デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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姉妹喧嘩はほどほどにしましょう!

姉妹喧嘩はほどほどにしましょう!

 

Side空

 

ある日の休日。

七罪と互いに背中を預けながら本を読んでいた時に、クロノから連絡が入った。

 

『空、緊急事態だ。地球に未知の魔力運用技術の反応をキャッチした。急いで調査に向かってくれないか?』

 

「りょーかい。他の皆は?」

 

『僕は別の仕事が入っていて当分は行けそうにない。その他も管理局で仕事をしているものがほとんどだ。すまないが、現状は君達でどうにかしてくれないか?』

 

「わかった」

 

クロノとの通信を終え、出かける準備をする。

 

「……あまり無理すんじゃないわよ。空がケガするとわた……四糸乃が悲しむから」

 

素直じゃないなぁ……と思いつつも七罪なりの優しさに思わず笑みが零れる。

 

「うん、行ってくる!」

 

その場でセットアップして、転移魔法陣を展開した。

 

 

 

 

 

 

転移した先で近くに魔力反応を探知したので、そこに向かってみると二人の少女が言い争っていた。

片方はえんじ色の髪を三つ編みにしていて青い服を、濃いピンク色の髪の方は緩いウェーブがかかっていて赤い服を着ていた。

二人の話を遠くから倍加をした視力と聴力でこっそり聞いてみると、えんじ色の髪の少女は“アミタ”という名前で、ピンク色の髪の少女はアミタの妹で“キリエ”という名前だと分かった。

 

「なるほど、妹の非行を姉が説得しようとしてるってことか」

 

きっと、妹さんは盗んだバイクで走りたい年頃なんだろうね。

 

《簡単に言うとそう見えますが、実際もっと根深いものだと思います》

 

「んー、もう少し様子を……っておい! いきなり戦闘始めちゃうんですか!?」

 

様子を窺おうとしたら、二人は戦い始めてしまった。

アミタさんの方が押してると思いきや、いきなり動きが遅くなった。

 

「ブレイブ、今のは……?」

 

《恐らく、攻撃の中に動きを妨害するものがあったんだと思います》

 

そのまま、動けないアミタさんの隙をついて、キリエさんはどこかに転移してしまった。

 

とりあえず、アミタさんの状態を確認しないと。

 

「すみませーん」

 

「は、はい!」

 

「ケガ、大丈夫ですか?」

 

「え、もしかして今の戦闘見ていたんですか?」

 

「はい、流石に家族のことに踏み込むわけにはいかないので様子を見させてもらいました。……いきなり戦いになったときは驚きましたけどね」

 

本来ならば止めるべきだったのだろうが、事情を聴かずに止めて「ただの喧嘩でした」なんて言われたら恥ずかしい思いをするだけだ。

 

「す、すみません……」

 

怒っているわけじゃないが、さっきの会話から考えると真面目な性格であろうアミタさんはシュンと縮こまってしまった。

 

「それで一応事情聴いてもいいですか? 踏み込むつもりはなかったんですけどただの姉妹喧嘩には見えなかったもので」

 

「すみません! 事情を説明したいのですが、当方時間がありません! 私は妹を―――――キリエを止めないといけないのでこれで失礼します!」

 

え?

 

事情を聴こうとしたら逃げられ―――――ることはなかった。

何かに阻害されるように彼女の動きが止められた。

 

この人、妹さんに動きを阻害される弾を当てられてなかったっけ?

 

「えーっと、もし良かったら治しましょうか?」

 

「出来るんですか!? それでしたらぜひお願いします! あ、でも……治癒術かAC93系の抗ウィルス剤が必要なんです」

 

ウィルス剤……? そんな薬知らないんだけど……まあ、とりあえず聖槍を使えば治せるはず。

 

黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)禁手化(バランス・ブレイク)!」

 

「眩しい……! って、え!? なんですかその姿!?」

 

眼を開けた先にいた俺の姿が変わっていたことにアミタさんはひどく驚いていた。

 

「詳しいことは言えません。でも、これならあなたを治せます。―――――聖槍龍の奇跡(ヘブンズ・ミラクル)!」

 

六対十二枚の黄金の翼が少女を包み込み、十秒ほどで解放した。

 

「体調はどうですか?」

 

