デート・ア・リリカルなのは   作:コロ助なり~

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伝説の三提督と会談です!

伝説の三提督と会談です!

 

Side空

 

シャマルさんのお料理地獄事件の翌日、クロノから連絡があった。

 

『空、会談の日取りが決まった』

 

あー、以前に言ってたやつだ。

 

「ほうほう、いつになったの?」

 

『明後日だ』

 

よし、こいつを一発殴ろう。そう思った俺を誰が責められようか、いや誰にも責めることは出来ない(反語)。

 

『というわけで今から迎えに行く。準備しておいてくれ』

 

「……わかったよ。ん? 今から?」

 

――――ピンポーン。

 

返事をして通信を切った瞬間に家のインターホンが鳴った。急いで玄関の扉を開けるとクロノとエイミィさんがいた。俺への連絡が終わったと同時に二人は転移してきたのだろう。

 

「……何? 何なの? 俺に対する嫌がらせ? そんなに嫌われるようなことしたっけ?」

 

「軽い遊びだ。気にするな」

 

悪びれもなく、前よりも若干生き生きとした表情でクロノは言った。

魔導書の事件がひと段落して、父親が帰ってきた嬉しさからタガが外れたのだと思い、何も言わないでおくことにした。

 

「事件が終わってから母さんと父さんが毎日新婚のようにイチャイチャしてるのが軽いストレスになってついやった。反省も後悔もしてない」

 

前言撤回。やっぱり殴ろう。さっきの連絡との分も込めて二回殴ろう。それから、二人は十年間一緒にいられなかったんだからそのくらい許してあげなさい。

 

「クロノ」

 

「何―――ガッ!? い、いきなりな、何をする!?」

 

「今からお前を殴るから。二回ほど」

 

「宣言する前に殴ってるよね!? しかも割と本気で!」

 

エイミィさんが倒れたクロノを抱き起しながら叫んでいるが無視だ。むしろ、魔力強化されてないだけありがたいと思ってもらってもいいくらいだと思う。

 

「連絡が来たと思えば、会談は明日と言われるわ、通信が終わった同時に家に来るわって……お前はアホか! ……まあ、いいや。今から準備するから五分ほど家の中で待ってて」

 

二人を家の中に招き入れてから自分の部屋に戻り準備した。皆にミッドチルダに行くことを伝え、クロノに確認したら、シエラとティアを連れて行っても構わないそうなので、連れて行くことにした。

 

「お待たせ。そんじゃ、行きますか」

 

「ああ」

 

クロノの後を付いて行き、アースラへと転移する。そこから時空管理局の本部がある次元世界―――ミッドチルダに向かうのだ。

 

「ねえ、空。ミッドチルダとやらに何しに行くのかしら?」

 

訳も分からず連れて行かれることになったティアが聞いてきた。

 

「管理局で有名な伝説の三提督に会うらしいよ」

 

「へぇ……空を管理局に入れる気なの?」

 

「さあね。それは会ってみないと分かんない。でも、もしそうなら俺は断るけどね」

 

「前から思っていたんだが、何故そこまで管理局を毛嫌いする?」

 

アースラの部屋での俺達の話が聞こえていたのか、部屋に入って来たクロノが会話に交じってきた。

 

「別に毛嫌いしてるわけじゃないよ。クロノやリンディさんのことは信用してる。……でもさ、それが管理局っていう組織となると別問題。黒い部分が多過ぎるよ。それに前にも言ったけど、俺は嘱託魔導師になって時間が潰れるのは嫌だからね。あと、俺がなのは達ほど魔導師に向いてないからかな」

 

「……そうか。しかし、君がなのは達程魔導師に向いてないとはどういうことだ? 僕からすれば君の方が魔導師として随分と優秀に見えるぞ」

 

クロノの疑問は最もだ。現段階では俺の方がいくらかは優秀ではある。しかし、それは今だけの話だ。実際、なのはに負けることもあるし、シグナムさんやヴィータ達にはブレイブだけで勝つことは滅多にない。

 

