

『私の攻撃を消し去った……? フッ、面白い……面白いぞ、アヴェニール!』

 

『(リリィ、やべーよ。シグナムさんがめっちゃ喜んでるよ……)』

 

『(勝負が着くまで止まるわけがないよね……。とりあえず、頑張ろ?)』

 

楽しそうに笑いながら攻撃するシグナムさんに対し、それを防いでいるトーマの表情はどんどん青褪めていく。

 

『飛竜一閃!』

 

素早くカートリッジをロードして、剣から連結刃に変わったレヴァンティンを技名通りに一閃。

 

『銀十字!』

 

銀色の十字架の付いた本が開かれ、大量の紙がトーマの周囲にばら撒かれる。

「あれで防げるのか?」と誰もが思った。そして、その結果はすぐにわかった。ばら撒かれた紙の一枚一枚が小さな爆発を起こし、連結刃の軌道をずらしたのだ。

 

ああいう防ぎ方もあるのか。

 

連結刃の攻撃は不規則で動きが読み辛い。トーマはそれを下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる作戦で防いだというわけだ。

 

「流石は未来の俺の弟子。ドヤァ……」

 

『ハーレム王に、俺はなる!』

 

『トーマ、あとでちょーっとお話ししようか』

 

『え゛っ? ってグアアアアアアアッ!』

 

独り言をつぶやいてドヤ顔でいると、決着が着いた。―――――トーマの負けという形で。

 

あ、あれぇ~? 結構善戦してたと思うんだけどなぁ……。まあ、最後の方にハーレム王になるとかなんとか言ってたけど、戦闘中にそんなこと言ってたらそら負けるよね。

 

「流石は未来の俺の弟子とか言ってドヤ顔かましてたけど、その弟子負けてるよね。今どんな気持ち? ねぇ、どんな気持ちなのかな? 教えてよ、パパ」

  

「……相手が戦闘狂(シグナムさん)だから仕方がないんだよ。それに育てたとはいっても勝てるとは言ってないし」

 

完全な負け惜しみとわかっていながら、ヴィヴィオは生温かい視線で受け止めていた。

 

そもそも最後はトーマが悪い!

 

「パパがそう言うならそういうことにしといてあげるよ」

 

グヌヌ……ッ! 娘に上手を取られるとは……何たる不覚!

 

『星奈ちゃん! 次は私達の番だよ!』

 

『はい、ナノハ。あなたに勝ってヒロインの座でもいただくとしましょう』

 

『絶対に上げないよ! 空君のヒロインは私だもん!』

 

『べつに私は“空”のヒロインとは一言も言ってませんよ』

 

『~~~~~ッ!』

 

『まあ、そんな座はいりませんが』

 

ん? 俺が唸ってるうちに話が進んでた?

 

いつの間にかなのはと星奈がトレーニングルームに立っていた。シグナムさんは椅子に座って休憩していた。トーマはリリィにどこかに引きずられていった。悲鳴っぽいのが聞こえたけど、多分違うだろうと思い気にしないことにした。

 

「この試合はどっちが勝つと思う?」

 

「うーん、ギリギリ……なのはかな」

 

「理由は?」

 

「互いに使えるものは同じ魔法。だけど、なのはには加えて覇気がある。そこが分かれ目かな。ギリギリって言ったのは星奈は頭の回転が速いから、そこに苦戦するんじゃない?」

 

試合は二人の魔力弾のぶつけ合いから始まった。

なのはのアクセルシューターと星奈のパイロシューターは同じ魔法のようだ。厳密に言うと、なのはの魔法を星奈がコピーしてるようなもの。

 

「これは……星奈の魔法には炎熱変換が入ってるのか!」

 

ユーノが驚きの声を上げた。

俺が前に戦ったときには、炎熱変換が使う素振りはなかった。この三か月の間に覚えたのだろう。

 

星奈が変わってるなら他の二人もかな?

 

あとに戦う二人をチラリと見てから、試合に視線を戻した。

なのはが星奈にディバインバスターを撃ったが、星奈が撃ったブラストファイアーで相殺。しかし、その後に次なる砲撃が星奈から放たれた。

慌てて回避したなのはに更に砲撃が飛んできた。

ブラストファイアーの三連射目だ。

 

二連……いや、三連射!?

 

星奈の成長は俺の予想を遥かに上回っていた。

回避が間に合わないとなのはは判断し、プロテクションで防いだ。

 

『すごいね、星奈ちゃん。今のは危なかったよ』

 

『ありがとうございます。今ので落とす気でいたので、耐えられたのは少し残念です』

 

『にゃははは。悪いけどそう簡単には落とされないよ!』

 

そこから二人は互いに砲撃や射撃をしては相手にされてを繰り返し、最大の一撃で決着をつけることにした。

 

『全力全開!』

 

『疾れ、明星(あかぼし)。すべてを焼き消す炎と変われ』

 

『スターライトォッ! ブレイカーァッ!!』

 

『真・ルシフェリオン……ブレイカーッ!』

 

桜色と赤色の砲撃がぶつかり合った。あまりの眩しさに直視できなくなり、両手で顔を覆った。

 