「……う、ウソ……治ってる……? 一体……」

 

「そんなことよりも妹さん追わなくていいんですか?」

 

「ハッ、そうでした! ありがとうございました! このご恩は一生忘れません! ――――()使()()!」

 

元気になると、アミタさんはもの凄い勢いでキリエさんが去っていった方向に飛んで行った。

 

「て、天使?」

 

『いや、その姿はどう考えても天使だろ』

 

それもそうか。

 

ドライグ達の呆れながらツッコまれて納得した。

 

《マスター、追わなくていいのですか?》

 

「追うよ」

 

アミタさんを追いかけだした。戦闘を考慮して倍加は使わずに追いかけた。

 

 

 

 

 

 

俺がアミタさんに追いついたのは、アミタさんがキリエさんに追いついたのよりも数秒遅れだった。

キリエさんははやてとリインフォースさんと話していたようだ。

 

「アミタ!? どうして動けるのよ!?」

 

「そこの天使様に治してもらいました!」

 

アミタさんが俺を指差す。

 

「なに余計なことしてくれてんの!?」

 

キリエさんが俺に憤慨するがさらりと受け流す。

 

だって、助けてって言われたから助けただけだから俺は悪くないよね。

 

《マスター、空の様子がおかしいです》

 

ブレイブに言われて上を見上げれば、天候が不安定だった。

 

あれは、まさか……!?

 

そして、ついに姿を現した。

 

「ふふふ……ははは……はーっはっはっはッ! 黒天に座す闇統べる王! 復ッ! 活ッッッ!」

 

銀色の髪に緑色の瞳に黒いバリアジャケットを纏った少女。

 

「漲るぞパワァー! 溢れるぞ魔力ッ! 震えるほど暗黒ゥゥッッ!」

 

その少女とは三か月前に出会い、戦った。

 

「久しぶり、王様!」

 

はやて似の少女に手を振りながら近づくと、向こうは気が付いてくれてた。

 

「む? 我を呼ぶその声は……空、貴様か。それに我のオリジナルに融合騎と……あとはなんだ、その頭の悪そうなのと頭の固そうなのは?」

 

「空君の言った通り、ホンマに私そっくりやなぁ……」

 

「ですね。双子と言われても信じてしまいそうです」

 

「ちょっと! 頭の悪そうなのって私のこと!? 確かにアミタは超が十個着くくらい頭が固いけども!」

 

「キリエ!? あなたなに言ってるんですか!?」

 

姉妹喧嘩を始めた二人をよそに王様に話しかける。

 

「三か月前の宿題覚えてる?」

 

「もちろんだ。ちゃんと考えてきたぞ」

 

「おおっ、そっかそっか! じゃあ、聞か―――――」

 

「その前に我と戦え。生まれ変わって手に入れた、王たるこの身の無敵の力! 貴様に見せてやる!」

 

瞬間、王様から黒い魔力が溢れ出す。それだけで以前よりも強くなったことがわかったことが嬉しくなり、思わず笑みが零れる。

 

「いいよ、その挑戦受ける。言っとくけど、俺も三か月前よりも強くなってるから」

 

「ふん、ならば我がそれを超えるだけのことだ! 跪けッ!」

 

バインド!?

 

王様が手を翳すと黒いリングが俺の体を拘束した。

 

「驚いておるな? だが、先ほど言ったであろう? 生まれ変わったとな!」

 

「でも、これくらいなんともないさ」

 

「何ッ!?」

 

「――――煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)、禁手化!」

 

三か月の間に禁手に至った神器(セイクリッド・ギア)――――煌天雷獄。

禁手の名前は【天獄龍(ゼニス・テンペスト)の煌雷星(・ドラゴン・ライトニングスター)】。

髪と瞳が薄い金色に染まり、背中からは六対十二枚の黄金の翼、頭の上には三つの光輪。バリアジャケットもそれに合わせて黄色に変わる。

 

「よいしょ」

 

バインドを凍らせた後、軽く力を込めて壊す。

 

(いかづち)よ、落ちろ」

 

突如、王様の頭上に雷の球体が出来て、そこから雷が落ちてきた。

 

「甘いわ!」

 

だが、強くなっている発言は伊達じゃないようで、王様は防御魔法で防ぎきった。

 