「それはね、俺が魔法の練習あんまししてないからだよ。別の力を使った方が強いってのもあるんだけどね。それになのは達の方が魔法の才能があるよ。今はまだ負け越さないだろうけどその内……あと三年したら勝てなくなるんじゃないかな? いや、もしかしたらもっと早いかも。ブレイブには悪いけど、使うのはバリアジャケットと非殺傷ぐらいだと思うよ」

 

《マスター酷いです! 私がありながら他の力ばかり! ぐれてやります!》

 

「そうなると……シエラが俺のデバイスかな?」

 

この間の王様との戦闘でシエラとのユニゾンは十分に出来ることが分かったから問題ない。

 

「それはいい考えですね。中古品のデバイスは捨てて私に乗り換えてみませんか?」

 

《ガーン! やっぱり今の無しです! そこの女にマスターのデバイスの座は渡しません!》

 

「アハハ、冗談だって。そんなことしないよ。まあ、出来るだけ魔法でも負けないように頑張る」

 

なのは達に抜かされるのはまだまだあとでいいかな。もうちょっとは魔法少年を頑張らないとブレイブに申し訳ない。

 

《よ、良かったです……》

 

「君がそう言うとは思わなかったが、話を聞いてみるとそうかもしれないな。ああ、そう言えば、君の神器(セイクリッド・ギア)の力は本部にはバレないように隠している。知っているのはアースラにいる人間だけだ。本部には何とか誤魔化して報告してるから安心……とまでは行かなくても楽にして欲しい」

 

クロノ達にも事件が終わってから神器のことは話した。

ジュエルシードの時みたいに誤魔化しは効かなさそうだったのもあって伝えることにしたのだ。アリサ達の神器はギリギリレアスキルという形で通せた。

リンディさんはロストロギア並みの危険な力と考えたが、無理に俺を入れて管理局を壊されかねないと思ったのか、何も見なかったことにしたらしい。

しかし、ナハトヴァールを消し去った砲撃だけは隠すことが出来ず、管理局に伝わってしまった、とのことだ。

 

精霊の力は隠せてるし、神器についても知られたのは一部だけなら問題ないか。そこはクロノ達に感謝だな。脅しはしたから管理局の上層部もおいそれと手は出してこないだろうし、なのは達を人質にとるんだったら自分の命が無くなることを覚悟してもらわないとね。

 

「そっか。あ、そうだ。はやて達ってどういう処分が下されるの? 命令とは言え、過去に守護騎士達は問題を起こしたわけでしょ? 恨んでる人だって決して少なくないだろうから無罪ではないよね?」

 

「それは……まあ、そうなんだが……」

 

クロノはシエラを気遣っているのか言い難そうにしていた。

 

「私のことは気にしないでいい」

 

「わかった。遠慮なく言わせてもらう。本来であれば、夜天の魔導書の主、八神はやて及び守護騎士達は管理局で拘束する……はずだったが、事件の解決に尽力とギル・グレアム提督や母さんの口添え、それから君の渡してくれたデータのおかげでどうにかそれは免れた」

 

ほっ……はやて達が何かされるんじゃないかとヒヤヒヤしてたけど杞憂に終わってよかった。

 

「ただ、管理局に入ることだけはどうしても変えられなかった……」

 

「でも、はやては自分から入りたいって言ってたでしょ?」

 

なのはやフェイト達が一緒なら問題なさそうだし、アリサやすずか、明日奈も嘱託魔導師になることを決めたらしい。

 

「……よくわかったな。過去に守護騎士達が迷惑を掛けた人達に謝ったのち、足が完全に治ったら入ることになった。今はなのは達とアースラのトレーニングルームにいるだろうからあとで行ってみるといい」

 

はやての足は事件が解決してから聖杯の力でほとんど治っていて、今はゆっくり歩ける程度にまで回復している。完治する日は夏休み明けぐらいになる、とシャマルさんが言っていた。

それからクロノと他愛無い話をして(クロノの両親の愚痴を聞かされて)からシエラとティアを連れて、なのは達に会いに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

「お、いたいた。やっほー、皆」

 

『空(君)!』

 

アースラの一室になのは達がいた。何人か汗を掻いていたので練習でもしていたようだ。

 