 

 

 

 

「ホントにパパの予想通りになったね!」

 

「星奈の成長に驚かされたから、途中から外れるかもって思ってたけどね」

 

勝者はなのはだった。俺の予想通りギリギリ、という形でだ。

 

『空に続いて、オリジナルのナノハにも負けてしまいましたか……』

 

『今回は運が良かっただけ。次やったらどうなるかわからないよ』

 

『言われなくとも次は勝ちます』

 

倒れていた星奈が立ち上がり、なのはが近づいて手を差し出した。

なのはの意図をすぐさま理解した星奈は自らも手を差し出して固い握手を交わしたのだった。

 

 

 

 

 

『さあ、僕と勝負だ! ヘイト!』

 

『もうっ、私はヘイトじゃなくてフェイトだってば!』

 

『そんなことよりも勝負だ!』

 

『ううっ……名前……』

 

元気一杯な美雷に対し、フェイトは名前を呼んでもらえなくて落ち込んでしまった。

本日四度目のエイミィさんの開始の合図で、二人は電光石火の動きで戦いだした。

フェイトのはソニックフォーム。美雷のはスプライトフォーム。

どちらも速さに重点を置いているせいで防御が脆い。一撃でも喰らえばひとたまりもないだろう。

 

「すごく速い! 目で追えないよ!」

 

その速さに驚いてるのは未来組だけで、毎日のように見ていた現代組に反応はなかった。

 

『僕の方が強いぞッ!』

 

『力は……ねッ!』

 

腕力では美雷がフェイトよりもやや上回っているらしく、フェイトが押され気味だった。

でも、フェイトは負けている部分を技で補うことで攻撃を防いでいた。

 

『むむッ! なかなか攻撃が決まらないな……』

 

『ゴリ押しで勝てるほど私は甘くないよ』

 

『ふふん! そんなこととっくに知ってるさ! 空と戦って嫌というほど思い知らされたからね!』

 

途端に美雷の攻撃に変化が起こる。

三か月前とは違い、速さと力任せの戦法ではなくなり、フェイントや魔力を巧みに使い、フェイトを翻弄する。

 

頭で考えるよりも、本能で戦ってる方が近いのかな?

 

『うん、良い攻撃だね。―――――でも、私には通じない』

 

美雷の攻撃はフェイトには届かなかった。美雷のデバイス―――バルニフィカスを上に弾き、バインドで拘束。

 

『まだ終わってない!』

 

フェイトの勝ちが決まったと思いきや、力づくでバインドを壊した。

 

うわーお。なんちゅーバカ力。

 

美雷は手からなくなったデバイスに目もくれず、素手でフェイトに飛び掛かる。

 

『ひっさーつッ! エターナルサンダーパンチ! 相手は死ぬ!』

 

雑ッ!

 

必殺名を叫びながら電気を纏った拳をフェイトに振るう。フェイトはそれを―――正面から受け止めた。美雷と同じく電気を、それと武装色の覇気を纏って。

 

『なん……だって……!?』

 

『これで終わりだよ』

 

バルディッシュを振り下ろしたことで試合の勝敗が着いた。

 

 

 

 

 

「負けたー!」

 

皆のところに戻って来た美雷がフェイトに負けて余程悔しかったのか、声を上げた。未来に勝ったフェイトは隣で微笑ましそうにしてる。

 

「ヘイトは強いなー」

 

「そんな変な名前の人知らない!」

 

 

 

 

 

『〈なあなあ、空君は私と王様どっちが勝つと思ってんのや?〉』

 

トレーニングルームに入ったはやてが念話で聞いてきた。リインフォースさんとはすでにユニゾンをしてる状態だ。

 

「〈ごめんね、ここははやてって言いたいんだけど、ちょっと不利かな〉」

 

正直に言うと、はやてにとって夜空は強敵だ。魔法も戦闘センスもほとんどが上回っていると思う。

 

『〈やっぱしか……魔法は皆ほど覇気もまだ教わったばっかやし、そら仕方ないわ〉』

 

「〈はやて……でも―――――〉」

 

『〈せやけど! 負けていい理由にはならんのや! 私は自分に出来る精一杯で勝利をもぎ取ったる!〉』

 

「〈……そっか。じゃあ、勝ったら……ご褒美あげよっか? なーんて―――〉」

 

『〈よっしゃッ! 絶対に勝って見せるで!〉』

 

ありゃ? やる気がすごいや。今更冗談でしたー、なんて言ったら……うん、やめておこう。はやてのやる気が無くなっちゃうかもしれないからね。……終わった後に言ってもダメな気がするのはどうしてだろう?