「それならこれはどうかな?」

 

「ッ!?」

 

次は雷に加え、下から氷の刃を大量に召喚し、王様に向けて発射。

これは防ぎきれないと確信したとき――――――

 

「待てぇーーーいっ!」

 

「王はやらせません」

 

青い雷が俺の雷を相殺し、赤い炎が氷の刃を溶かした。

 

アハハ、あの二人も登場か。

 

片方は元気一杯で姿はフェイト似で、もう片方はお淑やかでなのは似の少女達だ。

 

「あーーーっはっはっはっ! 王様だけ蘇って、僕らが蘇らない道理はないッ!」

 

「この姿でお目にかかるのはお初になりますね、王」

 

「貴様ら、まさか……「(シュテル)」と「(レヴィ)」か!」

 

「……? ああ、そう言えば、私達はそんな名前でしたね」

 

「そうだっけ? 僕はあんまり覚えてないや。でも、今は自分で考えた名前があるからね!」

 

「私もです。彼に、龍神空に宿題を出されましたからね」

 

俺の方に視線を移しながらなのは似の少女が言う。

 

「王様、リベンジはまた後ででいい?」

 

「ああ、この空気では仕方あるまい。……ところで、貴様らが実体化するにあたって、ここらの魔力システムの共有リソースをかなり食い荒らしたのか?」

 

「うん!」

 

「美味しく頂きました」

 

二人は自信満々に答えた。

 

「そのせいで空に負けてるところだったわ!」

 

しかし、その返答が王様にはお気に召さなかったらしい。

 

「でも、僕らが助けたからいいじゃんか」

 

「そうです。感謝こそされども、非難されるいわれはないないです」

 

「阿呆か貴様らッ! 復活するなら時と場所を選ばんか! おかげで我のリベンジが出来なくなったわァッ!」

 

「知らないよ! というかリベンジなら僕だってしたいよ!」

 

「私もです」

 

『二人ともリベンジに燃えてますね。モテモテじゃないですか、空さん』

 

それって喜んでいいモテ方なのかな?

 

「ですが、我々も好きでこのタイミングで復活したのではありません」

 

「どういうことだ?」

 

「何かに呼ばれた気がしたんです。まるで無理矢理に時を動かされたような」

 

無理矢理……? どういうことなんだろ?

 

事情を知りたいのだが、本人達が知らないのではどうしようもない。

 

『あッ!?』

 

はやて、リインフォースさん、アミタさんの悲鳴が上がった。

 

「キリエ、あなた……!」

 

キリエさんが持っている剣で三人を斬ったのだろう。

 

「ごめんなさいねー。ホントはそこの天使君も斬ろうとしたんだけど、厳しそうだからやめたの。で、あのね、王様? ちょっとだけ、私の話を聞いてくれない?」

 

「聞かぬ。失せよ。下郎と話す口は持たぬのだ」

 

「それがシステムU-D――――「砕け得ぬ闇」の話だとしても?」

 

砕け得ぬ闇? ダイヤモンドは砕けない的な? ドラララッ! とか言いそうなクレイジーなキャラでも出てきたりして。

 

「……砕け得ぬ闇……」

 

「それって僕らがずっと探してた大いなる力……」

 

「そう♥ やっぱりあなた達もまだ見つけてないのね?」

 

「え、君知ってるの? 砕け得ぬ闇の目覚めさせ方!」

 

最早、砕け得ぬ闇というのが何なのかすら知らない俺達はすでに蚊帳の外だ。

 

前にそんな単語が出てきたような……気がする。

 

「よせレヴィ! こ奴は得体が知れぬ」

 

王様の言う通りだ。三人が知り得ないことをどうしてキリエさんが知っている?

 

「あらーん、そんなこと言わないで♪」

 

「話を聞くだけでもいいのでは?」

 

「そうだよ、聞くだけでもしようよ」

 

「フン、臣下の声を聞くのも王の務めか。よかろう、話せ」

 

「いいわよ。あ、でも、ここじゃ邪魔が多いわ」

 

「では、場所を移しましょう。活動の拠点に目星をつけてあります」

 

「シュテるん、さっすがー♪」

 

うん、流石「理」のマテリアルだよね。

 

フェイト似の少女――――レヴィの発言に心の中で賛同する。

 

「だが、その前に……」

 

キリエさんの方を向いていた王様が俺の方に視線を向けなおす。

 

「我が名はディアーチェ。この名をしかと覚えておくがいい、空」

 

「あ、じゃあ、僕もー! 僕は……なんて名前にしたっけ?」

 

この前会ったときは殺意ばっかりだったのに、今はその……アホの子になってない?