「どうして空達がここにいる?」

 

一番近くにいたシグナムさんが尋ねてきた。

 

「これから伝説の三提督と会談するんです」

 

『伝説の三提督!? ……って何?』

 

ほとんどが知らないのか首を傾げていた。俺も初めて会うから知っているわけじゃないけど、軽く説明した。

 

「――――で会談するわけ。はやて達はミッドチルダに着いたら過去に迷惑かけた人に謝りに行くんだよね?」

 

「……うん。いくら命令されてやったとはいえ、今代の夜天の魔導書の主である私がやらなあかんのや」

 

……まだ小学生だというのに大した娘だよ。なのは達も含めてもう少し子供らしいところがあってもいいのにね。

 

「それ、俺も一緒に行くことにしたから」

 

「……? どないしてや?」

 

はやては俺が同行する理由が思い当たらず首を傾げていた。

 

「今の主は俺だけど、シエラだって夜天の魔導書のプログラムだったことに変わりはないから。それにもし治せる怪我なら治すつもり」

 

「あ、それって幽世の聖杯(セフィロト・グラール)だよね?」

 

アリシアが思いあたったことを口に出した。

 

「うん、それなら大抵のものは治せるから」

 

死者すら甦らせることも可能だが、赤の他人にそこまでする義理は無い。それに死者蘇生をして、能力が管理局にバレたら余計に面倒になるというのもある。

 

「空のそのセフィロトなんとかってシャマルの治癒魔法よりもスゲーのか?」

 

「うん、すごいよ。シャマルさんの存在が霞んじゃうくらい」

 

シャマルさんには申し訳ないが魔法じゃ治せないことも聖杯なら出来る。

 

「となると、ただでさえ湖の騎士は存在感が薄いのに聖杯によって完全に無くなったな」

 

「うぅッ…………空君のバカァァァアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

リインフォースさんに止めを刺されてシャマルさんが泣きながら部屋を飛び出していった。

 

悪いことしたなぁ……あとで慰めに行かないといけないか。リインフォースさんにも原因あるけど。……あ、戻ってきた。

 

謝りに行こうと思ったらシャマルさんはすぐに戻ってきた。

 

「私、参謀役としてはまだまだいけますからね!」

 

俺の方を睨みながら言ってきた。余程大泣きしたのか目元が赤くなっていた。

 

「そ、そうですね。参謀役としてはシャマルさんの方が断然上ですよ」

 

「そうよ! 空君は少ししか生きてないけど私は何百年も生きて……生きて……私はババアなんかないわよォォォオオオオオオオオオオオオッ!」

 

『(自分で言って自滅したー!)』

 

多分シャマルさん以外の皆の考えと完璧に一致してると思う。

 

シャマルさんは再び大号泣して部屋を飛び出して行った。

 

「(……今のは俺悪くないよね?)」

 

『流石にあれはどうしようもないですね……』

 

中にいるヤハウェも呆れていた。

皆で何とか落ち込んだシャマルさんを慰めたことで機嫌は直った。

その後はアースラ内で夕飯を食べた。

 

「そういえば会談が明後日ってことは、俺ってどこかで寝泊まりするってこと?」

 

食事の最中に気になったことをクロノに聞いてみた。

 

「ミッドチルダに着くまではここで寝泊まり……と言っても一日だけだ。……着替えを持ってくるの忘れたのか?」

 

「一言も言われてないけど!?」

 

周りを見ると、皆は着替えを持ってきていたようで驚いていなかった。

 

「すまない。僕の服で良ければ貸そう」

 

「それでお願いするよ」

 

事件が終わって気が緩むのも分かるけど、そういう大事なことは言って欲しいよ……。

 

軽くクロノを恨みがましく思っていると、リンディさんとクライドさんの二人が目に入った。

 

「もうっ、クライドさんったら」

 

「リンディこそ……いいのか? 子供達が見てる前だぞ?」

 

「あ、あらやだ……私ったらつい……」

 

クライドさんに指摘されて俺達がいることにようやく気が付き、二人だけの桃色空間から出て来た。免疫のないなのは達は終始二人の様子に赤面していた。

 

「あ、そうだ、リインフォースさん。クライドさんって十年前に夜天の魔導書内に吸収されたわけですけど、十年前と同じ姿のままですか?」

 

「そうだな」

 

「だとすると……リンディさんとクライドさんって十歳差があるわけですね」

 

実年齢を知ってるわけじゃないから何歳差なのかは知らないけど、もしも二人が同い年であればそういう計算になる。少なくともリンディの方が年上なのは間違いないと思う。

 

―――――ピシッ!

