デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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未来からの来訪者です!

未来からの来訪者です!

 

Side空

 

皆、真面目に聞いてほしいことがあるんだ。

 

 

 

――――突然、空から女の子が降って来た。

 

 

 

って言ったら信じる? ……おい、今誰だ笑ったの。嘘じゃないから! ホントのことだから! しかも二人だから! 妄想乙とか言うな! ありのまま起こったこと話してるだけだから! ……何が起こっているのかはさっぱりなんだけど。

 

「あ、あのー……大丈夫ですか……? なんだか、すごい表情してますけど。(あれ? この顔、誰かに似てる……)」

 

金髪オッドアイの少女に心配される。歳は同じくらいだろう。傍にはウサギが浮いてる。

 

この子、オリヴィエさんに似てるな……。

 

その本人は家で万由里と一緒にいて、珍しいことに俺と共にいない。

 

「もしかして、現地の方でしょうか? (この方……誰かに似ているような……?)」

 

もう一人は碧銀の髪でオッドアイの少女だ。歳は俺よりも年上に見える。彼女の傍にも猫? 虎? みたいなのが肩に乗っかっていた。

 

「だ、大丈夫です。それから、俺はこの街の住人です。名前は空。龍神空っていいます」

 

『え……!? パパ(空さん)!?』

 

「……………………は? パパ?」

 

『パパァッ!?』

 

ドライグ達も驚きの声を上げる。

 

……物凄く聞き捨てならないことを聞いてしまったんだけど。

 

ともかく、今はそれよりも先に彼女達の事情を優先して聴くことにした。

 

 

 

 

 

「えーっと……つまり、君達は未来から来たってことでオーケー?」

 

「はい、私達の話を合わせるとそうなるかと……」

 

頭の痛い話だ。

彼女達がいた時代は新暦79年。俺のいる時代は(ブレイブ調べで)新暦66年。

要するに、彼女達が未来から転移したのは間違いないらしい。

 

異世界じゃなくて、異世界の未来からか……。

 

彼女達は学校の帰りでいきなり頭上が光ったと思ったら、海鳴市の上空に転移していたそうだ。

二人はこの世界の住人ではないらしく、ミッドチルダの学校に通う生徒。

碧銀オッドアイ――――――右眼が紫で左眼が青――――――の少女の名前は――――アインハルト・ストラトス。

 

そこまではまだ許容できる。それよりも……もう一人の子だ。

 

そして、それ以上に頭が痛いのは金髪オッドアイ―――――右眼が緑で左眼が赤―――――の少女だ。

彼女の名前は――――()()ヴィヴィオ。

未来の俺の娘……らしい。

 

「パパの九歳の頃ってこんな感じだったんだ~。私よりも年下なのに頼りになりそう!」

 

「そうですね。それに、未来の空さんはカッコいいですが、こちらは可愛い、と言った方がしっくりきます」

 

そんなこと言われて、どう反応しろと?

 

『未来から来た人と関わると未来が変わる可能性もありますが、最悪六喰さんの能力で記憶を封じてしまえば問題なさそうですね』

 

「(あー、なんかの本にそういうの書いてあったっけ……)」

 

ヤハウェが言った通り、最悪の場合記憶を封印してしまえば大丈夫だろう。

 

さてと、先ずはこの二人をどうするか……なんだけど。

 

「俺と一緒に――――――!」

 

『!』

 

一緒に来てもらおうとしたら、先程と同じような魔力反応をここからそう離れてはいない地点から感じた。

 

「また、私達と同じように誰か来るのかな……?」

 

「それはわかりませんね。ですが……」

 

アインハルトさんが俺の方を窺ってくる。

 

「一応、確認しないとね。悪いけど二人も来てくれる?」

 

『うん(はい)!』

 

二人は元気よく返事を返してくれた。

 

「九喇嘛、行くよ!」

 

『応ッ!』

 

両手を合わせて九喇嘛の魔力を引き出す。すると、体が橙色の魔力に包まれ、黒いラインや勾玉が刻まれる。

 

「うわっ、九喇嘛モード!?」

 

「いつ見ても綺麗で明るいですね」

 

二人は未来で知ってるのか。

 

「飛ばして行くよ!」

 

二人のそれぞれ違った感想を聞きつつ、魔力の腕を作って二人を優しく包み込み、走り出す。

 

 

 

 

 

反応があってから一分もしないで目的地に到着した。九喇嘛の力を解除して、二人を地面に離す。

 

「は、早い……!」

 

「俺の中で最速だからね」

 

「それなのに、全く酔いませんでした。流石は空さんです」

 

「そう? 気を遣うのは当然でしょ? それが女の子なら尚更じゃない?」

 

『(そういう気遣いがフラグ建てるんだろうな……)』

 

ん? なんか二人が一瞬遠い目をしたような……。

 

「あ、パパ、あそこに誰かいるよ!」

 

ヴィヴィオが指で指示した方向に少年と少女がいた。

 

「うん、わかった。わかったからパパは止めてね」

 

「え、なんで? パパはパパでしょ?」

 

「いや、俺はまだ子供だから。パパって言われるような歳じゃないから」

 