 

不思議な問いかけを考えることを中断し、二人の試合を観戦する。

 

「お? 意外と押してる……?」

 

「パパ、さっき念話で何か言ったの?」

 

俺が黙っていたから念話をしていたのか分かったのだろう。

 

「え? あ、うん。勝つのは厳しいだろうけど勝ったらご褒美上げるよーって軽く言ったんだ」

 

「(あー、それが理由か……)パパ、頑張ってね」

 

「?」

 

何を頑張ればいいのかさっぱりなので、とりあえずはやてと夜空のどちらも応援することにした。

 

『ブリューナク!』『エルシニアダガー!』

 

二人の魔法は同時に発動された。

魔力弾がぶつかり相殺。

 

『墜ちるがいい、子鴉!』

 

はやてが接近戦を苦手なことを知っているのか、夜空ははやてに接近してデバイスのエルシニアクロイツをはやての頭目掛けて振り下ろした。

 

『そう来ると読めてたで!』

 

待ってましたと言わんばかりに、自身のデバイスで攻撃を防いだ。

そして、杖を持つ手を片手に持ち替え、空いてる手に青い球体を作り出した。

 

『螺旋丸!』

 

腹部に螺旋丸を当て、吹き飛ばした。

 

『グアッ!』

 

はやては自分でも理解してる弱点を利用して、逆に相手に大きなダメージを与えた。

螺旋丸を使うことが出来たのは、俺から魔力蒐集したからだ。リインフォースさんがいるのも大きいだろう。

 

『今のは空の技か。ならばこちらは……倍加だ!』

 

夜空の魔力が一気に膨れ上がる。

 

『なッ!? その技がどうして使えるん!?』

 

『フン。我は貴様を素体として生まれたマテリアルだぞ? 貴様をコピーしているのだから、我が貴様と同じ魔法を使えることは何ら不思議でもあるまい。現に、シュテ……星奈や美雷もオリジナルと同じ魔法を使っておったではないか』

 

三人の技名はオリジナルであるなのは達と違っているが、魔法自体は同じだ。

夜空の場合、はやてを基にしているマテリアル。夜天の書に記録されている膨大な魔法データを夜空が持っていてもおかしくはない。

 

『使える魔法は互いに同じ。勝敗を決めるのは使い手の腕次第ということです、主』

 

『せやな! 私ひとりじゃ無理でも、リインフォースが一緒ならきっと勝てる! 〈てなわけで、空君の応援があると嬉しいなぁ……なんて〉』

 

応援すればいいの?

 

「頑張れ、はやて、リインフォースさん! 夜空も負けるな!」

 

『『『……え?』』』

 

三人の動きが固まった。(リインフォースさんはユニゾンしているから、多分というのが前に付く)

 

『ちょ、空君!? なんで向こうも応援してんのや!?』

 

「え、だって、どっちにも頑張ってもらいたいから」

 

ダメだったのかな?

 

『貴様に応援されなくとも我が勝つに決まってる! ……だ、だが、まあ……その……応援は嬉しかったぞ』

 

『何を急にヒロインぶってんのや! それにツンデレはアリサちゃんだけで十分や!』

 

「どういう意味よ、はやて! 私はツンデレなんかじゃないわよ!」

 

『わ、我はべつにヒロインぶってはおらんしツンデレでもない!』

 

『ツンデレの人は皆そう言うんや!』

 

『ええいッ、喧しいぞ子鴉! 紫天に吼えよ、我が鼓動! 出よ巨獣! ジャガーノート!』

 

『倍加! からの、響け! 終焉の笛! ラグナロク!』

 

白と黒の砲撃がぶつかる。ただでさえ威力が高い砲撃魔法なのに、そこに倍加が加わっている。ここが頑丈なトレーニングルームではなく、どこかの次元世界だったなら、周囲は跡形もなく吹き飛んでいただろう。

 

 

 

 

 

「どれも凄い戦いだったね~」

 

はやてと夜空の試合は引き分けという形で終わった。

試合に勝てなかったのでご褒美は無しになり、はやては美雷以上に悔しそうな顔をしていた。

試合後は夜空、星奈、美雷、ユーリ、未来組の三人を連れて龍神家に帰ってきた。今はヴィヴィオと二人で俺の自室で話しているところだ。

 

「そうだね。今日はもう休んで、デートは明日でいい? それでその次の日が元居た時代に帰るってことで」

 

「う~ん、ホントはもうちょっとここにいたいけど、そうも言ってられないもんね」

 

未来から来た人が過去に関わり過ぎると、未来が変わってしまうかもしれない。それを理解してるヴィヴィオは残念そうにしながら納得してくれた。

 

「明日のデート楽しみにしてるからね!」

 

ヴィヴィオが俺の部屋を出ていった。

そのままベッドに横になると、余程疲れていたのか睡魔が一気にやってきてすぐに意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 






アースラでの出来事。
正座してるトーマと彼の前で腕を組んで仁王立ちしてるリリィがいた。

「トーマ、「ハーレム王に、俺はなる!」ってどういうことかな?」

「り、リリィ、一旦落ち着こう」

「私は至って冷静だよ。さ、どういうことなのか説明して」

リリィの声音は低くて冷たい。顔は笑顔でも眼は笑っていない。

「そ、空さんに憧れて……美女・美少女が周りにたくさんいて羨ましいって思いました!」

「他に言いたいことは?」

「男ならハーレム目指すの当然だと思います! だから、ハーレム王に―――ウギャアアアアアアアアアアアッ!」

再び、宣言をしようとしたトーマを(物理的に)遮った。
アースラ中にトーマの絶叫が響いたが誰も聞かなかったことにした。







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