 

あ、リンディさんが石になった。ついでに部屋の空気も固まった。

 

「……ねぇ、クライドさん……」

 

「な、なんだい、リンディ?」

 

リンディさんが俯くと前髪が顔を隠しているので表情は読み取れない。

 

「…………私がクライドさんよりも若くなくても…………愛してくれるわよね?」

 

「も、もちろんだ! 僕はこれからも君を愛する! それに、君は十年前と何も変わってないから今でも十分輝いているよ!」

 

クライドさんは必死になってリンディさんをおだてていた。実際、クライドさんの言う通りで、リンディさんはどう見ても子持ちとは思えないほど若々しい。二十代前半……下手したら二十歳でも十分通じる。

 

「そうよね! クライドさんと年齢が離れようと私を捨てるなんてありえないわ!」

 

クライドさんの言葉にリンディさんは顔を上げてすごく嬉しそうにしていた。

 

「空はどうしてあんなことを言ったんだ?」

 

「歳の差が離れてリンディさんが落ち込んでいたなら俺が若返らせようかなと思ったんです。でも、必要――――」

 

「今の話はホントなの!?」

 

リンディさんが血走った目で俺に詰め寄って来た。

 

「え、あ、はい……出来ます。でも、いらないんじゃないんですか?」

 

「それとこれとは別よ! 出来るなら是非ともお願い!」 

 

若返ることが出来るならしたいのは当然なことだ。

 

「わ、わかりました。―――――幽世の聖杯」

 

聖杯を取り出して、中にある水をリンディさんに降り掛けた。リンディさんは光に包まれて数秒後に光が無くなると、特に変わった様子はなかった。

 

「……? 今ので本当に若返ったの? あ、でも肩こりや溜まっていた疲労は無くなってるし、体から元気が溢れて来る気がするわ……若返ったのかしら……」

 

「……外見にそんなに変化はないですね」

 

『相変わらず、この世界の人間は年齢と外見が一致しなさすぎだろ……』

 

悪魔や天使、堕天使は魔力や、光力を使えば年齢は変えられることは知っている。でも、その力を全くと言っていいほど持っていない人間があそこまで変わらないのは最早、魔法と言っても過言ではない。

 

「ありがとね、空君!」

 

「どういたしまして。分かってるとは思いますけどこのことは内緒にして下さいね? 信用出来るリンディさんだから使ったんですから」

 

「ええ、もちろんよ!」

 

本当に若返ったのか疑わしいほど変わらないリンディさんが、クライドさんのそばに戻り、再びイチャつきだす。

これ以上あの二人のイチャつきを見ていると口から何か出そうだと思った俺達は、向こうに目がいかないように面白い話題が無いかと探す。

 

「と、ところでクロノは暇な日ある?」

 

「あるにはあるぞ。明後日の会談が終われば溜まっていた有給休暇を取るつもりだ」

 

「お、ちょうどいい」

 

「……?」

 

「今度さ、俺、ヴァーリ、ユーノ、雄人、ザフィーラさん、それからクロノを誘って遺跡発掘に行こうって計画中なんだけど、どうかな?」

 

「……よくよく考えてみれば、僕はそういう息抜きを管理局に入ると決めてから全くしてなかったな。偶にはいいかもな、友人と過ごす休暇というのも」

 

クライドさんがいなくなってから管理局に入り、執務官を目指すために人一倍血の滲むように頑張って来たのだろう。自分の青春を犠牲にしてでも。

 

「これで決まりだね!」

 

「僕は着いたらすぐに準備に取り掛かるよ」

 

「頼んだよ、ユーノ」

 

「任せておいて!」

 