未来から来たヴィヴィオからすれば俺はパパなんだろうけど、今の俺は子供。

 

「じゃあ、なんて呼べばいいの? 空? 空君? 空さん? うーん、どれもイマイチだからパパがいい!」

 

これは何を言っても無理そうだ。出会って間もないけどそう悟った。

 

「でしたらヴィヴィオさん、私のことは()()と呼んでもいいですよ」

 

真顔でサラリとすごいこと言い出すアインハルト。

 

「アハハ、ちょっと何言ってるのかわからないですね、アインハルトさん。良い病院紹介するんで行ってきたらどうです?」

 

ヴィヴィオは誰もが可愛いと思える笑顔で話しているが、その目は全然笑っていなかった。

 

「ヴィヴィオさんは相変わらず恥ずかしがり屋さんですね。私はいつまでも待ってますよ?」

 

「ありがとうございます。そのまま墓に入るまでずっと待ってください」

 

「冗談がお上手ですね、ヴィヴィオさん」

 

「アインハルトさんこそ」

 

『アハハハハ』

 

この雰囲気、なんか触れない方がいいな……。うん、シカトしよ。

 

未だにおかしな空気を醸し出す二人を置いて、新たにやって来た二人に近寄る。

少年は茶髪。少女は長い銀髪だ。背丈からして歳は俺達よりもいくつか離れているだろう。

 

「すいませーん!」

 

声をかけると、二人はこっちを向いて目を大きく見開いていた。

 

「え、子供……って、え!?」

 

「トーマ! あの人ってまさか!」

 

「多分間違いないよ、リリィ! あの人は間違いなく―――――」

 

二人は互いに顔を見合わせてから俺の方に視線を戻し、口を揃えて言った。

 

『空さんだ!』

 

どうやらこの二人もヴィヴィオとアインハルトと同じく、未来からやって来た人達のようだ。

 

 

 

 

 

「―――――というわけ」

 

現時点で分かっていることを二人――――トーマ・アヴェニールとリリィ・シュトロゼックに説明した。

 

トーマって名前、なんだか幻想ぶち壊しそうだよね。それにリリィさんの声、明日奈と似てる気がする。

 

「となると、俺とリリィはヴィヴィオ達よりも更に先の時代から来たということか」

 

「どうやったら戻れるのかな?」

 

「……やけに落ち着いてますね」

 

普通なら混乱するようなことを言ったのに、この二人があっさり受け入れたことに少々驚いている。

 

「え? だって空さんに、『どんなときでも冷静でいるというのは無理だ。でも、諦めるな、考えることを止めるな』って言われたことですよ? ……ってまだ出会ってない空さんなら知らないのも無理ないですね」

 

「俺、あなた達とどんな関係なんですか?」

 

「お、俺なんかに敬語は止めてくださいよ! 空さんに敬語を使われると違和感があるんで!」

 

トーマに恐れ多いと言わんばかりに両手を大袈裟に振られた。

 

「まあ、そういうことなら……。それで関係はどうなの?」

 

「俺の恩人で師匠です!」

 

恩人で師匠? 未来の俺は戦い方でも教えたのかな?

 

「私にとっても恩人で師匠……というよりは学校の先生みたいなのかなぁ?」

 

「学校の先生?」

 

「あ、リリィは普通の人間じゃなくて生命体型リアクトプラグと呼ばれるものなんです。この時代で言えば……ユニゾンデバイスが近いですかね」

 

「ふーん、そっか。未来だとそこまで進んでるんだね」

 

簡単に言えば、ユニゾンデバイスの未来版。

それ以上のことを知ってしまうと、未来に影響を及ぼしそうなので、二人について聞くのはそこでやめにした。

 

「ねぇねぇ、パパは未来のこともっと知りたいとか思わないの?」

 

ヴィヴィオが不意にそんなことを聞いてきた。

確かに知りたくないと言ったらウソにはなるが、下手に聞いて未来に影響が出るのは避けたい。

それに―――

 

「未来のことを先に知ったって面白くないじゃんか。わからない今を精一杯生きるからこそ、人生は楽しいんだと思うな」

 

「……パパらしいや」

 

ヴィヴィオの声は呆れが混じっていたが嬉しそうだった。

 

「ですね」

 

アインハルトはそれに同意していた。

 

「流石です!」

 

「やっぱり空さんはすごい!」

 

トーマとリリィに関しては尊敬の眼差しを向けていた。

 

「未来でどうだかは置いておこうか。今は四人が帰る方法を探さないといけない」

 

これは俺の勝手な想像だが、キリエさん、アミタさんの二人が今回の鍵を握ってる気がする。

 

「それとこれは強制じゃないんだけど、君達の存在を他の人にバレたくない。だから、俺の家にしばらく泊まってくれる?」

 

『うん(はい)!』

 

四人は俺の提案に即賛成してくれた。

今、龍神家にいるのは精霊とオリヴィエさん、シエラぐらいだろう。

そう考えて移動を開始したとき、目の前から二人近づいてきた。

 

「……ヴィヴィオとアインハルト?」

 