 

「いや、知らないけど……」

 

「あれー? おっかしいなー? まあいいや。カッコいい名前だから、とりあえず、今はレヴィにしとくよ!」

 

それでいいの? まあ、本人がいいならそれでいいんだけど……。

 

「私もレヴィが言わないならシュテルでいいです。一応、以後お見知りおきを」

 

「うん、三人ともよろしく!」

 

「ああ、こちらこそ――――――ではない! 誰が貴様と慣れ合うと言った? 我々は元より敵だ! 我々が復活したからには、貴様はもう終わりよ!」

 

「そうだぞー! 終わりだぞー!」

 

「皆様に近い内改めてご挨拶に上がります」

 

「待ってろよー!」

 

「空……とついでに子鴉も守護騎士どもも、一人残らず喰らい尽くしてくれるわ!」

 

「アミタもバイバーイ」

 

「キリエ……ッ!」

 

アミタさんが止めようとするも届かず、四人はどこかに転移してしまった。

そして、彼女達を追いかけてアミタさんも転移した。

 

「行っちゃったね」

 

「空君はどうして止めなかったんや?」

 

「あの子たちよりもはやてとリインフォースさんの方が大事だからさ」

 

聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)を出して、二人のケガを癒す。

 

「そ、そうかいな……」

 

はやてはなぜか頬を赤らめてそっぽを向いてしまった。

 

「ありがとう。君らしいな」

 

リインフォースさんは嬉しそうに、それでいてどこか誇らしげにお礼を言ってきた。

 

「さて、これからどうしたもんか……」

 

あの子たちを探そうにも手掛かりが何一つない。しかし、シュテルは挨拶に来ると言っていた。待っていれば向こうが勝手にやってくるということなら、こちらは待っていればいいだけだ。

 

「一度、地球にいる魔導師と合流しよっか」

 

「賛成や」

 

「私もそれが最善だと思う。情報を伝えねばな」

 

俺達は頷きあうと、皆と合流することになった学校の屋上に移動を始めた。

 

 

 

 

 

「―――――って感じ」

 

皆と合流し、事の詳細を伝えた。

 

「探すの大変そうだな」

 

「確かにね……そんじゃ、皆頼んだよ! 俺は昼寝するから!」

 

『うん(おう/ええ)! …………ん?』

 

皆が一斉に首を傾げる。

 

「あんた一人だけさぼろうとしてるわけ!?」

 

やはりというかなんというか、当然の如くアリサがツッコんできた。

 

「今、眠いんだよ! 悪いか!?」

 

「開き直ってんじゃないわよ! 悪いに決まってるでしょうが! どうしても寝たいんだったら私もあんたと一緒に寝るわ!」

 

「お、おう…………へ?」

 

アリサさん、いきなり何言ってるんだ?

 

『んなッ!?』

 

「(よし、勢い任せに言ってみたけど上手くいったわ!)皆、あとは頼んだわ。空、行くわよ」

 

『させるかぁッ!』

 

なのは達が帰ろうとする俺とアリサを引き留めてきた。

 

「もしかして皆も寝たいの?」

 

『えッ!? あ……えっと……』

 

「全くしょうがないなー」

 

『いいのッ!?』

 

「いいよ。俺はもう少し探索するから」

 

『え……?』

 

「あ、俺のことは気にせずに寝てくるといいよ。無理は良くないからね」

 

飛行魔法を発動して、屋上から離れていった。

しばらくして、なのは達の叫ぶような声がしたが、小さ過ぎて良く聞こえなかった。

 

「さてと、おかしな反応は……あっちか」

 

先ほどと同じような反応があったので、そこに急いで向かうことにした。

 

 

 

 

 







三人の名前どうしようかなー、と悩み中です。
多分、原作とは違う名前になると思います。



次回は未来組登場ですかね。

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