それから六人で話し合った結果、俺の会談が終わってから行くことになった。

 

 

 

 

 

ミッドチルダに到着してから皆と別れ、俺達は車に乗せられて、見ただけでも高級とわかるホテルに入れられた。

 

「ここに伝説の提督がいるの?」

 

「そうだ」

 

クロノの案内について行き、最上階の部屋で立ち止まる。この部屋に伝説の三人がいるのようだ。

 

「クロノ・ハラオウン執務官です。龍神空を連れてまいりました」

 

『入ってちょうだい』

 

「失礼します」

 

「失礼します」

 

クロノに続いて俺達も一言断ってから入室する。

 

「いらっしゃい。さあ、席に座ってちょうだい」

 

「ありがとうございます」

 

三人の老人と向かい合うようにクロノ、俺、ティア、シエラの順に並んで座る。目の前の三人は全員初老の人達だった。

 

「さてと、まずは自己紹介からしましょうか。初めまして、ミゼット・クローベルよ」

 

「レオーネ・フィルスじゃ」

 

「ラルゴ・キールだ」

 

「初めまして、龍神空です」

 

「使い魔のティアマットよ」

 

「シエラです」

 

「空君ね? 話は聞いているわ。何でも闇の書の防衛プログラムを跡形もなく消し飛ばしたそうね?」

 

俺も跡形もなく吹き飛ばしたつもりだったけど、この間再生しようとしてましたけどね!

 

「フン……どうだか。お前は中々の魔力を持っているようだが、次元震を起こすほどの威力は出せるとは到底考えられん。別の者がやったのではないか?」

 

ラルゴ・キールさんは俺がナハトヴァールを吹き飛ばしたことを信じてないらしい。

 

あらら……信じられてないね。まあ、俺としてはそっちの方が助かるかな。

 

「いえ、間違いなく彼が防衛プログラムを消し飛ばしました。それはアースラ全員で確認しています」

 

「……そうか。クロノ執務官がそう言うのであれば信じるとしよう」

 

あっさり信じたことから、クロノの執務官としての信用度がいかに高いかが分かる。

 

「それで、お主に提案なのじゃが―――」

 

「お断りします」

 

「……まだ、何も言うておらんのじゃが……」

 

「いえ、質問の内容に予想が付くので。……俺が撃った砲撃魔法をもう一度見せろって提案するつもりだったんじゃないですか?」

 

「……その通りじゃ。それと、お主がどれほど危険な存在か見極めるためにも、だったのじゃがな」

 

次元世界を守る組織としては、危険なものや人物を見過ごせない。だから、俺にもう一度撃てと提案しようとしていたのだ。

 

次元世界を守る……か。下手したら、いや、ほとんど侵略行為として捉えられてもおかしくないよね。

 

管理局の目的に不安を感じるが、自分はこの組織の人間じゃないから何も言わない。でも、もし仮に俺の住む世界を侵略するというのなら当然黙ってはいられない。もっとも三大勢力や神話の存在に管理局如きが勝てるはずもないが。

 

「少し残念だけど、無理強いは出来ないわ。でも、せめてあなたの実力だけでも見せてくれないかしら? クロノ執務官の報告書にあなたの実力は他の子達の中でも群を抜いていると書いてあったのよ」

 

「〈そんなこと書いてたの?〉」

 

「〈ああ。だが、事実だろ?〉」

 

それは神器や九喇嘛の力を使った場合の話だ。さっきも言ったが、俺に魔導師としての力はそこまでない。

 

「わかりました」

 

「至急人を集めろ。クロノ執務官を含めて五人ほどのチームで龍神空と戦ってもらう」

 

五対一とか大人気ない……。

 

そう思っても口には出さない。向こうなりの妥協点だろうし、何より管理局の人相手にどれくらい通じるのか知っておくのも悪くないからだ。

 

「クロノ執務官、今から一時間後に地上部隊の訓練場に龍神空を連れて来い」

 

「ハッ!」

 

ラルゴ・キールさんの命令にクロノは綺麗な敬礼を返す。

 

「三人共こっちだ」

 

クロノに再び案内され、指定された目的地へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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