にしては服装と体格が違う気がする。

 

「パパ、あれは私達が変身した状態だよ」

 

変身? 仮面ライダーや戦隊ヒーローみたいなこと出来るんだね。

 

「それにしても、同一人物が二人……? あ! 〈皆、聞こえる!?〉」

 

『〈どうかしたか?〉』

 

皆、と言っても、反応したのは雄人とヴァーリ、あかりだけだ。

他にもいるはずのなのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずか、愛衣、明日奈はまだ寝ているみたいだ。

 

「〈今回も前回のときのように偽物って出会ってる!?〉」

 

『〈ああ、会ってる。出会ったのはシグナムと雄人の偽物だった。雄人の偽物は頑丈じゃなかったな〉』

 

ヴァーリはすでに遭遇したようだ。

 

「〈そっか。ありがと〉」

 

聞きたいことが知ることが出来たので、通信を終える。

 

「今回はどうやら俺達の偽物がいるみたい」

 

「俺達の偽物ですか?」

 

「うん。だから、むこうにいるヴィヴィオとアインハルトも偽物で間違いないよ。二人はここにいるわけなんだから」

 

「それならとっとと偽物倒しちゃおう! セイクリッド・ハート!」

 

「アスティオン!」

 

「リリィ!」

 

「うん!」

 

『セーーット! アーーーップ!』

 

ヴィヴィオとアインハルトのが眩い光に包まれる。

 

「リアクトッ!」

 

「オンッ!」

 

トーマの体にリリィが光の粒子となり、入っていく。

 

「モード黒騎士!」

 

『ディバイダー、セット!』

 

数秒して光が収まると、身長の伸びたヴィヴィオとアインハルト、トーマは銀髪になり、赤い痣が体に浮かんでいた。さらに三人共服装が変わっていた。

 

ヴィヴィオとアインハルトは拳、トーマはメカメカしい黒い大剣が武器か。

 

「んじゃ、俺も変身しよーっと。――――赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)禁手化(バランス・ブレイク)!」

 

《Welsh Dragon Balance Breaker‼》

 

いつも通り、髪やバリアジャケットが赤く染まる。

 

「九喇嘛モードに続いて、ドライグの禁手(バランス・ブレイカー)だ!」

 

『空の娘は俺のことも知っているのか』

 

そりゃ、九喇嘛を知ってるんだから、ドライグも知ってるだろうよ。

 

「(娘はやめてくれよ。……確かに娘なんだろうけど)」

 

自分の娘と言われても違和感しかない。

 

「さあ―――――」

 

()達の戦争(デート)を始めよう!』

 

いつもの戦闘前の台詞を他の誰かと一緒に言うことは今までなかったので、ちょっと驚いた。それと同時に新鮮でいいな、とも思った。

 

 

 

 

 

偽物との戦闘はあっさり終わった。そもそも戦力が五対二という時点でほぼ決まったも同然だ。

それに加え、今回の相手はヴィヴィオとアインハルトの偽物。(本人達の希望で)本人同士でやらせ、隙を見て俺が倍加した力を譲渡、トーマが援護。それだけで決着がついた。

 

「覇王・断空拳、か……」

 

覇王イングヴァルトの技。アインハルトは戦闘中にその技を使った。とどのつまり、彼女は覇王の――――

 

「ファンだったのか」

 

「違います」

 

ノータイムで否定された。

 

「パパ、アインハルトさんは覇王イングヴァルトの末裔なんだよ。先祖返りとして眼の色や身体能力が受け継がれることがあるらしいんだ。しかもその時の記憶を少し持っていてね、その記憶の中から技を習得したんだって」

 

先祖返り。そう言えば、オリヴィエさんの写真は見たけど、覇王の写真は見なかったな。

 

「へぇー、じゃあ、ヴィヴィオもオリヴィエさんと関りがあるわけだ」

 

『…………』

 

あ、あれ? 皆、急に黙ってどうしたんだ? 俺、地雷でも踏んだ?

 

「詳しくは言えないけど、私はアインハルトさんとはちょっと違うんだ……」

 

むむむ、これはかなり複雑な事情があるみたいだね。

 

「無神経なこと聞いてごめんね。さ、ここが俺の住む家だよ」

 

『でかッ!』

 

ヴィヴィオを除く三人が驚愕していた。ヴィヴィオが驚かなかったのはここに来たことがあるからだそうだ。

四人を中に入れて、リビングに案内した。

 

「む、空。帰ったのだな!」

 

リビングでは精霊達が全員いた。夕飯前だったようだ。

 

「ただいま、十香」

 

「うむ! おかえりなさいなのだ! む? 後ろにいるのは誰だ?」

 

「アインハルト・ストラトスです。お邪魔します」

 

「トーマ・アヴェニールです!」

 

「リリィ・シュトロゼックです」

 

「龍神ヴィヴィオです!」

 

「龍神……? もしや空と関係してるのか?」

 

「はい! 私はパパの娘です!」

 

あ、バカ。

 

しかし、もう遅い。

 

『……は? はあああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!?』

 

夜中の街に少女達の声が木霊したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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